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47話 授業開始

灯詠学園第四寮三一二号室。

そこに、ベッドに座りながら天井を見つめる秋司の姿がある。


今日からいよいよ授業が始まる。


新入生が灯詠学園にやってきてから三日が経過し、四日目になった。

初日に入学会、二日目と三日目に学園の説明を受け、手続きを終えた新入生たち。

灯詠学園は単位制の学校で前期と後期の二学期制。

秋司たち一年生の前期は必修科目が二つ。

血転術基礎学と血転術基礎実技の二科目が必修科目になっている。

必修科目は四つのクラスに分かれて授業が行われる。

この日は血転術基礎学の授業がある日。

秋司の必修科目のクラスは二組。

秋司はワクワクした表情を浮かべながら、一号棟二階の二零四教室に向かった。

教室に入ると、透やトレッチなど、同じクラスの一年生が席に着いていた。

秋司は透に声をかけられ、隣の席に座った。

少しすると、教員が教室に入ってきた。


「はわーあぁ。授業、始めるぞー」


その教員、滝埼隆麻はあくびをしながら怠そうに声を発する。

そのまま授業が始まった。


・・・。

だ、怠そう・・・。


隆麻は机に両肘をつけ、前屈みの姿勢で今にも寝そうな声を発する。

目は半開きで声も小さい。

時折頭を掻きながら、そしてあくびをしながら授業を進めている。

一時間と数十分後。


「えー、では終わりでーす・・・」


・・・。

ずっと怠そうだったなぁ。


秋司は教室から去る隆麻を見つめる。


僕はこの後も授業を取ってるんだよね。

業血司感知学。

どんなことを学ぶんだろう?


秋司は透と共に一号棟の二一一教室に向かった。

教室の中には三人用の机が不規則に並んでいた。

秋司は一番前の左から二番目の席に座った。

少しすると、柊真やカズセ、そしてリスタも教室にやってきた。

柊真とカズセは秋司の近くに座った。

リスタは一番後ろの右端の席に着いた。

リスタは授業が始まっていないにも関わらず、すでに爆睡モードに入っている。

少しすると女性教員のモネニカが教室にやってきて授業が始まった。

モネニカは業血司について話し始めた。

業血司は人によって異なり、同じ業血司を持つ業血司使いは存在しない。

業血司の感知能力を鍛えれば知人の居場所を把握することもできる。

モネニカは生徒の業血司を見て分析し始めた。

まず、柊真の業血司を見た。


「あなたからはオレンジ色で、慌ただしくて真っ直ぐな業血司を感じます」

「えっ・・・。そうなの?」


柊真は開いた両手をじっと見つめた。

モネニカは次に透の業血司を見た。


「あなたは、弱々しくも優しい業血司を持っているわ」

「は、はい・・・」


透の表情は少し固まっている。

モネニカは次に秋司の業血司を見た。


「あなたは・・・。い、いい業血司ね・・・」


さっきまでとは明らかに様子が違うモネニカ。

明るかった表情は消え、驚き、そして秋司を恐れているように少し後ずさる。


・・・。

僕の業血司、あんまりよくないのかな・・・?


モネニカの様子を見た秋司は、不安そうな表情を浮かべた。

一時間と数十分経ち、授業が終わった。


うん、凄い面白かったなぁー。

業血司感知学。

感知能力は身体術を扱えないと強化ができないからちょっと不安だったけど、感知自体は僕でもできそうだし、練習してみよっ。




翌日。

この日は血転術基礎実技の授業がある日。

血転術基礎実技も血転術基礎学と同じクラスで行われる。

集合場所は周辺部にある第二訓練所。

第二訓練所は平地で草が生えていて、途中で砂地に変わり、木が少し生えている。

訓練所はそこまで広くない。

二組の生徒は動きやすい格好で、そして数人の生徒は灯詠学園のケープマントを羽織って第二訓練所に集まった。


マント、持ってきてないや・・・。


秋司はマントを部屋に置いて来ていた。

着てくるようにという指示は特にないのだが、秋司はマントを羽織りたかった様子でマントを羽織っている生徒を見つめる。


マント、羽織りたかったなー。


そんなことを考えていると、滝埼隆麻が第二訓練所にやって来て授業が始まった。


「えー、では授業を始めます・・・。まず、マイスペース、知ってる?」


マイスペース?

何それ?


