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43話 合格発表日

桜日の南部にあるべいこま村。


「んんーー・・・。帰って来たー」


二日間かけて桜日最北部の白妙地区から帰って来た秋司。

秋司は久々にべいこま村の空気を大きく吸った。

既に夕日が山々を照らしている時間帯。


「あら、秋ちゃん。おかえりー」

「おう秋司ー。久しぶりだなー」

「うん、ただいまー」


秋司が自宅に向かって歩いていると、村民が声をかけてくる。


「ただいまー」

「おうっ。おかえりー。試験どうだったー?」

「ちょ・・・。健治ー。いきなり過ぎるでしょー。おかえり、秋司」


秋司が家の戸を開けると、健治と佑香が玄関までやってきた。


「おう、秋司。久々じゃな」


浮符鄔はゆっくりと玄関まで歩いてくる。


「み、みんな・・・。なんでいるのー?」


健治と佑香、浮符鄔の三人は、今日秋司が帰って来ることを知っており、修行を終えると秋司の家に足を運んだのだ。

そんな三人を見て驚き、また嬉しそうにする秋司。


「でっ、どうだったんだよっ。試験はー?」


健治は秋司の肩に腕を回し、笑顔を浮かべた。


「うーん、多分不合格。ダメだった・・・」

「・・・」


秋司の声を聞いて、笑顔が消える健治。

佑香の表情からも明かりが消える。


「でも・・・。なんか、すーっごく楽しかった。全部出し切ったし、最高だった」


秋司は満面の笑みを浮かべながら、大きく明るい声を出した。


「ははっ。そうかー。それならよかったー。まっ、俺も多分不合格だし、じいさんに面倒見てもらおうぜー」

「えぇー。やじゃけどーー」

「なんだとー。いいじゃねーかよジジイーー」


健治は秋司の明るく清々しい様子を見て、明るい笑顔を浮かべた。

秋司は健治と浮符鄔の、いつも通りのやり取りを見て、にこやかに微笑んだ。


「ふふっ。さあ、できたわよ。今日はお鍋。たーくさんあるから、みんなも食べていって」


秋司の祖母は食卓の真ん中にお鍋を置いた。


「やったー。いただきまーす・・・。ごほんっ。では、秋司の試験お疲れ様会を始めまーすっ。では、皆さんコップを持ってー・・・、かんぱーいっ」


健治は急にこの場を仕切り出した。

健治の合図で五人は笑顔でコップを合わせる。


「健治くんと佑香ちゃんも試験お疲れっ」

「おうっ」

「うん、ありがとう」


秋司と健治、佑香はもう一回コップを合わせる。


「あー、健治くんまたお肉食べてるー」

「はぁー。たまたまよそったのが肉だったんだー」

「・・・。浮符鄔さん、えのきばっかりー」

「な・・・。たまたまよそったのが、えのきなんじゃーー」


秋司、健治、佑香、浮符鄔の声が順に響く。

この後もしばらく、明るく騒がしい時間が続いた。

そして、爆睡状態に入る秋司と健治。

佑香と浮符鄔は自宅に帰った。


翌日から再び浮符鄔の丸太小屋に足を運んだ秋司。

灯詠学園の合否が分かるのは約一ヶ月後。

秋司と健治、佑香はいつも通りの日課、午前中に農業の手伝い、午後は浮符鄔の元で修行を行っていた。


時は流れ、灯詠学園合格発表の一週間前。

この日は午前中から浮符鄔の丸太小屋に集合することになっている。

この日は健治と佑香が受験した桜嵐学園の合格発表日だ。

秋司が浮符鄔の丸太小屋を訪れると、既に健治と佑香の姿があった。


二人とも早いな・・・。


朝早く浮符鄔の丸太小屋に向かった秋司だったが、もう既に二人の姿があり、少し驚いた。


うーん、ドキドキする・・・。

大丈夫、二人とも合格しているよ。

健治くんは不安を感じていたけど、大丈夫。


秋司は一旦足を止め、深呼吸をしてから三人の元まで走った。


「おう、秋司ー」

「おはよう」

「うん、おはよう・・・」


秋司に声をかける健治と佑香。

秋司は緊張で声が震えている。

表情も硬い。


「ふっふっふ・・・。見たまえ秋司ーー。この、合格の二文字をーー」

「合格・・・。えぇーー。おめでとうーー。すごーーい。やったね健治くんっ」


目を閉じながらドヤ顔で合格通知を右手で掲げる健治。

健治の言葉を聞いた秋司の表情は一気に明るくなり、大きな声で祝福する。


「はーはっはっは。これが俺の実力だー」

「・・・。あんなに落ち込んでいたくせにー。もう俺はダメだ・・・とか」

