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第23話 軽挙妄動ある意味記念日!? 後編

 正雄の台詞が止まったまま時間だけが流れる。

 この瞬間、ほんの数秒だったはずだったが俺にはすごく長く感じた。

 正雄は無言のまま俺の全身を足元からゆっくりと流すように見る。

「ごくり」……唾を飲み込む音がかすかに聞こえた。

 緊張しているのか……正雄の奴も……

 それは俺に対して言いたい台詞に重みがあるからなのか?

 正雄の緊張した表情を見てそう思った。 

 ここまできて改めて思う……やっぱり俺は綾香じゃないって正雄に疑われている。

 この前の自転車置き場で本当の綾香との決定的な違いを指摘された。

 そして今日、俺は綾香が知りえない事を一彦君へ話してしまった。

 正雄はそれを聞かれたのかもしれない。いや聞いていたのだろう。

 聞かれていたとすれば……確実に綾香じゃないと疑うはずだ……

 ……

 だけど……俺は認める訳にはゆかないんだ。

 俺の今のこの存在。これは大きな嘘かもしれない。

 だけど綾香の為にも俺は綾香でいないと駄目なんだ。

 いくら輝星花きらりが正体がばれても大丈夫だって言っても、一人にばれたら皆にばれるのも時間の問題になるはずだ。

 だからこそ、それが例え正雄であっても正体がばれたら駄目なんだ。

 せめて綾香が戻ってくるまでは……

 

 正雄は何かを言い出したい表情をしているが言い出せないでいる。

 まだ大丈夫かもしれない……今のうちに逃げよう、ここから早く逃げよう。

 

「桜井先輩、用事が無いのなら私は帰りますね」

 

 俺は冷静さを装い正雄にそう言うとその場から立ち去ろうとした。

 正雄から目を逸らしてくるりと方向転換をした時、俺の右手を再び正雄がぐっと掴む。

 

「待てよ、悟の妹」

 

 振りほどこうとしたが振りほどけない程に強く手を握られている。

 

「離して下さい!何をするんですか!」

 

 俺は振り返ると同時に正雄に向かって怒鳴った。

 正雄は怒鳴られているのに表情ひとつ変えずに俺の目をじっと見ている。

 

「何ですか?そんなに見ないで下さいよ」

 

 俺はそう言って正雄を睨みつけた。

 

「おい、お前……こんな事はありえない俺も思っているんだが……」

 

「な、何ですか」

 

 緊張で俺の心臓はドキドキと高鳴る。

 

「もしかして……お前…悟の妹じゃなくって【悟】なんじゃないのか?」

 

「え!?」

 

 『ガン!』っと鉄のハンマーで頭を殴られたような衝撃が体中に走った。

 そして心臓の鼓動は一気に高まり、頭に血が上り、体中が熱くなる。

 

 な、何だと!?まさか直球ストレートで言い当てるとか!?

 普通だと「綾香じゃないんじゃないのか?」とか「お前は誰なんだ?」とか聞くんじゃないのか?

 何でストレートに「【悟】なんじゃないのか?」とか言えるんだ!?

 そこまで確信してるのか?何か証拠があるのか!?

 し、しかし俺はまだ悟だと認めた訳じゃない!ここは冷静に!冷静に対応しないと!

 落ち着け……落ち着いて返事をするんだ……でないと悟だと認めているようなものだぞ。

 っていうかきっと顔は真っ赤だろうし、この額の脂汗…じっと見られてるしやばい気もする……

 そ、そうだよ、早く否定しないと!

 

「な、何を馬鹿な事を言ってるんですか?何で私がお兄ちゃんなんですか?意味がわかりませんけど?」

 

 俺がそう言うと正雄はぐいっと俺を引き寄せる。

 そしていきなりぐっと俺を抱きしめた。密着する俺と正雄。

 な、な、な、何をするんだ!?いきなり抱きつくとかありえねー!

 

「な、何をするんですか!は、離してください!」

 

 俺が怒鳴ると正雄はゆっくりと抱きしめた腕の力を緩めた。

 しかし抱いた腕は離そうとはしない。

 正雄の顔を見上げると正雄を俺の目を見ながら話を始める。

 

「お前はやっぱり悟の妹じゃないだろ?この前の自転車置き場の件もそうだが、今日のその動揺具合や今までの出来事を総合的に見てもお前は姫宮綾香だとは思えない。それに俺に抱きつかれたのに動揺こそしても暴れたりしないしな」

 

「な、何を馬鹿な事を言ってるんですか?いきなり抱きつかれて驚いてしまっただけじゃないですか」

 

「驚いた?普通の女ならそういう場合は驚く前に悲鳴でもあげるんじゃないのか?」

 

「く……それは…悲鳴なんてあげたら人が来るじゃないですか…」

 

 悲鳴か、そうか……女なら悲鳴を上げるかもしれないよな……

 くそ…なんか口では勝てる気がしねぇ。

 

「本当に誰だ?しかし赤の他人でもないんだよな……お前は俺を知っているだろ?悟の妹の事も知ってる。そう考えるとやっぱり悟なんじゃないのかって思うんだ」

 

 何だよその確信したような言い方は!?お前は名探偵か?

