第6話 貴族学園にて
☆☆☆貴族学園
私は、ミドリ・アドラー、公爵家の庶子、転生者だ。
子供の頃、平民街で過ごした。
しかし、女公爵が亡くなったので、お母様と一緒に、公爵家に引き取られた。義姉がいた。
お義姉様の非道を訴え。断罪劇を敢行し。
遂に、お義姉様を追い出し、王太子の婚約者に内定をした。
お義姉様は偽善者だ。よく、貧民街に慈善事業に行くが、民の実情を知らない。
私に向かって、
『パンがなければ、お菓子を食べれば良かったのでは?』とのたまう。
この言葉を、傲慢な貴族の典型例として、噂を流し、お義姉様の婚約者ゲオルク殿下に、このような方に未来の王妃が務まるでしょうか?
とささやいた。
前から、お義姉様にコンプレックスがあったのだろう。
嬉々として、すぐに、断罪し、婚約を破棄。
お義姉様は、貧民街の孤児院にシスターとして追放されたわ。
代わりに私が婚約者に指定された。
しかし、陛下の裁断は、内定だ。
まだ、油断できない。
内定ということは、力を示せということだろう。この転生者の力を示す時だ。
何、ここは遅れた世界、ネット小説ならチート能力を示せということだろう。
伊達に56年も生きていないわ。
今は、極貧平民生活時代を話し、民の心が分かる令嬢の位置づけよ。
これから、炊き出しや慰問を沢山やって、民の人気者になるわ。
さあ、今日も、お茶会で、令嬢方に、平民時代のことを話すわ。
「私は、先代の女公爵に、疎まれてぇ~、幼少時代、平民生活をしていましたわ。
パンも食べられない日があって、お菓子なんて、夢のまた夢、それを、イザベラお義姉様は、
『パンがなければ、どうして、お菓子を食べなかったの?』と心ない事を言われましたわ」
さあ、どうだ。鉄板のお涙ちょうだい話よ。
シーーーーン!
「あ、あの、ミドリ様は、王都の貧民街でお母様と暮らしていたのですよね」
「ええ」
「パンの値段は、おいくらでしたか?」
・・・疑っているのか?本当は、お父様の仕送りで、上等な平民生活を送っていたのよ。召使いがいたわ。
「さあ、お母様が市場で買っていたから、詳しくはーー、でも、一個、銅貨3枚(300円)くらいだったと思いますぅ」
「申し訳ございません。先日、婚約者と、王都ボロ街貧困ランドに行きましたわ。そこでは、白パン、一斤、銀貨一枚ぐらいでしたわ。このような事がございましたの」
何ですって、話がおかしな方向に行っていない?!
・・・・・
貧困ランドには、屋台がございましたの。
パンの隣に、スープ屋さん。そして、お菓子屋さん。
『ヒイ、このパンが、一斤、一万メアリー?銀貨一枚、ぼったくりでは?』
『ええ、そうね。私の屋敷でもパン焼きメイドは、一斤、大銅貨3枚くらいで作れると自慢していましたわ』
『おい、亭主、どういう事か説明をしろよ』
『へ、ここではその相場ですよ。お貴族様が来られるから、白パンをお出しするようになりました。忠実に再現をしていますよ』
ザワザワザワ~~~
ええ、騒ぎが大きくなったので、
『メアリーの姉御をお呼びしろ』
・・・
『はじめましてなの~~、貧困ランドの支配人お友達でしゅ!』
『支配人お友達』という役職の方がいらっしゃったの。
メアリー様という幼女で、お話をしましたわ。
『なるほどなの~~、パンは平民にとっては、高級品なの。小麦市場によって、季節によって、変動するの~~、今は、小麦は一キロ大銅貨2枚(2000円)くらいなの~~~、そして、竈のランニングコスト、薪を考えれば、それくらいになるの~~』
『しかしだ。屋敷ではもっと、安く作れるぞ!』
『それは、小麦が領地から献上されて、お屋敷の人数分、多量生産をしているからなの~、ここでは、日当の半分が、家族のパン代に消えるのは珍しいことではないの~~、パンは高級品なの~~』
『そうなのか?そうか・・・調べてみよう』
『他の平民街も行くといいの~~、比較は大事なの~~~』
『すまない。これも勉強だな。ところで、パンが食べられないときは、何を食べているのだ?』
『あそこのお菓子なの~~、フライパンで作れる簡単な焼き菓子なの~~、2等小麦をつかっているから、注意なの~~』
『なるほど、勉強になる』
『都市部の貧民街は、こんな感じなの~~、田舎は分からないの~~、分かったら教えて下さいなの~~』
『分かった。領地あっての貴族だからな。騒ぎを起こして、すまなかった』
『こちらこそなの~~~』
幼女は、チョコンと、カーテシーをしたわ。あれは、貴族令嬢だったのかもしれないわ。
『使用人達に説明できるようにしておくの~~、貴重な意見ありがとうなの~~』
『俺たちも貴族のこと分からなかったぜ』
『外の世界、よく分からないしな』
殺伐とした雰囲気でしたが、最後は、和気あいあいとなりました。あの幼女のおかげだと思います。
・・・・・・
「その。『パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない』はあながち間違った言い方ではないのではないでしょうか?」
「何ですって!貧困ランド、あれは、デタラメですぅ!ふざけた名前ですわ。そうだわ。ボロ街、お義姉様が追放になった孤児院があるわね。策略に決まっているわ!」
「「「ヒィ」」」
ダン!
