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第三話『――朕は万象の第一原因なり、全ての結果は朕に通ず』

小説処女作品です!

ベタな展開が多いかも知れませんが「たまに出てくるファンタジー小説」的な印象を持ってくれると嬉しいです!!

すいません!!!!設定などを考えていたらかなり遅れてしまいました!!!!申し訳ないです...!!!!

その日、双聖宮は穏やかな午後の光に満ちていた。


アウレリアはようやく山のような決裁書類と退屈な謁見を終え自室のベッドの上で完全にだらけきっていた。


「んふふ〜ん、ふふ〜ん♪」

鼻歌まじりにふかふかのベッドの上をごろごろと転がる。誰にも見られていないこの時間だけが、彼女がただの少女に戻れる至福のひとときだ。公務では決して着ない動きやすい簡素なワンピース。頭には王冠はない。


「ごろごろ〜……ごろごろ〜……」

勢いよく転がりすぎて、ベッドの端から滑り落ちて床の絨毯に着地する。


「……いてっ」

小さく呻いてから大の字になって天井を見上げる。窓から差し込む光が部屋の埃をきらきらと照らしている。平和だ。

こんな日々が、ずっと続けばいいのに。


だがその静寂は、有無を言わせぬ強さを持ったノックの音によって破られた。セラフィナが入ってくる。彼女の手には緊急用の通信魔法具が握られておりいつもの冷静な表情が強張っている。


「セラフィナ? どうしたの。僕の自由時間、まだ終わってないはずだけど?」

むっとして起き上がると、セラフィナは小言も言わずに一枚の羊皮紙を差し出した。


「陛下。緊急事態です。シュテルネンリヒトのアイゼンブルフ鉱山地区に、所属不明の超巨大生物兵器が出現しました。現在、ギデオン・フォルク大佐率いる第七師団が交戦中ですが、苦戦を強いられています」


「――は?」

羊皮紙に描かれていたのは、全長八十メートルを超える、鋼鉄の躯をもつ巨大な蜘蛛のスケッチだった。帝国の仕業か、あるいは別の何者か。いずれにせよ、それは明白な「戦争」の引き金だった。


瞬間、アウレリアの体が、怒りと恐怖で微かに震えた。だが、すぐにぐっと拳を握りしめ、その震えを押し殺す。

(落ち着け、僕。僕が動揺してどうする)


アウレリアの脳裏に最悪の未来図が描かれる。

(こんな馬鹿げた挑発に乗ってもし我々が同じような兵器で報復すればどうなる? 泥沼の兵器開発競争と終わらない報復合戦が始まる。国力は疲弊し、民が飢え、国は内から蝕まれる。待っているのは全面戦争と滅亡だけだ)


「…わかった。僕もすぐ向かう」

アウレリアはベッドから飛び起き、素早く戦闘用の乗馬服に着替え始めた。

「なりません、陛下!」


今まで聞いたこともないような、セラフィナの鋭い声が飛んだ。

「あなたは国の心臓です! 万が一のことがあれば、それこそ敵の思う壺。今回はただの小競り合いではありません!!おそらく新兵器の試用、もしくは戦争の理由付けを煽りに来てみます!!陛下が向かうような場所ではありません!!」


「そうだ、アウラ」

扉のそばに控えていたリディアも、厳しい表情で同調する。「お前の仕事は、俺たちが帰ってくる場所を守ることだろ? 俺たちを信じられないのか?」


二人の言葉が、アウレリアの胸に突き刺さる。


(行きたい。でも怖い)

(僕が行って何ができる? )

(民が…フォルクたちが今この瞬間も死んでいっているかもしれないのに僕だけが安全な場所にいることなんて…!)


「陛下、なりません!!『人の目に見える形』での介入は、致命的な二次被害を招く恐れがあります!!」

女王としての責任と、少女としての恐怖。その間で、彼女の心は引き裂かれそうになっていた。

(だが僕が国にいてここで民たちを落ち着けさせ避難させるべきか...?)

