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第18話 大宮バトル!?救世主は俺だ!後編

 俺は先ほどの輝星花きらりとの一件があり、何とも言えないもやもやした気持ちのまま色々なお店を巡っている。

 

 しかし、どういう事だろうか?俺の予想を反して絵理沙はともあれ、あの輝星花きらりが買い物を楽しんでいる。

 おかげで先ほど俺に聞こえなかった言葉を聞き出せないでいた。

 とは言いつつ正直もうどうでも良くなっていたりもするのだが。

 

 俺はというと…女性物のブランドとか、流行とか、可愛い基準とか、化粧品とか、根本的な物の考え方とか…その他の女性が興味を持つと思われ事についての知識が未だに無いに等しい。というか興味が無い。

 余程、大宮と言えば某大手カメラ屋や某大手パソコンショップ等があるし、そっちで最新ゲームをチェックする方が楽しい。

 まぁ、あれだ、基本的には彼女達の話にはついて行けず、なるべく距離を置き会話をしないように努力をしているという状況だ。

 話しかけられた場合?そんな場合はその場凌ぎでごまかしている。

 ちなみに学校ではこういう話題は専門的にはなりずらい、すぐに会話も終わる傾向にあるし、あと重要なのが動くラジオの佳奈ちゃんだ!殆どの場合は佳奈ちゃんがいればどうにでもなる!よって毎回すごく助かる。

 

 しかし、これで再び確信出来たぞ。俺はやっぱり男なのだと!

 …でも今は女なんだよな…それも『綾香』なんだよな…

 俺もこのままじゃダメなんだよな。少しは女の気持ちが理解出来るようにならなければ、この先いつかボロが出るかわかんねー。

 とは考えてはみるが、いくら俺が懸命に理解しようとしても一生理解出来ないような気がしてならない。考えるだけでも鬱になりそうだ。

 やはり早く魔法力を貯めて、綾香を探し出して元の俺に戻らないといけないという事か。

 しかし疲れたな…早く帰りたい…

 

「どうしたの?綾香?そんな深刻な顔しちゃって。疲れちゃったの?」

 

「わ!」

 

 いきなり茜ちゃんが俺に声をかけてきた。

 俺は驚いて思わず声を出してしまった。

 

「何を驚いてるの?またぼーとしちゃって…大丈夫?」

 

 茜ちゃんはそう言うと心配そうに俺を見ている。

 

「あ、うん…大丈夫だよ」


 俺は心配させてはダメだろうと思いそう返事をした。

 しかし、茜ちゃんは心配そうな表情のまま変化しない。

 

「でも、いつも一緒に買い物に来ている時と違って今日はあまり楽しそうじゃないじゃないよ…本当にどうしたの?」

 

 なるほど…そうか…綾香は茜ちゃんと一緒に何度か大宮にお買い物にも行ってるんだ。

 そうなると今日の俺はとてもじゃないがか楽しそうには見えないだろう。

 だからいつもの綾香と違うし、おかしいと感じているのだろう。心配になるのもわかる。

 やばいな…さっきの件もあるし、こんな調子だとまた疑われかねない。

 輝星花きらりに注意しろとか言っておいてまた俺が心配されるとか…何やってんだろう。

 ここは何か自分をフォローしておかないと…

 

「えっと…それは…そう、さっきぶつけたオデコが痛くって!ごめんね。別に楽しくない訳じゃないんだよ?でも今日は絵理沙さんや輝星花きらりさんが主役なんだから。茜ちゃんも二人に優先的に付き合ってあげてよ。私はこんな調子だし、ちょっと無理そうだから」

 

 俺は見繕みつくろうように言った。

 

「わかった、でも…調子が悪いのなら休んだ方がいいよ?私、綾香が心配だよ」

 

 茜ちゃんは更に心配そうな顔でそう言った。

 なんて優しいんだろう…茜ちゃん…本当にこの子は良い子すぎるよな…

 

「あ、大丈夫!本当に大丈夫だから。ほら見て、オデコも大分よくなったし。茜ちゃんは絵理沙さんと輝星花きらりさんの買い物の続きにつきあってあげて!」

 

 茜ちゃん。その優しい気持ちはありがたいし嬉しい。

 だけど取り合えず今は俺をほっておいて欲しいんだ!茜ちゃんを騙しているという罪悪感がぁぁ!

