第16話 大宮バトル!?救世主は俺だ!前編
ついに土曜日がやってきた。
俺は朝食を食べ終えて綾香の部屋に戻って来ている。
まさか茜ちゃんと絵理沙と三人で大宮に遊びに行く事になるなんてな…
綾香になった時はどうやって生活していけば良いのかすごく悩んでたのが嘘の様だ…今はでは綾香として普通に茜ちゃん達と接する事が出来る。
しかし、昔の俺ならば女の子、それも好きな子と一緒にお出かけなんて事になったら、前日の夜は緊張で眠れない…ってなってたはずなんだが…
今回はそんな事はまったく無かったよな。それどころか逆にぐっすりと眠れてしまったくらいだ…やっぱり綾香としての生活に慣れたからか?だから女が苦手じゃなくなってきたのかもしれないな。まぁともあれいっぱい寝れたお陰で今日は気分が爽快だ。
俺はそんな事を考えながら窓を開けると空を見上げた。今日は秋晴れで風も無くとても暖かい。
いい天気だな…今日は暖かいしそれほど厚着をしてゆく必要はないな…
俺は窓を閉めると洋服ダンスへ向かった。頭の中で何を着てゆこうかと考えながら妹の洋服ダンスを開ける。
今俺が何気なく開けている妹の洋服ダンス…最初はこのタンスを開けるのにはかなりの抵抗があった。しかし今ではすっかり自分の物の様になっている…実はつい先日このタンスの中の全ての服を一度試着してみた。結構俺ごのみの服が多かったという印象だ。しかし中には俺の知らない服も結構あって少し驚いた。
後は、やっぱりというか綾香はズボン系の服を持っていなかった。
俺の言動のせいなのかは知らないが、ここまで徹底して持っていない思わなかった。
唯一あったのは学校のジャージのズボンだけだ。
ちなみに今日着てゆこうかと思っているワンピースも俺は綾香が着ている所を実際には見た事がなかったものだ。いつ買ったのかも知らない。
俺は洋服ダンスの中からそのお気に入りのワンピースを取り出した。そして着替えてると姿見で服装の確認をし、髪をついでに整えついでに軽くリップクリームを塗った。
出発準備万端になった所で時間を確認すると時計は八時四十五分になっている。待ち合わせ時間は九時半だ。
ちなみに今日の待ち合わせの駅は近くの私鉄の駅では無く、少し離れたJRの駅でそこまで行くには自転車で約二十分くらいかかる…
出るにはちょっと早いな…しかしここに居ても仕方無いし…俺は少し考えてやはり出かける事にした。
俺は「いってきまーす」と母さんに声をかけて自転車で駅へ向かう。
なんて暖かい日なんだ…学校へ行く日はいつも寒いのに…いつもこんな暖かい日でいろ!って言うんだよ!と無理な事を願ってみる。
しかし、風を切って走るのって気持ちいいよな!気分爽快になれるよな!このままサイクリングにでも行きたい気分だ。
順調に漕いでいると俺はふと思った。全力で駅まで漕ぐと何分で到着出来るんだ?
悟の時は最高記録が十分だが、綾香だとどうなんだろう?よし!何分で駅まで漕げるかチャレンジだ!
「うぉぉぉぉ!」
俺は自転車を力いっぱい漕ぎスピードを上げた。
☆★☆★☆★☆★☆
「はぁはぁ…」
俺は息切れしていた。そう、思いっきり自転車を漕いだからだ。
しかし俺の凄い自転車漕ぎテクニックとママちゃりとは思えない程のハイスピード走行のお陰でなんと十一分で到着した!
これはすごい!すばらしい記録だ!今度綾香に教えてやろう!
俺が綾香だった時にJRの駅まで自転車で十一分で到着したんだぞ!って…そんな事を言えるはずねぇじゃないかよ!俺は超無意味な事をしてしまったのかもしれない…
と…まぁそれはいいとして…
うーん…それほど余裕を持ったつもりじゃなかったのだが…やっぱりと言うか、集合時間の三十分前に着いてしまったじゃないか。
俺は周囲を見渡して見たがもちろん二人は来てない…気配すらない。
仕方ないな…待つか…
俺は待ち合わせの場所で二人を待つ事にした。
待ち合わせの駅は夏休みに茜ちゃん達と来たタイエーの横にある。
まだ朝も早いのと土曜日という事もあって駅前には殆ど人はいない。
ちなみにこの駅前にはコンビニも無く、そこで待つ事も出来ない…超暇だな…
数分経って再度一度周囲を見たがやはり気配すら無い。
ふと気が付くと先程までは誰も居なかったのに、何時のまにか隣りに女の子が立っていた。
見た感じからすると俺と同じ高校生か?その子は時計をちらちらと見て少しソワソワしている。
俺と同じで誰かと待ち合わせなのだろうか?友達とかな?それともデート?そう思っていると女の子はいきなり笑顔になり右手を大きく振った。
俺は女の子の視線の先を見た。すると別の女の子が手を振りながら走ってくる。友達か…
「もう!遅刻だよ!」と待っていた子が言うと「ごめんごめん…」ともう一人の女の子が言った。そして二人は仲良く駅へと消えて行った。
仲良くお出かけか…女っていう生き物は女同士でよくお出かけとかするものなかのか?