 というか、俺は綾香じゃない事は確定なのか!?

 頭は良い奴だとは知っていたが、ここまで頭の切れる奴だとは思わなかった。

 

「普通に考えて下さいよ!ありえない話でしょ?私がお兄ちゃんだとか?」

 

「普通だとな……俺も正直いえば確信してた訳じゃない……でもさっきの一彦との会話を聞いてお前が悟としか思えなくなったんだ……どうしてこうなったのかの理由は説明つかないけどな」

 

 やっぱり聞かれてた!

 やばい!これ以上突っ込んで質問されると対応しきれないぞ!?絶対やばい!逃げないと!

 

「わ、私は姫宮綾香ですから!」

 

 俺はそう言いながら勢い良く身を屈めた。力を抜いて抱いていた正雄の両手を俺はスルリと抜ける。

 そして俺は慌てて自転車に飛び乗ると勢い良く走りだした。

 

「お、おい!待てよ!逃げなくっても俺はただ……」

 

 俺は正雄の台詞を最後まで聞かず、自転車を懸命に漕いで一気に正雄から距離を取った。 

 これで逃げ切ったかと思った。しかし、後ろを振り向くとすごい勢いで正雄が追っかけてくるのが見えた。

 え!?走って追っかけてくるとか!?なんだよあいつ足が早いじゃないか!やばい追いつかれる! 

 数百メートルを全力で漕いだにもかかららず正雄は息を切らさずに追っかけてくる。

 くそが、あいつ自主練習でもやってやがったな!息が切れる様子が見えないじゃないかよ!

 その時、学校の正門前に差し掛かった俺は咄嗟に学校に逃げ込んだ。

 

輝星花きらり…助けてくれ…」

 

 自転車を玄関の前にある水飲み場に放り投げると正面玄関から構内へ入る。

 一年の下駄箱で靴を脱ぎ捨てて、上履きも履かずに俺は走り出した。体は自然と特別実験室へと向かっている。

 いくら強がっていても、あそこまで的確に悟だと言い当てられた俺は冷静でいられるはずもなかった。

 もしばれたら……その後の悪いイメージがどんどんと脳裏に浮かんでは消える。

 輝星花きらりはばれても命の危険は無いと言っていた。

 確かに命の危険は無いかもしれない。でも下手をすると俺は……いや、綾香ももうこの学校に居られなくなるかもしれないんだ。そんなのは嫌だ!

 俺は息を切らしながら廊下を懸命に走る。

 おかしい……何時もは近く感じる特別実験室が妙に遠くに感じる。

 俺に後ろを振り返る余裕なんてなくなっていた。

 そしてしばらく走るとやっと特別実験室の扉が見えた!俺は躊躇もせずに扉を開くと中に飛び込む!

 

輝星花きらり!助けてくれ!はぁはぁはぁ…」

 

 俺がそう叫んで室内を見るとそこには……

 

「あれ?綾香ちゃん?輝星花きらりに何か用事?」

 

 夕暮れになり、薄暗くなった部屋の中には輝星花きらりの姿は無く、その代わりに絵理沙が中央のソファーの前に立っていた。どうしてここに絵理沙が!?

 

「え、絵理沙?輝星花きらり輝星花きらりは何処なんだ?はぁはぁ…」

 

「え?いきなり何?お兄ちゃんじゃなくって輝星花きらり輝星花きらりに何の用事なのよ」

 

 絵理沙はすこしむっとした表情でそう言った。

 しまった……そうか、ここでは野木と言うべきだった……つい輝星花きらりが頭に浮かんだから…

 

「え、あっと、野木、そう野木に用事があるんだよ。ちょっと助けて欲しい事があってね。はぁはぁ…」

 

「助けて欲しい?それってどういう事?そういえば綾香ちゃん、そんなに息を切らして、おまけに汗いっぱいかいちゃって?何かあったの?」

 

「そ、それは……だから急用があるんだよ…え、えっと……だから野木は何処なんだ?」

 

「知らない……私もさっきここに来たばかりだから。私がここに来た時には居なかった」

 

 くそ、何処に行ったんだよ……こんな時に……

 奥の窓際に見える机の上には白い薬の容器があるだけで、それ以外の物は片付けられている。

 片付けたという事は、この部屋には居ないという事なのか?何処に行ったんだよ。

 

「ねえ、それって私には相談は出来ない事なのかな?」

 

 絵里沙は優しげにそう言った。

 

「え?絵理沙にか?」

 