 と心の中で叫んだ。

 

「でも…私は綾香にも楽しんで欲しいし」

 

 俺の心の叫びなど聞こえている訳でもなく、心配そうに俺を見る茜ちゃんは中々絵理沙達の所には戻ろうとしない。

 やばい、相当に心配されているらしい。これ以上心配されるのもあれだし、ここは休憩すると言って少し離れよう…

 

「えっと…じゃあ私はここの近くにあるコーヒーショップで休んでていいかな?私は特に買い物もないし」


「休んでる?そうね、私も綾香はちょっと休んでた方がいいと思う。あ!そうだ…」

 

 茜ちゃんは携帯を取り出すと時間を確認した。そしてバックから何か紙切れを取り出す。

 

「綾香、お昼まであと三十分くらいあるから、休憩するのならこのクーポンの使えるコーヒーショップに行くといいよ」

 

 茜ちゃんはそう言って俺にクーポン券を手渡した。

 俺はクーポン券を確認した、どうやらこの券はコーヒーのタダ券の様だ。

 行きつけのコーヒーショップなのだろうか?発効日がそんなに昔ではない。

 

「ほら、そのお店はここから少しだけ歩くけど、そこの近くのお店でランチしようかと思ってるから…それにその券を持って行けばタダだしね」

 

 茜ちゃんは笑顔でそう言った。

 そうだな…まぁここを離れるには丁度いいし、タダというのも財布に優しくっていい。

 ここは茜ちゃんの提案を受けよう。

 

「そうね、私そのお店で待ってようかな…少し休めば良くなるだろし…タダ券もいいしね!」

 

「うん!私も絵理沙さん達とお買い物をしてからすぐに行くから」


 茜ちゃんにやっと笑顔が戻った。

 

「あ、うん、でも別にゆっくりして来ていいからね?まったり待ってるから」

 

 俺はそう言いながらクーポンをお財布に入れた。

 そして俺は「じゃあ行ってるね」と言って歩き出した。

 すると茜ちゃんの声が俺の背中ごしに聞こえる。

 

「綾香!伝えたい事はちゃんと言うんだよ?私は綾香じゃないんだし、綾香の体調までわかんないんだからね!あとあまり人に気を使いすぎちゃだめだよ?」

 

 茜ちゃんは両手を腰に添えてまるで体育教師の様な格好で俺に向かってそう言った。

 しかし、その表情は笑顔だった。

 

「うん、ありがとう」

 

 俺は振り返り笑顔でそう返事をした。茜ちゃんは俺の返事を聞くと小さく頷き、絵理沙達の居る所へとやっと戻って行く。

 

 こんな良い子が将来は本当に俺の彼女になるのかな…俺はふとそんな事を思った。

 俺は茜ちゃんが好きだし、茜ちゃんも俺が好きなはずだ。相思相愛なのだからそうなるのかもしれない。

 だだけど…何故だろう…俺と茜ちゃんと付き合うという想像がつかない。

 俺は茜ちゃんの事を考えているはずなのに、そう思う俺の頭の隅に絵理沙の顔が思い浮かんでいた…

 何で絵理沙の事も考えてるんだよ…そう思うと何故か今度は大二郎や正雄、そして真理子ちゃんや佳奈ちゃん、輝星花きらり、まさかの野木一郎まで思う浮かんでしまう。

 おいおい!何だ?何で次々と…俺は結局は誰でもいいのか?いや違うだろ?

 ふう…疲れるから今は考えるのはやめよう。

 

 俺は茜ちゃんが戻って行った事を確認してクーポン券に書いてあるコーヒーショップに向かった。

 

 

 ☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 クーポンの裏に書いてある地図を見る。

 どうやらコーヒーショップは駅から多少離れた場所にあるみたいだ。

 俺は茜ちゃん達と買い物をしていたお店の入っている雑居ビルから外に出て大通りの歩道を歩き出した。 

 ここから真っ直ぐコーヒーショップに向かう為には人気の無い裏通りを行く事になる。大回りをすれば大きな通りしか通らない。

 普通の女性であれば後者を選ぶ所だろうが、俺はどちらにするか迷う事も無く早く着く直線で行く事にした。 

 裏通りには古びたゲームセンターなんかもあって、変な奴らが居るかもしれないような通りだ。でも流石にこんな午前中からはいないだろ。

 いたとしても俺は小さいし、どうせ小学生か中学生だと思って相手をしないだろうし。

 まぁ、あれだ、危ないロリコンおじさんなら狙ってくる危険もあるが…取り敢えずは何かあればダッシュで逃げれば大丈夫だろう。と考えていた。

 

 俺は歩道から幅二メートル程度しかない脇道を覗き込む。人気はない。俺はその通りに入って行った。

 ちなみに裏通りと言えどもそんなに真っ暗という訳では無いし、開店しているお店もある。一般人だって普通に通っている。別に危険な道という訳ではない。

 単に俺が考えすぎているだけなんだ。 

 

 裏路地をしばらく進むと後ろから人の気配を感じた。俺はふと後ろを振り返る。

 するとそこには輝星花きらりの姿があるじゃないか!

 

「き、輝星花きらり!?」

 

 俺が驚きながら名前を呼ぶと輝星花きらりは笑みを浮かべて俺の横へ並んだ。

 

輝星花きらり何でここに!?」

 

 おかしい。こいつは絵理沙達と一緒にお買い物をしていたはずなのに?

 ま、まさか!こいつ俺をストーキングしてたのか?

 

「私?私も綾香さんと一緒に休憩しようかと思いまして」

 

 そう言いつつも本当はストーキングじゃないのか?俺と一緒に休憩?絵理沙は?茜ちゃんは?二人は知っているのか?