俺は男友達と一緒に何処に行くと殆ど無かったが…待てよ…俺が単純に友達と遊んでいなかっただけか?
ふと辺りを見渡すと先程までは数人程度は居たはずの人もどんどんと消えてゆき、周囲に俺以外に誰もいなくなった…
しかし…何で俺はこんな早い時間から、それも一番に待ち合わせ場所に居るんだっけ?
いつもの俺はどちらかと言えばさっきの遅れていた女の子の方だよな…自慢じゃないが結構時間にルーズだ。俺が男だった時には待ち合わせ時間のギリギリに到着するのが当たり前だった。なのにその俺がこんなに早く着くとか…俺ってやっぱり変わったよなぁ…
うーん…暇なせいもあって色々な事を考えてしまうぞ。
まだかな…
待つ事が慣れていない俺は数分ごとに辺りを確認する。しかし相変わらず視界に二人の姿はない。
あーあ…ギリギリに来ればよかった…
今更そう思っても来てしまったものは仕方がない。
くそ…おい俺ってもしかして茜ちゃんや絵理沙とお出かけが出来るから嬉しくてこんなに早く来てたりしてるのか?そりゃ茜ちゃんと絵理沙がセットで俺とお出かけなんて考えられないシチュエーションになっているが…しかし、それほど嬉しい!って事もないよなぁ…
いや待てよ…そうは思っても実は嬉しいのかも!?実際、茜ちゃんとお出かけするのって夏休み以来で久々だし…私服姿だってその時に一度見ただけで今日はどんなに可愛いの格好で来るのかなってちょっと期待はしている…
それに…絵理沙の私服姿も見たことないから絵理沙もどんな格好で来るのだろうって興味がある。
……おい悟…何だかんだと言っても結局は今日のお出かけを一番楽しみにしてるのはお前なんじゃないのか?
俺は自分にそう問いかけた。そして俺の結論はと言うと…『その通りかも』
いかん…正直かなり楽しみだぞ…
ま、待て悟、お前が一番楽しみって駄目だろ!?ま、待てよ…そ、そうか…きっと女の子と一緒にお出かけだからだ!そうだよな…俺は元々男なんだから女の子とお出かけするのが楽しみって当たり前だよな…
という事はだぞ?………もしかするとこれってデート…なのか?いや待て…今の俺は女になってる訳で…という事はデートにはならないのか?でもあれだよな?絵理沙は中身が男だって知ってるわけで…あーややこしい!
そんなくだらない事を考えていると誰かが俺の肩をぽんぽんと叩いた。
わ!誰だ!?
「え、絵理沙?」
俺は驚いて咄嗟に後ろを振り返った、するとそこには笑顔の茜ちゃんが立っていた。
「おっはよー綾香」
茜ちゃんは何時もの笑顔で俺に元気に挨拶をしてきた。
「あ!お、おはよう、茜ちゃん」
「綾香ごめんね、野木さんじゃ無くって」
「え?茜ちゃん?」
あれ…俺ってさっき振り返った時…咄嗟に『絵理沙?』とか言ってたかもしれない?