「そう、もしかしてさ……私じゃ綾香ちゃんの力にはなれないって事なのかな?お兄ちゃん、いいえ、輝星花きらりじゃないと駄目って事なのかな?」

 

 絵理沙は少し不機嫌そうに、そして寂しそうな表情で俺に向かって言った。

 どうしたんだ?急に絵理沙の奴……

 

「いや……そういう訳じゃないけど」

 

「あのね……私を……頼ってもいいんだからね……」

 

 絵理沙はそう言うと俺の目の前にゆっくりと歩いて来た。

 頼ってもって言われても……最近の絵理沙は俺に対して冷たいじゃないか。

 とてもじゃないがあの感じじゃ何かを頼める雰囲気では無かったんだ。

 うーん……でも今の絵理沙は何か違う。教室での絵理沙とは違うよなぁ…

 ちょっと優しげな感じというか、棘が無いというか。

 

 その時!『ガタン!ガタタン!』とこの部屋の扉を開けようとする音が聞こえた。

 俺はその音で体をビクリと震わせた。

 やばい、正雄の奴、この部屋の俺が居るって気がついたのか?

 

「え?何この音?誰かこの部屋に入ろうとしてる?」

 

 絵理沙は扉へ視線を移す。

 

「おい、悟の妹!この中にいるんだろ?開けてくれよ」

 

 正雄の声が扉越しに聞こえた。やっぱりばれたらしい。

 うーん…この状況では俺だけではどうしようも無いよな。

 本当は輝星花きらりに相談したかったけど居ないのなら仕方ない、ここは絵理沙に相談をすべきだろう。

 このまま逃げるだけじゃ結局は何の解決にもならない訳だし。

 

「絵理沙……俺の話を聞いてくれるか?」

 

「あ、うん」

 

 俺は絵理沙に今日あった出来事をすべて話した。

 絵理沙は俺の話を聞いてすごく深刻な表情になる。

 俺が話しをしている間にも『ガタガタ!ガタガタ!』と正雄が扉を開けようとする音が部屋に響いていた。

 

「おい!マジで開けろよ」

 

 正雄も少し怒り気味なのか、声が大きくなっている。

 

「絵理沙、俺はどうすればいいんだ?どう対応すればいいと思う?」

 

 その時、絵理沙は俺の言葉以外の何かに反応した。

 ハッとした表情になると誰も居ない窓際の野木の机の方を向く。

 

「おい、聞いてるのかよ?そっちに何かあるのか?」

 

「あ、え?ああ、聞いてるよ。ごめんね、何でもないから」

 

「じゃあどうすればいいんだ?こういう場合は」

 

 俺がそう言うと絵理沙は話をしながらゆっくりと出入口へと歩いて行く。

 

「そうね……今は……」

 

 そして何を思ったのか出入口の扉に手を伸ばす。

 

「え?お、おい!まさか正雄を中に入れる気なのか?」

 

 ここの部屋、特別実験室には通常普通の人間は入れない。この部屋に特別な結界がかかっているからだ。

 その結界を解除出来るのは絵理沙や輝星花きらりの二人。

 二人のどちらかが開閉した場合のみ一般の人間がここに入れる。

 俺は出入りは可能だが、結界の解除は出来ない。

 要するには二人が開けない限りはこの部屋には正雄は入れないという事だ。

 それなのに扉を開けるという事は……

 

「そうだよ……中に入ってもらうの」

 

「いいのかよ!?まだ解決方法も話しあってないじゃないか」

 

 俺の話は絵理沙に聞こえたのか聞こえなかったのか……絵理沙は躊躇も無く取っ手に手を掛けた。

『ガラガラガラ』と音を立てて特別実験室の扉が開く。

 その先には当たり前だが正雄が居た。

 いきなり扉が開き正雄は「え?」という表情で絵理沙の顔を見る。

 

「桜井先輩ですよね?入って下さい」

 

「え?あ、ああ……」

 

 絵理沙の誘いに正雄はゆっくりと部屋の中へと入ってきた。

 正雄が部屋へ入ったのを確認すると絵理沙は扉を閉める。

 部屋に入ると先ほどまであんなに叫んでいたはずの正雄が言葉も無く無言で周囲を見渡す。そんな正雄に絵理沙が問いかけた。

 

「桜井先輩は何で綾香ちゃんを綾香ちゃんじゃないって疑っているのですか?」

 

 正雄は「こいつに話したのか?」という驚きの表情で俺の方を見る。

 というか、俺もまさか絵理沙が突然そんな質問をするなんて予測もしていなかった。

 

「ほら、余所見しないで下さい。なんで綾香を綾香では無いんじゃないかって疑ったのかを聞いてるのです」

 

 正雄も予想もしなかった絵理沙の質問だったのだろう。いつもは見せないくらいに緊張した表情を浮かべる。そしてニ・三度深呼吸をするとやっと口を開いた。

 

「冗談だよ冗談……」

 

 正雄は絵理沙と視線を合わせないように明後日の方向を向いてそう言った。

 

「あれ?冗談?冗談なのですか?」

 

「ああ、冗談だ……ちょっと悟の妹をからかってみたかっただけだ。魔法じゃあるまいし、悟の妹が悟に替わるなんてあるはずないだろ」

 

 正雄の奴……さっきはあんなに俺を悟じゃないのかって疑っていたのに、絵理沙にしては逆にそんな事はありえないとか言い出している。

 何故だ?