 俺がおどおどしていると輝星花きらりはふぅと小さく溜息をついた。

 

「綾香さん、大丈夫ですよ。二人にはちゃんと断って来てますし、ほらこれ」

 

 輝星花きらりはそう言いながらコーヒーのクーポン券を俺に見せた。

 

「あ…それって?」

 

「そうです。茜さんに貰いました。休憩するのなら綾香さんと一緒にコーヒーでも飲んでて下さい。って言われまして」


 輝星花きらりはそう言うとクーポン券を仕舞い込んだ。

 

「へぇ…そうなんだ…」


 うーん…なんだ?ちゃんと断って来ていると言われても何か安心が出来ない。何でだ?

 

「そうなんだ…って?あれ?私が一緒だと何か不服なのですか?」

 

 あれ?もしかして…口調が少し野木一郎に戻ってきている?っていうか違う!今のこいつのイメージが野木一郎っぽくなってるのか!

 やばい、野木一郎のイメージ…こいつに何かされそうな嫌な予感がする…

 

「ちょっと不服かも…」

 

「おやおや?私は今は輝星花きらりですよ?もう一人の私じゃない」


 輝星花きらりは微笑みながらそう言う。


「え!?」

 

 え!?まだ心が読めないんじゃ?この俺の心を読んだかのような答えは何なんだ!?

 

「驚かないで下さい。私は別に綾香さんの心を読んでませんよ?私は綾香さんの考えを予想しているだけです」

 

 予想?という事は何だ?俺の考えは予想出来る程に単純って事なのか?

 

「あれです、作り笑顔って疲れますし、この表情が一番楽なんです」


 こいつ…マジですっげーな…だが残念なのは可愛いし綺麗けど変態だという所だ。

 

「お前、よく俺の考えている事がそこまでわかるよな…」

 

「綾香さん、口調、気をつけて下さい」

 

「あ…」

 

「まぁここでは大丈夫でしょうけど、一応気にかけて下さいね」

 

 しかし、まさか輝星花きらりが来るとは思ってもいなかったな…

 まぁいっか…今は野木一郎の姿じゃないんだし、こいつに襲われたりしないだろう。 

 待てよ…考えてみればこいつは容姿端麗で美人で可愛いぞ?変な奴がいたらこいつが真っ先に狙われるんじゃないのか!?

 ほら、あそこにいかにも怪しげな三人の男が立っている…もしも奴らに絡まれたらどうする?

 いや待て悟。あれだ、もし絡んで来たとしてもこいつは魔法使いだ。自分で何とかするはずだ!

 いやいや待てよ、今は魔法が使えないんじゃないのか?というか人前で魔法は使わないかもしれないぞ…でも逃げる事は出来るだろ…

 ………

 ちょっと考えすぎか?普通に考えてもそうそう絡んで来ないだろ。

 

 っと…俺が輝星花きらりを見るとすでに怪しい三人の男達に絡まれているじゃないか!

 おい待て!早速絡まれてるじゃん!

 

 輝星花きらりに声をかけて来たのは赤いリストバンドの男。身長は170センチ

くらいか?ちょっと痩せている。その横には茶色いジャンパーの体格の良い大柄な男がいる。身長は180はありそうだな。そしてその後ろに金髪の男が立っている。体の線が細くってこいつが一番弱そうだ。

 こいつら…どうみても年上だよな…大学生か?

 

「彼女?何してるの?こんな所を一人で歩いちゃってさー」

 

 赤いリストバンドをつけた男が輝星花きらりの真横に立ちそう言った。

 

 くそ、気安く声をかけてきやがって!空気読めよ!このままじゃ面倒な展開になるだろうが!

 あとな、一人じゃない!二人だ!お前は算数も出来ないのか!

 俺はそう思いながら男を睨んだ。

 

「一人じゃないです、二人ですよ?」

 

 輝星花きらりはそう言いながら俺を指差す。

 

「あれ?もう一人いたんだ?小さすぎて見えなかった」

 

 茶色いジャンパーを着た男がそう言いながら馬鹿にした笑みを浮かべると、俺を指差した。

 

「あれれ?こいつ小学生?もしかして君が保護者?いいじゃん!こんなのほっておいて俺達と遊ぼうよ」

 

 赤いリストバンドの男が俺を見ながら言った。

 こんなのだと!?俺は物じゃねーぞ!

 何だこいつら…輝星花きらりをナンパなんかしやがって…

 それに綾香の可愛さがわかんねーとかありえねーし!