秋司は隆麻の口から出た知らない単語に興味を持ち、また驚いた。

マイスペースとは、業血司使いがアクセスできる特別な空間のこと。

業血司使いは皆、自分だけがアクセスできる空間を保有しており、その広さは人によって異なる。

このマイスペースには道具などを入れることができ、空間内は時間が止まっている。

そのため、食材を保存することもできる。

ただし、生きている生物をマイスペースに入れることはできない。

そしてこのマイスペースの広さは、業血司を宿した時に決まり、修行などで広げることができない。

血転図式は基本図式に四角、六角形、四角、発動図式に丸、三角、丸。


・・・。

えぇーー。

そんなことできるのー。

浮符鄔さん、なんで教えてくれなかったのー。



浮符鄔の心境。

えぇー。じゃってー、佑香だけ広くて、秋司と健治が狭かったら、あれじゃん・・・。修行じゃ、どうにもならんしー。



ああ、じゃあ浮符鄔さんが何もないところからまりすけの毛を出したり、志岳が壺を出したのも、この空間から取り出していたのかー。


秋司はマイスペースの存在を知り、今まで度々起こっていた、何もないところから物を取り出すという現象に納得がいった。

秋司は早速血転図式を描き、マイスペースにアクセスする。


おぉー・・・。

ベッドくらいの広さかな。

凄い便利じゃん。

ここに必要な物を入れて持ち歩けるし。

マントもここにしまっておこう。


秋司はキラキラと顔を輝かせた。

隆麻はマイスペースの説明を終えると、血転術属性の放ち方について話し始めた。


「えー、みんなには業血司をしっかりと百パーセント、送り込む練習からしてもらうよー」


隆麻は術に業血司をしっかりと送る練習をするように指示を出した。

放てる最大威力を常に出せるようにするための習慣をつける練習。

一年生のほとんどの生徒は、術に送ることができる上限いっぱいまで業血司を送らずに放っていた。

例えば炎球なら、十という量送れるとしても七くらいの量しか送ることができていなかった。

秋司も、術に業血司を上限いっぱいまで送り込むこと自体はできるが、実戦ではつい焦ったり、他に注意がいってしまって、七割程度しか送り込めていなかった。

生徒たちはそれぞれ血転術を発動して業血司を送り込む練習を始めた。


うーん、何もない状況だったら業血司を全部送ることはできるけど、実戦だとどうだろう・・・。

実戦形式でやってみないと練習にならないかな。


「トレッチくん、ちょっと訓練に付き合ってほしいんだけど、いいかな?」


秋司はトレッチに声をかけ、ちょっとした実戦形式で業血司を送る練習を始めた。

二人は手合わせを始めた。

まずは打撃戦を繰り広げ、少し離れると、秋司は血転図式を描き始めた。


五角形、扇、扇、扇。

そして、業血司をしっかり上限いっぱいまで送り込んでから・・・。


「血転術風転、風出ー・・・。ぐっ」


秋司は風出を放とうとするが、放つ前にトレッチの右拳が秋司の右頬に命中した。


う・・・。

ダメだ。

業血司を限界まで送り込むことに集中すると、視野が狭くなる。

トレッチくんの動きを確認できていなかった。


その後もトレッチと実戦形式の戦闘を行い続ける秋司。

しかし、業血司を上限いっぱいまで送り込もうとすると、視野が狭くなったり、反応が遅れたりして術を発動できないでいた。

トレッチも秋司と同じように業血司を送る練習をしているが実戦形式の戦闘の中では上手くいっていない。


「サクッ、パリッ。まずはさー、他に意識を向けながら業血司を術に送り込む練習から始めてみたらー」


秋司とトレッチの様子を見ていた生徒、フレット・マーシーが二人にゆるーく声をかける。

髪色はオレンジで瞳の色は青。

パーカーのフードを被っていて、しゃがんでいる。

そして、右手に持っているチョコレートビスケットを食べている。


うーん、確かに。

いきなり実戦でやっても上手くいかない。

でも、何もせずに一点に集中すれば、術の上限いっぱいまで業血司を送り込むことはできる。

実戦で使えるようになるには、一点集中じゃなくて、他のことに意識を向けながら業血司を上限いっぱいまで送る練習から始めた方が良さそうだな。

この人の言う通り。


「うん、ありがとう」


秋司はフレットに明るく前向きな表情を向けた。


よし、血転図式を描いてっと。

そして意識を他のことに集中させる。

うーん、あそこにある木の枝の数を数えよう。

一、二・・・。


秋司は右手で炎球を発動すると同時に近くにある木の枝の数を数え始めた。


五、六・・・。

ダメだ、上限いっぱいまで送り込めていない。

いつも通り、七割程度かな・・・。

ところで、あの人は何しているんだろう?