 ……

 これは……もしかすると正雄の奴……

 

「へえ…なるほどねぇ…そうだよね?ここにいる綾香ちゃんが本当は綾香ちゃんのお兄さんだなんてあるはず無いよね?」

 

「ああ、そう思うだろ?俺はちょっと悟の妹をからかっただけなんだ」

 

「ふーん……からかっただけなんだ?ってさ……ここまでそんなに懸命に追っかけてきて扉まで強引にでも開けようとしてたのに、それを「冗談だった」とかで済まされるとでも思っているのですか?」

 

 絵理沙はそう言うと正雄の睨みつけた。

 

「何だよ?本当に冗談は冗談なんだ。俺がここまで来たのは話の途中で悟の妹が逃げ出したからだ。冗談だったと伝えたかったんだ」

 

「へぇ…そうなんだ……」

 

 絵理沙は納得のゆかないという表情で正雄を見た。

 正雄はそんな絵理沙から視線を外すと出入口へと方向を変えて歩き出す。

 

「それじゃそういう事だから俺はもう帰る。おい、悟の妹、変な事を言って悪かったな」

 

「あ、はい……」

 

 やはりそうなのか……

 ここで俺はある事に気がついた。

 正雄は俺を悟だとは疑っている。しかしその事は正雄以外の人間、他人に知られたくないんだ。

 要するに……絵理沙に対して今、綾香の姿をした俺は本物の綾香であって悟ではないとかばってくれているんだ……でもどうして?正雄の目的はなんなんだ?

 

 正雄は出入口の取っ手に手をかけた。そして開けようとするが扉がびくともしない。

 

「何だこれ!?開かねぇぞ?どうなってんだよ!?」

 

 正雄は少し慌てた表情で俺達の方へ振り返った。

 それを見ていた絵理沙は不気味な笑みを浮かべる。

 

「先輩……人間なんて単純な生き物ですよね?嘘をついているとすぐにわかる。桜井先輩が思っている事を正直に言わない限りこの部屋からは出してあげませんからね」

 

 また俺の予想していなかった事態が起こった。しかし絵理沙の奴、何を考えてるんだよ!?

 確実に解った事は、正雄は俺の正体を暴いて不特定多数の人間に暴露をしようとしている訳じゃないという事。

 それならここでわざわざ正雄を引き止める事の方がまずいんじゃないのか?

 

「おい、何だその言い方は?俺が嘘だと?お前おかしいんじゃないのか?どうせ鍵でも閉めたんだろ?早く開けろよ」

 

「ふふふ……あははははは」

 

 絵理沙は突然大声で笑い出した。

 笑いながら少しずつ俯き、額を右手で押さえると肩を震わせた。

 その仕草から何か不気味なものを感じる。

 

「何だよ気持ち悪いな」

 

 冷静に対応しているつもりだろうが、正雄は完全に動揺している。俺にはわかる。

 そしていつもの絵理沙からはとてもじゃないが想像のつかないこの態度と表情……

 一体何を考えてこんな事をしているんだ?俺が疑われた事を誤魔化す為にやらなければいけない事なのか?

 

「おい、悟の妹。こいつおかしいだろ?どうにかしてくれよ」

 

 正雄は冷静さを装い俺にむかって話をする。

 

「え、絵理沙?どうしたの?」

 

 俺が声をかけても絵理沙は反応しない。

 絵理沙の奴……こんな事で誤魔化してくれているつもりなのか?

 俺がそう思っていると絵理沙は突然笑うのを止めた。

 そしていきなり笑顔になる。

 

「っと……まぁ冗談はこの位にしておいて」

 

「え?な、何だそれ?おい悟の妹!こいつやっぱおかしいだろ!?」

 

 正雄は先ほどとは別の意味で動揺している。

 というか今の絵理沙の急な態度の入れ替わりには俺もかなり驚いた。

 絵理沙は笑顔のまま正雄の横へツカツカと歩み寄る。

 

「桜井先輩、まぁそこのソファーにでも座って下さいよ」

 

「いや、俺はもういいから、この部屋から出たいんだよ」

 

「駄目ですよ?だってまだ綾香ちゃんを疑ったままでしょ?」

 

「だからそれは冗談だって言っただろ……」

 

 この後、絵理沙から予想もしなかった一言が発せられた。

 

「冗談?何を言ってるんですか?桜井先輩の予想通りここに居る綾香ちゃんは本当は悟君なんですけど?」

 

「「え!?」」

 

 俺と正雄は同時に驚きの声を上げた。

 

 まさかの笑顔で暴露!それも絵理沙が!?