「え?あ、えっと…絵理沙さんの名前を出したのは別に意味あるわけじゃないからね!」
「あははは、どうしたの綾香?そんな事で慌てちゃって。おかしーよ?」
茜ちゃんは笑顔でそう言った。
「え…いや…あはは、そうだよね?ちょっとびっくりしちゃって」
「綾香ったらもー!落ち着きなさい!」
「は、はい…」
うーん…俺とした事が…しかし…
俺は茜ちゃんの私服姿を見た。うわー…茜ちゃん可愛いなぁ…
今日の茜ちゃんの格好は上が赤系のチェック柄のプリントチュニックで下にはジーンズだ。夏のTシャツ姿もいいけど、こういう格好もいいなぁ…
茜ちゃんの服装は派手さは無いけど落ち着いてる。俺は結構こういう服装は好きなんだよな。やっぱり私服姿の茜ちゃんは可愛い…俺はこんなに可愛い子に好かれてるなんて…
正直言って俺には勿体ないくらいだよな…ってまだ俺の彼女って訳じゃないか。
「綾香、もしかして結構待ってたの?」
「ううん…大丈夫、私も今さっき来た所だから」
「よかったー!何だか待ってたような感じだったから…それにしても相変わらず早いね。まだ約束の時間の二十分前だよ?綾香って本当に約束時間は守るよね」
茜ちゃんは俺がここに先に居た事が当たり前のようにそう言った。
え?そうなのか?俺はたまたまこの時間に来てただけなんだけど…綾香ってそんなに約束時間を守ってたっけな…
よく考えてみると俺と綾香と何処かで待ち合わせをしても綾香の方が絶対に先にいた…
そうか、俺がいつも時間ギリギリだから綾香が早い時間から待ってたっていう感じがなかっただけか…綾香の奴も俺が遅刻しても怒らないから何分待ってたのか解らなかったしな。
しかし…今度から約束したら時間は厳守だな…俺は今綾香なんだからな…とは言っても俺にはちょっと厳しいよな…今日ここにこの時間に居るのが奇跡のようなものだし…
「綾香、その服可愛いねー!そのベージュのワンピースにカーディガンすっごく似合ってるよ!」
茜ちゃんが俺の格好を褒めてくれた。
「え?あ…そっかな…ありがとう」
茜ちゃんは俺の回りをくるりと一周しながらジロジロと俺の服装を確認している。
「綾香、これって去年私と大宮に行った時に買ったやつだよね?やっぱり可愛いねー!私もあの時から絶対に似合うって思ってたんだよね」
え?これって茜ちゃんと綾香が一緒に買い物に行ったときに買ったものなのか…知らなかった…が…取りあえずは…
「えっと…そうだったっけ…私よく覚えてないの…ごめんね」
「あ、ごめん…そっか…綾香は昔の記憶思い出せない所があるんだっけ…ごめんね…私あまり考えないで言っちゃった」
茜ちゃんはすごく申し訳なさそうな顔で俺に謝った。
「ううん、大丈夫!そんなのいちいち気にしてたら話なんて出来ないよ?だから気にしないで!それよりもどんどん言って欲しいの…もっといっぱい色々な事を思い出したいから」
俺がそう言うと茜ちゃんは「うん、わかった!」と笑顔で返事をした。
そうこうしている間に待ち合わせ時間まであと五分になっている。
しかし今だに絵理沙は来ない…
「そろそろ時間だね…野木さん来るかな?」
俺が茜ちゃんにそう言うと茜ちゃんは何かを思い出したのか「あ!」と声を上げた。
「茜ちゃんどうしたの?」
「えっとね…綾香に言い忘れてたんだけど…」
「え?何?言い忘れてた?って何?」
「えっとね…」
茜ちゃんが話を始めようとしたと同時に「おはよう!」と声が聞えた。そして突然俺と茜ちゃんの間に絵理沙が割り込んで来た!
「うわ!」
俺は絵理沙が目の前に現れるなんて予想していなかったのもあって思わず驚いて数歩後退した。
「あ、おはよう、野木さん」
しかし茜ちゃんは寸前で絵理沙に気がついたのだろうか?驚く様子も無く笑顔で普通に絵理沙に挨拶をしている。
「おはよう、越谷さん」
絵理沙も笑顔で茜ちゃんに挨拶を返した。
「それにしても綾香ちゃん…驚かせた訳でもないのにそんなに驚くなんてヒドイなぁ…」
絵理沙は俺の方を向いてちょっと不満そうにそう言った。
何を言ってるんだこいつは…十分に驚かせてるじゃないか…
お前がいきなり目の前に現れたからびっくりしたんだろ!って言ってやりたい…が、茜ちゃんも居るし、ここは大人しく…
「え…ごめん、いきなり目の前に出て来たから本当にびっくりしちゃって…」
「そうなの?私は少し離れてた所から一度は二人に声をかけたんだよ?でも気がついてくれないから…あ!そっか!綾香ちゃんも越谷さんも会話に夢中だったんでしょ」
「え?あ…そ、そうかも…ごめんね」
「私も寸前まで野木さんに気がつかなくてごめんなさい」
俺が絵理沙に謝ると一緒に茜ちゃんも絵理沙に謝った。
「べ、別に謝らなくてもいいよ…二人とも悪い事をしていた訳じゃないし…」
絵理沙は謝られ慣れていないのか、すこし照れた表情を浮かべながら言った。
ここで俺は絵理沙の私服姿に目がいった。初めて見る絵理沙の私服…
絵理沙は青のプリントTシャツの上に黒のライダースジャケット、下はストレートジーンズを履いている。
こんなボーイッシュな格好も似合うんだ…悔しいけどかなり格好いいじゃないか…
しかし、私服姿の絵理沙はスタイルが良いのあるが、ぱっと見ただけじゃとてもじゃないが高校一年には見えない…十分大人でも通用しそうだ。
とは言っても絵理沙が本当に高校一年なのか怪しい所もあるんだけどな。
ふと絵理沙の方を見た時、俺は絵理沙の後ろにもう一人女性が立っている事に気が付いた。
あれ?絵理沙の後ろにいる女性は誰なんだ?なんで絵理沙の後ろに立ってるんだろう?単純に立ってるだけかな?
