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10話 浮符鄔と召喚術

べいこま村南部。

いくつかの建物が崩れ落ち、いくつかの畑も荒れている。

べいこま村南部の西側では、浮符鄔と男が睨み合っていた。


「佑香、体調はどうじゃ?」

「はい、大丈夫です。リスに噛まれてから毒が抜けたようで」

「それはよかった。秋司、少し下がっておれ」

「はい」


浮符鄔の言葉を聞き、秋司は少し下がり、佑香の横まで移動する。


「ササひこー。頼むぞー」

「はーい」


浮符鄔が一緒に空中から降りてきたムササビ属の生物に声をかけると、その生物カササビのササひこは皮膜を広げ、少し斜めに傾いた結界術の壁を作り出した。

その壁は高さ二十メートルほど、横は村の端から端まで広がった。


「まりすけは佑香と秋司のそばを離れるんじゃないぞ」

「はいはーい」


佑香の毒を抜いたシマリス属の生物、ささえこまリスのまりすけは佑香の左肩に乗り、敵である男をじっと見つめている。


「誰だか知らないけどー。ジジイにも用はないんだよねー。どうする、どうするー」


男はテンションが上がったままで、左手を咥えながら大声を発している。


(この男では、ササひこの結界は破れんじゃろう。それなら)


「秋司、佑香。いい機会じゃ。よく見ておれ。今からわしは血転術を使わずにこやつを倒す」

「えっ? は、はい・・・」


秋司は浮符鄔の言葉を聞き、戸惑いつつも返事をした。


浮符鄔さん、血転術を使わないでって・・・。

どうするんだろう?



少し時は遡り、健治は小さい子供に炎球を放とうとする男を見て、叫び声を上げていた。


くそっ、間に合わない。


男は炎球を放ち、健治はその炎球をどうにかしようと血転図式を描くが、描き終わる前に子供に命中しそうになる。


く、くそーーー。


健治は歯を思いっきり噛み締め、悔しさをあらわにする。

しかし、その表情はすぐに驚きへ変わる。

炎球が子供に当たる直前で、一匹の熊が現れ、炎球を空中へと弾き飛ばしたのだ。


「な、なんだあの熊は・・・。はっ・・・。あいつは、キノコを探していた時に遭遇した熊か?」


健治の視界に入ってきた熊は、秋司と健治、佑香の三人で、浮符鄔への手土産として珍しいキノコを持っていこうと、キノコを探していた時に遭遇した熊だった。


「なんであいつがこんな所に」


健治は驚いたまま、動けず固まっていた。


「おい、そこのお前。どいていろ」

「え・・・。お、おう」


熊がしゃべったー?

マジかよ。

はっ。

おじさんと子供は大丈夫か。


健治はその熊、べいごま熊のごまきちの声を聞いてその場を離れ、すぐに子供と下敷きになっている男性の元へ駆け寄った。


子供は無事だ。


「おじさん、今助けるからな」


健治は瓦礫を持ち上げ、男性を救出する。


「大丈夫か? おじさん」

「ああ・・・。だ、大丈夫・・・だよ・・・」


男性は健治の問いに、途切れ途切れに答えた。


「すまん。俺のせいで・・・」

「おい、お前。泣き言は後にしろ。こいつらを連れて離れろ」

「お、おう分かった」


健治はごまきちの言葉を聞き、男性と子供を担いでその場から離れる。

健治が少し離れると、結界術の壁が広がってきた。


「あれは、結界ってやつか? それなら、この村はもう大丈夫なのか?」

「あら、健ちゃんじゃないの」

「お、おばあさん」


健治が声のする方を向くと、そこには秋司の祖母の姿があった。


「健ちゃん、その男性と子供は私が預かるよ。健ちゃんはまだ動けるかい?」

「おう。動けるけど」

「それなら、まだ敵がいるかもしれないから、健ちゃんは村の北側に行ってちょうだい。ねっ?」

「分かったぜ。おばあさん、二人を頼むぞ」


健治は二人を秋司の祖母に預け、村の北部に向かって走り始めた。


「さてと・・・」


秋司の祖母は健治が去っていくのを見届けた後、怪我を負っている男性に血転術の回復術を行い治療を施し始めた。



健治が秋司の祖母に二人を預けた頃、ごまきちと男は睨み合っていた。


「熊だと・・・。召喚術か。厄介な血転術師がいるな。ボスを討ったガキの仕業か?」


男はさっきまでの様子とは異なり、真剣な眼差しを向けている。


「血転術雷転、雷拳」


男は両拳に雷を纏い、ごまきちに接近していく。

ごまきちは両腕を広げ、右回転で身体を高速に回転する。

まるでコマが回っているように。

そのまま男に接近していく。

男の両拳とごまきちが衝突すると一瞬でごまきちが男を吹き飛ばした。


「ぐはっーーー」


男は宙高く吹き飛び、やがて背中から地面に落下した。


「う・・・。あ・・・」


男の意識は朦朧とし、戦闘不能となった。



一方、浮符鄔ともう一人の男も戦い始めようとしていた。


「ジジイにも用はないから、すぐ終わらせてあげるよー。血転術、毒指どくさす


男は血転術の基本図式に三角、四角と順に描き、発動図式に五角形二回を描いた。

男は右手の指全てに毒を纏い、右手で手刀を構え、突きを当てようと浮符鄔に接近する。

浮符鄔は男の突きを簡単に避け、男の右手首を右手で掴み、軽く男を投げる。

男は受け身をとり、再び突きを放つが、今度は避けることなく左手で男の右手首を掴み、突きを回避する浮符鄔。

そのまま一回目と同じように男を投げる。


「ジジイが、舐めやがってー」


男は、浮符鄔がほとんど動かずに自身の攻撃をいなし、軽く投げていることに腹を立てた。

自分は舐められ、遊ばれていると感じた男は怒りをあらわにして再び突きを放つ。


(この男ではあまりいい相手にならんか)


浮符鄔は右拳で男の腹を殴る。


「ぐはっ」


な、なんだ?

今、浮符鄔さんはお腹を殴ったの?

全く見えなかった。

それに、なんていう威力なんだろう。


男は膝を地面につき、苦しそうに浮符鄔を見上げる。

浮符鄔は男の顔面を右足で蹴った。

男は地面を削りながら数十メートル後方へ飛んでいった。

男は意識を失い戦闘不能になった。


な、何今の蹴りは・・・。

今のは血転術なのかな・・・?


「ふぅ。終わったのう」


こうして、べいこま村に訪れた危機は去っていった。


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