 

「え、絵理沙!?な、な、何を言ってるんだ!」

 

 俺は動揺してつい男言葉を使ってしまった。

 

「大丈夫よ悟君、桜井先輩にだったらばれても大丈夫だから」

 

 何の確信があるのだろうか?絵理沙は笑顔でそう言った。

 

「おいおい……冗談だろ?悟の妹が本当に悟だと?そんな事ありえないだろ」

 

 先ほどまで俺を疑っていた正雄が信じられないという表情で俺の顔を見る。

 綾香が悟【俺】じゃないかって疑ってはいたが、実際にそれが事実だと言われてしまい、その事実を逆に信じたく無い状態になっているのだろうか。

 

「あれ?桜井先輩どうしたんですか?そんなにおどおどしちゃって。らしくないですよ?」

 

「いや……待ってくれよ、さっきお前はこいつは【悟】だって言ったよな?それって本当に本当なのか?冗談じゃないのか?俺を騙してる訳じゃないのか?」

 

 正雄は絵理沙に向かって質問をどんどんとぶつける。

 

「私が桜井先輩を騙すと何かメリットでもあります?私は本当の事を言ったのです」

 

「そ、そうか……」

 

 ここで数秒の沈黙……

 誰も何も言わない時間……

 俺も何を言えばいいのかわからない……

 認めればいいのか?今ここに存在する綾香は俺【悟】だと。

 だが俺の心の中で何かがそれをさせようとしない。正雄に真実を教えたくないからか?

 

「悟君、そんなに深刻にならなくっても大丈夫だよ?桜井先輩は悟君の味方だから……」

 

 絵理沙は不安そうな表情を浮かべているだろう俺に、笑顔でそう言った。

 しかし何だろう?落ち着いて絵理沙を見ると何かが違う。いつもの絵理沙じゃない気がする。

 そうか!俺は気がついた。今の絵理沙の笑顔は本当の笑顔じゃない。

 どこか不自然さがある。本当の絵理沙の笑顔は……もっとかわいい……と思うし…だよな…

 頭の中に絵理沙の満面の笑みを思い浮かべる俺。

 ……うが!って待て!何で俺は絵理沙の笑顔を妄想してんだよ!

 ってなると……そうかもしかして!輝星花きらりに!

 

『君もなかなか洞察力があるね。関心しました』

 

 俺の頭の中に直接語りかけてくるこの声は輝星花きらり!?

 やっぱり絵理沙は輝星花きらりに指示されて動いていたのか!

 

 俺はその瞬間絵理沙を見た。

 すると絵理沙にも輝星花きらりから思念がいったのだろうか、俺の方を向くと今度は自分の意思でやさしくニコリと微笑んだ。

 というか……絵理沙の笑顔はやっぱり可愛いよな……

 

『そんなに絵理沙の笑顔が好きですか?』

 

 うわ!そうだ!こいつ俺の思考を読むんだった!

 

『勝手に人の思考を読み取るな!』

 

 俺は頭の中で怒鳴った。怒鳴ったていうのかなこれ…

 

「お兄ちゃん、もう出てきていいよ……っていうか出て来いよ!」

 

 絵理沙がそう言うと奥にある野木の机の下から野木一郎が登場した!

 待て!なんで机の下から出てくる!?っていうかそこに最初からいたのかよ!

 

「こんにちは、野木一郎です」

 

 そして出てきて一言目がそれかよ!この状況で返事をする奴がいると思うのか!?

 

「あ、こんにちは、三年の桜井です…」

 

 正雄……お前って奴は……

 っていうか普通は驚かないか?なんでそんなに冷静なんだよ……

 

「さて、桜井君にはこれから色々と秘密を共有して貰わなければいけません。ちょっとお付き合い頂きますがいいですか?」

 

 野木はそう言うと椅子に座り腕を組んだ。

 

「野木先生、ちょっと質問してもいいですか?」

 

「ん?何でしょうか?桜井君」

 

「野木先生はさっきまでのやり取りを全て聞いていたんですか?」

 

「もちろん」

 

「じゃあ先生もここにいる悟の妹が悟だと言い切れるという事ですか?」

 

「もちろん。今そこにいる姫宮綾香さんは姫宮悟君です」

 

「………」

 

 正雄は無言で俺を見た。

 言葉に出さなくってもわかった。「本当に悟なのか…」って言いたいのだと。

 もう野木の登場の仕方なんてどうでもいい、正雄に俺からも一言いっておくべきだろうな。

 

「正雄、ごめんな……俺はお前をずっと騙してた。俺はこんな外見だけど、本当はお前の言う通りで【悟】なんだ」

 

