お家に帰ろう
「先生、先生の師匠ってなんでピセラの森に住んでいたんですか?」
「なぜ……ね〜。」
そう呟くと、ラノは不思議そうな顔をして
「先生はご存知ないんですか?」
と尋ねてきた。
「いや、そういうわけじゃ無いんだよ。ただ……、」
「ただ?」
「師匠の根幹に関わることだからね。聞いてて心地よいものでは無いんだよ。それに勝手に語るのは師匠を困らせてしまうからね。」
「そう……ですか。」
ラノが疑問に思うのも無理はない。なんせピセラの森は確認されている地域の中で1番魔獣が多くいるのだ。それだけではなく、魔獣の強さもトップクラスに一体一体が強いのだ。
どれぐらいの強さかといえば、世界で1番強いとされている冒険者がちまちま行列をつくっている小さなアリなら魔獣は多くの国を滅ぼしたドラゴンぐらいに実力の差があるのだ。
魔獣から見たら人間なんぞおもちゃでしかないのだ。そのためかピセラの森は別名"死神の森"と呼ばれている。
そんな所に住んでいるなんて聞いたら、自殺希望者か単なる変人かと思うだろう。
今考えてみれば、あのピセラの森で最初に出会った魔獣は、私で遊んでいたのだろう。そうでなければ、今頃私の命は無かっただろう。
これをふまえて思ったことがある。それは、『師匠、強すぎじゃない?』って。だってさ師匠が住んでいたところはさ、結構森の奥深くだったんだよ。
ピセラの森はね、奥になればなるほど魔獣が強くなるんだ。防御力も攻撃力もね。そんな魔獣を、1発で、倒・し・た・ん・だ・よ!!
はぁ〜
だけど試練の時に挑んだゴブリンは別だけどね。あれは師匠によると、たまたま運良くあそこに住み着いていたそうだ。実力は冒険者になりたての人でも倒せたレベルである。
「先生、そんな師匠の元で教えてもらったということは先生はピセラの魔獣を倒せるんですか!?」
お〜っと、ラノが興奮状態に入ったぞ〜。はぁ〜、か〜わ〜い〜い〜!!
「うん、もちろんだよ。とは言っても1番強い魔獣相手だとギリギリだけどね。」
「やっぱり先生は凄いですね!!やはり僕が尊敬し、大好きな先生ですね!!」
『大好き(エコー)』
ぐはっ!!
「せ、先生ー!!」
我が一生に悔いなし……。チーン
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「そういえばそろそろ夕方になるけど帰らなくていいの?」
「っあ!!忘れてた!!」
私は今、試練の合格を聞いた後に色々授業に必要な物を聞いていた。必要な物はある程度大きいカバンに解体用のナイフ、それと今私が使っている魔導書だ。
正直言ってなぜ解体用ナイフが必要なのか全くもって分からない。
まぁそんなことは置いといて。
「どうしよう……、帰り道忘れた……。」
なんと困ったことに帰り道を忘れてしまったのだ。いや、忘れたというより覚えてないという方が正しいだろう。魔獣から逃げる時一生懸命走っていたからどうやってここまでたどり着いたのか分からないのだ。
「ああ、それなら大丈夫だよ。ネロナが住んでいる所ってピセラの森の傍にある村?町かな?とりあえずそこだよね?」
「あ、はい。」
「そこなら道案内出来るよ。丁度見送りもしたかったからね。」
「ありがとうございます!!オウカさん!!」
助かった〜!!
「オウカさんじゃなくていいよ。もう僕の弟子なんだから。好きに呼んで?」
そうだよね。オウカさんは私の魔法の師匠だし……。よし!!
