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46話 灯詠学園入学会

灯詠学園第四寮の三一二号室。

その部屋の中に秋司と柊真の姿がある。

部屋の中は左右にベットと机が一つずつ置いてある。

秋司は右のスペースに荷物を置いた。


今日は夕方に大広間で入学会が行われるんだよね。

それまでどうしよう。

校内を探検しようかな。

そうだっ。


「柊真くん。もしよかったらこの後学校を探検しない?」

「ああー? 探検・・・? いいねー。いこーぜ」


柊真の声は段々と大きくなっていく。

二人は部屋を出て、一号棟に向かった。


さっきも来たけど、広い。

この学校は何もかも広いよ。


秋司と柊真はまず一階ではなく、二階に向かった。


うーん、廊下も広いし・・・。

教室みたいな部屋もたくさんあるし、迷路みたい。

これじゃあ、どこの教室集合って言われても分からないような・・・。

ここは図書室かな?

図書室も広い・・・。

広いしか言葉が出てこないなぁ。


続いて、三階に向かった秋司と柊真。

かなり多くの時間二階を探検していた二人。

入学会の集合時間まで近づいていた。


うーん、三階も教室ばっかり。

教員室と会議室もある。


秋司と柊真は四階に向かった。

さらに入学会の時間が迫っていたが。


うーん、四階にあるのは・・・実験室かな?

それも、機械の実験かな?

うん?

あれは・・・。


秋司と柊真が四階を探検していると、第二実験室に入ろうとしている二人の生徒の姿があった。


「り、リスタくん?」

「あっ? おっ、よう秋司っ」


リスタくん・・・。

合格してたんだ。

よかった・・・。

さっきは姿を見なかったけど。


そこには、寮決めの時に姿が見えなかったリスタともう一人の新入生がドアの鍵を開けようとピッキングしていた。


「な、何しているの?」

「こん中に何かいいもんがあるかなってな」


秋司が質問すると、リスタはピッキングしながら答えた。


「誰? 知り合い?」


秋司とリスタの会話を聞いていたもう一人の新入生、カズセはリスタに尋ねた。


「あっ? 前に話したろ。友達だよ・・・。あ、開いたーー」


リスタは目を輝かせ、ドアを開けて実験室内に入る。

そんなリスタに続いて、カズセ、そして秋司と柊真も中に入る。


凄い、なんかたくさん機械がある。

機械でいいんだよね。

あれは服かな?

よく分からないけど。

これって、生成術とかも使われているのかな?