席を立った。
何か、暗雲が立ちこめる。
そうだわ。炊き出しだわ。ボロ街で炊き出しをして、名をあげますわ。
「マックス様、騎士団の残飯を調達してください~、炊き出しをしますわ」
「おう、食べ物を大事にして偉いな。さすが、ミドリだ」
「ええ、貧民にとっては、残飯も贅沢品ですわ」
・・・混ぜれば、分からないわ。それに、炊き出しには残飯を使うと聞いた事があるわ。
☆☆☆王都ボロ街
近衛騎士団長の子息、マックスとその友人で、ボロ街の入り口に来たわ。
「アドラー公爵家令嬢ミドリですわ。炊き出しをいたしますわ。お並び下さい」
シーーーーーン
ザワザワザワ~~~
「お貴族様、有難いが、ワシらは、仕事があるから、大丈夫だよ」
「何ですって!でも、食べなさい!一食、浮くわよ。私と有志で一生懸命に作ったのよ!」
「そうだ。有難くちょうだいしろ!」
「じゃあ、雑炊か?いっぱい、もらうとしよう・・・どれ、ウゲ、不味い!これは、何だ!」
「ゲロみたいだ!」
「おい、皆、食うな。変な令嬢が、変な物を配っているぞ!」
「フランク商会を呼んで来い!」
・・・・・
ザザザザザ~~~
ゴロツキ達が集まって来た。
ヤバいわ。護衛騎士は、騎士科の学生が数人、後は、使用人だけね。
「待つの~~~」
「姉御!」
群衆の中から、幼女が現れたわね。
「・・・ご令嬢様、これは、残飯なの~~。何でこれを持って来たの~~」
「炊き出しは、残飯がスタンダートなのよ。私が平民時代に、その話を聞いたわ!」
「・・・それは、誤解でしゅ!残飯と言っても、手をつけていないお食事を、丁寧に持って来てくれる業者さんがいるの~~、残飯の言葉が一人歩きをして、本物の食べ残しを持って来たと勘違いする方がいるの~~」
「何ですって!それでも、食べなさい!命令よ!・・・ヒィ」
幼女の目が光る。思わず黙った。
後ろの群衆の殺気も合わさり。得たいのしれない恐怖を感じた。
「でも、本当に持って来くる人は初めてなの~~、何故なら、炊き出しのルールは、作った人が味見をするの~~、それを出来ない方の炊き出しはご遠慮するの~~」
「何ですって!アドラー家の炊き出しよ!」
「帰るの~~!皆も、殺気立たないの~~、令嬢は、無知なだけなの~~、今後の炊き出しに期待なの~~~」
「なんだ。無知なだけか~」
「なら、殺しはなしだな」
幼女が小声で言った。
「気をつけるの~~、貧民は王様を倒せる唯一の駒なの~~、プライドを潰されたら、暴動が起きても仕方ないの~~~」
幼女のくせに、訳知り顔で、のたまう。
「ミドリ、帰ろうぜ」
「分かったわ・・・」
何か、策略が必要ね。
日本の知識で、コテンパンにしてやるわ。
私は決意した。この世界で、パチンコを再現しよう。
そう、私は、前世、パチプロだったわ。
今度は、私が経営者、泥沼にはまるのは貴方たちね。フフ・・・
最後までお読み頂き有難うございました。