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18話 盗まれた美術品

木漏れ町にある一際大きい家。

その中に入った秋司と健治、佑香、浮符鄔の四人。

浮符鄔に三つの薬草、イワシカ草、潜根葉、そして層雲花の調達を依頼した木漏れ町の長、松平まつひらの自宅だ。


「浮符鄔さん。こんばんは」

「おう。この間ぶりじゃの。ほれっ」


浮符鄔は松平に三つの薬草を手渡した。


「あ、ありがとうございます」


松平は三つの薬草を受け取り、確認すると、報酬金を浮符鄔に手渡した。


「浮符鄔さん。一つご相談したいことがあるのですが、少しよろしいですか?」

「ふむ、どうした?」


松平は切迫感が滲んだ様子で話し始めた。


「実は昨晩、木漏れ町で展示していた町の宝が一つ盗まれまして」


昨晩、木漏れ町で、いくつかの展示物を展示している展示室に盗賊が入り込み、ある宝を盗んで行ったらしい。

盗まれた宝は貴重な鉱石で作られ、半円に近い形をした文化財の美術品。


なるほど。

だから町の様子が慌ただしかったんだ。


「ふむ。血司隊けっしたいには報告したのか?」

「はい、もちろんです」


血司隊とは、治安維持などを行なっている、業血司使いで構成された桜日政府の公的組織。

報告を受けた血司隊の数名が木漏れ町を訪れ、調査を行なっているが、盗賊の足取りは掴めていないようだ。

今日はもう日が暮れ、遅いため近くの宿で泊まることになった四人。

夕食を食べ終え、入浴を終えた四人。

秋司、健治、佑香は秋司と健治の部屋に集まり、木漏れ町で起こった事件について話し合っている。


「町で大事にしている宝を盗むなんて、酷い奴らだよな」

「うんっ」


健治と秋司は自身が持つ正義感が表に出でいる。


「でも、なんで盗んだんだろう?」

「そりゃあ、金目当てだろっ」

「うーん。それなんだけど、なんで他の展示物には一切触れず、一つの美術品だけを盗んだんだろうと思って」


秋司は盗賊が一つの美術品にしか手を出さなかったことに疑問を抱いていた。

健治は盗賊の目的はお金だと。

しかし秋司は他に理由があると考察していた。


おかしい。

お金が目的なら他の美術品も奪うはず。

でも、なんで一つだけ・・・。




秋司たちが泊まっている宿の上空に、宙に浮いて町を見渡す浮符鄔の姿がある。


(ふむ・・・。嫌な風じゃのう・・・)


浮符鄔はゆっくりと降下し、宿の屋根にそっと着地した。




朝日が上り、秋司と健治の顔に光が照らされる。

その光が目覚まし時計となり、目を覚ます二人。

秋司と健治、佑香と浮符鄔は朝食を食べ終え、外に出る。


「おし、今日はシラカシ町に行くぞ」

「え? シラカシ町ですか?」


浮符鄔の言葉に疑問を抱く秋司。


「なんでだよっ。泥棒はほっとくのか?」


健治も秋司と同じように、疑問を抱く。


「いいや、その泥棒を捕まえに行くのじゃ」

「えっ? どういうことですか?」


浮符鄔の口から溢れた思わぬ言葉に驚く秋司。

浮符鄔は昨晩、木漏れ町の町民に聞き込みをしており、気になる情報を掴んだのだ。

それは、木漏れ町同様に木漏れ地区に位置する木漏れ町の隣町、シラカシ町に一昨日盗まれた美術品に似た物があるということ。

その物は木漏れ町から盗まれた美術品とは異なり、ただの石で作られた物らしいが、半円の形で模様も似ていると。

その物はシラカシ町の町民が持っているという。

これらの情報を掴んだ浮符鄔は、シラカシ町に行くことを提案したのだ。

ただ、シラカシ町は木漏れ町の隣町だが、そこそこ距離がある。

木漏れ地区内は、五つの町を行き来できるように、一本の路線で繋がっているが、列車のスピードは遅く、業血司使いなら走った方が速い。

それでも、二十分くらいはかかる。

秋司たちは浮符鄔の提案を聞き入れ、シラカシ町に向かおうとする。

しかし、木漏れ町にある東の出入り口で大きな衝撃音がなる。


なんだ・・・。

あ、あれは。


秋司の視界に入ってきたのは血転術の炎球と氷乱だった。


これって、業血司使い・・・。

僕たちの村が襲われた時と同じ状況かな?

早く、助けに行かないと。


秋司と健治は東の出入り口に向かって走り出そうとするが、浮符鄔が二人の腕を掴んで止める。


「待つんじゃ」

「待ってられねーよじいちゃん。このままじゃあこの町が」

「ん・・・。お主らはシラカシ町へ行き、さっき話した物を探すのじゃ」


健治は腕を振り払おうとするが、浮符鄔の声を聞き、動きが止まる。


「シラカシ町? でも、こいつら(襲ってきた業血司使い)はどうすんだよ」

「今この町には血司隊の人間が数人おる。それに松平が他の町に応援要請をするじゃろう。わしもここに残って奴らを叩く。じゃから、お主らはシラカシ町に向かうのじゃ」


健治の問いに浮符鄔は詳細に答える。


「分かりました。行こう健治君。佑香ちゃん」

「決して無茶をするではないぞ。危険を感じたらこの件に関わるのをやめて迷わず逃げるんじゃ。ええな」


浮符鄔は真剣な眼差しで三人を見つめた。

三人はシラカシ町に近い西の出入り口に向かって走り始めた。


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