45話 灯詠学園
灯詠学園校門前。
ついに、ここまできた・・・。
あの日、あの人に助けてもらってから、血転術に興味を持った。
そして、あの人の様に、強くなりたいと。
灯詠学園。
あの人と同じ学校。
でも、それだけが理由じゃない。
健治くんと佑香ちゃん、浮符鄔さんと共に過ごし、色々な街や土地を訪れ(そんなに多くはない)、そして入学試験を受け、様々な人と出会い、より一層この学校に通いたいという思いは増した。
僕、本当にここで過ごせるんだよね?
秋司は明るく、爽やかな表情で校舎を見つめる。
「秋司くん、行こう」
そんな秋司に左横から声をかける透。
「うんっ」
二人は門をくぐった。
この日、午後一時から集合することになっている新入生。
新入生は入学試験の時と同じように、午前中にそれぞれの国からフィーべに足を踏み入れ、空飛ぶバスに乗り三時間かけて灯詠学園までやって来たのだ。
そのため、既に時間は午後。
秋司と透は集合場所である一号棟に入ってすぐのホールに向かった。
灯詠学園は周辺部と周辺部に比べて標高が少し高い位置にある中心部に分けられている。
灯詠学園中心部にはいくつかの校門があり、秋司たちは南西の校門から学園内に入った。
東西南北には寮があり、中央南西に一号棟、中央北西に二号棟、中央北東に三号棟、中央南東に四号棟が高く建っている。
それぞれ五階建て。
四つの建物は三階の通路で繋がっている。
一号棟は二号棟と縦の通路で、四号棟とは横の通路で、三号棟とは斜めの通路で繋がっている。
中心部には、この他にもいくつかの広場などが存在する。
周辺部にはいくつかの訓練場や建物が建っている。
秋司が入学試験の時に宿泊した部屋がある建物は周辺部に建てられている建物の一つだ。
その建物は、学生からは一階の食堂しか利用されないが、フィーべを訪れる人や灯詠学園を訪れる人々に部屋を貸したりもしている。
秋司と透が一号棟に入ると、既に多くの新入生の姿があった。
ひ、広い・・・。
秋司は一号棟のホールの広さに驚き、言葉を失っている。
「おう、秋司ー。また会えたなっ」
「と、トレッチくんっ」
秋司が声のする方に振り向くと、そこには入学試験で同じチームだったがゴールができなかったトレッチ・マーティの姿があった。
二人は再開できたことを喜んだ。
やったー、トレッチくんとまた会えた。
まあ、僕が合格できたなら、トレッチくんは合格していると思ったけど。
実際再開できると、実感が湧くなぁ。
「しゅ、秋司くん・・・。ひ、久しぶりっ」
「ん? あっ、町野さんっ」
再び声をかけられ、振り返ると、そこにはトレッチと同じく、入学試験で同じチームだったが、ゴールはできなかった町野茉白の姿があった。
よかったー。
町野さんも合格してて。
まあ、町野さんもトレッチくんと一緒で、僕が合格できた時点で合格していると思ったけど。
あの時三人ともゴールできなかったけど、無事に合格できてよかった。
うーん。
でももう一人、リスタくんの姿が見当たらないな・・・。
僕が合格できたから、リスタくんも受かっていると思うけど・・・。
明るかった秋司の表情が少し曇る。
「あ・・・。あはは・・・。おいおい、マジかよ」
「んっ? あ・・・」
秋司が声のする方に振り向くと。
「あぁ・・・。よかった・・・。本当によかったよ。心配したんだぜ。お前はゴールできなかったって聞いたからよー」
「け、ケンバス・オコナー・・・」
そこには高揚した様子のケンバス・オコナーの姿があった。
ケンバスは秋司に軽くハグをし、耳元で囁く。