 

「申し訳ないのですが、私達は忙しいので貴方達とは遊べません。それに人に対して『こんなの』とか見下すような言葉は失礼だとは思わないのですか?今後は言い方に気をつけた方が良いですね。それでは失礼します」

 

 輝星花きらりはズバリとそう言い切ると三人の男を無視して歩き出した。

 しかし金髪の男が先回りして行く手を塞いだ。

 

「待ってよ、いいじゃん?どうせ暇なんでしょ?」

 

 何だよこいつら、しつこい奴らだな。性根しょうねが腐ってるな。

 俺一人なら蹴りでも入れて逃げるんだが…輝星花きらりも一緒だしな…

 

「前に立たれると邪魔です。私達は急いるのでほっておいて頂けないですか?」

 

 輝星花きらりは行く手を塞いだ金髪の男を睨みながらそう言った。

 しかし男は平然とその場に立ったままだ。

 本当に生意気な奴らだし俺も何か言ってやろう。

 

「ちょっと!そこを通して貰えませんか?本当に邪魔なんですけど?」

 

 俺がそう言うと茶色いジャンーバーの男がいきなり俺の頭の上に手を置いた。

 

「え?何だって?チビ、お前は一人で行けよ!俺はお子様に用事は無いんだよ!俺達はこの子にだけ用事があるの」

 

 男は俺にそう言いうと俺の頭から手を離し輝星花きらりを囲んだ。

 その瞬間!『ドゴ!』っという鈍い音がしたと思うと輝星花きらりの前に立っていた金髪の男が「げほげほ…」と咳込みながら膝をつく。そして男は苦しそうに胸を押さえた。

 

「ほう…ミゾオチという部位はそれほど力を入れなくてもかなりのダメージを入れられるのですね」

 

 輝星花きらりはそう言うと膝をついた男を避けて再び歩き始めた。

 

 な、何だ?輝星花きらりは何をやってるんだ!?いきなり殴るとかこいつらに喧嘩を売ってるのか!?

 それにミゾオチに拳を食らわせるとか、女の行動じゃねーぞ!やばいこいつら怒るぞ!

 

「ごら!何すんだよ!女!」

 

 赤いリストバンドの男がかなり怒っている。

 ほら見ろ!やっぱり怒ったじゃないか!仲間が殴られれば怒るって予想出来ないのか?

 しかしどうする?こっちが先に手をだして…正当防衛になるのか?これは?

 

「何でしょうか?貴方達が綾香さんに暴言を吐いたのが悪いのでしょう?人に対して差別的な用語を使わない。そんな事すら理解出来ないのですか?」

 

 え?俺に対しての暴言?まさか俺を気にしてくれたのか?

 でもその言い方は火に油を注ぐようなものだぞ!?

 

 膝をついていた男が輝星花きらりを睨みながらゆっくりと立ち上がった。

 そして赤いリストバンドの男が無理矢理に輝星花きらりの右手首を掴んだ。

 

「おい女!お前が先に仲間に手を出しグフェ!」

 

 赤いリストバンドの男が話を始めたと思ったら『ボス!』と言う重い音が聞こえた。

 見れば輝星花きらりの左ストレートが赤いリストバンドの男の左頬を捉えている!

 しかし男はふらつきはしたが倒れない。

 輝星花きらりの奴は何やってるんだ。そんな踏み込んでない、それに体重も乗ってないパンチで威力が出るはずもないじゃないかよ…

 

「おや?やはり力の無い私のパンチではそんなにダメージはありませんね」

 

 輝星花きらりは左拳を見ながらそう言った。

 

「ごら!女!もう許さねぇからな!」

 

 先ほど殴られた男が激怒している。

 これ以上こいつらに喧嘩を売るな!危険になったらまず逃げるんだよ! 

 そう思っていると茶色いジャンパーの男が輝星花きらりをいきなり羽交い絞めにした!

 

「何をする!離しなさい!」

 

 輝星花きらりはそう言ってジタバタと暴れている。

 やばい!早く逃げろ!って叫ぶべきだったか!

 

「おい!輝星花きらりを離せ!」

 

 俺は男達に怒鳴った。


「あー?ガキは黙ってろ!」


 金髪の男が俺に向かって怒鳴り返してきた。


 くそ…もう売ってしまった喧嘩だ。いまさら引ける筈も無い!こうなったら!

 俺は助走をつけると輝星花きらりを羽交い絞めにした男の背中上段に跳び蹴りを食らわせた。

 『ドガ!』とヒットした音は聞こえた。しかし、男はまるでアメフトをしているかの様な体格の良さで、俺の蹴りをまともに受けたのにびくりともしていない。

 それ所か全体重を乗せて跳び蹴りを放ったせいでバランスを崩して俺が倒れてしまった。

 

「おいおい!こいつ空手技つかいやがったぞ!?こんなにちっこいのに跳び蹴りしやがった!」

 

 茶色いジャンパーの男は輝星花きらりを羽交い絞めにしたまま俺の方を見て言った。

 くそ…こいつ…マジでアメフトやっていたのか?体重をかけるバランスが良すぎる…

 俺の攻撃を受けた瞬間、バランスを取りやがった…

 

「お、おい!女の子に暴力なんて男のする事じゃないだろ!」

 

 俺は倒れたまま怒鳴った。

 

「おいおい?何を言ってるんだ?こいつが先に俺達に手を出したんだぞ?それにお前も跳び蹴りしたじゃねーか!言えるのかよ?」

 

 金髪の男がそう言った。

 確かに…輝星花きらりが先に手を出したのは事実だ。俺も跳び蹴りした。

 しかし、先にちょっかいを出したのはこいつらだ!

