3話 業血司使いの浮符鄔
「はあはあはあ・・・」
「はあはあはあ・・・。おい、どこにいるんだ・・・。その血転術を使える、浮符鄔っていう奴は・・・」
べいこま村付近にあるとある山。
そこに住んでいるという業血司使いの浮符鄔という男を探しに、山を探索している秋司と健治。
秋司と健治は既に息が上がっている。
そして、もう一人。
「だらしないなー。こんなんでへばってるなんて」
息が全く上がっていない佑香の姿がある。
佑香は二人から血転術の話を聞き、ついてきたのだ。
「はあはあはあ。どこにいるんだろう?」
「お前が分からなかったらどうすんだよー」
「この山のどこかで暮らしているって、言ってたんだけど」
「どこかって・・・。全部探すのは無理だぞ・・・」
秋司と健治は足を止め、辺りを見渡しながら会話する。
どうしよう・・・。
この山は、そんなに大きく、広いわけではないけど、健治君の言う通り、全部探すのは到底無理だなぁ。
でも、歩いて探すしかないよね・・・。
秋司は再び足を動かし始め、健治と佑香もそれに続く。
少し歩くと、あるものを見つけた。
「あー。ここに足跡があるよ」
「どれどれ。本当だー。おい、こっちにもあるぞ」
「うん。この足跡は人間の足跡だよね」
秋司は人間の足跡を偶然見つけ、続けて健治も少し離れた場所で同じ足跡を見つけた。
足跡の形とサイズから、人間のものだと推測した秋司は足跡を辿って、歩き始めた。
しかし、その足跡は途中で途切れてしまった。
「くっそー。なんで急になくなったんだぁー?」
「その血転術とかいうやつで、空を飛んだんじゃないのー」
「えー。いやー、まさかー」
足跡がなくなり、落胆の絶叫を上げた健治。
そんな健治の問いに、投げやりに答えた佑香。
そんな佑香の答えに健治は半信半疑な気持ちで声を発した。
「うーん。空を飛んだんだとしたら、この位置から真っ直ぐ上に登ってみよう」
「おう。そうだな・・・。って、それ信じんのかっ?」
佑香の言葉を聞いていた秋司は、足跡が消えた場所から上に登ることを提案した。
健治はそんな提案を聞いて、秋司にツッコんだ。
三人は少しの間、上に向かって山を登り続けた。
十分ほど登ると、一軒の丸太小屋が三人の視界に入ってきた。
「はあはあはあ、ここって・・・」
「はあはあはあ、ああ。その浮符鄔っていう奴の住処だろ」
激しく息が上がっている秋司と健治。
健治は、ここに浮符鄔が住んでいると考え、丸太小屋に近づく。
すると、三人の後方から声が聞こえてきた。
「お主ら、迷子かな?」
三人は声のする後方を見ると、そこには肩程まで伸びた白髪に、口元と顎が隠れる程の白い髭を生やした老人の姿があった。
その老人は両手でキノコの入っている竹籠を持っている。
「おい、こいつか?」
「分からないけど、多分そうだよね。聞いてみよう」
老人の姿を見た健治と秋司は小声で言葉を交えた。
「すいません。あなたが浮符鄔さんですか?」
「・・・。浮符鄔はわしじゃが、何かようかな?」
っは。
この人が業血司使いの浮符鄔さん。
「浮符鄔さんは業血司使いなんですか?」
「そうじゃが、それが何か?」
「あの、僕たちに血転術を教えてください」
「えー、やだけどー」
「えっ・・・」
どうしよう。
あっさり断られちゃった。
秋司は素直にお願いしたが、あっさりと断られてしまった。
「じいちゃんケチだなー。いいじゃねーかよ。少しくらい」
「やだねーだ。そこの女子ならまだしも、お主ら二人のような野郎のガキなんて、絶対やだねーだ」
「なんでだよジジイ。ただの変態じゃねーか」
「なんじゃとー。それが人にものを頼む時の態度かー。手土産の一つもないとはのぅ」
「断ったくせになんだよー。手土産って、金がほしいのか。そんなのねーよ」
「アホかっ。金なんざ要らんわ。ほれっ、さっさと帰れっ」
健治と浮符鄔は口論になる。
秋司と健治、佑香の三人はその場を離れ、少し下山する。
「なんだよ、あのケチなジジイは」
「うーん・・・」
「どうした、秋司」
「手土産を持って行けば、教えてくれるのかな?」
「手土産って、俺たち、金なんてねーぞ」
「それなんだけど、あの人、キノコが好きなんじゃないかな」
秋司は健治と会話をしながら、血転術を教わる方法を考えていた。
そこで、浮符鄔の言っていた手土産というワードに注目したのだ。
浮符鄔さんはいくつかのキノコを竹籠に入れて、手に持っていた。
恐らく、キノコを採りに行っていたんだろう。
この森には、他にも様々な木の実や山菜があるのに、キノコだけ竹籠に入っていた。
小川だってあるし、渓流もある。
魚だっているはずなのに、キノコだけ。
それなら。
「何か珍しいキノコを探そう」
「キノコー? でも、あのジジイがそれで喜ぶのか? それに、いっぱいキノコを持っていたんだろ?」
「うん。だから、珍しいキノコとかないかな?」
「そういえば、なんか変な熊が好んで食べるキノコがあって、それは中々手に入らないらしいぜ。なんか今日の朝、おばさんたちが話してるのを聞いたんだ」
「へえー。どんな見た目か分かる?」
「はっはっは。それが全く分からん」
「そ、そっか・・・」
秋司と健治、そして二人の会話を聞いていた佑香の三人は、熊が好んで食べるキノコを見つけ出し、浮符鄔に手土産として持って行くことを決めた。