「……マジか……でも何でだよ?どうしてだよ?わかんねぇ……なんでお前がそんな姿になってるんだよ?今更かもしれないが信じられねぇよ」

 

 正雄は頭を抱え込んで俯いた。

 

「桜井君、こうなった経緯いきさつを説明する前に……見てもらいたいものがあります」

 

 野木はそう言うと俺に向かって手招きをしている。

 俺はゆっくりと野木の横まで歩いてゆく。すると野木は俺の肩に手を置いた。

 

「桜井君、よく見ていなさい」

 

 その瞬間、俺の姿は【姫宮悟】へと変化した。

 それを目の当たりにした正雄は目を点にしている。

 

「え!?さ、悟!?な、何だ?どうなってるんだ!?なんで悟がここに?何だ?悟が悟の妹に化けてたのか?悟の妹と悟の精神が入れ替わってた訳じゃなかったのか?」

 

 流石の正雄もこれにはかなり驚いた様子だ。

 先ほどまでの落ち着いた口調が嘘の様にしどろもどろしている。

 あと、正雄は俺と綾香が精神の入れ替えで替わっていると思っていたらしい。

 

「桜井君、まぁ落ち着きなさい。僕がちゃんと説明をしてあげますから」

 

「これが落ち着いていられるか!目の前で人が、悟の妹が悟に変化したんだぞ!?」

 

「そうだね、桜井君を納得させる為には実際に魔法を見せるべきだと思ったから今君の目の前で使ってみたんだ」

 

「ま、魔法?魔法だと!?」

 

「はい、魔法です。ちなみにこの魔法は人物の見た目だけを変化させる魔法です」

 

 その後、野木は正雄に今までの経緯をすべて説明した。

 そしてその途中で野木は俺に思念を送ってきた。

『桜井正雄は君の味方になってくれる。秘密を他人に暴露するような人間じゃない。だから安心していいから』と。

 

 ここに俺の秘密を知る人間が初めて誕生した。

 

 

 ☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 放課後の屋上で正雄と二人……

 日は西の山並みへ沈み空は暗くなりかけている。

 

「……お前も大変だったんだな」

 

「ああ…マジで大変だったよ…本気でだぞ?」

 

「わかってるよ。普通に考えてもありえない事だもんな……」

 

 特別実験室で野木と絵理沙の二人で正雄に今までの経緯けいいを説明し終わった後、俺と正雄は二人で屋上へ来て話をしていた。

 正雄も流石に納得せざる得なかった様子で、俺が一度死んで妹と間違って生き返ったと知った時にはかなりショックも受けていた。

 でも最後には綾香の姿をした今の俺が悟だという事実をちゃんと受け入れてくれたんだ。

 その時に絵理沙と野木も魔法使いだという事実を正雄に教えた。

 ただ、もしも他言した場合には野木が正雄にかけた魔法が発動して正雄の記憶から野木と絵理沙と俺に関わる事が消えるという条件付きでだが。

 しかし一つだけ話さなかった事がある。それは野木が本当は女だという事だ。

 野木が本当は輝星花きらりだという事実は伏せたままで話は終わった。

 

「正雄、あのさ、流石に悟って呼ばれている所を誰かに聞かれるとヤバイからさ、【綾香】って呼んでくれないか?」

 

 俺がそう言うと正雄の顔が少し赤くなった。

 

「ちょっと待てよ、それはマズイだろ?」

 

 正雄の赤い顔を見て何故か俺の顔まで熱くなってきた。

 

「何がマズイんだよ?俺は今は【綾香】なんだぞ?だから名前で呼べって言っただけだろ!何で顔を赤くしてんだよ!」

 

「待てよ!だから何で名前で呼ばなきゃいけないんだって?普通に【姫宮】でいいだろ?それとも名前で呼んで欲しいのか?」

 

「え?あ、そっか…いや…俺はどっちでもいいんだけど」

 

「だったら【姫宮】って呼ぶよ。綾香なんて呼んだら下手をすると周囲の奴らに俺とお前は付き合ってるとか思われるだろ?」

 

 そう言って話す正雄の顔は相変わらず少し赤い。

 照れてる正雄の姿なんて今までの付き合い見たことなかった。

 こいつ女にモテるから結構すれてるんだって思ってたけどもしかして……

 

「正雄」

 

「何だよ」

 

「彼女とかいないのか?」

 

「……いると思うか?というか……お前知ってるだろ?」

 

「……いや、でもあれだよ、いっぱい告白とかされてたんじゃないのか?」

 

「馬鹿、告白はされた事はある!しかしOKした記憶は一度たりとも無い」

 

 それってそんなに威張って言える事なのか?