 

「お前らがナンパして来たんだろ!」

 

 俺はパンパンとワンピースについた汚れを叩きながら立ちあがった。

 くそ…どうする…輝星花きらりは羽交い絞めされたまま…しかしあの男は今のままじゃ倒せない。

 輝星花きらりの表情がだんだんと焦りの表情に変化しているな。

 やばいな…どうする?本当に面倒な事になりやがって!くそー…

 

「こら!離しなさい!何をするんだ!」

 

 輝星花きらりの口調が変化している…やっぱり輝星花きらりも焦ってる。

 

「お前が生意気だからお仕置きするんだよ。それとも何だ?泣いて謝って俺達と付き合うか?」


金髪の髪の男は輝星花きらりの顎を右手で持ち上げるてそう言った。


「誰が君達みたいな外道な人間に謝るものか!」


 輝星花きらりは金髪の男に向かってそう怒鳴った。

 何だ?今の台詞…すっげー男らしいじゃねーか。って関心してる場合じゃないな。


「それじゃあ仕方ねーな」

 

 輝星花きらりに先程攻撃を食らった金髪の髪の男が右手に拳を作った。

 その男の視線は輝星花きらりのミゾオチに。やばい!こいつマジで輝星花きらりに手を出す気か!

 

「おい!やめろ!輝星花きらりに手を出すな!」


 俺はもう一度怒鳴ってみた。

 

「やめないね、俺達はこの女にお仕置きをするんだよ!もしかしてお前もお仕置きされたいのか?」

 

 くそ…今のままだと戦っても勝ち目がほぼ無い。厳しいぞ…どうする…

 

「ほらいくぞ?歯を食いしばれよ?」


「この!」

 

 輝星花きらり咄嗟とっさに羽交い絞めにした茶色いジャンパーの男のすねかかとで蹴った。

 

「痛てぇ!」

 

 茶色いジャンパーの男がかなり痛がっている。さすがにすねは鍛えような無い。だから相当痛いはずだ。

 しかし羽交い絞めは取れない!そして金髪の男の拳が輝星花きらりに迫る!

 

「おら!俺にした事をそのままお返しだ!」

 

 俺の今の位置は輝星花きらりの位置よりすこし後方、茶色いジャンパーの男のすこし後ろだ。

 この位置からだと輝星花きらりを殴ろうとしている金髪の男には、蹴りやパンチはとてもじゃないが届かない。

 羽交い絞めの男には攻撃出来るが、結果はさっきと同じになるだろう。

 こうなったら俺の瞬発力を生かして輝星花きらりを羽交い絞めにした男の横を抜け、輝星花きらりと金髪の男との間に突っ込んで奴のパンチをガードするしか無い…

 思ったら即行動!俺は勢いをつけて輝星花きらりと金髪の髪の男との間に頭部をガードしながら飛び込む!

 その瞬間!頭部に激しい衝撃が走った!瞬間目の前が真っ白に…そして気が付くと俺は地面に横たわっていた。

 やべ…頭がすげー痛い…ガードし損ねたんだな…

 

「な、何だこいつ?俺のパンチに自分から突っ込んできやがったぞ?」

 

「あ、綾香さん!大丈夫ですか!おい君達!何をするんだ!暴力は問題解決の手段にはならないんだぞ!」

 

 くそ…意識が朦朧とする…今日は最悪の日だ…ろくな事が無い。

 しかし…俺とした事がちゃんとガードしたはずだったのに…甘かった…

 地面に叩きつけられてしまって倒れているが倒れるまでの記憶にない…意識が飛んだか…

 体まで動かない…まだ輝星花きらりが危険なままなのに…

 

「お、おい、どうする?こいつ動かないぞ?もしかして死んだんじゃ?」

 

 先ほど俺を殴った金髪の男の声だろうか?かなり焦りながらそう言っている声が聞こえた…

 どうやら俺が倒れたおかげで輝星花きらりに対する攻撃は止んだようだ。

 

「君達!早く私を離しなさい!綾香さんにもしもの事があったら責任を取れるんですか!」

 

 輝星花きらりの怒鳴り声も聞こえる。

 

「何を言ってやがる!元はと言えばお前が悪いんじゃないか!」

 

 赤いリストバントの声が頭に響く…まぁそれは正しい…

 

 その瞬間、『ドゴン!』という重低音が響いた。

 

 ドゴン?何かすごい音が聞こえたぞ?これは輝星花きらりのパンチの音じゃない…何だ?

 俺が薄っすらと目を開けると、俺の目の前には先ほど輝星花きらりを羽交い絞めにしていたあの体格の良い男が白目を剥いて倒れているじゃないか。

 

 な、何だ!?何があったんだ!?この男が白目を剥いて倒れた!?

