31話 灯詠学園入学試験 筆記試験
桜日最北部の地区の一つ、白妙地区。
フィーべとの境界線に接している地区。
その白妙地区に秋司と緋裕の姿がある。
灯詠学園入学試験一日目。
この日は午後から学力試験と血転術の基礎試験が行われる。
午前七時半頃、秋司と緋裕は白妙地区からフィーべに足を踏み入れた。
ここがフィーべ。
凄い自然がたくさん。
秋司の視界には、大自然が広がっていた。
「さあ、秋君。ここでお別れだよ」
「あ、そっか」
大自然を目の前に、釘付けになっていた秋司に緋裕が声をかけた。
ここから秋司と緋裕は別れる。
秋司は灯詠学園入学試験受験生を送迎する、空飛ぶバスに乗車する必要がある。
緋裕は受験生ではないため、そのバスに乗れないのだ。
「じゃあね、秋君。試験、頑張るんだぞ」
「うんっ。ありがとう。緋裕さんも気をつけてね」
二人は別れて歩き始めた。
えーっと。
僕の受験番号は三百五十番。
僕のバスは四番か。
秋司は、灯詠学園入学試験に応募した受験生に配られたしおりを見て辺りを見渡した。
少し歩くと、たくさんのバスが停められている滑走路に到着した。
一番、二番・・・。
あった四番。
赤い文字で書かれてる。
秋司は四と書かれたバスに近づいた。
もうすでに数人の受験生がバスに乗るために並んでいた。
しかし、まだバスの扉は開いていない。
確か、八時出発だっけ。
まだ十分くらいある。
「はあはあ・・・。八番ってどこだよーー」
ん?
迷子かな・・・?
秋司が列に並んでいると後方から八番バスを探している受験生らしき人の声が秋司の耳に入ってきた。
「ああーー。そこ、どいてくれー。時間がなーいっ」
ん?
なんか凄い焦っている人がいる。
自分が乗るバスが見つからないのかな。
今度は自分が乗車するバスを探している生徒の声が聞こえてきた。
「はいー。それでは四番バスに乗車する受験生のみなさん、バスに乗車してくださーい」
四番バスの運転手らしき人物が秋司たち待機している受験生に声をかける。
秋司はバスに乗った。
「うぅ・・・。こ、このバス・・・、大丈夫だよね・・・。墜落しないよね・・・」
「え? うん、大丈夫じゃないかな・・・」
分からないけど・・・。
秋司は自身の隣に座った受験生、小巻透の言葉を聞いて、少し不安を感じながら、バスの出発を待つ。
「おっ・・・。うわあああああ」
「ああああああ。きゃああああああ」
バスは滑走路を勢いよく走り、少しすると離陸した。
秋司と透は叫び声を上げた。
は、はやーーい。
空飛んでいるーー。
うわー、凄い大自然。
おっ、あれは村かな・・・。
って、速すぎてあんまり景色を見れないー。
秋司たちが乗っている送迎用のバスは、優れた生成術で作られており、かなりスピードが速い。
しかし、エネエルギー効率は良くないため、三十分ほどしか持たない。
このバスの速度でも灯詠学園まで三時間ほどかかるため、五回乗り換える必要がある。
秋司たち四番バスに乗っている生徒は灯詠学園送迎バスのバスターミナルで乗り換えを五回繰り返し、灯詠学園に向かった。
五回バスを乗り換えたけど、着陸する時、少し怖い・・・。
なんかバスに書かれている数字の色も全部違ったし。
でも、運転してくれる人は変わらない。
疲れないのかな?
最初にバスに乗り始めてから三時間後、灯詠学園がバスに乗っている受験生の視界に入ってきた。
ああ・・・。
ひ、ひろーー。
これが、学校なの?