俺がその女性の顔を確認しようと思ったが、絵理沙が邪魔で顔を確認出来ない。
まぁいいや他人だろうし…そう思っていたら絵理沙がその女性の方へ振り返り声をかけた。
え?何だ?その女性は絵理沙の知り合いなのか?
絵理沙の知り合?知り合いというと…俺の頭の中にふとある人物の顔が想い浮かんだ。というよりもそいつしか思い浮かばない。
ま、まさか!無いよな…こんな場所に来てるなんて有り得ないよな…でももしかすると…
俺がその女性の顔を確認しようと数歩後移動した時、茜ちゃんがその女性にお辞儀をした。そしてその女性も軽く頭を下げる。
茜ちゃんも知り合い?俺がそう思った時、女性が頭を上げて顔が確認出来た…俺の予想は的中していた。
「野木さん、この方がお姉さんだよね」
「うん」
お姉さん…俺は近くに寄りその女性の顔をもう一度確認してみた。
間違いない…この茶色い髪に赤い瞳をした絵理沙と同じ顔立ちの女は…
「初めまして、私は野木さんのクラスメイトで越谷茜です。今日は宜しくお願いします。」
「初めまして、絵理沙の姉で野木輝星花です。こちらこそ宜しくお願いします」
何で輝星花がここに居るんだよ!
ズガーン!俺はでっかいハンマーで頭を殴られたような衝撃に襲われた…
おいおい…何でお前がここに居るんだよ…そして何だその格好は!?その口調は!?
俺の目の前には俺が想像した事もない本当の『女の子』の輝星花が居た。
輝星花はアーガイル柄のノルディックパープルのフレアワンピースに黒のレギンス、そしてブラウンのクシュクシュブーツを履いてる。そして事もあろうか薄くではあるが化粧までしているのだ!
何だその可愛い格好は…本当に輝星花なのか?俺は何度も顔を確認した。しかし前にいる女の子はやっぱり輝星花だった。
動揺した俺は思わず頭を抱えてしまった。
「どうしたの綾香?頭を抱えて?頭痛?」
茜ちゃんが頭を抱えている俺を見て心配したのか、声をかけてきた。
「い、いやちょっと…少し目眩が…だ、大丈夫だから」
「本当?大丈夫?顔色も少し良く無いような…」
心配そうに茜ちゃんが俺を見ている。
「う、うん…本当に大丈夫だから…心配しないでいいよ」
「綾香がそういうなら…本当に具合が悪かったら言ってね?」
そう言うと茜ちゃんは心配そうに俺を見ながらも輝星花と話を始めた。
しかし、何て言えばいいのだろうか?俺の前にいる輝星花…
何故今日ここに居るのかという事は後で考えるとして、今日の服がとても似合っていて可愛いのだ…
制服姿の輝星花も可愛いと思ったが、それどころの騒ぎじゃない…
だが、俺の中での輝星花のイメージと今日の輝星花のギャップが凄まじい。
俺が白衣姿の野木一郎ばかり見ていて、そちらの印象が強いからだろうか?
こんな可愛い格好の輝星花なんて輝星花じゃない!と思ってしまう位だ…
…待てよ?何で俺は絵理沙の私服姿にギャップを感じないのに輝星花の格好にこんなにギャップを感じてるんだ?絵理沙の私服姿だって今日始めて見たんだし、輝星花の制服姿だって見た事があるじゃないか…
そりゃ野木一郎の印象は強いが、輝星花の女性としての姿だって知らないって訳じゃないんだ…
そうか!口調だ…絵理沙の口調は普段通りだ…しかし輝星花の口調がまったく違うからか!女らしい話し方…そうだ、今日の輝星花は屋上で話しをした時と声のトーンまで変えている!