 俺は驚きのおかげか、すこし動けるようになった。

 そして懸命に顔を上げる…まだ目が良く見えない…しかし誰かがいるのがわかる…

 

「綾香さん!大丈夫ですか!?」

 

 そう言って輝星花きらりが俺を柔らかく抱え上げてくれた。

 薄っすらと目をあけると本当に心配そうに俺を見る輝星花きらりの顔が目の前にある。


「馬鹿…お前と絡むと…今日はろくな事がない…」


 俺は何とか小さな声でそう言った。


「ごめん…悟君…」


 輝星花きらりはとても小さな声で、唇を噛みながら目に涙を浮かべて言った。

 何だよ輝星花きらり、そんな顔が出来るのかよ…

 それじゃまるで本物の女みたいじゃないか…あれ?そっか、こいつ本当の女だ…

  しかし、誰だ?誰が俺達を助けてくれたんだ?

 

「おい!お前ら!俺の姫宮綾香に手を出してただで済むと思うなよ!」

 

 何処か聞いたような声が聞こる。というか…この台詞を吐く人物は俺の知る限り一人しかいない。

 

 『ボグ!ボガ!』激しい打撃音が頭に響く。

 俺は目の前で繰り広げられている光景を見ようと視線を声のする方向に向けた。

 薄っすらとだが見える…体格の良い男が、一人で二人の男を相手に喧嘩している姿が…

 

「…大二郎?」

 

 そう、それはやはり大二郎だった…見間違うはずもない。

 

 大二郎が何でここに…

 

「おら!ヘタレ!女に手を出せても、俺には手を出せないのかよ」

 

「くそ!なめやがって!」

 

 大二郎の挑発にのった赤いリストバントをした男が大二郎に突っ込んでゆく!

 大二郎は男の拳を素早く左にかわすとその男の脇腹に右手刀を入れた!

 『ドス!』という鈍い音がすると男は苦痛で顔をしかめる。そして体が右へ傾むき動きが止まった!

 大二郎はすかさず体を反転させて今度は男の背中に右肘を連続で叩き込む!

 『ガゴ!』という音と共に男は苦痛の表情を浮かべ前のめりに地面に倒れた。

 

「お、おい、な、何だよお前は!」

 

 一人残った金髪の男は相当に焦っている。

 

「さっきも言っただろ?俺の姫宮綾香に手を出してタダで済むと思うなよってな!」


 大二郎は腕組みをしながら金髪の男に向かって言った。

 

「え?な、何だ?もしかしてこの女、お前の女なのか!?」

 

 金髪の男はそう言いながら輝星花きらりを指差す。

 

「え?違う!その子じゃない!その子に抱きかかえられてる方だ!」


 大二郎は俺達方を見ながらそう言った。

 

「え?まさかこのチビ?」

 

 金髪の男はあっけにとられている。

 

「え?ちょっと待てよ、こいつって中学生じゃないのか?」

 

「いや、俺と同じ高校の後輩で一年だ」

 

「こ、高校生?こんなチビなのにか?」

 

「チビは関係ないだろ」

 

「待てよ、すっげー童顔じゃないか」

 

「それがどうした?」

 

「どう見ても幼児体型っていうやつだろ!?」 

 

「それのどこが悪い?」

 

「胸もねーぞ!」

 

「お前は胸で人を判断するのか?」

 

「待てよ!もう一人の女の方がどう見てもいいだろ?」

 

 大二郎の顔がだんだんと引きつってきている。

 

「おい、お前…姫宮綾香の良さが何もわかってねーだろ」

 

「わ、わかるはずねーじゃねーか!何でこんなのが…」

 

 大二郎は金髪の男に向かって歩き始める。

 金髪の男はジリジリと後退する。

 

「お前なんかに姫宮綾香の良さをわかって欲しくもないわ!!」

 

 大二郎は目に見えない凄まじいオーラを放ちながら金髪の男と距離を一気に詰める!

 金髪の男は地面に転がった二人を横目で見ながらどんどんと後ろへ後退してゆく。

 地面には男が二人横たわったままだ。

 

「おい、そろそろフィナーレだ」


 なんという格好いい台詞だ…というか大二郎に似合ってない…

 

「待て!ちょっとタイム!」 

 

 金髪の男はそう言うと両手を懸命に振りながら大二郎の前進を止めようとした。

 しかし大二郎は躊躇する事も無く渾身の前蹴りを放った!金髪の男は避ける事も出来ず正面から蹴り受ける!

 

「うわぁああ!」

 

 『ドフ!』という鈍い音と共に男は叫びながらふっとんだ!

 

 大二郎の奴…強い…流石というか…すさまじい破壊力だ。

 それに以前よりも動きがかなり素早くなってる…

 こいつ…マジですごく練習がんばったんだな…男の時の俺でももう勝てないかもしれない…

 

「大二郎…」

 

 俺は小さな声で大二郎の名前を呼んだ。

 意識も先ほどよりもしっかりしてきた。だが、まだ思うようには体が動かない…

 しかし、体にダメージ感はもうないくなった…この回復力は魔法の影響なのか?