秋司の目にも灯詠学園が映る。
広大な土地に建てられたいくつもの建物、敷地内に見られる広場や訓練場、自然のまま保たれているスペースなど。
そんな灯詠学園を見た秋司は絶句した。
四番バスは灯詠学園敷地内にある駐車場に着陸した。
受験生たちはバスを降り、駐車場に立っていた試験官の案内に従って歩き始めた。
・・・。
広すぎるよ・・・。
秋司はまだ少し茫然としていた。
そのまま少し歩き、ある建物内に入った受験生。
秋司たち四番バスに乗っていた受験生は入り口に二番と書かれた紙が貼られている教室に入り、席に座った。
教室内は、前方に大きな黒板があり、長机が並んでいる。
秋司は前から五列目の真ん中あたりに座った。
秋司の右横にはバスでも隣に座っていた小巻透、左横には肩にかかるくらいの黒髪の女性。
うぅ・・・。
いよいよ試験か・・・。
緊張するなぁ。
秋司は辺りをキョロキョロと見渡しながら試験開始時間を待つ。
手も少し震えている。
辺りを見渡すと、多くの受験生の姿が視界に入ってきた。
凄い、たくさんいる。
外国の人もたくさんいるなぁ。
灯詠学園には四国同盟の四カ国の業血司使いが大勢受験する。
桜日の桜嵐学園など、各国にある血転学校にも同盟国である他の三カ国の業血司使いは受験することができるが、その割合は多くはなく、受験生の七割ほどは自国の業血司使いが受験している。
灯詠学園はフィーべにある学校であり、四カ国が共同で運営している。
そのため、四カ国から大勢の業血司使いが受験する。
ふぅー。
落ち着こう。
秋司は目を閉じ、軽く深呼吸をして落ち着きを取り戻す。
秋司が集中力を高めていると、二番教室に試験管が数人やってきた。
「えー、試験官の白雲です。えー、筆記試験、配ります」
・・・。
えぇー、なんか凄いあっさりしてるー。
しかも、試験官さん、声ちいさっー。
試験官の白雲黎焚は黒い縁の眼鏡をかけ、白いマスクをつけている。
ボサボサの黒髪で、声は小さい。
ひもで首から下げるタイプの小さい名札をつけている。
そんな試験官、黎焚の指示で他の試験官は一斉に試験用紙を配り始める。
「えー、それでは始めー。あっ、えー、時間は二時間です。えー、カンニングはダメです。えー、他の受験生の邪魔をするのもダメです。えー、勝手に出歩くのもダメですー。えー、それ以外はなんでも大丈夫です。えー、始めー」
・・・。
始めよっ。
黎焚の合図を聞いて、一斉に試験を始める受験生。
秋司も鉛筆を握り、試験用紙に目を通す。
血転術の系統は十種類で、属性術、変化術・・・。
血転図式で描く図の種類は全十二種類で、丸、三角、四角・・・。
属性術の基本属性は八種類で、炎転、氷転・・・。
炎転の基本図式は丸、三角。
氷転の基本図式は・・・。
秋司は序盤、順調に回答を書いていく。
発動図式を一つ描くことで術として発動できる血転術を全て答えろか。
えーっと、変身術、召喚術、変化術、生成術、あと操術も術として発動できるよね。
次は計算問題か。
一つ目の問題用紙、血転術の問題を解き終えると、次は二つ目の問題用紙、計算問題に入った。
計算問題を解き終えると、次は歴史、その次は生物。
秋司は順調に問題を解いていき、最後の問題用紙に目を通し始めた。
えーっと、今日乗ったバスの番号とその番号は何色で書かれていたか、六色全て乗った順番に答えろ・・・か。
番号は四番で色は最初が赤、次が黄色、緑、紫、ピンク、最後が青だったかな。
うーん、自信ないなー。
最初と最後は合ってると思うし、色もこの六色だと思うけど、順番が不安・・・。
次の問題は、この教室には何人の受験生がいるか。
数えよう・・・。
いーや、ダメだー。
後ろを向いたら、カンニングになっちゃうー。
てか、この問題、一番後ろの人有利じゃんー。
うーん、そうだっ。
試験官の人、血転術は使っちゃダメって言ってなかったよね。
それなら身体術で感知能力を上げればいいんだっ。
そうすれば業血司の数で何人かわかる・・・。
僕、身体術の強化系の術、使えないんだった・・・。
えーっと、一列に十五人の受験生がいるから、あとは列の数さえ分かれば。