秋司は実験室にある様々な道具を見渡す。


「あっ?」


リスタは近くにあった黒い手袋を身に着ける。

その手袋はピッタリと手にはまった。

まるで手に吸い付いてくるように。


「なんだこれ? ただの手袋か? なんかいいもんがあると思ったのによー」


リスタは不貞腐れ気味に窓から外を見た。


「リスタくん。業血司を送ってみれば?」

「あっ? 業血司?」


リスタは右手に業血司を送る。

すると、近くにある小さな機械や機械の部品がリスタの右手に吸いつくように集まってくる。


「おいおいおいおい。なんだこれぇ?」


リスタは目を大きく開け、口を少し開きながら口角を下げ、驚く。


「お、おめぇー」


リスタの右手が段々下がっていく。


「うん? なんか煙が出てねー?」


柊真は目を細め、リスタに集まっている機械から煙と火花が出ていることを確認した。


「とりあえず、このバットで吹き飛ばすか」


カズセは近くにあったバットを手に握り、スイングする。

バットが機械に当たると同時に爆発する。


「うわぁーーー」


四人は煙に包まれながら吹っ飛ぶ。

煙が消えると、尻もちをついている四人の姿があった。


「爆発しそうになってる機械に衝撃を与える馬鹿がどこにいんだよっ、賢ぶりメガネが」

「・・・。元はといえば、どっかのドロドロ迷子が変な手袋を着けたのが悪いだろ」

「あっー? その不愉快なメガネをかち割ってやろうか? てめぇが持ってるバットを口の中に突っ込んで、下にあるボールを二回スタンドに運んでやるよっ」

「ああ、上等だよ。こっちはお前のその手袋を使って、お前のボールを吸い取ってから握り潰してやる」


リスタとカズセは顔を向けて睨み合い、やがてお互いのおでこがくっつく。


「ん? なんか大きい足音が聞こえるぞ」


二人のやり取りを見ていた柊真は、廊下から聞こえる大きな足音に反応した。


「あっ・・・。こ、こんにちはー・・・」


第二実験室にやって来た灯詠学園の在校生と目が合い、苦笑いを浮かべながら挨拶をするリスタ。


「君たち、ここで何を・・・。ああー。その手袋使ったのかい」


在校生Aは荒れた実験室内を見て驚いたものの、リスタが着けている手袋が視界に入ると、少し目を輝かせてリスタに近づく。


「どうだった、この手袋。ちゃんと機能した?」

「あー、はい。なんか機械を吸いつけましたよ」

「本当ーー。やったー、上手くいったんだー。僕が使ってもあんまりだったのにー」


在校生Aはさらに目を輝かせて喜びをあらわにする。


「あはは・・・。おめでとうございますー」


リスタは苦笑いを浮かべたまま、拍手をする。


「君たちは新入生?」

「はい」


在校生Bの問いに答える秋司。


「あれ、今年は入学会を行わないのかな。もう時間だけど・・・」

「え・・・。わ、忘れてたー」


在校生Bの言葉を聞いて一瞬間を開けてから遅れて気がつく秋司。


「なんだー? 入学会って?」


キョトンとした顔で、入学会のことを知らない様子で尋ねるリスタ。


「と、とにかく急ごうー」


秋司は三人に声をかけ、急いで一号棟一階にある大広間に向かう。


まずいよ。

もう始まっちゃってる時間だ。


「・・・。え、えぇー。その手袋、持って来ちゃったの?」

「いや、くれたんだよ。あの人が」


秋司は急いで階段を下りながらリスタの方を見ると、リスタは黒い手袋を着けたまま走っていた。

秋司が少し視線をずらすと、カズセもバットを右手に持って走っていた。

少しすると、四人は一号棟一階にある大広間の出入り口に到着した。


うぅ・・・。

絶対始まってる・・・。


「始まってるなっ」


柊真は右耳を扉につけて、中の様子を伺う。


「うん、どうしよ・・・。リスタくん?」


秋司が戸惑っていると、リスタは四つん這いの姿勢になり、ゆっくりと扉を押して開ける。

そのままゆっくりと大広間に入っていく。

リスタに続いて柊真、秋司、カズセも四つん這いの姿勢になって大広間にゆっくりと入る。

大広間では、誰かが話していた。

大広間には十八個の円形のテーブルがあり、最前列に二つ、その後は四つずつ四列に並べられている。

新入生は一つのテーブルを囲んで八人ずつ座っている。

大広間の最前列にある二つのテーブルの周りには教員が座っている。

リスタ、柊真、秋司、カズセの四人は四つ席が空いている左最後方のテーブルに向かって四つん這いで静かに進む。


「えぇー・・・。ごほんっ。そこの四人は遅刻かな?」

「いっ・・・」


話していた教員は四人の気配に気がつき、話しかける。


ば、バレてるー・・・。


「あ・・・、あはははー。こんばんはー。えーっと、その髭、かっこいいですねー。十五センチくらいあるかなぁー。ははは・・・」


リスタは苦笑いを浮かべながら立ち上がり、話している教員の髭を褒めた。


「ほっほー。それはありがとう。ところで、何故入学会に遅れたのかな?」

「それはですねー。そ、掃除をしていましてー。僕、潔癖症で、この三人と一緒に学校を綺麗にしていましたー」


教員の問いに、立ち上がりながら作り笑顔で答えるカズセ。


「ほっほ。そうか。バットで掃除とは、随分掃除のコツを掴んでおるようじゃのう」

「げっ・・・」


カズセは、右手に持っているバットを教員にいじられ、気まずそうな顔をして固まる。


「おい、どうするよ。あのジジイに見透かされているぞ」


リスタは小声でカズセに話しかける。


「ここは俺に任せろ」


柊真は自信たっぷりに、二人の間に立ち上がる。


「実はですね・・・。ここへ来る途中で珍しいものを見つけましてねー。俺たちは部屋の中で輝く夕日を見つけましてー、そして象のオナラのような音が鳴り響いた。まさに幻のような空間に足を踏み入れてしまいまして、それで・・・」

