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20話 VS盗賊

木漏れ地区外の砂原で、盗賊と対峙している秋司と健治、佑香の三人。


相手は二人、こっちは三人。

数的には有利。

でも、佑香ちゃんの木叩を避け切るほどだ。

実力は相手の方が上だと考えた方がいいかな。

さっきの図式は、恐らく身体強化だ。

それでスピードが上がって、佑香ちゃんの攻撃をかわした。

むやみに業血司を使わない方がいいな。


以前とは異なり、冷静に分析できている秋司。

健治も、すぐに突っ込まず、それでいて熱い気持ちで溢れている。

絶対取り返すと。


「ふんっ」


盗賊Aは三人に向かって真っ直ぐ突っ走ってくる。


「う・・・。血転術風転風出」


その動きを見た秋司は咄嗟に右手で風出を発動する。

秋司が放った突風を盗賊Aは右に移動することでかわし、再び真っ直ぐ三人に向かって走り出す。


う・・・。

いきなり業血司を使っちゃった。

しかも、避けられた。

でも、確か身体術の強化系血転術は、少なからず常に業血司を消費し続けるはず。

相手の業血司が尽きるまで耐えることができれば・・・。

だからといって、こっちが血転術を使って外せば、先に限界がくる。

だけど、血転術を使わないと、近接戦になってあのスピードについていけず、劣勢になる。

一対一では厳しいかもしれないけど・・・。


「あいつ(盗賊A)は僕が相手するから、健治くんはもう一人(盗賊B)をよろしく。佑香ちゃんは遠くから僕たちをフォローして」


佑香ちゃんは業血司量も多く、使える血転術の幅も広い。

それに加えて、威力も精度も高い。

僕の攻撃は簡単に避けられても、佑香ちゃんの攻撃を避けるのは一苦労のはず。

あとは、あのスピードで繰り出される打撃とあれを警戒して・・・。


盗賊Aは秋司に打撃が届く距離まで接近した。




盗賊Bも健治に接近し、打撃を繰り出そうとする。


「いくぜ。変身ー」


健治はあらかじめ変身術の血転図式を描いており、さらに左手でカササビの毛を握り締め、盗賊Bの打撃が命中する前に変身術を発動してカササビ(ささひこ)になった。


長くはもたねーし、今の俺じゃあ、ささひこの実力を引き出すことはできねーが、それでもこいつよりは速いだろ。


健治は姿が変わったことで盗賊Bの右ストレートを避けると、すぐに思いっきりジャンプして滑空を始める。


「こいつ、速い・・・」


カササビは、基本的に上空から傘が降ってくるようにゆっくりと降下する動きを頻繁に行う生物だが、いざ滑空を行うと、かなり速く動きの制御も上手い上にほとんど降下せずに滑空し続けることができる。

さらに、降下しても風を地面に放つことで再び滑空状態に戻ることも可能。

ただ、スタミナはそれほど多くはないため、長時間猛スピードで滑空することはできない。

しかし、今は健治がカササビに変身している状況。

変身しても体力とスタミナは基本的に本人の状態のまま変化しない。

体力とスタミナに突出した生物やそれらに関する特別な力を持っている生物を除いては。

そのため、今の健治は、カササビのささひこのスピードを完全に出し切ることは到底できないが、スタミナ(健治の場合は根性など、気持ちの強さも含まれる)はかなり多いため、本来のカササビよりは長い時間、滑空することができる。

健治は右上、左上とトリッキーな動きを混ぜながら滑空し、それを追う盗賊Bを翻弄する。

さらに、優香が健治には当たらないように水放を放つ。

盗賊Bはなんとか水放を避け、狙いを佑香に変えようとするが、その隙に健治が炎球を放つ。

滑空しながら炎球を放ったため、威力も普段よりは弱く、大きさも小さいが盗賊Bに命中する。


「くっ・・・」


盗賊Bは苦い表情浮かべ、再び健治に視線を送る。


「ちっ。血転術変身」


盗賊Bはシラカシ豹の毛を使って変身術を発動し、シラカシ豹に変身する。

シラカシ豹はシラカシ町付近の森林に生息している豹。

全長は一メートルほどとかなり小さい。


やっぱり変身したか。

よしっ。


健治は結界術を発動し、底辺に縦横十メートルの正方形、そこから高さ五メートルを加えた五百立方メートルの結界空間を作り出し、自分と盗賊Bを閉じ込めた。

健治はまだ結界術を使うことはできないが、今はささひこ(カササビ)に変身しているためささひこ(カササビ)が得意な結界術を使うことができる。

さらに、カササビは結界術の発動に業血司をあまり消費しないため、健治の業血司はまだ余力がある。

ただ、今の健治の変身術では、ささひこ本来の結界術には遠く及ばないが。


「結界術で閉じ込めただと・・・。はっはっは。自分の首を絞めたな。これであの女の攻撃が当たる心配はない」


盗賊B(シラカシ豹の姿)は勝ち誇った表情で健治を見つめた。


盗賊Bは健治を追いかけるが、健治は滑空しながら、巧みに追撃をかわし、結界の中で逃げ回る。

盗賊Bは健治を捉えきることができないが、余裕の表情を浮かべる。


(はっは。バカめ。確かにこのカササビは厄介だ。だが、お前の変身術はあと何秒もつ?)