俺はちらりと輝星花を見た。すると輝星花は俺をじっと見ている。
そして俺と視線が合うとニコリと微笑んだ。俺は思わず動揺して目を反らしてしまった…
ドキ!今すっげードキッとしたぞ…
何で俺に向かって微笑むんだよ!くそ…笑顔もドキっとするほど可愛いじゃねーか…
………輝星花の笑顔でドキッっとした自分が何だか悔しかった。
そうだよ…何で輝星花がここにいるんだ?考えられるとすれば、絵理沙を一人で外出させない為か?監視の為なのか?それにしても輝星花の姿で来る必要は無いんじゃないか?それもそんな可愛らしい格好で…
野木一郎の姿とは言わないが別の誰かに変身すればいいじゃないか。
…もしかしてまだ魔力が回復してないのか?まぁいい…後で直接聞いてみるか…
「越谷さん、今日はすみません…私も行きたいなんて突然言ってしまって…」
「いえ、別に大丈夫ですよ!あの…野木さんにお姉さんは病弱で滅多に外出が出来なかったって聞いてます。それなら体調が良い時に外出しないとまた外出が出来なってしまいますから」
「ありがとうございます」
「途中で気分が悪くなったら言ってくださいね?無理はしないで下さいね」
「はい、お気づき頂きありがとうございます」
何というガチガチした固い会話だ…しかも輝星花が病弱?顔色も抜群に良いしどこが病弱なんだか…設定に無理があるだろ…
しかし輝星花の違和感のあるその口調…どうにかならないのか…聞きなれてないから気持ち悪いぞ。
そんなガチガチの二人のやりとりを見ていた絵理沙は呆れた表情で「ふぅ」と大きく溜息をついた。そして茜ちゃんに向かって言った。
「茜ちゃん、そんなに気を使わなくても大丈夫だからね?輝星花の病気はもうほぼ完治してるから心配しなくても大丈夫だよ。あと輝星花は私の姉だけど双子だから歳は茜ちゃんとも一緒なんだよ?そんなに固くなって敬語なんて使わなくてもいいんだからね?」
「そうですよ越谷さん。私も高校に行けていたら同じ学年なんですから、そんなに固くならないでくださいね」
「え?あ…そうだよね…うん、わかりました」
そう言うと茜ちゃんは不意に俺の方を見た。
「綾香、目眩は大丈夫?」
「あ、うん、大丈夫」
なんだ…いきなり見るから何かと思った…
「あのね綾香…さっき言いかけた事だけど…もう解っちゃったかと思うんだけど、今日は野木さんのお姉さんも一緒に来るって事だったんだ…言うの忘れててごめんね」
確かに言うのはすっごく遅すぎるしもう解ってるけど…
「あ、そうだったの?大丈夫だよ。私は別に気にしてないし、絵理沙さんのお姉さんなら私も歓迎するよ」
とか言っておけばいいか…
俺は再び輝星花をちらりと見た。するとまだ俺をじっと見ているじゃないか。
輝星花と視線が合った。すると輝星花は満面の笑みで俺に向かって挨拶してきやがった。
「綾香さん、今日は宜しくお願いしますね」
お前になんてお願いされたく無い!と言ってやりたい…
しかし何だよ…俺にもその笑顔にその口調かよ…まぁ茜ちゃんが居るから仕方ないが…
それにしてもこの姉妹はやっぱり卑怯だぞ…絵理沙は前々から可愛いと思ってたがまさか輝星花までここまで可愛いとは…
二人ともこれで魔法使いじゃなく性格が抜群に良かったら…すごくもてるだろうになぁ…
「はい…宜しくお願いします」
「あれ?あれれ?もしかしてお姉さんは綾香を知ってるんですか?」
輝星花が何の抵抗も無く俺に挨拶をしてきたせいだろうか、茜ちゃんは首を傾げながら輝星花にそう聞いた。
「ええ、実は綾香さんには一度お会いした事があるんです」
輝星花は笑顔でそう言った。
ここで俺に振るか…えっと…ここはどう答えればいいんだ?
取りあえず以前から知り合いだって事が解ればいいだよな?
「う、うん、そうなの…前に一度会った事があるの」
「へぇ…そうだったんだ…」
「あのね、私が一回だけ綾香ちゃんを自宅に招待した事があって…その時に紹介したの」
絵理沙が咄嗟にそう言った。
「ふーん…でも良かった!私って綾香にお姉さんが来るって言ってなかったしね」
「あはは…私も良かった…のかな…」
俺は取り合えずそう言うと再び輝星花をちらり見た。
何故だろう、今日の俺の視線はついつい輝星花の方へといってしまう。
まさか俺は本当に輝星花なのか疑う程に女の子らしい格好をしたこいつの事が気になっているのか?
そんな事を考えながらまた俺はまた輝星花の方を見た。すると輝星花も俺の方を見た。
やばい…ちょっと見すぎてるな…俺が輝星花をチラチラ見てるなんて思われたくないぞ…あいつの事だきっと何かのネタにするだろ。もしかすると強請られるかもしれない!やばい、やばいぞ…見ないようにしないと。
俺は輝星花の視線をかわすように咄嗟に下を向いた。
そうだよ…輝星花が気になるのはきっと物珍しいからだ。
もう十分に見たじゃないか…悟、もう見るのはやめとけよ?俺は自分にそう言い聞かせた。
「綾香ちゃん?突然俯いたかと思ったら何をぶつぶつ言ってるの?」
俺が下を向いているといきなり絵理沙が覗き込んで来た。
絵理沙の顔が俺の目の前に!
「うわ!」
俺は驚いてよろよろと後ろに数歩後退してしまった。
「綾香ちゃん…今日はやけに私にびっくりしてない?」
確かに…今日はやけに絵理沙にびっくりしてる…というかお前がそういうタイミングでいきなり現れるからだろ!
