23話 超回復 桜嵐の梅河めぐみ
木漏れ地区外の砂原。
その砂原にある洞穴を見つけ、そこを目指して走る秋司と健治。
意識が朦朧としている佑香は秋司におぶわれている。
佑香が召喚したささひこは時間がきて帰っていた。
秋司と健治は洞穴に入ると、すでに二人の男性がそこで休んでいた。
「はあはあはあ。君たちは・・・」
「あっ。さっきの」
すでにいた男性の一人が声を出すと、健治はパッと目を開き声を出した。
そこにいたのはさっき共に戦ってくれた木漏れ中央学校の生徒二人だった。
二人の生徒はすでにボロボロで、洞穴の壁に寄り掛かり、座り込んでいた。
秋司はゆっくりと佑香を地面に下ろし、心配そうに見つめる。
「佑香ちゃん、大丈夫かな」
「大丈夫だよっ。佑香はそんな簡単にはへばんねーよ」
そう言いながらも、心配そうに見つめる健治。
佑香ちゃん・・・。
どうしよう。
ここから木漏れ地区まではまだ距離があるし、僕と健治君も急いで戻れるほどスタミナが回復していない。
せめてこの物だけでも木漏れ地区内に運ぶことができれば・・・。
でも、二人の生徒さんもボロボロで、遠くまで動ける状態じゃない。
ここは一旦休憩するしかないか・・・。
今にも木漏れ地区内に戻りたい秋司だったが、自分の状態などを考慮してここで休むことにした。
「ごめんな。さっきは役に立てなくて」
「いいえ。二人のおかげで助かりました」
生徒Aは秋司たちに暗い表情で言葉を発するが、秋司は明るく感謝を伝えた。
「ところで、あいつは何が目的なんだ?」
「それは分からないけど、よからぬことを企んでいるのは確かだ」
健治の質問に、生徒Bが答えた。
生徒たちによると、志岳はここ数日、木漏れ地区周辺や木漏れ地区内に度々足を運んでいたらしい。
そこで怪しい動きを見せていたため、木漏れ地区内の業血司使いの耳には志岳の存在が入ってきていたらしい。
そこで調査していた二人は志岳らしき人物を見つけ、ここへやって来たそうだ。
あの人は志岳っていうんだ。
何が目的なんだろう?
うん?
誰か来る。
四人が会話を交えながら休んでいると、誰かが洞穴に近づいてくるのを感じた秋司と健治、二人の生徒。
秋司と健治は座っていた体勢から立ち上がり、洞穴の入り口に視線を送る。
ん?
誰だろう?
女性だ。
「あ・・・。大変。大丈夫ですか」
洞穴に入ってきた一人の女性、梅河めぐみは倒れている佑香の元へ駆け寄る。
「・・・。はっ。その校章は・・・」
生徒Aはめぐみの左胸の位置に描かれている校章を見て驚いた。
「ねーちゃん、誰だー?」
「私は梅河めぐみといいます」
健治は不思議そうな表情で質問した。
めぐみは佑香の近くで正座しながら答えた。
「桜嵐学園の梅河めぐみ・・・、さんですか?」
生徒Aはさっきよりもさらに目を大きく開け、驚いた表情で尋ねる。
「桜嵐・・・? なんだそれっ?」
相変わらず頭の上にはてなが浮かんでそうな表情で質問する健治。
「えーっと、簡単にいうとこの国で一番凄い血転学校だよ」
「この国一番・・・、すげーー」
「あはは・・・」
生徒Aの説明を聞いて、目をキラキラ輝かせながらめぐみを見つめる健治。
秋司も声を発してはいないが健治と同じように目を輝かせながらめぐみを見つめる。
めぐみはそんな健治と秋司の様子を見て、困ったような、また少し照れたような表情で軽く笑った。
「そうだっ、ねーちゃん。今俺たち敵と戦ってたんだけどさー。手ー貸してくれよっ?」
健治は明るい表情でめぐみにお願いする。
「ごめんなさい。私、戦闘は苦手で・・・」
めぐみは下を向きながら、申し訳なさそうに答える。
「ふーん。そっか。分かったー」
健治はめぐみの答えを聞いて、深く聞かずに明るく返事をした。
「敵というのは・・・。どこにいるの?」
「少し前に結界に閉じ込めたんですけど、今はどうなっているか分かりません」
めぐみの質問に答える秋司。
秋司は状況を説明した。
「そっか。その志岳という人は今秋司君が持っている物を狙っているんだ」
「はい。なので一刻も早く木漏れ地区内に戻りたいのですが、スタミナと業血司がなくなってしまって・・・。あ、でもスタミナは回復しましたけど」
「それなら、秋司君と健治君は木漏れ地区に急いで。その前に・・・」
めぐみは左手を秋司の胸の前に、右手を健治の胸の前に上げる。
そして、それぞれの手で基本図式にハート、三つ葉、丸を描き、発動図式に六角形を五つ描く。
すると・・・。
「あ・・・。スタミナが・・・」
「本当はスタミナも完全には回復していないんでしょ?」
秋司はスタミナが一気に回復するのを感じて声を漏らした。
めぐみは微笑みながら二人を見つめて声を発した。
スタミナの回復を終えると、めぐみは再びそれぞれの手でさっきと同じ基本図式を描き、発動図式に星を五つ描く。
すると・・・。
「すげーー。業血司が全回復した・・・」
健治は、僅か数秒で自身の業血司が回復するのを感じて声を漏らす。
(流石・・・。この国で三本の指に入ると言われている回復術の使い手、桜嵐の梅河めぐみさん。途轍もない回復術だ・・・)
めぐみの回復術を見ていた生徒Bはあまりの凄さに呆然とした表情を浮かべている。
「うん。これで大丈夫。早く木漏れ地区に行きなっ。佑香ちゃんのことは私に任せてっ」
「はいっ。佑香ちゃんのこと、お願いします」
「おうっ。もしあいつがここに来たら、お前が欲しい物は俺たち(秋司と健治)が持っているって言ってくれっ」
めぐみの声を聞いて、秋司と健治は順に答え、洞穴を出て木漏れ地区を目指し、走り出す。
凄いな・・・。
回復術はかなり繊細に業血司を扱わないとできないって浮符鄔さんが言ってたし。
それに集中力も高くないと発動すらできないって。
他の術より、業血司(無駄なく扱えないと)もスタミナ(神経を使うことと集中力を含む)も使うらしいし。
僕は回復術を全く使えないし。
そんな回復術をこんなにも使いこなせるなんて・・・。
志岳っていう人も、敵だけど凄く強いし。
凄い人がたくさんいるんだなぁ。
秋司は走りながら空を見上げ、微笑みを浮かべた。




