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廻る季節に急かされて

三月の霊別

作者: 雪傘 吹雪

 青白い空。桜はまだ咲かない。景色は枯葉色に包まれる。


 しかし、人々の喜びと悲しさの渦はまさに桜の季節なのかもしれない。そして、儚く散っていく。熱情も思い出も心友も恋心も最初から何も無かったかのように消え失せる。


 全て終わるなら、最初から踏み込まなければ良かった。


 卒業。


 誰にだって訪れる。


 私には来年。


 周りは先輩にプレゼントを渡したり、感謝の言葉を述べたり嬉々としている。


 でも、同級生ですらまともに会話出来ない私には縦の繋がりなんて一切無い。一切は嘘か。昔はあった。もう1年以上も前の話だけど……。


 1年前、私は部活を逃げ出した。誰に何も言わず。


 理由は……、色々あるな、多分。まず、シンプルに放課後に縛られるのが嫌いだった。同じ部活同士と関わるのもきつかった。距離感が分からない。


 そして、恐らく1番の理由はあの先輩と居たくないから。


 最初は気軽に踏み入れた。それなのに、気付けば戻れなくなっていた。


 傍にいることも出来ないのに、ギュッと深くなる気持ちは止められなかった。今は別の人が好きだから正直未練が無いって胸を張って言いたい。でも、それは無理だ。あと数年は引きずる予感がする。会えないのに。


 会えないのに、なぜか。またここに来れば会える気がして。誰かと幸せそうにする姿を見れる気がして。でも、よく考えたらもう終わりなのかと気付く。


 あの先輩は私に恋を教えてくれた。今思えば中学の時の、私が一方的に友達だと思っていたあの人の事、好きだったんだと分かるけど。その時はこの感情が恋だって全く気付かなかった。


 だから、ある意味で先輩が初恋なのかな。


 まぁ、それもこの腐りきった感情を、綺麗事で終わらせたいだけなんだろうけど。


 周りの浮かれあがって、(ひし)めき合う光景。

 私にはどうしても、窓から見ている場景にしか思えない。


 別れも出会いも等しく訪れているはずなのに、なぜ私は1人、ここで考え込むのだろう。なぜ私は誰とも喜び合わないのだろう。いや、合えないのだろう。


 ただ、何の考えも無しに見上げた空は明るい。今、この場全てが彼ら彼女らを祝福する。


 私だけが。私だけが。


 祝福も呪詛もしていない。


 ただ、事実を受けて止めているだけ。

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