第5話 絶対に儲かる方法なの~~
遂に、開演を迎えた。
客入りは上々だ。
私も出演する。一応、私を目当てに来るお客様もいるみたいだ。
姉妹で、シジミ売りをやる。
お父さんは大工で、足を怪我して働けない。
しかし、貧乏なのにひたむきに頑張る姉妹の話だ。
「お父さん。お粥なの~~~」
「ゴホゴホ、いつも、すまないね」
「それは言わない約束なの~~」
そこに、地元の悪役ゴロツキが登場する。お姉ちゃんをいかがわしいお店で働かせようとするのだ。
「「「グヒヒヒヒヒィ」」」
「綺麗なおべべを着れるぜ!」
「ヒィ、お止め下さい。あれ~~~」
「お姉ちゃん!」
修羅場に、偶然に、お忍びで旅をしている法王様ご一行が現れる。
「これ、カーク!スマイリー!助けて差し上げなさい!」
「「はい!ご隠居様!」
シスター様も出演をお願いした。勿論、日当をお支払いする。
シスター様にお小遣いを渡したいから、お願いしたのだ。
役は、夢で見た劇の老人の側にいる令嬢役だ。
あれは、何でいつもいるのだろう。
シスター様は、お忙しい。台詞も少なめに指示をした。いかんせん演技はたどたどしいが、
皆、分かっている。
本物の令嬢だ。
観客は、流されやすいが、馬鹿ではない。
「エイ!ですわ」
「「「オオオオーーー」」」
シスター様は、お嬢様チョップでご活躍をする。
歓声があがる。
後は、ご老人の後ろについて回るだけだ。
しかし、それが良い。
そして、女カゲ役は、悪役の屋敷に忍び込み。情報収集。
「おっと、こんなからくりになっていたのね。キャア」
「カゲがいたぜ!」
「「「グヘへへへ」」」
「ヒン剥け!」
ドレスをバサっと脱がされ、これは工夫した。脱がされやすいドレスをマリーちゃんたちに作ってもらった。
女カゲはドレスの下に、軽装を着込んでいる。
「「「「何!」」」
「フフフフフ、魔道!紙吹雪!」
ゴオオオオーーーー!
ただの小さなつむじ風だが、ゴロツキたちは転倒する。
その時、お姉さんのお胸は、ボイン!ボイン!揺れる。これがエロだ。
「「「グアアアアアーーーー!」」」
そして、遂に、
「静まれ!静まれ!」
「このお方をどなたと心得る法王猊下だぞ!」
「「「ハハハハーーー」」」
「そ、そんな悪さがバレた!」
「堪忍します・・」
最後に、イケメン貴族を出す。貴族に配慮しているのだ。
「ご領主殿、しっかり、処罰をお願いしますよ」
「はい、法王猊下、民を善導し、ゴロツキをしっかり処罰します」
一応、テーマなので、貧困でも頑張れば、良いことがあるかもでオチをつける。
「ほお、元大工か。領に大工学校を作ろうと思っていた。教師としてくるが良い。娘は、メイドとして雇おう」
「そ、そんなご領主様!」
「有難うございます」
「お父ちゃんやったねなの~~」
これで、一件落着。
パチパチパチ~~
拍手はまばらだ。
滑ったか?
と思ったが、それなりに人は来る。
ゴロツキがゴロツキを成敗している劇を興行していることになる。
親分さんの器が大きくて助かった。
「まあ、ゴロツキが、もてはやされたら、世も末じゃけえ」
・・・・・
やがて、
「演劇に行くか。当たり外れのない貧困ランドの『法王様世直し旅』にするか」
「まあ、そうね」
「おい、女冒険者フランが出るって、蹴りのシーンがある。御御足を拝めるぜ!」
「「「行く!行く!」」」
と週一公演だったのが、週三になり。
やがて、日曜日には、パレードを行うようにもなった。
これは、成功か?
週6でも可能か?
