39話 実力試験6 行く手を阻む、黄色いロボット
フィーべにある第四試験会場。
「はあっはあっ」
右手に小さな箱を握って走る茉白の姿がある。
そう、茉白は箱を見つけたのだ。
今から少し前、秋司とリスタが青色ロボットに囲まれていた頃。
トレッチと茉白は秋司を探していた。
そんな中、偶然瓦礫の下にある小さな箱を見つけた茉白。
トレッチと茉白は、このまま二人で行動するのか、それとも分かれて行動するのか話し合った。
箱を持ったまま秋司を探すのは危険。
だからといって、秋司を探すのを止めて二人で出口に向かうという選択肢は、二人にはなかった。
少しの間話し合った結果、茉白は出口に向かい、トレッチは秋司を探すことに決めた二人。
そして、今、茉白はこの試験会場を囲っている壁の一部に向かって走っている。
壁まで近づいた頃、そこにある瓦礫に身を潜めるボカへとツーサを見つけた茉白。
「あ、ボカへくんとツーサちゃん」
「お前は・・・」
茉白が二人に話しかけると、驚いた様子で反応するボカへ。
「あのね、私たち箱を見つけて・・・」
茉白はポケットから小さな箱を取り出すと、茉白の言葉の途中でボカへは勢いよく箱を奪い、そのまま壁に向かって走り出す。
「えっ・・・、ちょっと・・・」
その様子を見ていたツーサは戸惑いながらボカへに声をかけるが、既にボカへの耳には入っていない。
「いいの、ツーサちゃん。じゃあ、私は秋司くんを探しに行くね」
(これで私も秋司くんを探せる。早く見つけて箱のことを知らせないと)
茉白はツーサに声をかけ、すぐに秋司を探しに移動し始めた。
「はあはあはあ。これで僕は合格できる。僕はバカなあいつらとは違うんだ。僕だけが合格すればそれでいい」
ボカへは汚い笑みを浮かべながら壁を目指して走り続ける。
少しすると、右斜め前の壁にある出口が視界に入ってきた。
「見つけたぞ。もう少しだ。きっきっき。僕の勝ちだー」
勝ち誇った表情で走るボカへ。
しかし、そんなボカへの近くに一体のロボットが姿を現す。
(うん? なんだあの黄色いロボットは。青と赤しか見ていないが。まあいい。大丈夫だ。静かにゆっくり走れば気づかれな・・・)
ボカへはスピードを緩め、ゆっくりと走るが、黄色ロボットの姿を見失った。
黄色ロボットはボカへの右横に移動しており、ボカへの右頬を左拳で殴る。
「ごはっっ」
ボカへは左側へ思いっきり吹っ飛び、瓦礫に突っ込む。
「はあはあはあ。な、なんで・・・。あ・・・」
黄色ロボットは瓦礫に突っ込んで座り込んでいるボカへの正面に移動し、ボカへを見下している。
黄色ロボットはボカへに向かって右拳を握り、殴ろうとする。
「ひぃひぃ・・・。ぎゃああっ」
ボカへは目を閉じ、両腕を顔の位置まで上げる。
しかし、右拳は飛んでこず、衝撃音が鳴る。
ゆっくり目を開けると秋司が黄色ロボットの左側から黄色ロボットの左肩に右足で飛び蹴りを放っていた。
「・・・。ヒィ・・・」
ボカへは立ち上がり、すぐにその場から逃げ出す。
黄色いロボット?
初めて会ったな・・・。
秋司は黄色ロボットを注視する。
「なんだあいつ? 秋司と同じチームじゃないの」
情けない悲鳴を上げ、惨めに逃げ出すボカへを見ていたリスタは呆れたような視線を向けている。
「・・・。あーー、お前ーー。さっきはよくもやってくれたなーー」
しかし、黄色ロボットが視界に入ると、急に大声を上げるリスタ。
「ん? リスタくん、この黄色いロボット、知っているの?」
「こいつ、さっき俺のことを思いっきり殴りやがった奴だよっ」
ああ・・・、そっか。
リスタくんの右頬が赤くなっていたのは、このロボットのせいだったんだ。
このロボット、多分青色ロボットより全然強い。
でも、赤色ロボットほどではないかな。
うーん、どうしよう。
もうあまり時間がない。
箱を見つけないと・・・。
ん?
