2.5章修行編02
強者との戦闘は常に思考と行動を働かせるものですね
私は紅茶を飲みながら…策を考えた…だが…どれもうまくいかなかった…
あの実技をもう三日も続けているのに、未だに成功しない…
それどころか、次々とこちらの策が読まれて、手を出せない状況になっている
一度は、接近戦に持ち込もうとして飛び込んだが…私は円の周りをくるくると飛ぶ破目になった。
体の裁き方も駄目だしされた私は…この怒りをどこへ向ければいいか本当に悩んでいた
何か良い方法は…物理的な攻撃は全て効かない…あれで本来の悪魔の力である魔法を使っていないのが、更にイラつかせる…
しかも…日に日に、夜叉のため息が多くなってきている…
もし…このまま…上手くいかなかったら…私は夜叉に見捨てられるのだろうか?
それは嫌だ…見捨てられたくない…
私には…もう夜叉しかいないのに…夜叉に見捨てられたら…
私は自分の思考が危ない方向に向かっている事に気づき、頭を振った…
こんな幻想染みたものに…心を惑わせてどうする…
…ん?…幻想…幻…
「そうよ!!これです!!」
私は威勢よく立ち上がると、すっかり冷めた紅茶を飲むと、急いで、中庭に走った!!
そして…中庭の位置を見て…計画をたてた。
「夜叉見てなさい…貴方を円の外へ追い出させて頂きます!!」
私は…夜叉が描いた円に拳を突きつけてそう言った。
翌日
夜叉は、この三日間、変わらぬ体勢で円の中に立った
「さあ、ジャンヌ、今日こそ我を追い出せるか?」
嫌味の効いた言葉で話しかけてきた…
「ええ、今日こそ、その円からご退場願いますわ…」
私は腕を突き出し
“我求む、天、落ちたる、破壊槌”
呪文を紡いだ…古語により命令された世界が…古語を実行する…
それは、夜叉の頭上の空気を圧縮し、夜叉に叩きつける…その威力は凄まじく、余波の風が吹き飛ばした砂が私の視界を覆う…
それは、まるで見えない巨大な槌が振り下ろされたような威力だが…
「これは昨日、試しただろう?」砂煙の中から夜叉の声が聞こえた…
そうなのだ…この魔術は、昨日、嫌と言うほど使ったが…夜叉を動かす事は出来なかった。
だけど…これだけじゃない!!
“我求む、地、出たる、破壊槍”
砂煙の中で夜叉が地面に意識を集中させる…
「なに…真下だと!?これだと初日の二の舞だぞ?」
夜叉が真上に飛ぶ…そう…これを待っていた…
“我求む、天、切裂く、風刃”
砂煙の中、私は風の刃を無数に発生させた…
「我にその技は効か…この位置は…まさか!?」
空中から落ちてくる夜叉は、私の意図に気づき、驚愕した
そう…それは、夜叉ではなく…
「円そのものを壊せば良いのですわ!!」
私は、円に目掛けて風の刃を放った。
だけど…その刃は…
「なっ…そんな…」
円に届く瞬間何かにぶつかり霧散した…あれは…石?
「我に石を投げさせるとは…よく考えたな」
夜叉はそう言って…地面に降りた…
私はその様子を見ると顔を俯けた
「君は良くやった…だが、我に此処まで…」
「やりました!!!!やりましたわ!!円から出しましたわ!!」
私は、地面に降りて何か変な事を言っていた夜叉にそう言った
「ジャンヌ?何を言って…」
夜叉は足元を見る…其処には円が書かれた地面がある…
「あら?まだ、気づきませんの?さっきあれほどの、土煙や岩や風が起こったのにも関わらず、この綺麗な円に…なにもわからないんですの?」
私がそう言うと、夜叉は…眼に手をやり…
「しまった…これは幻術か…」
夜叉がそう言った瞬間…夜叉の立っていた場所から…円が消え去った…
「ええ、砂煙の中作成させて頂きましたわ~あとから出てくるように、していましたから!!」
そう…初めからこれが狙いだった
初めの一撃は、目くらまし、次は、円の位置を誤魔化す為、そして、風の刃は…砂煙の中で夜叉に偽の円の場所を指示する為…全ては、この為の策だった
「悔しいが、合格だ…我もまだまだ甘いな…だが、よくやったな、偉いぞ!!」
夜叉はそう言って頭を撫でてくれた…
とても大きな手だと思った…懐かしい様な…心が温かくなる…母さんとも違う…なんて言うんだろう…この感じは…それより…夜叉が褒めてくれた…私はいらなくないと実感できた…そう考えていると…
「ジャンヌ?どうした…泣いているのか?」
私は夜叉にそう言われ、顔に触れると…確かに濡れていた…
「あれ?どうしたんだろう…あれ…止まらない…悲しくないのに…」
私は…この涙に戸惑った
「まあ、無理して泣き止む事は無い…泣けば良い」
とりあえず…夜叉にそう言われ…私は泣いた…訳も解らず泣いた…
心が温かい…この涙に…私は疲れるまで泣いた…
相手を下に見ている奴ほど騙されやすいのが世の常だ