 

「姫宮!大丈夫か!?くそ…俺がもっと早く来てれば…」

 

 大二郎は慌てて俺達に駆け寄ると悔しそうな表情で言った。

 そんな顔すんなよ…来てくれただけでも助かったのに…こいつも真面目だよな…

 

「大二郎…助けてくれてありがとう」

 

 俺は大二郎に向かって素直にお礼を言った。

 

 何でここに大二郎がいるのかはわからないが、大二郎が来なかったらどうなってたかもわからなかったな…

 

「姫宮、大丈夫か?」

 

「うん、ありがとう。もう大丈夫だから」

 

 俺がそう言うと大二郎は少しほっとした表情を浮かべた。

 

「よかった…お前に何かあったらどうしようかと思ったぞ?で…えっと?あの…あんた、姫宮綾香の友達か?」

 

 大二郎は俺を抱きかかえている輝星花きらりにそう聞いた。

 そうだよな。大二郎は輝星花きらりの変身した野木一郎との接点はあるが、輝星花きらり本人とは接点が無い。

 

「私は綾香さんのお友達です。今日は危ない所を助けて頂いてありがとうございました」

 

 輝星花きらりはいかにも作った笑顔でそう言った。

 

「そうか、友達か!それにしても危なかったな?最近の不良は暴力に訴えるのか」

 

 うーん…とてもじゃないが元の原因が輝星花きらりだなんて言えないな…

 俺がふと周囲を見渡すと何時の間にか男達は居なくなっている。

 謝りもせずに逃げるなんて男らしくない奴らだが、逆にこれで喧嘩の原因が大二郎にばれる事は無くなった…

 

「しかし!俺がたまたま通りかかったからよかったが…本当に危なかったな」

 

 確かに…俺一人じゃ三人には勝てなかったのは事実だ…

 それどころか、だれ一人として倒せなかった…俺は自分で勝手に突っ込んで勝手にダウンしてしまった…何てダメな男なんだろう。自分の無力さに涙がでそうだ…

 

 しかし何だ?よく見れば大二郎は学生服じゃないか。大宮に学生服で何をしに来たというんだろう?

 

「綾香さん、もう頭は大丈夫ですか?」

 

 輝星花きらりの優しげな言葉が聞こえる。そして何だろうか?さっきまで感じていなかった柔らかい感触が全身に…

 ふと視線を輝星花きらりの顔から胸へと移すると…こいつ!自分の胸を俺におもいっきり押し付けてやがる!

 って待て?何だか俺の胸も変な感触が…そう思い俺の胸を見ると胸の上には輝星花きらりの右手が胸を包むかのような形でのっているじゃないか!

 

「うわぁ!」

 

 俺は咄嗟に胸の上の手を叩き落とすと慌てて立ち上がった。

 

「え?お?な、何だ?姫宮、具合よくなったのか?」

 

 俺が突然声を出して立ち上がったので大二郎はかなり動揺している。

 輝星花きらりは野木一郎っぽい怪しい笑みを浮かべて俺を見ている。

 

「おい!輝星花きらり!お前!な、何するんだよ!」

 

「姫宮?ど、どうした?大丈夫か?顔が真っ赤だぞ?あと言葉遣いが…」

 

 大二郎はオドオドと俺を見ている。

 

 し、しまった!思いっきり男言葉で話してしまったぁあぁぁ!誤魔化さないと!

 

「え、いや、ごめんなさい、ちょっと動揺しちゃって…」

 

「え?動揺って?でもまぁ…言葉は…俺は男っぽい姫宮綾香も…す、好きだぞ?」

 

 大二郎は何故か顔を赤くしながらそう言った。

 

「え!?いや、あの!えっと…わ、私は女の子だし、やっぱり男っぽいのはダメだと思うの」

 

 俺は何を言っているんだ…

 

「俺はそういうのは気にしないぞ!」


 うーん…まぁいいか…

 

「あ、ありがとう…あはは」

 

 大二郎だから俺が本当は悟だって思ってもいないだろうし、疑いもしないだろう。大丈夫かな?

 

 俺は大二郎と話ながらふと視線を輝星花きらりに向ける。すると輝星花きらりが笑みを浮かべて俺を見ていた。

 くそーこいつ…今まで大人しくしていたと思ったら…見た目は女でもやっぱり中身は野木一郎だったのか!

 俺が動けないのを良い事に俺の胸を散々触った挙句あげく、俺に対女性抵抗力が無いのを知っていてそのでかい胸まで押しつけやがって!

 さっきのあの女らしい仕草や表情は嘘だったのか!?って…待てよ…よく見ればさっきまで感じていた野木一郎のイメージが無くなってる様な…逆に今の方が女っぽい?

