22話 VS志岳
木漏れ地区外にある砂原。
そこで志岳と戦っている秋司と健治、佑香の三人。
「いくぞ、秋司」
「うんっ」
健治と秋司は志岳に向かって走り出す。
業血司はほとんどない状態。
それなら、近接戦、体術で戦うしかない。
(このガキども、ほとんど業血司を回復できていないな。ということは回復術ではなく自然回復を待っていたのか。だが、自然回復じゃあ、すぐには回復できないだろう。まあいい。ガキにしてはなかなか面白いし、少し体術で遊んでやるか)
志岳は余裕の笑みを浮かべながら、二人が近づいてくるのを待つ。
二人は接近すると、秋司は志岳の左斜め前から、健治は右斜め前から打撃を繰り出す。
志岳は余裕の笑みを浮かべながら二人の打撃を全て完璧にガードする。
く・・・。
最近は浮符鄔さんに体術の修行もつけてもらっているけど、まだまだだなぁ・・・。
全然命中しない。
全てガードされている。
「ふっ。血転学校に通えない歳のガキにしては体術もなかなかだな」
志岳は同時に二人の腕を掴み、投げ飛ばす。
「うわー」
秋司と健治は空中で体勢を整え、地面に両足をつけて着地する。
うーん、どうしよう・・・。
完全に遊ばれている。
このまま戦っても勝ち目はない。
あいつの狙いは僕が持っている物。
それなら一旦みんなで逃げるか?
いいや、あいつからは逃げられない。
すぐに追いつかれる。
あっ。
秋司が今の状況を整理していると、二人の男性が志岳と秋司の間に現れた。
誰?
「君たち大丈夫か?」
「おう。お前ら、誰だ?」
「僕たちは木漏れ地区にある血転学校、木漏れ中央学校の生徒だ。まあ、君たちの味方だ」
生徒Aは健治の質問に答える。
木漏れ中央学校?
血転術を学べる学校かな。
「やれやれ。少し遊びすぎたか。面倒なことになる前に、さっさと例の物を奪うか」
「お前が志岳か? 最近、木漏れ地区周辺で怪しい動きを見せていた男だな?」
志岳の独り言に反応する生徒B。
志岳に鋭い視線を送っている。
二人の生徒は志岳に接近し、打撃を繰り出す。
(このガキどもが来たということは、いつ増援が来てもおかしくない。さっさと片付けるか)
志岳は両拳に雷転雷拳を発動し、二人の生徒を殴る。
「ごはっ」
二人の生徒は志岳と少し距離を取り、生徒Aは炎転炎球を、生徒Bは岩転岩棘を放つが志岳は全て避ける。
佑香の水濡重衣で水浸しになり、動きが鈍くなっていた志岳だったが、すでに水を蒸発しきり、動きが元に戻っていた。
「はあ。木漏れ中央学校の生徒はこの程度か・・・。さっきの小娘の方がよっぽど相手になったぞ。血転術雷転、電響」
志岳が発動図式を描き終えると、二人の生徒の前に一筋の稲妻が走り、すぐに電気が生徒たちを襲う。
「ぐはぁぁぁ」
まずい。
あの攻撃はさっき僕と健治くんが食らった術。
全身に電気が流れて、動けず、ダメージを受け続ける。
うん?
あいつ(志岳)、両腕を斜め下に伸ばしたまま動いていない。
もしかして、この術を使っている間は動けないのか?
それなら。
「血転術水転、水放」
秋司は右手で水放を放つ。
それを見た志岳は右に移動して避ける。
すると、生徒たちに流れていた電気が止まり、二人の生徒はその場に尻をつける。
「血転術炎転、炎球」
健治は志岳が秋司の水放を避けた瞬間に炎球を放った。
しかし、志岳はその炎球も簡単に避ける。
(木漏れ中央学校のガキよりも、こいつらの方が厄介だな)
志岳はまず秋司に接近し、打撃を繰り出す。
秋司はなんとか最初の二発はガードするが三発目はガードできず、志岳の左拳が左腹部に命中する。
ぐっ・・・。
志岳は少し下がった秋司の顔を目掛けて右フックを繰り出すが命中する前に健治が志岳の左側から右足で飛び蹴りを当て、その衝撃で志岳を右側へ少し移動させた。
秋司はすかさず右拳で志岳の腹部を狙うがそれを右手で受け止める志岳。
そのまま秋司を投げ飛ばす。
健治は地面に着地すると同時に左ストレートを志岳の顔目掛けて放つが左手でそれを受け止め、秋司と同じように投げ飛ばす志岳。
「血転術岩転岩・・・」
志岳が秋司と健治に岩棘を放とうとするが、志岳が血転図式を描き終える前に二人の生徒が殴りかかる。
「鬱陶しいな。邪魔だ」
志岳は生徒の打撃をかわしながら風転風出を発動し、二人の生徒を順に吹き飛ばす。
「ごはぁぁぁ」
二人の生徒はかなり遠くまで吹き飛ばされた。
生徒さん・・・。
まずい、僕も健治君も業血司がもうない。
「さてと、誰が持っているんだ? 素直に渡せば、このまま帰ってやるが、どうだ?」
く・・・。
どうする?
これ以上は戦えない。
みんなが無事なら渡しても・・・。
でも、なんでこいつはこれが欲しんだろう?
お金目当てじゃないなら、何が目的で?
うん?
秋司が考えを巡らせていると、志岳を閉じ込めるように、正四角柱の結界が張られる。
「ちっ・・・。こいつら(秋司と健治)に気を取られて、一番厄介な小娘を忘れていた」
佑香が召喚しているカササビのささひこが結界を張り、志岳を閉じ込めた。
(はあはあ。私が召喚したささひこの結界じゃ、すぐに破られる。私がなんとかしないと・・・)
佑香は基本図式に六角形、五角形、四角形を描き、発動図式にも六角形、五角形、四角形を順に描く。
「血転術結界、重ね維」
佑香はささひこの結界に、自分の結界を加えた。
「はあはあはあ・・・」
「ゆ、佑香ちゃんー」
秋司はその場に倒れそうになる佑香に駆け寄り、倒れないように支える。
佑香ちゃん。
今の術、相当無理したんだ。
でも、おかげで時間は稼げる。
いくらあいつでも、今すぐには動けないだろう。
秋司は結界に閉じ込められている志岳に視線を向け、健治とともにその場を去る。
「くっくっく。くーはっはっは。あの小娘め。こんなことまでできるとはな。後で覚えていろ」
志岳は思いっきり笑い声を上げた後、鋭い視線を秋司におぶられている佑香に向ける。




