42話 バイバイ、灯詠学園
フィーべにある第四試験会場。
実力試験を終えた受験生たち。
受験生は試験会場の南側に集合した。
「あ・・・。秋司くん」
「あっ、ツーサさん」
秋司に気がつき、近くまでやって来るツーサ。
「その・・・、ごめんなさい・・・」
「ん? 何が?」
秋司は頭上にハテナを浮かばせているような表情で、謝罪するツーサの声に答えた。
「三人を置いて、私はゴールしちゃって・・・」
「ゴールできたのー。よかったー」
ツーサの言葉を聞いて、明るく喜ぶ秋司。
「え・・・。あ、ありがとう」
ツーサは下を向きながら少しだけ表情が明るくなった。
秋司たち十チームは、ボカへが箱を西側出口で試験官に提出したため、出口に到着したツーサもゴールできていた。
「えー、全員集まりましたね。お疲れ様でした。これで灯詠学園入学試験は終了です。これから灯詠学園に戻り、その後解散になります」
試験官の指示で行きと同じバスに乗る受験生たち。
秋司は十四番バスに乗った。
バスは離陸し、灯詠学園に向かった。
秋司はバスに乗っている約十五分間、ずっと目を閉じ、眠っていた。
眠っていると、すぐに灯詠学園の駐車場に到着し、バスから降りる秋司。
第四試験会場で実力試験を行なっていた受験番号三百一番から四百番の受験生は集まった。
「ええー、これで灯詠学園入学試験は終了です。結果は入学二週間前にお届けします。それではお疲れ様でした」
試験官の言葉を聞き、解散する受験生たち。
僕は桜日行きのバスに乗るんだよね。
でも、その前に・・・。
あ、いた・・・。
「トレッチくん」
「ん? おう秋司ー」
秋司はウルーリア行きのバスに向かおうとしていたトレッチに声をかけた。
「色々ありがとうー。トレッチくんと同じチームでよかったよ」
「い、いやー・・・。あはは・・・」
秋司の真っ直ぐな表情と言葉を聞いて、少し頬を赤らめ、照れるトレッチ。
「ま、まあ、試験はあれだったし、この学校ではもう会えないかもしれないけど、いつかウルーリアに来てよ」
「うんっ。トレッチくんも桜日に来て。会えるかは分からないけど」
「そこは会える前提でいいんだよーっ」
トレッチと秋司は満面の笑みを浮かべた。
「じゃあっ」
「うん、じゃあねっ」
トレッチはウルーリア行きのバスへ向かって歩き始め、秋司はグリューツ行きのバスに向かって走り出した。
はあはあ・・・。
リスタくん、もうバスに乗っちゃっているかな?
・・・。
もしくは迷子・・・。
うーん、見当たらないなぁ・・・。
秋司は悲しそうな表情を浮かべながら、桜日行きのバスが停められている場所に向かった。
「はわーぁ・・・。ねみぃー・・・」
「あっ、リスタくんっ」
その途中で、大きなあくびをし、目に涙を浮かべながら歩いているリスタに出会った。
「よう、秋司。そうだっ、グリューツ行きのバスってどこか分かるか?」
「・・・。また迷子なんだ?」
「ちがっ・・・。道に迷っているんじゃなくて、どこにあるかが分からないだけー」
・・・。
絶対迷子だ・・・。
「あっちだよ」
「オッケー、サンキュー。じゃっ、またなぁー」
秋司にグリューツ行きのバスが停められている場所を教えてもらったリスタは、眠たそうな表情のまま、グリューツ行きのバスが停められている方を向き、秋司に右手を軽く振った。
「うんっ、またねっ」
秋司はリスタの背中を少しの間見つめた後、桜日行きのバスが停められている場所に向かった。
バス乗り場に移動すると、誰かを探している透の姿があった。
「あ、秋司くんー。一緒に帰ろう」
透は秋司を見つけると、秋司の側にやってきた。
「うん」
透は秋司が住むべいこま村の近くにある町で暮らしている。
それもあり、一緒に帰ることにした二人。
二人はバスに乗り、灯詠学園を発った。
行きとは違い、離陸する時に叫び声を上げることはなかった。
バイバイ、灯詠学園。
また来れるかな・・・。
ふっ、でも、出し切ったし、なんか楽しかった。
秋司は窓から爽やかな笑顔で灯詠学園を見つめる。
その後は、目を閉じ、熟睡した。
しかし、三十分で起こされる。
バスの乗り換えだ。
そんなやり取りを繰り返し、灯詠学園を出発してから約三時間後、フィーべと桜日の境界線付近に到着した。
「んーー」
秋司はバスから降りると、両腕を斜め上に伸ばし、身体を伸ばした。
秋司と透は境界線上にある出入り口(建物)に向かった。
簡単な手続きを終え、桜日に入った二人。
「秋司くん」
「ん? 町野さん」
桜日の白妙地区に入ると、茉白が秋司に話しかけてきた。
「そのー・・・、色々ありがとう」
「こっちこそ、ありがとうー。町野さんは、桜日のどの辺に住んでいるの? 南部?」
「ううん。西部だよ」
「そっかー。じゃあ、ここでお別れだー」
「秋司くんはどこに住んでいるの?」
「南部だよ」
「そっか。帰り道、違うね」
「うん。あっ・・・、あのバスだー。じゃあっ。気をつけて帰ってね。バイバイー」
「うん、秋司くんも。バイバイ」
秋司は自分が乗るバスがやって来たのを見て、バスに向かってゆっくり走り出す。
そして、秋司は振り返りながら茉白に手を振ると、茉白も小さく右手を振った。
秋司と透は南部に向かって出発した。