 

「勿体無い。俺なんて告白された事なんて一度も無いのに」

 

 俺がそう言うと正雄は楽しげな顔で俺を見る。

 

「な、何だよ?」

 

「あるだろ?告白された事」

 

 その一言で思い出した!俺はこの姿で大二郎に告白されてるじゃないか!

 

「あ、あれは違う!あくまでも男の時!男の時だよ!」

 

「あははは!そうか?でもまぁ告白には違いないだろ?」

 

「それはそうだが……初めて告白されたのが男で、それでもって大二郎とか……ありえねぇよ」

 

「まぁそう言うな。大二郎だって本気で…ってお前、大二郎の事、どうするんだよ?」

 

 そうなんだよな…それも問題なんだ。

 俺は正雄にこの前あった事を正雄にすべて話してみた。

 デートはするけど付き合えないという事も含めて全て。

 

「そうか……でもなぁ…あいつはお前に惚れてるし、本当に諦めるかどうか」

 

「あーもういいよ!正雄、もうその話題には触れるな!大二郎の件は何かあったら相談するから!それより何で正雄は告白されてるのにOKしないんだよ?」

 

「ん?俺か?俺はどうも女っていうのが苦手なんだよ。どう対処すればいいのかわかんねーし。デートとか面倒なだけだろ?」

 

「そんなもんか?俺は彼女が欲しかったけどな……」

 

「俺はいいんだよ。お前が気にする事じゃないだろ」

 

 何かこれ以上こんな話をしてても仕方ない気がするな……

 下手に話すとまた大二郎の話題をふられそうだし……

 あ、そうだ。こいつ何で俺が【悟】だって思ったんだ?やっぱりあの自転車置き場の件か?

 

「あのさ、そういえば何で俺が【悟】だって解ったんだよ?」

 

「あ、ああ…それは…」

 

「それは?」

 

「あまりの矛盾で……かな?」

 

「矛盾!?」

 

「まず、姫宮は記憶喪失なはずなのに覚えている事と忘れている事があまりにも極端すぎるんだよ。ましてやさっきの一彦との会話みたいにまるで【悟】本人かの様に説明まで出来るって、まぁお前は悟だから説明できて当たり前なんだけどな」

 

「なるほど……まぁ俺も一彦君のあれはちょっとヤバイ気もしてたんだよな…」

 

「でも……おかげで一彦は空手を辞めないって言ったんだ。ここはお礼を言うべきだな。ありがとう」

 

「あ、いや、いいってそんな事……」

 

「あとは、性格や運動神経や学力があまりに違いすぎる」

 

「え?あっと…それは?綾香と違うって事だよな?」

 

「それ以外に誰と比較するんだよ!」

 

「あはは……ってそんなに違うのか?」

 

「お前は自分の妹の事も知らないのか?お前の妹はやさしくって明るくってお淑やかな性格なんだよ。今のお前は明るく元気なだけだ。それと運動は普通には出来ていたが今のお前は運動神経が良すぎなんだよ。記憶喪失で運動神経が良くなったなんて聞いた事もない。あとな、お前の妹は一年でも上位ランクでいつも掲示板に掲示されるレベルだったのに今は一切掲示されない。っていうかお前……中間は何位だったんだよ」

 

「え?えっと……百位かな?」

 

 俺がそう言うと正雄は頭を抱えた。

 

「馬鹿すぎだろ…」

 

「仕方ないだろ!俺が勉強なんて出来るはず無いじゃないか!それに勉強が出来なくっても疑われたりしないぞ?」

 

「それは記憶喪失で学力が落ちるっていう事がありえるからだ。まぁともかく本当のお前の妹と今のお前はあまりにも違いがありすぎる。俺みたいにホクロまで覚えてなくっても十分に疑われる余地を持っている。気をつけろよ」

 

 確かに…正雄の言う通りかもしれない。

 今回ばれたのが正雄だったからまだ助かった。これが他の人間だったら……

 そうだ、茜ちゃんだって少し疑っているんだ……気をつけないとな。

 

「これからは俺も気をつけるから……正雄も何か指摘があったら言ってくれ」

 

 俺がそう言ってため息をつくと正雄が俺の肩にぽんと手を乗せた。

 

「わかった。お前が元の姿に戻るまで俺もお前を手助けするよ。あ、あと……」

 

「ん?あと?」

 

「例え俺と話す時であっても口調は女にしておいた方がいいぞ?誰かに聞かれるとまずい。それも違和感を覚える行為のひとつだからな」

 

 うわ……輝星花きらりと同じような指摘をされてしまった。

 

「う、うん…わかった。私も気をつける」

 

「よしOKだな。おい、日も暮れて暗くなってきたしもう帰ろう」

 

 確かに話に夢中になっている間に周囲はかなり暗くなっていた。

 何時の間にかグラウンドから聞こえていた運動部の掛け声も聞こえなくなっている。

 しかし、こうして改めて正雄を見るとあれだな……

 こいつって見た目はカッコイイのに本当はすれてなくって純粋な男なんだな。

 実はこいつすっげーかわいい性格なのかも……

 俺が正雄の彼女になってやったらなんか面白そうだよな。

 ……あれ?