 あー!待て待て!何だ?それじゃあ何で俺にあんな事を?ま、まさかやっぱり趣味!?俺を弄るのが趣味なんじゃ…

 

 輝星花きらりはそんな事を考えている俺から視線を外すと大二郎に声をかけた。

 

「あの、お取り込み中すみません、私、野木輝星花のぎきらりと言います。お名前を教えて頂けますか?」

 

 大二郎ははっとした表情になりそして慌てて輝星花きらりの質問に返事をする。

 

「え、えっと、俺の名前は清水です。清水大二郎。姫宮と同じ高校の三年です」

 

 大二郎は緊張した声でそう言った。

 

「清水大二郎さんですか、本当に助けて頂いてありがとうございました」

 

「え、いや、トンでもない。男として当たり前の事をしただけです」

 

 何だよ、大二郎が何かかっこよさげな事を言ってるじゃないか。

 

「いえ、誰にでも出来る事じゃないです。正義感とそして勇気、賞賛に値します。まさに私達の救世主でしたよ」

 

 輝星花きらりも大二郎にヨイショをしているかの如く褒めている。

 

「あ、いやまぁ…こう言うといけないかもしれないけど、本当は姫宮綾香を助けたくって夢中でやった事なんだ」

 

 大二郎はそう言うと俺の方を見た。

 おいおい、俺を助けたくってとか言われると何かすっげー恥かしい…お、お礼でも言うか…

 

「あ、ありがとう大二郎」

 

 輝星花きらりが俺をちらりと見た。そして笑みを浮かべる。

 

「清水さん、それって愛ですね!綾香さんへの愛情ではないでしょうか?」

 

 輝星花きらりにそう言われて、大二郎は顔を真っ赤に染めた。

 

「え、いや、あ、あ、あの、っていうか…俺が…一方的に姫宮を好きなだけで」

 

「ううん、きっとその愛情があれば綾香さんもきっと振り向いてくれますよ、ね、綾香さん」

 

 輝星花きらりはそう言うと微笑ながら俺を見た。

 ね!って何だよ!お前は何を考えているんだ?俺と大二郎を引っ付けたいのか?

 俺は悟だぞ?それを知っていてそういう行動をしているのか?

 俺はどうやっても大二郎とは付き合えないんだぞ。それは俺が男だという事と、本当の綾香が戻って来た時の事を考えると…しかし…

 

「私は…えっと…」

 

 大二郎に対して何て言えばいいんだよ。傷つけたくないし…

『嫌い』これは言えない。別に嫌いじゃないし…

『好きだけど今は…』これを言うと超勘違いされる!

『まだちょっと考えたいから…』期待させちゃダメだろ!

『嫌いじゃないけど色々あって付き合えない…』これは?普通か?

 

「私、大二郎の事は嫌いじゃないよ…だけど付き合うとか…そういうのは出来ない」

 

 よし!言った!言ったぞ!

 俺は大二郎の顔色を伺った。きっと残念な表情をするかと思っていたら大二郎は柔らかい笑みを浮かべた。

 

「よかった…」

 

 え?よかった?

 

「俺、姫宮に嫌われてなくって良かった…俺は…お前に嫌われてないだけでも嬉しいぞ」

 

 え?何だよ!大二郎!俺が考えた反応と違うじゃないか!それじゃすごくいい奴じゃないか!

 助けてもらって、それでも付き合えないとか言う俺が一番ダメじゃないかよ!

 

「清水さん。愛は育んでゆくものですよ。ですから慌てないでもいいと思いますよ。清水さんの愛はきっといつか綾香さんに届きます。私も応援してます」

 

 輝星花きらりは笑顔で大二郎に向かってそう言った。大二郎も小さく頷く。

 

「ありがとう…野木さん。俺の願いが本当に叶うかなんてわからない…だけど、やれるだけがんばるよ」

 

 おい!輝星花きらりは何で大二郎を応援してるんだ!っていうか待て!俺がここに居るのに何故そういう話をする!

 普通は俺が居ない時にそういう話をするんじゃないのか!?聞いてるこっちが恥かしいじゃないか。

 

「清水さん!がんばって下さいね!」

 

 輝星花きらり…何が『がんばって下さい!』だ… 

 

「おう!」

 

 大二郎も『おう!』とか元気に返事するなよ…

 

 あーもう…頭が痛い・・・

 何だこれは?何かおかしい事になってしまった気がするぞ。

 やっぱりこいつらと一緒にいると絶対に何かがある…

 しかし…この後どうなるんだ?どうなるんだよ…

 

 

 ☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 大宮から戻る電車の中…

 俺の横には何故か緊張した顔の大二郎が座っている…

 

 茜ちゃんも絵理沙も輝星花きらりも居ない。

 

 大二郎と二人っきり…

 

 はたから見れば初心うぶなカップルに………は見えないか?俺は小さいからな。

 

 ガタンガタンと電車が揺れる。

 

 もうすぐ久喜駅…大宮からずっと無言の大二郎…

 

 何て言えばいいんだろうか…すごく気まずい…

 

 っていうか、何で俺が大二郎と同じ電車で、それも二人で一緒に帰っているんだ?

 

 くそ…輝星花きらりめ…まさか茜ちゃんまで…

 

 続く

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