19話 追跡 盗賊を追え
木漏れ町からシラカシ町へと続く道。
その道に、走っている秋司、健治、佑香の姿がある。
はあはあ。
もうすぐだ・・・。
二十分ほど走り続けるとシラカシ町が視界に入ってきた。
三人は木漏れ町に入った時と同じように出入り口で許可証を取る。
木漏れ町が襲撃に遭った知らせを受けたシラカシ町は、外から来る者を厳重に警戒していたが、三人は十歳、十一歳の子供ということですんなり町内に入れた。
秋司たちは分かれて盗まれた美術品に似た物を持つ人を探すことにした。
十五分後、合流した三人。
健治がその物を持っていた人間を見つけたのだ。
しかし、その物は数十分ほど前に突然盗まれたらしい。
その物の持ち主の老婆は、盗まれた直後に、盗んだ人間のポケットになんとか生成術で作られた、不思議な紙の切れ端を忍ばせたと。
この紙の切れ端はGPSのような役割を持ち、老婆が手に持っている正方形の紙に切れ端の持ち主の居場所が映る仕組みになっている。
正方形の一角は赤く塗りつぶされており、その対角は青色で塗りつぶされている。
そして、中央に黒い点があり、これは紙の持ち主、つまり自分を表している。
一方切れ端を持つ人間は赤い点で表されている。
青色の角を持ち、赤色の角を進む方角に向けると、自分の位置に対して、相手がどこにいるのかが分かる仕組みになっている。
赤色の角と中央の黒点の間に赤い点があれば、真っ直ぐ進むとその先に相手がいるということになる。
老婆はすぐにシラカシ町の護衛に話をしたらしいが、木漏れ町の窃盗事件とは違い、盗まれたのは個人の私物であることと、木漏れ町襲撃の知らせを受け、警戒態勢に入ったことで犯人を追ってはくれなかった。
うーん。
やっぱり単なるお金目当てじゃないかも。
それに単なる窃盗事件でもないかも。
秋司たち三人は老婆からその紙を借りて犯人を追うことにした。
紙は佑香が持ち、赤い点を追って移動する三人。
赤い点は、木漏れ地区外に向かっていた。
うーん。
なかなか追いつけない・・・。
分かっていたけど、犯人はやっぱり業血司使い。
そして、護衛がいる木漏れ町の展示室から美術品を盗み出したことから、恐らくあれらの術が得意。
もしくは操術も・・・。
いいや、操術なら意識までは操れないから盗まれた直後に分かるはず。
松平さんの話だと、盗まれたことが分かったのは次の日の早朝らしいし。
すぐに気がつかなかったということはやっぱりあれらの術だ。
それと、その犯人はただ者じゃない。
このタイミングでシラカシ町でも窃盗が起こり、同じ時に木漏れ町が襲撃されている。
窃盗犯と木漏れ町を襲撃している集団は協力関係にあると考えていいだろう。
秋司は移動しながら今回の事件の犯人について自分なりに考えをまとめていた。
三人が赤い点を追い続けていると、やがて木漏れ地区外の砂原が広がる土地に足を踏み入れた。
その後も赤い点を追いかける。
砂原に入って二十分ほど経つと、地面に腰を下ろし、何かを食べている二人の男性を見つけた。
三人は近くの岩陰に隠れ、様子を見る。
「あいつらか?」
「分からないけど、可能性はあるね」
岩陰から顔だけを出して二人の男性を見つめる健治。
そんな健治の下の位置で、同じように顔だけを出して男性を見る秋司。
「まずはあの人たちが犯人か、確かめないと」
「でもどうやってだ」
岩陰から出していた顔を引っ込め、岩陰に隠れて話す秋司と健治。
うーん。
二人が犯人か確かめる方法・・・。
この紙を使えば分かるかな。
秋司は二人が犯人か、確かめる方法を考え、健治と佑香に作戦を伝えた。
「よし分かった。じゃあ、近づく役目は俺がやる。変身すれば、怪しまれないだろ」
「・・・。変身って・・・。健治、今のままが一番怪しくないでしょ。子供なんだし」
「あ・・・。そっか」
健治は佑香の冷静な一言に納得する。
「僕が近づくよ。土転の威力は僕が一番低いから」
秋司は佑香から紙を貰い、二人の男性に近づく。
「うん? こんなところに子供が一人?」
「どうした? 僕。迷子か?」
男性は秋司に近づくと、子供相手にも少し警戒しているように、秋司に話しかけた。
「はい。おばあちゃんと離れちゃって・・・」
秋司は二人の話に合わせて、迷子のふりをする。
よし、ここまで近づけば、分かるはず。
秋司は手にもっている紙を見ると、中央の黒い点(紙を持っている人、秋司)と赤い点(紙の切れ端を持っている人、犯人)が重なっていた。
うっ、この人たちだ。
「あーー」
秋司は大声を発する。
「んっ、犯人だ」
その声を聞いた健治は岩陰から飛び出し、続いて佑香も岩陰から出る。
それと同時に、秋司が男性に話しかけられた直後から準備を始めていた血転術土転土固を男性の背後から放つ健治と佑香。
土固は二人の男性に命中し、動きを封じる。
「っ? このガキども、業血司使いか?」
「木漏れ町とシラカシ町から盗んだ物を出してください」
秋司は氷転氷乱を発動し、いつでも男性を攻撃できるように準備する。
「このガキ、追っ手か・・・」
「分かったよ。ほらっ」
男性、盗賊Aは上着の内ポケットから何かを取り出し、秋司の上空に投げ飛ばす。
しかし、秋司は視線だけをそれに向け、身体は動かさない。
やっぱり、男が投げ飛ばした物は・・・。
盗賊Bは秋司の視線が自分たちから逸れたのを確認すると、水転水放を土で固められた足元に放ち、自分と盗賊Aの土固を解除する。
秋司はすぐに氷乱を放つが、盗賊Aは岩転岩棘を発動し、四つの氷の塊と、八つの石が衝突して、相殺される。
「くっ。血転術木転、木叩」
佑香はすぐさま木叩を発動し、右手から出た三つの伸縮自在かつ柔軟な太い枝で二人の盗賊を叩くように攻撃するが。
「身体強化、速壱」
二人の盗賊は基本図式に丸、ハート、星を描き、発動図式に三角二つを描く。
すると、二人のスピードが上がり、叩きつけてくる枝を全て避け、秋司の後方二十メートルほどの位置に移動する。
健治と佑香は秋司の横に移動し、視線を交わす三人と二人の盗賊。
絶対盗まれた物を取り返すんだ。