「き、君たち。まさか四号棟に行ったんじゃないだろうね?」

「ああっ? なんだそれ?」


第二実験室で起こった爆発を、意味の分からない言葉を並べて表し、得意げに語っていた柊真だったが、他の教員の声を聞いて、ぽかんとした顔で固まる。


「ごほんっ。素晴らしい体験をしたようじゃのう」


さっきまで話していた教員は笑顔で四人を見つめた。


「お、遅れてすみません」

「なーに、気にするでない。掃除に不思議な体験をしたんじゃ。理由は十分わかった。さあ、席に着くんじゃ」


秋司は大きな声で謝ると、教員は満面の笑みを浮かべ、四人に席に着くように指示を出した。

四人は急いで席に着いた。


「くそ。なんでバレたんだぁ。あのジジイー。よっぽど目がいいのかな?」

「ちげーだろ。気配で気づいたんでしょ。あのジジイ」


カズセとリスタは話している教員に視線を向けながら小声で話す。


「只者じゃないよね。あのジジイ」

「き、君たち知らないのかい?」


カズセが小声で話していると、同じテーブルを囲んでいる一人の新入生がその声に反応した。


「君は知っているの?」

「当たり前じゃないか。あの人はドルネシア・ハリットさん。灯詠学園の校長だよ」

「こ、こーちょーー?」


カズセがその新入生に尋ねると、新入生は小声でその教員、灯詠学園校長ドルネシア・ハリットについて軽く紹介した。

すると、秋司、リスタ、柊真、カズセは飛び上がりながら驚き、大きな声を発した。


「・・・。なんじゃい? そこの四人さん」

「えっ?」


四人の声に反応したドルネシアは表情を固め、少しすると声を発した。

四人はドルネシアに視線を向けて、小声を漏らす。


「い、いやー。校長先生、話長いっすね・・・。じゃなくて、絶好調で饒舌ですねー」

「おい、ばか。饒舌もダメだろ」


リスタはぎこちない笑顔を浮かべながらドルネシアに話しかける。

カズセはリスタの言葉を聞いて、小声で軽くツッコミを入れる。


「ほっほ。そうじゃろうー」


ドルネシアは笑顔をリスタに向けた。


「おい、通じたよ。大丈夫だったじゃん」

「あのジジイ。鋭いかと思ったけど、意外とちょろいかもね」

「あはは・・・」


リスタとカズセは再び小声でやり取りをする。

そんな二人のやり取りを苦笑いしながら聞いている秋司。


あの人、校長先生、浮符鄔さんと同い年くらいかな。

おじいさんで気さくな感じで、それで、多分凄く強い。

なんでか分からないけど、そんな感じがする。

・・・。

浮符鄔さんのあんなはちゃめちゃな強さを見ていたから、おじいさんは強いってイメージになっちゃっているのかも。


ドルネシアの話が終わると、他の教員の挨拶が始まった。

数十分経ち、教員の話が終わると新入生に灯詠学園の赤橙色のボタン留めケープマントが配られた。

左胸の位置には灯詠学園の校章が描かれている。

その後、そのまま夕食を取る新入生たち。

親睦会のようなものだ。

新入生が囲んでいるテーブルに一人教員が加わり、九人で食卓を囲んでいる。

リスタたちのテーブルにはドルネシアが加わった。


「おい、なんでジジイがこのテーブルなんだよ」

「知るかっ。たまたまだろ」


カズセとリスタはリスタと秋司の間に座ったドルネシアを見ながら小声で話す。


「さて、食べようかのう。いただきまーす」

「いただきまーす」


ドルネシアの合図で夕食を食べ始める。

ドルネシアが加わったテーブルでは、四人は静かに緊張しながら、そして残った四人は勢いよくご飯を食べ始める。


「おい、この肉は俺のだ。横取りすんじゃねー」

「はあー? 俺の肉だ。お前が横取りしてんだろ」

「ぐちぐちうっせーな、賢ぶりメガネ。テメェはメガネしてんだから、玉ねぎでも頬張ってろ」

「何言ってんだオメェーは。お前こそ普段から肉魚米ばっかり食べてんだから、野菜を食べろ。そうすれば少しは疲れが取れて睡眠時間が減るんじゃねーか。爆睡魔が」


リスタとカズセは骨付きチキンを取り合いながら言い争いを始める。


「あー、柊真くん、お肉ばっかり食べてるー。野菜も食べなよー」

「ああ? 野菜・・・。おいおい、そんなに乗せるなー。もういいだろー」


秋司は柊真のお皿に野菜をたくさん乗せる。

その様子を見て、戸惑い苦笑いを浮かべる柊真。


「リスタくんとカズセくんもお肉ばかりじゃなくて野菜を食べなよー」

「お、おい。秋司。もうストーップ」


秋司はリスタのお皿に野菜をたくさん乗せる。


「しゅ、秋司。もういいでしょ・・・。おいジジイー。テメェー俺の肉を」


リスタは野菜を乗せ続ける秋司に困ったような苦笑いを向けるが、視界の中にドルネシアがお肉を頬張る姿が入ってくると、ドルネシアに大声を発する。


「あー、ドルネシアさんも野菜を食べなよー」


そんなドルネシアのお皿にも野菜を乗せる秋司。


「ほっほ・・・。秋司くん。もう十分だよ・・・」

「あー、えーっと。ドルネシア校長先生、一杯どうぞー」


ドルネシアは困ったように笑みを浮かべながら秋司に声をかける。

そんなドルネシアにごまをするようにジュースを入れるカズセ。


賑やかな親睦会はしばらく続いた。


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