 なんか…今……

 やばい!俺は男らしからぬ思考をしていた!

 何がかわいい性格なんだよ!?何で俺が正雄の彼女なんだよ!

 やばいぞー油断してた!俺は男だ、俺は男なんだぞ……

 男と付き合うなんてありえないだろ……っていうよりそういう妄想する時点でアウトだろ。

 ああ、神様お願いです。俺から男の気持ちを奪わないで下さい!

 

「おい姫宮、何やってんだ?なんで両手を組んでお祈りみたいな事をしてるんだ?」

 

「あ、いや、べ、別に何も無い!気にしないでいいから!」

 

「それってかなりオカシイ奴に見えるからやめとけ」

 

「な!?お…わ、私はおかしくないよ!ちょっと色々な事情あるだけだから!」

 

「色々な事情?」

 

「あー!聞かなくっていい!また話すから今は聞かないで下さい」

 

「そうか?それじゃまあいいか……」

 

「それじゃあ正雄、帰ろう!」

 

「ああ、帰ろう」

 

 俺は正雄と二人で屋上を後にした。そして下駄箱に到着。

 

「またな、姫宮」

 

 正雄はそういうと三年の下駄箱へと歩いてゆく。 

 俺はその背中を見ながら無意識にある言葉が出てきた。

 

「正雄、本当にありがとう……」

 

 正雄はその言葉に反応して後ろを振り向く。

 そして笑顔で言ってくれた。

 

「俺とお前は友達だろ?」

 

「うん……そうだね……」

 

「今日はある意味俺達の記念日になったな」

 

「うん!そうだね!」

 

「じゃあな!姫宮!」

 

「うん、じゃあね!正雄!」

 

 正雄は小恥ずかしそう少し顔を赤らたまま三年の下駄箱へと消えて行った。

 私は心から思ってる。私の事を心配してくれて……本当にありがとうって…

 

 

 ☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 特別実験室

 明かりを点けていない真っ暗な部屋の中に声がする。

 

「ねぇ輝星花きらり、本当にあれで良かったの?」

 

「ああ、あれでいいんだよ」

 

 暗い部屋の中で野木と絵里沙が二人が中央のソファーに座り話をしていた。

 

「でも……あの桜井正雄とかいう人間は本当に私達や悟君の秘密を話さないっていう確信はないんだよ?」

 

「大丈夫だよ。桜井君は悟君の事を考えてくれている。確かに真っ先に綾香が悟じゃないかって疑ってかかってきたが、それはもしも綾香が悟君だった場合、その秘密が他人にばれるのを守ってあげたいっていう考えがあったからだ」

 

「そうかな?」

 

「なんだい?絵理沙はそうは思わないのかい?いくら魔法が使えないといっても桜井君が純粋な心の持ち主だってわかっただろ?」

 

「まぁ……それはそうなんだけど…」

 

「大丈夫だよ。あの二人ならね」

 

「………」

 

「悟君も桜井君と秘密を共有出来た事によってきっと今よりも生活が楽になるはずだよ」

 

「……そうかもね」

 

「もちろん僕たちも今まで以上にちゃんと手だすけを……う…ぐぐ…くそ…こんな…時に…」

 

 突然野木は胸を左手で押さえながら前かがみになり悶え苦しみだした。

 

「何?どうしたの?胸なんて押さえて」

 

 絵理沙は慌てて立ち上がると野木の側に寄る。

 

「お願いが…ある…え…絵理沙……そ、そこの……薬を……取って……」

 

 野木は右手を震わせながら自分の机の上を指差した。

 絵理沙は慌てて机の横へ駆け寄る。机の上には白い薬の容器が置いてある。

 

「え?こ、これ?」

 

 絵理沙は野木の机の上にある白い薬の容器を手に取った。

 

「あ、ああ……それ…早く…」

 

 絵理沙が白い容器を持って近寄ると野木の様子がおかしい事に気がつく。

 

「ねえ、輝星花きらりに戻ってる!変化が解けてるよ!ねえ!大丈夫なの?」

 

「だ、大丈夫だから……薬を……」

 

 輝星花きらりは絵理沙から薬を受け取ると蓋を開けて青い錠剤を何錠か取り出した。

 そしてそれを水も無しで一気に飲み込む。

 

「き、輝星花きらり?」

 

「大丈夫……落ち着いたから……」

 

 こんな所で魔法力が……絵理沙に見られてしまったのは失敗だな……

 悟君だけじゃない。僕自身も早くどうにかしないといけないな……

 

 続く

少し長くなってしまい申し訳ありません!なんと13000文字超えでした…

そして続きもがんばって執筆中です!これからも宜しくお願いします。

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