(援護に全力を注ぐのが最善だ―)

数秒の沈黙の後、彼女は唇を噛み締め、苦渋の決断を下した。



「……分かった。僕はここで待つ。でも状況は逐一報告して。フォルク大佐たちに考えうる最大限の支援を約束すると伝えて」


【視点:アイゼンブルフ鉱山地区/ギデオン・フォルク大佐】


「――第二小隊、後退しろ! 奴の脚の薙ぎ払いに巻き込まれるぞ!」


塹壕は泥と血の匂いに満ち、爆煙が立ちこめる。だがいつもの戦場とは何かが違っていた。空気が振動し、兵の耳にひびく低いノイズが伝令の声を割っている。

通信魔法具は断続的に白いノイズを撒き散らし、指揮系統がぎこちなくなる。


「ラジオが効かねえ! 声が届かねえ!」と誰かが叫ぶ。


俺、ギデオン・フォルクは塹壕の縁に身を寄せ、巨躯の影を凝視した。あれは蜘蛛だ。だが金属の装甲と生体の不協和な繋がりに、兵器という言葉で片付ける気にはならない。


脚が地面に触れるたび、周囲の土が微かに震え,割れ目が走る。最初は小さな亀裂だったがやがて塹壕周辺の地面が波打ち、我々の陣地を侵食し始める。兵の足元で岩盤が裂け銃床が地面に取られて弾が散る。


「砲撃を続けろ! 装甲の継ぎ目を狙え!」


砲は発砲するが弾道が急に乱れる。弾は空気を噛みしめるように不安定に振れ的確に命中しない。数発は弾薬槽での異常な着火不良を起こし再装填が遅れる。


「魔法兵団、第二術式! 奴の関節部を狙い、動きを鈍らせろ! 工兵、今のうちに塹壕線を後退させ、予備の罠を設置しろ!」


部下が持ってきた偵察報告には、触れた地点の魔力残滓の異常値が記録されており、これが「人工的な魔法回路」を示唆していた。

「奴は魔法と鉄で作られている!魔法を使え!!!!」


巨大な鋼鉄の蜘蛛は確かに化け物だった。その装甲は砲弾を弾き薙ぎ払われる脚は全てを粉砕する。だが、我ら聖冠連邦軍はただの烏合の衆ではない。


ルクスヴァルトの魔法兵が編み出した粘着性の魔術が、蜘蛛の脚の動きをわずかに阻害する。その隙に、シュテルネンヒトの工兵たちが新たな罠を仕掛け、砲兵隊が連携して、装甲のわずかな継ぎ目を狙い撃つ。組織だった波状攻撃に、化け物は確実にダメージを蓄積させていた。


「これ以上この戦いを大きくしては国民にも気づかれて、都市部で二次被害が起きかねない」

いくら戦いが鉱山地区の局地で行われていても、噂の油が流れば炎は燃え上がる。


(やつは魔法で操られているただの機械風情...!!!まだこちら側に希望はある...)

決断の時だった。


「――総員に通達! これより、合同儀式魔法を発動する!」

部下たちの間に緊張と覚悟が走る。それは開発されたばかりで実戦での使用はこれが初めてとなる我々の切り札。


「魔法兵団、術式構築開始! 工兵、集積水晶を展開しろ! 準備に三分かかる! それまで、何としても持ちこたえるんだ!」


「「「応!!」」」


兵士たちの雄叫びが、戦場に響き渡る。

魔法兵たちが円陣を組んで詠唱を始め工兵たちが巨大な水晶の装置を設置し始めた。


その時だった。


追い詰められた蜘蛛が全ての動きを止めた。


腹部のレンズが不気味な光を放ち始める。最初は点滅に過ぎなかったがやがてそれは規則正しい脈動

を持ち、周囲の空間が引き延ばされるような感覚に陥った。


「なんだ……火管が……!」

「時計がずれてるぞ!」

兵士たちの腕時計に計時の誤差が生じ始める。


俺は直感した。これは、ただの砲撃ではない。

「まずい…! 合同魔法の発動より奴の砲撃の方が早い…! 全てが終わる…!」


俺が絶望に染まったその瞬間。


【視点:双聖宮】

「――フォルク大佐より緊急通信! 敵兵器より、術式発動を上回る規模のエネルギー集束を確認! もはや、我々の兵器では対処不可能です…!」


通信魔法具から響く部下の悲鳴に、セラフィナが顔面蒼白になる。

アウレリアはその報告を聞き、両腕を胴にぐるりと回し震える腹部を守るように体を丸めた。


(僕のせいで…僕が、もっと早く決断していれば…)

民が死ぬ。フォルクが、リディアの同期の、あの実直な男が死ぬ。


「――嫌だ」

彼女の口から、か細い拒絶の言葉が漏れた。


僕の民を、僕の国を、これ以上傷つけさせはしない。

彼女の心がそう絶叫した

その時。

「…へっ」


「へっ……へっ!」


必死に口元を押さえる。だが、その時は一瞬で来た。



「――へっくしゅんっ!!」


可愛らしいくしゃみが、静まり返った作戦司令室に響き渡った。


【視点:フォルク】



(――時が、死んだ)

