第2話 欲しがり義妹と二つ名のある幼女になってしまったの~~
当たった。大人気ではないが、貧困家庭三世代12人家族の一泊ツアーが、金貨一枚で売れた。
絶対に、お化けが出るお化け屋敷だ。
若い貴族が来た。名目は貧困家庭を体験して、政策の立案に寄与するってなところだ。
「ヒィ、一つのベットに6人が寝る・・・、夫婦生活はどうなっているのだ!」
「それは、聞かない約束だよ。お客さん」
「朝の食事は、こんなに貧しい!イモと買ってきた魚の揚げ物。パン焼き職人はおらんのか?」
「・・・こんな小さな間借りで、竈なんて、ないよ!」
・・・・
「あんた。こっちだって、働いているんだ。この唐変木!」
「何だと、ウグ、チンを蹴るな!」
ガチャガチャ!バシャン!
「ヒィ、大変だ。ご亭主と奥様がケンカをされているぞ!ご子息、ご息女、止めなくていいのか?」
モグモグモグ~
「いつもの光景さ」
「さあ、お兄ちゃん。さっさと食べて、食器を片すのは、あたいの役目なんだい」
「平然と食事している・・・」
また、オプションをつけた。
「跡取り息子だが、我が儘が過ぎる。年上の使用人に、料理が気に入らないからと皿をぶちまけたのだ」
「ヘイ、金貨10枚の一週間の職業体験ツアーがございます」
・・・・
「何だ。このドブの中に入れって!」
「そうだ。この下水管は、子供しか入れないのだ!」
「さっさと、マスクを被って、掃除しろ!」
チュー!チュー!
「うわ。ネズミだ!ファイヤーボー・・・ウゲ!」
バチン!
「馬鹿、下水管でファイヤーボールをやる奴がいるか!爆裂する空気があるかもだ!」
「そんなことも分からないのか!」
「グスン、親父にも殴られたことないのに・・」
「ほれ、日当大銅貨3枚(3000円)だ」
「グスン、あれだけ働いたのに・・・」
「ほれ、パンとスープだ」
「パン固いよ」
「馬鹿だな。パンをスープにひたして食べるのだ。そんなことも分からないのか?」
「グスン、グスン、ウワ~~~ン」
勿論、追い込まない。
フォローをする役を入れる。女の子だと、惚れるとかあるから、
大抵、おばさんだ。
「ちょっと、あんた達、この子は頑張っているんだい!大人なら、もう少し、事情をくみ取りな!」
「ステルおばさんには参ったよ」
「坊や、頑張りな。特別にドーナツあげるよ」
「ウウ、・・・・有難う」
そして、最終日、ドブさらい職人たちは、拍手する。
パチパチパチパチ!
「「「「よく頑張ったな!」」」
「偉いぞ!」
「ウ、ウグ、ウワ~~ン」
これで、性格が矯正されたかは、分からない。
しかし、大好評だ。
こういった緩急の付け方は、さすが、裏組織だ。
妙に手慣れている。何に使っているかは、想像はやめよう。
私も参加したりする。泣いている青年の貴族にナデナデしてやるのだ。
「お兄ちゃん。頑張るの~~」
「グスン、グスン」
「ドブさらい有難うなの~~~」
やがて、安全なダークな遊園地として、貴族のカップルが訪れるようになった。
よし、これからも、お金を取ろう。
「まあ、ロメオ、小汚いわ。あそこで、鼻水を垂らした子供が、物欲しそうに見ているわ。お小遣いをあげなきゃ」
【オイ、コラ、金出せや!】
「キャアアー、強盗?!ここは安全じゃなかったの?」
「メロディ!僕の背中に隠れて!」
強盗と思わせて、周りの住人は、拍手をする。
パチパチパチパチ!