リードの脚本は、誰でも練習すれば、役をこなせるようになる。
交代制で、競わせよう。
ジャラジャラ~~
「日銭が入ってくるの~、すごいの~~」
悟った。私は、劇をやっているのではない。日銭が稼げれば、何でも良いのだ。
しかし、高尚な劇団連中から、やいのやいのと来るようになったが、無視だ。
「ちょっと、私の台本を使いなさい!こっちの方が面白いわよ!」
「却下なの~~、分かっていないの~~」
私は劇をやっているのではない。
劇団に場所を提供しているだけだ。これが、分かっていない者の脚本は、つまらないと相場は決まっている。
一応、見てみるか。
「何々、目覚めたら、私は、貧乏人だった・・却下なの~~~」
「後悔するわよ!」
・・・・
「あ、お姉様」
お姉様と家族を、劇団の観客席で見るようになった。
どこも、カジノは下火だ。
熱心にメモを取っている。
「低俗ね・・・」
お姉様は真似をするだろう。お姉様はとってもズルいのだ。
・・・・・・
「姉御、大変ですぜ。劇の内容を、勝手に本にしている奴がいます。オリビア・ゼータです」
「あ、お姉様だ。どれどれ~」
本の内容は・・・
『ゼータ伯爵家のオリビーは感心な令嬢だ』
『とんでも、ございません。ご老人に親切にするのが、貴族ですわ』
『ええ、それに引き換え。妹のメリーは』
『ウワ~ン、法王様としらないで、ジジ呼ばわりしてごめんなさい!』
パタと本を閉じて、
ポイッ
した。これは、売れない。売れて欲しくない。典型的なメアリースーだ。
って、何で、こんな言葉を知っているのか?私の名前が入っているじゃん。
確か、主人公を自分に重ね合わせて、異常に優遇する。
私は夢を見る・・・これは、もしかして、転生者?
なら、もっと、スゴイ発明を出来るはずだ。
いや、でなければ腑に落ちないことが多々あった。
もしかして・・・・
「お嬢様!ゼータ家の方々が来ました!」
「え、お父様と、お母様が?」
・・・・・・
やつれている。もうすぐ、破産だそうだ。
うわ。婚約者、上を向いている。ズボンのチャックがしまっていない。放心状態だ。お姉様の本、失敗したな。
「メアリー、後ろ盾になって差し上げます。だから、顧問料を上納しなさい」
「やーなの。法王様が後ろ盾なの~~~」
「ヒィ、何、その免状!」
この劇をやれるのだから、女神教会が、後ろ盾と分らなければおかしいだろう。
免状を見せた。
「・・・何か、良いビジネスはないか?カジノを廃業して、破産間近だ」
「領地経営で我慢すればいいの~~~~」
あまりにしつこいので、絶対に、儲かる方法を教えたら、
お姉様は言う。
「フン、これくらいの方法、知っていたわ!」
「ごめんなさいなの~~、これぐらいしか分からないの~~」
・・・いや、こいつ、絶対に知らなかっただろう。まあ、いいか。
しばらくして、ゼータ伯爵のタウンハウスの前に、『売家』の看板が立てられた。
綺麗な文字だ。
売家と貴族風に書く三代目って慣用句あったな。
事業が成功して、成り上がって、三代目ぐらいに、没落する。
三代目は、高度な教育を受けて、綺麗な貴族の文体を身につけている皮肉だ。
まあ、いいか。
「あのお屋敷を買うの~~~」
「はい、メアリー様、凱旋をなさるのですね」
「違うの~~、今度は、逆なの、金持ちツアーなの!」
・・・小金持ちの平民に、貴族体験ツアーを提供する。
皆、元、貴族の使用人達だ。本物だ。
これは、イケるか?
「グシシシシシシシシシシなの~~~」
「メアリー様・・・」
「トムたちと見回りに行くの~~~」
「はい、お気をつけて、話を通しておきます」
・・・・・・
「ところで、メアリーの姉御、絶対に、儲かる方法って何ですか?」
「ギャンブルなの~~~~」
「え、そんな馬鹿な」
「二倍以上の配当の単純なギャンブルをやるの~~~」
「それで?」
「トム、考えるの~~、負けたら、二倍の賭け金でまた賭けたら、損を取り戻せるの~~~勝つまでやれば儲かるの~~」
「なるほど」
「なるほどじゃないの~~、6回も負けたら、損を取り返すには、64倍の賭け金が必要なの~~~」
「うわ。馬鹿だな」
すっかり、トムは舎弟になった。
今日も孤児院の子を引き連れて、見回りに行く。
これで、お小遣いを渡している。
ただ、あげても良いけど、それではためにならない。
「メアリーの姉御!お野菜です。持って行って下さい!」
「有難うなの~~」
「代貸!今度、相談に乗って欲しいです」
「いいの~~、商売ならお金頂くの~~」
あれ、姉御、大貸?私、裏組織の幹部のようになっていないか?
アカン!アカン!
孤児に戻ろう。私がいなくても、商会は回るからだ。
そのケジメは、やはり、当初の目的、シスター様のお母様の形見、ドレスと宝石を取り返すのだ。
それが終わったら、孤児に戻る。今は親分さんに商人を探してもらっている状態だ。
最後までお読み頂き有難うございました。