「綾香どうしたの?大丈夫?」
茜ちゃんが心配そうに言った。やばい…茜ちゃんがまた心配してる…
「え、うん…大丈夫!」
「そう?それならいいけど…今日の綾香ってちょっと変だよね…」
「え?えっと…普通だよ?」
やばい…このメンバーだと素が出そうだぞ…茜ちゃんには何度か俺が素に戻った姿を見られてるし…
あまりそんな姿を見られると俺が綾香じゃないんじゃないのかって疑われる可能性があるぞ…気をつけよう。
「あ!そうだ!茜ちゃん」
絵理沙が茜ちゃんに声をかけた。言葉に反応した茜ちゃんは絵理沙の方へと顔を向ける。
絵理沙?これって俺が困っていそうだから茜ちゃんに声をかけたのだろうか…
俺は絵理沙の方をちらりと見た。俺は絵理沙と一瞬目が合った。しかし絵理沙はすぐに視線を外した。
「どうしたの?野木さん?」
「えっと、そうだ!私を絵理沙って呼んでいいからね?野木さんだとあれでしょ?輝星花と私の区別がつかなくなっちゃうしね。あと姉の事も輝星花って呼んでいいからね」
「え?いいの?でもお姉さんを流石に呼び捨てには出来ないよ…」
「大丈夫だって!いいよね?お姉ちゃん」
「はい、私は名前で呼んでもらってかまいませんよ?輝星花って呼んで下さい。私も茜さんって呼びますから」
「そ、そうですか?じゃあ…輝星花さんって呼びますね」
「私も茜ちゃんって呼んでいいかな?」
絵理沙は笑顔でそう言った。
「うんいいよ!茜って呼び捨てでもいいんだよ野木さん。でもよかった…私ってどういう風に野木さんとお姉さんを呼べばいいのか迷ってんだ」
「ほらほら!また野木さんって呼んでるよ」
「あ!ごめんなさい、つい…」
何という光景だろうか…茜ちゃんと絵理沙と輝星花が仲良く話しをしている…
茜ちゃんと絵理沙と一緒にお出かけだけでも十分すごいシチュエーションかと思っていたのに…これは予想を遙かに超えた事態になったな…
しかし…大丈夫なのか?絵理沙と輝星花は…本当に茜ちゃんとお出かけとかしてもいいのか?人間と関係を持つのは駄目なんじゃないのか?
何かあってからじゃ遅いんだぞ?まったく…
って何で俺がこんな心配をしてやらなきゃいけないんだよ…
だいたいお前らが…
「…香」
ん?茜ちゃんの声?
「綾香!早くー!行くよー」
俺は茜ちゃんの声が聞こえてはっと我に返るとすでに三人は駅へと向かって歩いていた。
え?何時の間に!俺は慌てて三人を追っかけた。
「こら綾香!もう電車が来る時間だよ、何ぼーとしてるのー早くー」
「ご、ごめーん!」
くそ…絵理沙も輝星花も俺の心配もどこへやらかよ…
俺達は改札機を通りホームへと出た。
☆★☆★☆★☆★☆
大宮に向かう電車の中…
絵理沙と茜ちゃんはというと……丁度席が二つ空いたらしく仲良く並んで座っている。
それにしても楽しそうに話をしているな。
俺はというと…ドアの横で窓から流れる景色を見ていた。
「どうしたんですか?綾香さん」
後ろを振り返るとそのには輝星花が立っていた。
「どうしたんですかって…見たまんまだよ…外を見てるんだよ…お前こそどうしたんだよ…その格好とか…」
輝星花はちらりと絵理沙と茜ちゃんを確認すると俺の真横に立ち少し声を抑えて俺に話しかけてきた。
「悟君、君は何でお前がそんな格好でここに居るんだよって思っているだろ?」
輝星花は俺の目をじっと見た。
やっと何時もの口調に戻りやがった…
「何だよ、お前…俺の心を読んだのかよ?」
俺がそう言うと輝星花は首を横に振った。
「いや…実はまだ魔力があまり戻ってないんだよ…だからなのか僕は君の心は読めない状態なんだ」
「おい?もうそろそろ一週間経つぞ?魔力が戻らないって大丈夫なのか?」
「正直言うとあまり良い状況ではない。でも多分大丈夫だと思う」
「そうか…お前が大丈夫って言うのならいいんだけどな…あと、確かにお前の言う通りに俺は何で輝星花がそんな格好でここに居るんだよって思ってた」
輝星花は「ふぅ」と大きな溜息をついた。
「正直に言うと僕はこんな場所にこんな格好で居たくなんてないんだよ…」
「何だよそれ…どういう事だよ?」
「聞いてくれ、絵理沙がどうしても君達と一緒に大宮に行くって聞かなくって、僕はやめろと言ったんだ…だけど絵理沙はクラスメイトの子と悟君と一緒に遊びに行って何が悪いの!とか激怒してしまったんだ。僕は絵理沙とあまり離れると遠隔監視も出来ないから絵理沙だけで外出させるのは無理だと言ったんだよ。そしてら余計に怒ってしまって…」
