意外性
「そういえば今日も奇数日(1日)じゃないか!!」と思って慌てて更新しました。
「お邪魔します」
「うん、どうぞー。あがってあがって。」
部屋に足を踏み入れた晴夏は、失礼にならない程度に部屋を見渡した。
大雑把なところがある奏都のことだから、さぞ部屋は散らかっていることだろうと思っていたのだが、そんなことはなかった。
むしろ、散らかりようがないほどに物が少ない。ベッド、テーブル、本棚、そして洋服箪笥。
この箪笥の中には、おそらくジャージばかりが詰まっているのだろう。なんとも切ないことだ。
そして、晴夏はある一点に目を留める。あまりの意外さに目を丸くなるのがわかった。
「ん?何か珍しいものでもあった?」
晴夏のその様子に気付いた奏都は、部屋を観察されたことに怒った様子もなく、そう問いかける。
「いや…、料理するんだなって思って。」
そう。晴夏が見ていたのはキッチンだった。
廊下を抜けた先、左手に見えた独り暮らしにしては広めのキッチンには、晴夏の想像に反して、しっかりとした生活感があったのである。
「料理?うん、するよー。結構好き。それに。一人暮らしだしね。」
「でも、カナって学食派じゃなかったか?」
「そうだよー。その…朝はなかなか早起きできなくてね。でもでも!夜ご飯は、ちゃーんと自分で作ってる!」
「へぇ。そうなのか。」
「うん。…やっぱり意外?」
「あー…その、勝手に料理も苦手だって思ってた。…ごめん。」
寝癖にジャージが標準装備な奏都が、料理できるなんて思いもしなかった晴夏である。
失礼な先入観を持っていたことを正直に認めると、奏都は静かに笑った。
「いーよ。女子力ないとこばっかり見せてるもんね私。あ、適当に座っててー。うーんと…そこのテーブルの前…は固いか。座布団とかないし。」
「いいよ。座布団なくても。」
「ベットの上に座っててくれていーよ?」
「…いや、テーブル前でいいよ。」
「お尻痛くない?」
「大丈夫。」
どこか引き攣った顔でそう応じる晴夏に、奏都は不思議そうな顔をする。
「そう?うん、じゃあ待ってて。紅茶用意して持って行くから。アイスとホットどっちがいい?」
ここで説教をすれば、また気まずくなることがわかっているからか、晴夏はぐっと言葉を飲み込む。
そして、笑顔を浮かべて、柔らかく返事をした。
「そうだな。折角だからホット貰おうかな。」
「ふふ、夏なのに?」
「カナさん特製紅茶なんだろ?淹れたてが飲みたいんだよ。」
「そ、そっか…。」
「うん。」
期待を向けられているとわかる言い回しに、奏都のやる気は急上昇である。
絶対に、晴夏を満足させて、部屋に寄って良かったと思ってもらうのだと意気込みを新たにする。
「よーし、わかった!とびっきり美味しく淹れてあげる!」
「うん、待ってる。あ、今日買った服のタグ切り、後でちゃんとやらなきゃだめだぞ。今日中にやらないとカナは絶対忘れる。それで、絶対恥をかく。」
「ハル…。」
「…何。」
嫌な予感がした。
「ハルが切っておいてくれたり…」
「しない。」
料理好きという意外な一面があったとしても、なんということはない。
奏都は、どこまでも奏都だった。
読んでくださってありがとうございました。
次回更新は3日です。予約掲載設定済です。