「うっ・・・。はっは・・・。俺がそんなこと言うわけないだろー・・・。はっはっは・・・」


佑香のツッコミを聞いて、声が小さくなる健治。

笑い声もぎこちない。


「佑香ちゃんはっ?」

「うん、合格ー」


秋司は勢いよく佑香の方に振り向き、質問する。

佑香は、右手でピースをしながら、にこやかな笑顔で答えた。


「やったー。おめでとうー」


凄い。

二人とも合格。

本当に凄いよ。


「でも、なんで俺、合格したんだ? 正直、学力試験、そうとーやらかしたぞ。特に最後の五問。答え分からなかったし」


健治は喜びつつも、疑問をこぼした。


「ほっほ。健治よ。その五問、白紙で出したのか?」

「いいや、答えは分かんねーけど、自分なりの解き方を書いた。なんか最後の五問だけ回答欄が大きかったし」

「うむ。じゃから合格したんじゃろうな」

「え・・・」

「例え答えが分からなくても、解き方を書いて当たっておれば、いくらか点数をもらえるんじゃ。答えが分からなくても、少しでも合格するために諦めずに全力を尽くした。これが合格した理由じゃろうな」

「・・・。ま、まあ、そんなことだろうと思ったぜ」


浮符鄔の言葉を聞いて、驚いた後、照れる健治。


「まあ、つまりだ秋司。秋司もまだまだ分かんねーぞ。俺が合格できたんだ。その実力試験でゴールできなかったからって、合格できねーとは限らないぜ。だから、まだ諦めんなっ」

「うん、ありがとうー」


健治の言葉を聞いて、明るく微笑む秋司。


「・・・。俺はもうダメだーとか、合格できねーからジジイ、これからも頼むーとか言っていたのにー。なーに急にカッコつけてるのー?」

「うっ・・・」


佑香の冷静なツッコミを受けて、猫背でその場をゆっくり離れる健治。


「あはは・・・。そうだっ、合格のお祝いしないと」

「うん、でもそれは一週間後ね」


秋司の明るい声を聞いて、佑香は微笑みを浮かべながら声を発した。


一週間後・・・。

僕の合格発表日・・・。


「そうそう。まあ、合格できなくてもパーティー開こうぜっ・・・。いってぇーー」


健治はニヤケながら秋司の肩に腕を回して声を発した。

そんな健治の言葉の途中で、佑香は健治の頭を右手で殴った。

二人のやり取りを見た秋司は微笑みを浮かべた。




そして一週間後。


「秋ちゃーん。灯詠学園から封筒が届いたよー」


秋司の祖母は封筒を秋司に手渡した。


うぅ・・・。

緊張する・・・。


秋司は唾を大きく飲み込み、目を閉じ、深呼吸をしてから目をゆっくり開いた。

そして、封筒の中に入っている紙を見る。


「はあっ・・・」




「ふぅー・・・。秋司、まだかな・・・」

「ちょっと緊張しすぎだよ健治」


浮符鄔の丸太小屋に健治と佑香の姿があった。

二人とも落ち着きがなく、健治は顔が真っ青、佑香はその場で歩き回っている。


「でも・・・。遅くね・・・。もしかして・・・」

「まだ届いてないだけだよっ。もう健治、うるさいっ」


さらに顔が真っ青になる健治と、歩くスピードが上がる佑香。

そんな二人と、目を閉じて椅子に座っている浮符鄔の元に向かって走る秋司。


「あっ、来た・・・」

「んっ。秋司ー」


健治と佑香は秋司の元へ走り出す。


「・・・。ほっほ。秋司も分かりやすいのう」


健治と佑香の声を聞いて、ゆっくり目を開き、秋司を見つめる浮符鄔。

そんな浮符鄔の目には、爽やかな表情で走ってくる秋司の姿が映っていた。


「ど、どうだった・・・?」


佑香は眉を少し寄せ、そっと小さい声で尋ねた。


「うんっ。合格っ」


秋司は満面の笑みで答えた。


「・・・。よ、よっしゃーー」


その声を聞いた健治は大声を上げた。


「おめでとうっ、秋司ー」


佑香は優しい微笑みを浮かべた。

少しの間、三人はその場ではしゃいでいた。

少しすると、秋司は浮符鄔の近くに向かった。


「浮符鄔さんっ、合格しました」

「うむ。おめでとう、秋司」


秋司の報告を聞いて、温かい微笑みを浮かべる浮符鄔。


やったー。

合格できたー。

灯詠学園に行けるっ。

あそこで血転術を学べるっ。

やったーー。


秋司は真っ直ぐな視線と明るく力強い笑顔で青空を見つめた。


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