何だそれ?そんな事を俺に言われても俺の知ったこっちゃないんだが…
輝星花は話を続ける。
「結局最後まで絵理沙は折れなくて、それで結局僕は絵理沙の監視の為に一緒について行く事になったんだが…」
「ふーん…それでわざわざ俺達と一緒に買い物に行く事になったのか?」
輝星花は自分の格好を見ながら言った。
「いや、僕は魔力が回復していたら他人に変身して付いて行こうかと思ってたんだ。でも絵理沙が先走って越谷茜に僕が一緒に行くと言ってしまったらしくてね…」
「なるほどね」
「どちらにせよ魔力の回復が著しくないから変身も難しかったのだが…仕方ないから僕は君達と一緒に買い物に行くのに絵理沙の制服を借りようかと思ってたんだ。そうしたら絵理沙が制服じゃ駄目だよ!ちゃんと女らしい服を着なさい!って怒るんだよ…それで僕は女らしい服なんて無い!って言ったらこれを勝手に用意されたんだ…あと…化粧までされたんだ…僕は化粧なんてしたこと無いのに…」
」
輝星花は悲しそうにそう言った。
こいつ…本当に男として育ったんだな…
「悟君、見てくれよ…この変な格好…やっぱり僕にはこんな格好は似合わないと思うんだ…」
「そんなに嫌なら無理にそんな格好しなきゃいいじゃないか。絵理沙に言えよ…姉なんだろ」
「そうなんだ…そうなんだが…無理だったんだ…昨日の絵理沙には…僕は逆らえなかったんだよ」
輝星花は先程よりももっと悲しそうに言った。
「そんなの俺のせいじゃないだろ…それで?口調も女っぽくって言われたのか?」
「そう!そうなんだ。絵理沙は僕に女口調で話せって言うんだよ?酷いと思わないか?僕は女口調なんて慣れてないのに」
酷いとは思わないけどな…まず制服で来ようと思う方がおかしいと思うぞ…
それに女の格好でお前の普段の口調は絶対におかしい…一緒について来るのなら絵理沙の意見の方が正しいな。
「ああ…僕ともあろうものが絵理沙の言いなりになってしまうなんて情けない」
そう言った輝星花はがっくりと肩を落とし相当落ち込んでいた。
ふむ…輝星花は相当にこの格好が嫌なんだろうな…でもそこまで落ち込む事じゃないだろ?
輝星花だって女なんだから女の子っぽい格好をしても別に良いんじゃないのか?
現に今の格好だって俺は似合ってると思うが…
「悟君、絵理沙はこんな僕を見て可愛いなんて言うんだ…君は今日の僕の格好はおかしいって思わないのかい?ハッキリ言ってくれ!」
輝星花は同意を求めるかの様に俺に向かって言った。
何だ?絵理沙にその格好は可愛いって言われたのか?さっきも思ってたが今日の輝星花の格好はとても似合っているし、可愛いと思う。
普段の輝星花(野木一郎)を知っていればおかしいと思うだろうが、知らない人間が見れば微塵にもおかしいなんて思わないだろう。それにその姿がお前の本来の姿だろ…
「正直に言うぞ?」
「あ、ああ…言ってくれ」
「今日の輝星花は…」
「今日の僕は?やっぱりおかしいのか?」
「いや…まったくおかしくない。その服もすごく似合ってるぞ」
俺がそう言うと輝星花は驚いた表情で俺を見た。
「え!?悟君?別に無理にそんな事を言わなくってもいいんだよ?」
輝星花はどうしても今の格好が似合っていないと言って欲しいのか?
「無理なんかしてない。輝星花にその服はすっごく似合ってと思うし、化粧だっておかしくない。何時もの輝星花を知ってる俺とすれば正直今日のお前は可愛くてムカツクくらいだよ…口調だって…あれだよ、あれだ…俺はその声に違和感があるんだぞ?でも周囲の人にとっては気にならないだろうし、絵理沙と違ってお前の声は落ち着いてるからすっごくお淑やかで可愛い声に聞こえる…傍から見ればお嬢さんにすら見えるな…マジに可愛いぞ?」
俺が話していると話の途中から輝星花の顔が見る見るうちに赤くなっていった。
うわ!何で輝星花は赤面してるんだ。こいつにも恥かしいって感情があったのか?いつも冷静で「そうですか?僕はそう思っていません」とか言いそうなのにな。
もしかすると輝星花は今まで女として扱われた事が無いからなのか?
「さ、悟君、君まで何を言ってるんだ!?僕が可愛いなんてあるはず無いだろ!き、君の見解は間違ってるぞ!だいたいこんな格好が僕に似合うなんておかしい!」
輝星花はムキになって反論してきた。
そんなに自分か可愛いと認めたくないのか?
