ガラス越しに見た惨劇
五百文字制限企画に参加するために書きました。もう一つのルールは最初か最後の一文を「実は僕、人間じゃないんだ」にすることです。
「実は僕、人間じゃないんだ」
男の声で仁は目覚めた。
後頭部が激しく痛い。後ろから殴られた記憶が甦る。
手で押さえようとして気付く。
カビ臭いベッドに、大の字で手足を縛り付けられている事に。
首だけを動かし、声が聞こえた方を向く。誰かがベッドの脇に立ち、見下ろしている。暗くて顔は見えない。
「誰だ!? 俺に何をした!?」
「……貴様は僕の妻に何をした?」
「『何を』もなにも、俺はお前の嫁なんか知らない!」
そこで仁は見た。男の横の台に鋸、包丁、鋏などの刃物が整然と並んでいる。
怒りを恐怖が塗り潰す。
コイツ、狂ってんのか!?
「人間じゃない」ってそういう事か!?
男が呟く。
「貴様は僕の妻を殺した」
仁には全く身に覚えがない。
「待て! 人違いだ! 俺じゃない!」
「ふざけるな。全部見てたんだぞ、僕は」
声が強烈な怒りを纏う。
「貴様は、妻を活きたまま切り刻んだ。そして瀕死の妻の体を弄んだ」
男は床から1メートルの鉄杭を拾い上げた。
「今から貴様を切り刻む。最後にコイツで足首と頭を貫く。貴様が妻にしたように飾りたてる」
「だから俺じゃないって! 俺はただの板前……あっ!?」
妻を活き造りにされた鯛の復讐が、今まさに始まろうとしている。
最後まで読んで頂けて嬉しいです。ありがとうございました。
御感想、評価(★)頂けると励みになります。
よろしくお願いします。