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8話 習得した血転術

秋司たちが浮符鄔の元を訪れ、血転術の修行を始めてから一ヶ月以上が経過した。

浮符鄔の丸太小屋付近。

いくつかの木の枝に、浮符鄔が作った木の的が紐で吊るされている。

その的に向かって秋司が血転術を放とうとしている。


ふぅー・・・。

基本図式に六角形と四角、発動図式に六角形二回。

よし、行くぞー。


「血転術氷転、氷乱ひょうらん


秋司が血転図式を描き終わると、ハンドボールくらいの氷の塊が四発、秋司の周りに生成され、浮かんでいる。

秋司が右手を前に出すと、四発の氷の塊が的に向かって飛んでいく。

その内、三発は的に命中したが、一発は的を掠り、奥の木に命中する。

木の的はヒビが入り凍り付くが、木は少し凍り付いただけにとどまった。


うぅ・・・。

一発外しちゃったし、威力はそこそこだし、まだまだだなぁ・・・。


秋司は右手を見つめながら、術の完成度が甘いと分析していた。

そんな秋司の隣では、健治が血転図式を描いている。

健治は台形、四角と基本図式を描き、発動図式に四角を二回描いた。


「よーし。行くぜー。血転術岩転、岩棘いわとげ


健治の周りに、八発の先が尖った石が生成され、浮かび上がっている。


「おらーー」


健治が前のめりになりながら両腕を広げると、八発の石が一斉に的へ向かって飛び始める。

八発中六発は的に命中し、的を貫いているが石は的にめり込んでいる状態で、的で止まっている不完全な貫通となった。

残り二発の石は木の細い枝に命中し、切られた枝は地面に落ちる。


「くっそー。また外しちまったー。的も壊せねーし」


秋司と同じように自身の術を振り返っている健治。


「ほっほー。二人とも上出来じゃよ。一ヶ月でここまでできれば、大したものじゃ」


二人の様子を見ていた浮符鄔は軽く拍手をしながら褒める。

秋司と健治は、気合いと根性で血転術の修行を行い続け、今では得意な属性術の最も初歩的な術を発動することができる。

秋司は風転の風出、今出した氷転の氷乱、そして少し得意な水転の水放も使えるようになっている。

健治は炎転の炎球、土転の土固どこ、そして今出した岩転の岩棘を使えるようになっている。

一ヶ月でここまで扱えるのは上出来だと言えるのだが。

しかし、二人は満足していない表情を浮かべる。

というのも・・・。


健治の隣で血転術木転、木叩もくこうを発動している佑香の姿があった。(基本図式はハート型と三つ葉模様、発動図式は三角二回)

佑香が術を発動すると佑香の右掌の上から木の枝が三本伸び始め、柔軟なその枝で的を勢いよく叩く。

佑香用の的は、浮符鄔が結界術を張っており、強度が高い的になっているが、その的六個を瞬時に破壊する佑香。

その様子を見ていた秋司と健治は冷や汗をかきながら真顔になっている。

その様子を見ていた浮符鄔は口が大きく開いており、驚きの声が微かに漏れている。


(ゆ、佑香さん・・・。わしが結果術を施した的を、そんなにあっさり破壊しないでおくれよ・・・。というか、最も初歩的な術でこれって・・・。この先は教えん方がいいのでは・・・)


血転術の威力は、業血司の量と質でほとんどが決まる。

そして、明確に決まっているわけではないが、ほとんどの場合、血転術の属性術では発動図式が長い方が強力な術を発動できるようになっている。

発動図式が長いと、その分自身の業血司を多く術に含ませることができるため、必然的に威力が増すのだ。

当然、難易度は高くなるが。

浮符鄔が三人に教えた初歩的な血転術では、業血司を含むことができる上限は少ない。

それでも、秋司と健治はその上限に全く達していない。

そのため、術の威力がそこまで高くなっていないのだ。

対して、佑香は上限まで達しているが、それでも威力が高すぎる。


浮符鄔は、初歩的な血転術にもかかわらず、高すぎる威力を放っている佑香を見て、驚きの表情が止まらない。


ゆ、佑香ちゃん、相変わらず凄い威力だなぁ・・・。


佑香は、基本属性術八種類の初歩的な術を全て扱える上に、威力も精度も高い。

さらに、得意な木転と水転では、他にも術を覚え、扱えるほどまでになっていた。




一週間後。


今日は浮符鄔さん、遠くに出かける日だからいないのかー。


農業の手伝いを終えた秋司は、浮符鄔の家がある山を見た。

浮符鄔は毎月のとある日に、特売セールのお肉を買うため別の街へ赴くのだ。

今日がその日であり、修行を見てもらえない。

それでも、秋司たち三人は浮符鄔の丸太小屋付近まで行き、浮符鄔の作った的に向かって術を放っている。

そんな風に修行を行っていると、時はあっという間に流れ、夕日が山を照らしている。


「はあはあはあ。やべっ。早く帰らねーと」


健治は夕日を見て、息を切らしながら慌てて山を下ろうとする。


「はあはあはあ。そうだね。夜の山は危険だって浮符鄔さんが言っていたし」


秋司も健治と同じように息を切らしながら山を下る。


三人が山を下っている時、べいこま村南部付近に二人の男の姿があった。


「ここか? 我らがボスを倒してくれたガキがいる村は」

「そうらしいよ。どうする? どうする?」

「ふんっ。ぶっ潰すに決まってんだろー」


再びべいこま村に悲劇が訪れようとしていた。


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