盗賊Bは勝利を確信したのか、笑みが溢れる。


く・・・。

もうそろそろタイムリミットだ。

でも、そこが狙い目・・・。


結界の壁に追い詰められた健治。

その瞬間、変身も解ける。


「はっはー。終わりだー」


盗賊Bは健治の首に噛みつこうと前方へジャンプするが健治に命中する前に、半透明の小さな壁に顔をぶつけた。


(何・・・?)


健治は、変身が解除される前に自身の前に結界でバリアを作り出していた。

そのバリアに当たった盗賊Bは、バリアを壊すと共に、自身も地面に倒れる。


「血転術炎転、炎球ーー」


健治は炎球を倒れている盗賊Bに放ち、その炎球が命中する。


「ぐああああーー」


盗賊Bはその場で意識を失った。


秋司の言っていた通り、こいつが変身術を使う奴だったか。


健治は、盗賊たちを追っている時、秋司から相手の情報を聞いていた。

当然、それらの情報は秋司が考察した内容のため、当たっているかどうかは不明だったが、その情報を頭に入れており、変身術を扱ってくるかもしれないと予想していたのだ。

それも、スピードが速く、静かに動ける生物に変身することも。

その予想もあり、少しでも動きを封じるために結界で閉じ込めたのだ。




一方、健治と盗賊Bが戦い始めた頃。

秋司も盗賊Aと戦い始めていた。


この人の方がスピードは速い。

僕はできるだけ業血司を使わずに攻撃を避けないと。

それには。


秋司は右手で生成術を使い、砂を集める。

盗賊Aは真っ直ぐ秋司に接近し、打撃を繰り出す。

秋司は砂で作った塊を盗賊Aの打撃にぶつけて打撃をかわす。


よし、上手くいった。

しっかりとした物を作るにはまだまだ時間がかかるけど、相手の攻撃を受けないようにするための一時的なものなら、ほとんど時間はかからない。

まあ、砂をまとめて固めているだけだし。

でも、適当すぎると簡単に破壊されて、そのまま僕に当たるかもしれないから、適度な強度で作らないと。


秋司は砂の盾(塊)を生成して相手の打撃を防ぎ続ける。

所々で生成が間に合わない時があるが、佑香が水放を放ってカバーする。

盗賊Aは佑香の方を見つめるが、健治と同じように秋司もその隙に攻撃する。


「血転術水転水放」

「くっ・・・」


秋司の放った水放が軽く命中し、盗賊Aは再び秋司に近接戦を仕掛ける。

しかし、砂を使った生成術、佑香のカバーもあってここまで無傷な秋司。


佑香ちゃん、ありがとう。

おかげで一発も被弾しないで時間を稼げている。


「ちっ」


盗賊Aは身体術を止め、ある血転図式を描く。


うん・・・。

なんだ?

あいつの周りに剣が五本浮かんでいる。


「食らえー」


盗賊Aが右手を前に出すと、一本の剣が秋司に向かって飛んでくる。

秋司は後方に下がってそれを避ける。

それと同時に、ある血転図式を描く。


うん・・・、やっぱり。


男は続けて四本の剣を一斉に飛ばすが、秋司は気にせずに真っ直ぐ突っ込む。


「何・・・? こいつ、まさか気づいて・・・」


この人の狙いは今左手で描いている図式。

その血転術を確実に当てるため、幻術で僕の体勢を崩そうとしたんだ。


秋司は飛んできた一本の剣に生成術をかけて形を変えようと試みたが、業血司を送ると剣が膨張し、軽い爆発が起こしたことから、幻術だと気がついたのだ。

元々木漏れ町の宝を盗んだ犯人は幻術を使うかもしれないと踏んでいたこともあり、幻術を警戒していた秋司。

そのため、滑らかに生成術を発動できた。

秋司は盗賊Aが血転図式を描き終える前に接近する。


「血転術風転、風出ーー」


秋司は盗賊Aに突風を放ち、それが命中すると盗賊Aは後方へ吹っ飛び、少し離れた位置にある岩に背中から衝突し、その場に倒れ込んだ。


よしっ。

勝てたぞー。


秋司が盗賊Aを倒すと同時に、健治も盗賊Bを倒していた。


(凄い・・・。秋司も健治も、しっかり戦って、相手に勝った・・・)


二人の戦いをフォローしながら見ていた佑香は二人の戦いっぷりに衝撃を受けて言葉を失う。


「やったなっ」

「うんっ」


健治と秋司は右腕を合わせ、晴れた笑顔を浮かべた。

しかし、すぐにふらつく二人。

業血司とスタミナを結構消費していたのだ。

秋司はゆっくりと盗賊Aに近づき盗賊Aの上着にある内ポケットから、シラカシ町から盗まれた石で作られた半円の物を取り出した。


よし、まずはこれをシラカシ町に届けよう。


秋司と健治、佑香はシラカシ町に向かって歩き始めようとすると。


「おいおい。来るのが遅いと思ったら、こんなことになっていたとはな」


一人の男が空からゆっくりと下りてくる。


誰・・・?

こいつらの仲間?


その男、志岳しがくは倒れている二人の盗賊を見つめる。


「役に立たねーな。こんなガキどもに倒されるとは。まあいい。ここにいるっていうことは例の物は盗んだってことだろ。もしかして、こいつらが持っているのか?」


志岳は鋭い視線で三人を見つめた。


「さーてどのガキが持っているのやら」


う・・・。

この人、さっきの盗賊とはレベルが違う。


秋司は志岳の雰囲気を見て、軽く冷や汗をかいた。


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