蜘蛛が破滅の光線を放つ、その直前。

戦場のど真ん中に、何もない空間から、光の粒子が収束し、一人の少女の姿が形を成した。

俺の目の前に立つ、あの少女の形をした『何か』だけが、この世の唯一の色であり、音であり、意味だった。


神々しい。

などという陳腐な言葉では足りない。美しいという感想さえ冒涜に思える。

あれは祈る対象ではない。許しを乞う対象でもない。

ただひれ伏すことしか許されない、そう感じさせたものだった。


彼女は、目の前の化け物を見据え、静かに、しかし世界そのものに響き渡るような声で、告げた。


「――朕は万象の第一原因なり、全ての結果は朕に通ず」


彼女がただ右手を静かに持ち上げる。すると、その動きに呼応して、天を衝くほどの巨大な光の剣が、何もない空間から生まれ出た。


化け物は最後の猛りで破滅の光線を口から放った。だが光の剣はそれを押し戻すどころか綺麗さっぱり消してしまうようにした。


音はなかった。ただ、光が通り過ぎた。それだけで、あの鋼鉄の化け物も、万年雪を抱いていたはずの連峰も、まるで最初から存在しなかったかのように、綺麗に『なかったこと』にされていた。

静かだ。あまりに静かすぎて、耳がおかしくなりそうだ。

俺がそう思った、次の瞬間だった。


音が消え光が通り過ぎた後周囲にあったものはなかったことになった。

だが消滅の反動は空間の歪みを伴い、すさまじい爆風が襲来する。塹壕は吹き飛ばされ俺は空へと放り出されて地に叩きつけられた。


視界の端で何かが歪み、色彩が崩れ落ちる。

世界の記憶の一部が確かに『削られた』としか言いようがない。

風が止み、恐る恐る顔を上げる。


だがそこにもう彼女の姿はなかった。

強烈な頭痛と吐き気。

そこで俺の記憶は断ち切られた。


【アウレリア視点】

「……ん……」

目が覚めると僕は自室のベッドの上にいた。体はだるく頭の奥に鈍い痛みが残る。

「…あれ? 僕、みんなの報告を待ってて…」

扉がノックされ、リディアが入ってきた。その顔は、いつもより少しだけ青ざめて見えた。


「おおアウラ! 目が覚めたか!」

「リディ? いったい、何が……アイゼンブルフの件は!?」

「ああ……そうだな……心配するな、事態はもう収まった」


リディアは何かを隠すように、少しだけ視線を逸らして言った。

「お前が気を失って、倒れちまってな。だが、その後のことは……まあ、フォルクたちが、見事にやってくれたさ。大丈夫だ」

「……そっか。僕、また倒れちゃったんだ。ごめんね、みんなに迷惑かけて」

「気にするな! とにかくよくやったぞフォルクたちは!」


リディアはいつもより少しだけぎこちなく僕の頭を撫でた。

僕は、頼もしい仲間たちの勝利を、ベッドの上で素直に喜んだ。部下たちの報告書から『()()()()』『()()()()()()()()』といった言葉が、セラフィナの手できれいに削られていることにも、もちろん気づかずに。


ただ窓の外に広がる空がいつもより少しだけ寂しげに見えた。




==連邦第23回緊急報告書==

分類:至急(内密)

作成:連邦戦略通信部/作成日時:XXXX年X月X日 14:16(暫定)


・発生:シュテルネンリヒト州 アイゼンブルフ鉱山地区にて、全長約80mの蜘蛛形態を有する「魔導機械兵器」出現を確認。

・対応:ギデオン・フォルク大佐指揮の第七師団(魔法兵団・工兵含む)を派遣し、合同作戦の実施により事象の沈静化を確認(合同儀式魔法発動による暫定成功)。

・結果:現地における被害および人員損耗は調査中。鉱山施設に大規模な破壊あり。

・備考:現場で検出された魔力残滓より「人工魔導回路」の存在が示唆され、通常兵器のみでは制御困難であったと判定される。

・提言:速やかに魔導解析班を現地に派遣、残滓サンプルの回収を実施せよ。情報は最小限に留め国民の動揺を防ぐこと。


【緊急】帝国陸軍省より同型と思しき事象の第一報あり。詳細追及中。

=======================================


(改定前)■■■■■陛下が謎の閃光および地殻変動を以て当事象を沈静化した旨の記録あり(※詳細は機密)。

感想やダメ出し、誤字脱字修正、なんでも大歓迎です!!

次回作がどの様になるかはわかりませんが自分なりのペースで頑張りたいと思います!!

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