「兄ちゃん。彼女さんを守って、偉いね」
「え、演技なの?」
「へへへへへ、貧民街で不用意に財布を出してはいけませんぜ。その啓蒙ってやつをやっているんでさ」
「怖かったわ。スゴイ演技ね」
「ええ、本職なので」
「・・・本職・・」
「そうだ。素晴らしい演技にチップをあげよう」
「毎度!」
人は、犯罪よりも安全に稼げればそっちに行くのだ。
勿論、貴族のお兄さんには、事前に知らせておく。
彼女さんと、ウハウハ間違い無しだ。
「おう、今月の取り分だ」
チャリン♩
「有難うなの~~~」
金貨が見える。これで、孤児院は大丈夫だろう。
全額、商業ギルドを通して、良い子孤児院に送金だ。
しかし、余裕が欲しい。シスター様のお母様の形見・・・を取り戻したい。
もっと、お金を稼ぎたいな。と就寝をしたら、
また、変な夢を見た。
☆☆☆夢
何やら、英文学というものを学んでいる黒目の女が本を紹介している。
「何なの。これ?」
「ビクトリア朝で、一部の上流階級の紳士の間で、可愛い子に、物乞いの姿をさせて、写真を撮るのが流行っていたのよ」
「意味分からない。現代で言えば、コスプレ?」
・・・・・
チュン♩チュン♩
「・・・・やってみるか」
孤児院では、マリーちゃんが可愛い。
いや、よそう。私が実験台になるべきだ。
この孤児院では、お古の服は、孤児に着せない。
断っているのだ。
前に、平民学校に行った子が、クラスに、元の持ち主がいて、イジメの対象になったのだ。
それ以来、シスターさんは、古着と靴の寄付は断っている。
シスター様が作ったり。お針子の練習で、女の子が作る。
優しいな。
まず。貧民街の何でもストアー、ボロ屋に行く。
「銅貨一枚の服、欲し~~の!」
「はいよ。物乞いでもやるのか?シスター様は、禁止しているハズじゃねえ?」
「違うの~~~」
ヌイグルミのミディちゃんと魔道写真店に行った。
☆☆☆魔道写真店
「帰った。帰った。ここはお前みたいな小汚いガキが来る所じゃない!」
「おい、撮ってやれよ」
「・・・・フランクの親分、分かりました」
パシャ!パシャ!と撮った。
我ながら、可愛い。
しかし、これ、買う奴いるのか?
と思ったが、売れた。
「この子、貴族の顔立ちに、高級そうなヌイグルミ、没落した令嬢か?僕が保護しなければ!」
「おいどんの、妹にするでごわす!守らなきゃ!」
ドサッ!
ファンレターが山のように届く。
お金も入っている・・・・
もらって良いのか?
魔道写真の裏に、演出ですと書いてあるが、
それでも、反響がすごい。
よし、別バージョンを作ろう。
「マリーちゃん。お願いなの~~、衣装を作って欲しいの」
チャリン!
「メアリーちゃん。材料費だけもらうわ」
「ダメなの~、ビジネスなの!」
と、魔道師メアリー、おすましメアリー、ヒラヒラメアリーと衣装バージョンを売ったが、
どれも、売れない。ヒラヒラメアリーは少し売れた。可愛いのに何故だ?
物乞いメアリーには到底及ばない。
「フヌー!何故?」
「アハハハ、それは、皆、他人の不幸が大好きなのさ。ミカンの皮で滑って転ぶが。古典的なお笑い芸だ。分かるだろう。転んで痛がる様が面白いのだ」
と親分さんは言う。
「物乞いメアリーでは、何かと刺激が強すぎます。何か、良い名前は・・・」
「そうだな。ヌイグルミと一緒にムシロに座って、物欲しそうに見つめるメアリー、お花を買ってと懇願しているメアリー、ちょうだいと両手を差し出しているメアリー・・・・・そうだ。『欲しがり義妹メアリー』、でどうだ?」
「もお、それで良いの~~~~」
かくして、齢8歳にして、二つ名のある女になってしまったのだ。
最後までお読み頂き有難うございました。