さっきボカへくん、箱のような物を持っていたような。
「はあはあ。秋司くん?」
「うん? ツーサさん」
秋司が考えを巡らせているとツーサが秋司の近くにやって来た。
「ツーサさん。箱を見つけたの?」
「え・・・。うん、茉白ちゃんが見つけたの」
箱を見つけた。
それならあとは出口から出ればいいのか。
「そっか。あれ、町野さんは?」
「茉白ちゃんとトレッチくんは秋司くんを探しているの」
「えっ・・・」
僕を探してる?
でも、それじゃあ危険も増すし、出口まで辿り着けない可能性も増える。
ごめん、僕がみんなとはぐれちゃったから。
・・・。
くっ・・・。
秋司とツーサが話していると、黄色ロボットは二人に向かって炎球を放った。
秋司はツーサの左前腕を左手で掴み、共に炎球を避ける。
うぅ・・・。
今はこのロボットをなんとかしないと。
「ツーサさんは出口に向かって」
「う、うん」
ツーサは秋司の言葉を聞くと、出口に向かって走り出した。
どうしよう。
足止めして二人を探しに行くか・・・。
「リスタくんはチームメイトを探しに行きなっ。それか出口に。もしかしたらチームメイトが箱を見つけているかもしれないし」
「んー。いや、俺はコイツをぶん殴る」
「えっ? でも」
「俺はコイツにぶん殴られてんだぜー。一発ぶん殴り返さねーと気が済まねー」
「リスタくん・・・。ふふっ。分かった。でも、まずはチームメイトを探しに行こう。僕もチームメイトを探したいし」
「・・・。いいけど、そしたらコイツどうするの?」
「足止めしよう。さっきみたいに」
「・・・。そしたらぶん殴れねーじゃん。まっ、試験が終わった後にでもぶん殴りに行けばいいか」
「・・・。それはダメじゃないー? ま、まあ、まずは足止めしよう」
「おうよっ」
秋司とリスタは黄色ロボットに鋭い視線を向ける。
「さっきの作戦でいくぞ」
「うん、分かった」
リスタは黄色ロボットに接近し、秋司から離れないようにその場に留まりつつ黄色ロボットから逃げ回る。
六角形、五角形、四角、丸、丸。
準備完了。
秋司は血転図式を描き終えると、リスタと黄色ロボットをじっと見る。
あれ?
リスタくん、さっきみたいに動きが鋭くないけど・・・。
スタミナがあまり残っていないのかな。
「ふがっ。いってーー」
り、リスタくんー。
い、今だ。
リスタは左頬を殴られ、秋司の左横まで飛んでくる。
秋司はリスタと黄色ロボットに距離ができた瞬間に立方体の結界を張り、黄色ロボットを閉じ込める。
「よし、チームメイトを探しに行こう」
「ぐぬぬ。あの野郎ー・・・」
秋司は倒れているリスタを起こし、二人でその場を離れる。
リスタは左手で赤く腫れている左頬を押さえ、涙目を浮かべながら黄色ロボットに視線を向ける。
「はっ・・・。秋司、あいつ結界から抜け出しやがった」
「えっ・・・」
リスタの声を聞き、振り返る秋司。
すると、結界から脱出し、二人に接近する黄色ロボットの姿が視界に入ってきた。
く・・・。
このロボット、強い・・・。
僕の結界じゃあ足止めにもならないか・・・。
秋司は苦い表情を浮かべ、足を止める。
「秋司ー。どうやらコイツをぶっ飛ばさねーと、仲間を探しにいけないらしいぜ」
「うん、そうみたい・・・」
「ふっ。それなら思いっきりぶっ飛ばそーぜ。俺は二回もコイツにぶん殴られているからな。丁度いいっ」
「リスタくん・・・。うんっ。ぶっ飛ばそうー」
苦い表情を浮かべていた秋司だったが、リスタの声を聞くと、表情が明るくなった。
試験終了まで残り八分。