「ああ、会いたかったよ、微風ちゃん。ゴーヤ微風ちゃんが合格できたかどうか心配で夜しか寝れなかったんだぜ。でも、やっとこれでいつでも寝れるよ。ゴーヤ風船微風ちゃんをいつでもぶっ潰せるんだから。あー、安心しろ。お前みたいな奴に奇襲は仕掛けない。ちゃんと正面からぶっ潰してやるから。俺のことが視界に入ったら精一杯震えてくださいね。ああ、でもビビりすぎて破裂しないように。俺が、破裂させてあげるから」
「・・・。あぁ、ごめん。寝ていたよ。いつでも寝れるから。で、なんか用?」
「ああっ? なんだとー。今やってやろうかぁ? ああ、せっかくだ。思いっきり飛ばしてやるからこの建物を見学して来いよ?」
「いつも飛んでいるのはそっちだよ? また飛ばされたいの? 微風で飛んじゃう風船くん」
「ああー? いいぜ。どっちが高く飛ばすか、勝負するかぁ?」
ケンバスと秋司はお互いに鋭い視線を向ける。
「はーい、皆さんこんにちは。教員の須々根玲加です」
秋司とケンバスが一触即発状態になっていると、ホールに教員の須々根たちがやってきて新入生に声をかける。
その声を聞いて秋司とケンバスは視線を交えながら距離を取る。
新入生はまず自分が入る寮を決める。
寮は四つに分かれており、東にある第一寮、西にある第二寮、北にある第三寮、南にある第四寮がある。
生徒は六年間、同じ寮で過ごすことになっている。
また、灯詠学園には寮対抗のイベントもある。
そのため、寮分けは重要になる。
そんな寮の決め方は、くじ引き。
新入生は四つあるくじの列に並び、順番にくじを引いていく。
秋司は透とともに並び、自身の順番を待つ。
そして、少しすると順番が回ってきた。
うーん、なんか緊張するな・・・。
秋司は一回深呼吸をしてから、箱の中に右手を入れてくじを引いた。
四寮だ。
秋司が折られた紙を開いて見ると、四と書かれていた。
秋司は近くにいる教員に名前と自分が引いた紙に書かれていた番号を伝えた。
秋司の後に引いた透は第一寮だった。
秋司は透と分かれ、第四寮の新入生が集まる場所に向かった。
うーん、みんな、はじめましてかな?
あっ、町野さんがいる。
それにあの人は、入学試験の時、バスが見つからなくて焦っていた人だ。
秋司は同じ第四寮の生徒たちを見渡した。
「えーっと・・・。二人まだ来ていませんね」
一人の事務員が須々根に報告する。
「遅刻ですかね・・・。二人には後ほど残ったくじを引いてもらいましょう」
須々根はくじの入った箱を撤収させ、新入生をそれぞれの寮に向かわせた。
秋司は灯詠学園中心部の南にある第四寮に向かった。
寮は五階建ての一つの建物だが、一階だけが繋がっており、二階以上は別々の建物のように建っている。
男性が右側、女性が左側の寮に住む。
秋司は寮の中に入り、右側のロビーに集合し再びくじを引かされる。
今度は部屋を決めるくじのようだ。
秋司は順番が来ると、右手を箱の中に入れ一枚の紙を取った。
十二って書かれてる。
新入生はくじを引き終えると、三階まで階段で上がった。
秋司は扉に三一二と書かれている部屋に入った。
ひ・・・、ひろーい。
寮では二人一部屋らしいけど、それでも広い・・・。
秋司が部屋の中を見渡していると、一人の新入生が部屋の中に入ってきた。
「ああー、なんだよっ」
その生徒、今村柊真は部屋の入り口付近の壁に荷物をぶつけながら部屋に入ってきた。
あっ、あの人は入学試験の時にバスが見つからなくて、焦っていた人だ。
「こんにちは。牧本秋司です。同じ部屋ですね。お願いします」
「ああー、よっ。今村柊真。よろしくっ。あわわわわっ・・・」
秋司と柊真は笑顔で挨拶を交わした。
しかし、荷物を持っていた柊真はその途中でバランスを崩し、左側に倒れる。
秋司は部屋の窓から外を眺めた。




