表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/33

ある音声記録 〜南区喫茶店にて〜

 お待たせしました。コーヒーと玉子サンドです。

 ……随分とお疲れですね。この島は初めてですか?

 へえ、数時間前に来たばかり。船を沈められて、東で喧嘩に、西でお財布を……それは災難でしたね。観光客の方も結構いらっしゃるんですが、皆様だいたい同じような目に合うみたいです。

 お恥ずかしながら、私も1人で出歩くと絡まれることが多くて……一般人の臭い、みたいなものがするのかもしれませんね。


 はい、私は数年前に連れと移住しまして。昼は私が喫茶店を。夜は連れがbarを経営しております。

 どうしてこんな島でって? ふふ、実は自分の子どもの頃からの夢だったんです。故あって脱サラしたので、良い機会だと思いまして。

 そうじゃない?

 ……ああ、この島じゃなくてもいいんじゃないかって事ですか? まあ、そうですね。故郷で店を持てたらそれが1番良かったのかもしれませんね。ここは何かと物騒ですし。

 でも皆さん意外とご贔屓にしてくださいますよ。


 そういえば、お客さんはどうしてこの島に?

 言ってはなんですけど、この島の見所なんてウチの如音(ゆきね)くらいのもので、あとは喧騒と血と闘争で出来た島ですし。あ、如音は私の連れです。私が言うのもなんですが、とっても美人なんですよ。

 ルポライターのお仕事で。……はー、眼鏡に小型カメラが……ペン先はボイスレコーダーですか……よく出来てますね。少し見せて頂いても?


 バキッ


 ああ、ごめんなさい。壊れちゃいましたね、眼鏡。……えっと、すみません。態とです。

 その、困るんです。島の様子を撮影されると。どこに如音が映り込んでるかわかりませんし。あいつ、凄く目立つからすぐにバレてしまう。

 実は、私と如音は怖い人たちに追われていて……指名手配までされているので。浅敷島にいると知られたくないんです。折角の新婚生活ですから。

 脱いで貰ってもいいですか。……他にカメラがないとは言いきれないですし。服なら私のを差し上げますので。それからデータも消してもらって……ああでも、困ったな。今時はウェブ上にデータを保存できるんでしたっけ。やっぱり少し待って貰えますか。


 ……ん、よい、しょっと。

 あ、これはなんでもないです。普通のチェーンソーです。こういう時のためにいつもカウンター下に置いてあるんです。

 なんですか? 東京に家族が? そうですか、離ればなれになるのは寂しいですね。でも大丈夫です。ウチには業務用のミートプロセッサーもあるので、ご遺体は綺麗に処理できます。


 見つからなければ、誰も悲しんだりしませんよ。


 ヴヴン


 え? なんです?


     ヴ

       ヴ

        ィ

         イ

   「ぎっィア  イ

           ィ アァアアッ

          ィ

     アぁアア イ あぁ

         イ

        ィ

        ィ

       ィ あァアぁッ

        ィ あァ

         ィ

    アあァア  ィ

           ィ  アァッ……!」

           ィ

          ィ

         ン

         ン



 …………すみません、よく聞こえませんでした。


(ここで録音は終わっている)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