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49話 課外学習開始 水鏡の鹿

フィーべ東部地方エリア三にある村、ソルミレウ。

お昼前からそこに集まった三十人程度の灯詠学園一年生と三人の教員。

この日から三日間、一年生はそれぞれ四つのエリアで自由に過ごす課外学習を行う。

一年生は二日後の夕方から夜までにこの村、ソルミレウで教員に課外学習終了報告をする必要がある。

教員である橘恩度たちばなおんしの合図で課外学習が始まった。


うーん、どうしよう?

どこに行こうかな?

ここへ来る前に東部のエリア三を調べることもできたけど、何も知らない状態でここを探検したかったし。

だから何もこの場所の知識がないんだよねー。

どこに行こうかなー。


秋司がそんなことを考えていると、ソルミレウ村の宿に入っていく生徒の姿が視界に入ってきた。


そうか。

このエリアで三日間過ごせばいいだけだし、宿にずっといてもいいのか。

まあ、僕は絶対探検するけど。


秋司がワクワクした様子でソルミレウ村を見渡していると大きなリュックサックを背負っているリスタの姿が視界に入ってきた。

歩いていたリスタは秋司の右横で止まると息を切らしながら鋭い視線を秋司に向けた。


あ・・・、ははは・・・。

多分マイスペースのことでまだ機嫌が直っていないんだよね・・・。


そしてもう一人、大きなリュックサックを背負って秋司の左横で立ち止まるカズセ。

カズセも目を薄くして秋司を睨んでいる。


うぅ・・・。

凄い圧に挟まれている・・・。


「おうおう、お疲れかなー? お二人さん」


そんな秋司たち三人の前から爽やかな笑顔を浮かべている柊真が手ぶらでやって来た。

しかし、その爽やかな笑顔の中には、リスタとカズセをいじっている様子が含まれている。


「うっせー。ぶっ飛ばすぞー」


そんな様子の柊真に怒号を飛ばすリスタとカズセ。


「あはは・・・。ところでみんな、どこから行く? 東の方とかいいかなって思っていたんだけど、どうかな?」

「ああっ? いいんじゃない。俺はどこに行こうかな・・・?」

「ええっ。リスタくん、一緒に行かないのー?」


すっかり四人でエリアを探検しようと考えていた秋司。

リスタの言葉に強く反応し、顔をリスタに近づけながら勢いよく声をかける。


「い・・・」


そんな秋司の様子に驚き、固まるリスタ。

目を大きく開き、口を軽く開きながら口角が下がっている。


「秋司ー。そんなドロドロ迷子は放っておこうぜー。一緒に行っても、すぐにいなくなるだけだよー」


カズセは秋司に笑顔で話しかける。

その笑顔は秋司に向けられているが、リスタに向けて放っているように、キラキラの作り笑顔で何か含みを持っている。


「おい、賢ぶりメガネ。言っておくがテメェーは俺より酷いからな。確かに俺はたまーに迷う。それに比べて、テメェーは逆走してんだろっ。迷子より酷いよー? ああー、自分のこと、頭がいいと思い込んでいるから自覚してないのかー。はあー、可哀想に」

「なんだとー? 逆走したのは一回だけだろーが。オメェーはいつも迷子だろ?」

「いつもじゃねーだろー。何記憶すり替えてんだぁー? ああ、記憶力が()()から、すり替えられるのかー」

「ああっ?」


気がつけばいつも通り、煽り合いながら言い争いを始めるリスタとカズセ。


「よーしっ。行こうぜー。冒険だーー」


そんな二人の肩に腕を回して笑顔で楽しそうに大きな声を上げる柊真。


「冒険だー。よーし、東の方に行こー」


秋司はそんな三人の横に並んで右拳を上げながらワクワクした様子全開で東へ歩き出した。

リスタとカズセは柊真に腕を回されたまま歩き出す。

二人の顔は引きつっている。

ソルミレウ村の東出入り口から出ると辺り一帯に草原が広がっていた。


す、凄い・・・。

視界に草原しか入ってこない。


「・・・。何もねーじゃん・・・」


ようやく柊真から解放されたリスタは目を細めて草原を見渡した。


「よーし、進もうー」


そんなリスタとは反対に、秋司は興味津々に草原を見つめる。

四人は草原をまっすぐ進んだ。

少し歩くと、シマウマやガゼルなど、様々な動物の姿が見え始めた。

さらに灯詠学園の生徒以外の人影も視界に入ってくる。

リスタやカズセよりも大きなリュックサックを背負っている人、挙動が怪しい人、慌ただしく草原を駆け回っている人、様々だ。

秋司と柊真は煌めいた表情で草原を歩く。

速い足取りで。

そんな二人を、息を切らしながら追いかけるリスタとカズセ。

汗も結構かいている。


「あのおせっかいベジタブルと能天気ホットサイダーが・・・。いいよなー・・・。マイスペース」

「ああ・・・。オメェは狭いもんな・・・」


(俺の方が狭いけど・・・)


リスタは遠く離れて行く秋司と柊真を見つめて小さく声を漏らす。

カズセはいつも通りリスタを煽ろうとするが、疲労と自分のマイスペースの方が狭いことを思い出して煽りに力が入らない。

そのまま少し進むと人気が一気になくなった。

秋司と柊真、そして少し離れた後方の位置でリスタとカズセが歩いている。

そんなリスタとカズセの前に突如としてある動物が姿を現した。


(なんだ・・・こいつは・・・? 音が全くしなかった。それにどこから現れたんだ?)


リスタは目を大きく見開きながらその生物をじっと見つめ、咄嗟に後方へ下がり距離を取った。


「こいつ・・・、鹿?」


カズセもリスタと同じように目を大きく見開きながら後退する。


「・・・。はっ、リスタくんっ」


気配を感じた秋司がリスタの方に振り向くとリスタとカズセの姿が見えないほど大きい鹿のような生物の姿が視界に入ってきた。


お、大きい・・・。

高さ三メートル以上はある。

首が少し長く、足も長い。

しっかりとした体つき。

体の周りには濃い紺色のオーラの様なものを纏っている。

まるで水面に映る夜空の様に。


「く、食われるのかな・・・?」


カズセは冷や汗をかき、顔をこわばらせながら声を出す。


「鹿って草食じゃないの? だから食われることはないでしょ・・・。ですよねっ? 鹿さん?」


リスタは引きつっていた顔を浮かべた後、作り笑顔を浮かべてその鹿に語りかける。


「・・・」


その鹿はじーっとリスタを見つめる。

秋司と柊真は急いで鹿に接近する。

しかし、鹿は振り返り、秋司を少し見つめるとすぐにどこかへ消えていった。


「・・・。なんだったんだよ、今の鹿さんは?」


リスタは驚き冷めない顔で鹿が立っていた地面を見つめる。


「すげー。突然現れて、突然消えたぞー。ワープでもしてんのかなー」


驚きっぱなしだったリスタだったが、急にテンションが上がり、興味津々の笑顔を浮かべながら大きな声を発した。


「ねー。凄い大きかったし、迫力も凄かったー」


同じ様にテンションが上がっている秋司。


昨日のワイバーンといい、今の鹿といい、不思議で凄い生き物がたくさんいるんだなぁー。

通常のワイバーンも東部にいるって言っていたよね。

ワイバーン、会ってみたいなー。

他にも植物とかお宝とかも探してみたいし、やりたい事がたくさん。


秋司は心を踊らせながら、再び歩き始めた。


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