ずっとあそこにいるよね・・・。


秋司が木の枝を数えていると、その視界に一人の生徒が入ってきた。

木の下で、膝を立てて後ろに手をついてくつろぐ様に座っている女性の生徒、寅季光菜嘉とらきみなか

金髪のロングヘアで茶色の瞳。


「あのー。よかったら一緒に練習しませんか?」


秋司は光菜嘉に近づき、笑顔で声をかけた。


「ああっ? なんか用?」


光菜嘉は鋭い眼光を秋司に向けた。


うぅっ・・・。

こ、怖い・・・。


「い、いえ。そのー・・・。ずっとそこにいるので・・・」


秋司は怯えながら途切れ途切れに声を発する。


「悪いかよっ? 休憩中だっ」


光菜嘉はそっぽを向いた。


・・・。

授業が始まってからずっとそこにいたような・・・。


秋司は目を細め苦笑いを浮かべながらそう思った。


「・・・」


光菜嘉はその場から離れない秋司を見て右手に炎球を発動させた。


あっ、凄い。

血転図式を描き終えるのが早い。

それに、恐らく業血司を上限いっぱいまで送れている。

特に集中している様子じゃないのに・・・。

そして見ただけで分かるくらい僕の炎球より断然威力も高いかな。


「すごーい。血転術の発動が凄いスムーズですねっ。何かコツとかありますか。よかったら教えてください」


秋司はキラキラと目を輝かせ、無意識に顔を近づける。


「なっ・・・。う、うるさいっーー」

「うがっーー」


光菜嘉は秋司の言葉を聞いて、少し照れ驚き、そのまま右拳で秋司を殴り飛ばした。


「よーし、がんば・・・、うわああっ」

「い、痛い・・・。なんで・・・?」


秋司は練習している透の横まで吹っ飛び、背中から地面に落下した。

透は驚き、身体が飛び跳ねる。

吹き飛ばされた秋司は赤く腫れた左頬を押さえながら涙目で遠くにいる光菜嘉を見つめた。

透の手を借りてゆっくりと立ち上がった秋司。

すると、今度は離れた位置で背中を丸めてしゃがんでいる男性の生徒が視界に入ってきた。


どうしたんだろう。

具合悪そうだけど、大丈夫かな?


「あのー、大丈夫ですか?」


秋司はその男子生徒に近づき、話しかける。


「はあ・・・。うん? はい、大丈夫です・・・」


その男子生徒、杉田諒介すぎたりょうすけは頬を青く染めながら答えた。

黒髪で茶色い瞳、そして具合が悪そう。


・・・。

絶対大丈夫じゃないよね・・・。

あれ、この人、入試試験の時にバスを探していた人だ。

どうしよう。

僕、回復術使えないし・・・。

あ、お水あげよう。


秋司は早速マイスペースの中に入れておいた新品のお水を諒介に渡した。


「よかったら飲んでください」

「あ、ありがとう」


諒介は水を一気に飲み込んだ。

五百ミリリットルのペットボトル半分ほど飲むとゆっくりと深呼吸をして立ち上がった。


「もう大丈夫です。助かりました。では」


諒介は秋司にお礼を言うと、すぐに人気のない所へ去って行った。

数十分後、授業が終わり、一号棟ホールに向かう生徒たち。


一年生は一号棟ホールに集合って、なんだろう。


秋司たち一年生がホールに集まると、須々根たち教員と事務員がやってきた。


「一年生の皆さん、集まっていただきありがとうございます。皆さんに集まって頂いたのは、来週から三日間行われる課外学習について、ご説明させていただくためです」


か、課外学習?

何それ?


秋司たち一年生は来週の三日間、四つの行き先から一つ選び、課外学習を行う。

課外学習と言っても、その行き先で三日間過ごすだけなのだが。

行き先はフィーべ北部のエリア三、東部のエリア三、南部のエリア五、西部のエリア四の四つ。

フィーべは大きく、北部、東部、南部、西部、そして中心部の五つに区切られている。

北部、南部、西部は五つのエリア、東部は四つのエリア、中心部は九つのエリアで構成されている。

中心部のエリアは、東西南北のエリアと比べるとかなり狭い。

中心部のエリア二とエリア五に灯詠学園、エリア五とエリア八にフィーべ政府、四国政府が所在している。


うーん、どこにしよう。

大して行き先の説明がないしなー。

うーん、なんとなく東部のエリア三にしよー。


秋司は東部のエリア三へ行くことにした。


来週かー。

自由に過ごすってことは、ちゃんと持ち物を持った方がいいよね。

マイスペースのことも知れたし、ちゃんと準備しよう。

それにしても、楽しみだなー。


秋司はワクワクした様子で一号棟を後にした。


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