こうなったら、召喚術で生物を召喚して、人数を数えてもらおう。
あんまり大きな生物だと、他の受験生の邪魔になっちゃうし、ここは小さい生物。
秋司は念の為筆箱の中に入れておいたささえこまリスのまりすけの毛を取り出し、召喚術を発動した。
今の秋司は属性術、生成術、幻術に加えて、結界術と召喚術も扱えるようになっていた。
「おっ、秋司じゃん。調子ど・・・」
「しーー。今試験中ーー」
秋司はまりすけの口を押さえ、小声で囁いた。
「まりすけ、来てくれてありがとう。ちょっとお願いしたいことがあるんだけど」
「なんだ? カンニングか? 秋司も悪くなったなー。任せろっ」
「ちがっっ・・・。違うよー」
秋司はまりすけの言葉に対して、思わず大声を発しそうになる。
「机が何列あるか教えてほしいの。あと、席が埋まっているかも」
「何列あるか? 分かった。えーっと、一、二・・・。十二列だよー。席は埋まっているよー」
「分かった。ありがとうー」
「ついでにカンニングもしようか? なんなら、模範解答の紙、盗んでこようか? バレなきゃ大丈・・・」
「いーや、もう十分。ありがとう。またねっ。召喚解除ー」
秋司はまりすけの言葉の途中で遮り、召喚術を解除した。
・・・。
まりすけなら本当に模範解答奪ってきそうで怖かった・・・。
でも、まりすけのおかげで答えが分かった。
席が埋まっているってことは、横十五人と縦十二列をかければいいから、百八十人か。
よーし、次の問題だ。
次は、この会場にいる試験官の名前をフルネームで五人答えろ・・・。
分かるわけないじゃーん。
あ、でも、一人はさっき自己紹介していたよねっ。
えーっと、白雲・・・。
あの人、苗字しか言ってないじゃんっ。
どうしよう・・・。
あれ、でも試験官の人、名札をつけてる。
でも、名札、小さいよ・・・。
この問題、試験官は全員前にいるし、前の席の人、有利じゃん・・・。
でも、前の席の人からでも、見づらいくらい小さいんじゃ・・・。
うーん、この問題を解く方法は三つかな。
身体術で視力を上げるか、変身術で視力がいい生物に変身するか、召喚術で視力のいい生物を召喚するか。
でも、僕、身体術と変身術は使えないし、今召喚できる生物はまりすけだけだし。
うーん、消しゴム・・・。
そうだっ、この消しゴムを使ってレンズを作ろう。
この消しゴムはプラスチックでできているし。
この消しゴムに生成術を使ってレンズを作ればいいんだ。
名札の文字はかなり小さいし、対物レンズと接眼レンズを作るか。
でも、この消しゴムだけだと二枚は作れないかな。
一枚で、大きく、向きも正確に見えるレンズを作るしかない。
大丈夫、生成術は得意だし。
特別なレンズも作れる。
秋司は血転図式を描き、生成術を発動した。
五分後、レンズが完成した。
秋司はそのレンズを右目の前に持ち上げる。
よーし。
成功したー。
名前がはっきり見えるー。
えーっと、白雲黎焚・・・。
よし、五人フルネームで書けた。
あと二問か。
次は、20×5=80です。20×10=140です。では20×20=なんですか。
・・・。
えーっと、20×5って100じゃない?
それに、20×10も200じゃ・・・。
仮に、この問題では20×5=80だとすると、20×10=160じゃ・・・。
うーん、この問題、おかしいな。
それに、この感覚・・・。
もしかして、幻術?
確か罠みたいに、物に幻術を仕込むこともできるんだよね。
でも、そうした場合、幻術の強度はかなり弱く、幻術だと気づかれやすいっていう欠点があるはず。
この問題に目を通し始めた時、なんか違和感があったし。
ここは結界術を使おう。
秋司は結界術の基本図式を描き、発動図式にハートを二回描く。
自身に結界を張る血転図式だ。
やっぱり、問題が変わった。
えーっと、この問題の答えはありません・・・。
よーっし、最後の問題だ。
最後は・・・、し、志望理由?
なんか急に面接みたいな問題きたなぁ。
秋司は志望理由を書き終えて少しすると、試験終了の合図がかけられた。
うん、筆記試験は自信ありっ。