でも俺は間違ってない。今日の輝星花は誰がどう見ても可愛い女の子だろ?
しかし…こんなに赤面して女らしい輝星花は初めて見たが…何だろうか?
本当に女にしか見えないじゃないか…
………あ…そうか、こいつは元々から女だったんだ…
「俺は別に間違ってないと思うけど?あと、声が大きいぞ?ほら、乗客が皆こっちを見てるじゃないか…」
輝星花は周囲を見渡すと一際顔を赤らめた。そして小声で言った。
「す、すまない…つい…」
「輝星花、ハッキリと言うけどお前は女なんだぞ?その格好が悪いとかその口調が似合わないとか化粧しちゃ駄目とか無いんだぞ?さっきも同じような事を言ったじゃないか」
「でも…僕は…」
「何度も言うが、お前は元から女なんだ!本来そういう格好をすべきなんだ。絵理沙も可愛いって言ってくれたんだろ?いいじゃないかよ」
「………僕はただ…今までの人生をほとんど男として生活してきたから…やっぱり今更…」
「解るよ…言いたい事は…でも…そうだよ…その格好は今日一日だけなんだろ?」
「そうだった…今日一日の我慢なんだ………悟君…もう一度聞くが…本当におかしくないか?」
輝星花はそう言って俺の事をじっと見つめている。その赤い澄んだ瞳を見ていると吸い込まれそうな感じさえ受ける。
それに…そんなに見つめられると俺の方が照れるじゃないか…
「そんなに俺を見つめるな!お、おかしくないと言ってるだろ!」
「そうか…でも…僕が君を見る事に何か問題でもあるのかい?今までもずっと君を見ていたじゃないか?普通の事だろ?」
絵理沙といいこいつといい…鈍感というか…頭は良いのに俺の気持ちを理解出来ない奴だな…
俺は外見こそ女だが俺の中身は男なんだ!女にジロジロ見られたら照れるに決まってるだろうが!俺は女に見つめられる事に慣れてないんだ…
って…あれ?俺って輝星花を女だって完全に認めてる…
ま、まあ…女なんだ…仕方無いよな…
※注 別に女性に見つめられたからって全ての男性が照れるなんて事はありえません。by作者
「俺は男なんだ!お前が男の時、そうだよ!野木一郎の時になら見られても何も感じないんだよ!でもな…今の輝星花…女のお前にジロジロ見られると俺は恥ずかしいんだよ!」
「恥ずかしい…この姿の僕に見られると恥ずかしいのかい?そ、そうなのか?」
「そうだって言ってるじゃないか…」
「それって…どういう事なんだい?もしかして悟君は…僕に好意を抱いてしまったとか…」
どうしてそうなるんだよ…
「お、俺は女に見つめられるのに慣れてないだけだ!…あ、あと何で俺がお前に好意を抱くんだ!ありえねーだろ!」
「え?なるほど…別に好意を抱いていなくても照れるものなのか…そうか…なるほど…男とはそういう生き物なのか…」
やっと理解してくれたのかは解らないが、輝星花は俺の目から視線を外した。
俺は横目で輝星花の格好を再度確認してみた。悔しいがやっぱり可愛かった。
俺はさっきこいつに好意を抱いていないと否定した。でも正直…最近の輝星花を見ていて少しだが気持ちが変化したような気がしていた…俺はこいつが嫌いじゃない…
「悟君…」
「何だよ…」
「君は…兄弟でお出かけなんてしてたのか?」
な、何を突然変な質問してくるんだ…
「あ…ああ…してた…」
「それは…楽しかったかい?」
何だ?何でこんな事を?さっきまで話していた事とまったく違うじゃないか?
「ああ…楽しかったし、早く綾香を見つけて…もう一度一緒に買い物も行きたいよ」
「なるほど…そうか…早く叶うといいね…僕も協力するよ」
「どうしたんだ?いきなり変な質問してきやがって…」
輝星花の視線が一瞬絵理沙の方を向いた。
何だ?絵理沙と何かあるのか?
「いや、聞いて見たかっただけだよ」
「そ、そうか…」
「ふう…取りあえずは今日が無事に終わる事を僕は祈っている事にするよ」
「ああ…そうだな…俺もマジでそう思うよ…」
本当に無事に終わって欲しいよ。マジでもうすっげー疲れたし…
ふと絵理沙と茜ちゃんを見た。二人はずっと楽しげに会話を続けていた。
それにしても絵理沙の奴…どうなってるんだよ…
絵理沙を見るとすぐに思い出してしまう…あの時の事を…
俺は何度もあの告白を忘れようと思っているが忘れられない。
……本当にあの告白は…嘘だったのか?それとも…
あー!やめた…やっぱりあまり考えるのはやめよう。
そして電車は大宮駅に到着した。
続く