「それじゃあ……、師匠で!!」
「師匠か〜、それは初めてだな〜。それじゃあ師匠としてよろしくね。」
「はい、師匠!!」
「じゃあそろそろ帰らないとね。続きは帰りながら話そっか。」
そうして、私達はサロクバ村へと向かって行った。道中は恐ろしい魔獣に出会うことは無く、順調そのものだった。途中から師匠の家までは師匠と一緒に行っていた為、どこを通ればいいか分かっていた。
しかし不思議なことに師匠は行きとは全くもって違う道を通っていた。
「師匠、なんで行きとは違う道を通っているんですか?」
「ああ、それはね魔獣と遭遇しないようにしているからなんだよ。」
「え、見てもいないのになんで分かるんですか?」
「それはね探索の魔法を使ってるからなんだよ。詳しい原理は後々やる授業で教えるけど、それのお陰で魔獣の居場所が分かるんだ。」
やっぱり凄いな〜。私も使えるようになるのかな?
そんな私を見てか、師匠は私の頭を撫でながら
「ふふ、大丈夫だよ。ネロナもこの魔法を使えるようになるよ。そう僕が教えるからね。」
と言ってきた。
「はい!!」
顔が熱い。けどこれは熱が出ている訳ではない。とっても嬉しかった。ただ……それだけ。だけど私にとっての家族以外からはあまり褒められたことが無かったから。ちょっと不思議な感覚。
こうして私達はピセラの森の出入口付近へとたどり着いた。
「さて、ここでお別れだね。」
「はい……。」
もうちょっと師匠と話したかったな。
「ふふっ、大丈夫だって。また明日も会えるんだから。ああ、それと僕の家に向かう際はツキミを呼んでね。魔獣と遭遇しないような道を案内してくれるから。それと、はい。」
そう言って師匠は可愛らしいローブと魔法使いが被っていそうな三角帽子を私に被せた。
「これは?」
「まぁ、合格祝いってやつだよ。僕の弟子になった記念でもあるかな?魔法使いって言ったらローブに三角帽子でしょ?」
これを……私のために……?いつの間に?嬉しい、嬉しい!!
「ありがとう、師匠!!大切にするね!!」
「うん良かった、喜んでくれて。」
喜ばない人なんているわけ無いじゃん!!こんな些細なことで祝ってくれて……。ほんと師匠は天使みたいな人だな〜。まぁ出会ってからまだ1日しか経ってないけどね。
「それじゃあ、またね。ネロナ。」
「はい!!また明日、師匠。」
師匠は私が見えなくなるまであの優しい笑顔で手を振ってくれていた。
村へ戻ると、なぜか狩人の人達を中心に大人達が集まっていた。
どうしたんだろう?
「あの……、ケイガお兄ちゃん。どうしたの?こんなに大人達と集まって。」
ケイガお兄ちゃんは狩人の中で1番魔獣を狩るのが上手い狩人だ。だから、狩人のリーダーを任せられていてみんなに慕われている。
そんな人だから子供たちである私達は『ケイガお兄ちゃん』と呼んでよく懐いている。だから、大人達がこうして集まるのは緊急事態だと知っている。だからこそ、私がいない間何か良くないことが起こっしまったのではないかと心配してしまう。
そのため、ケイガお兄ちゃんに聞いたら、怒鳴った声で
「ああ?ピセラの森で行方不明になったお前のことを探しに行こうと……して……。」
と言った後、大人達が私の方を見て一瞬静かになったかと思ったら、
「お前、どこいってたんだよー!!」
「そうだぞ。ネロナ、心配したんだからな!!」
「ネロナがもしかしたら危険な目に合ってるかもしれないって、孤児院の先生心配してたのよ?」
とケイガお兄ちゃんと大人達が泣きながら抱きついてきた。
なんということだ。私が師匠と話していた間にみんなに迷惑をかけてしまっていたなんて。
「その……ごめんなさい。」
「いいのよ。それより早く孤児院に帰って先生達に大丈夫だって伝えてきなさい。話は明日聞くから。ね?」
「はい、ランお姉さん。」
ランお姉さんは村の薬師さんだ。本名はランベリカさんで、とても綺麗な人で師匠とは別の美しさを持っている。孤児院にはよく色々な薬を持ってきてくれる。
ランお姉さんの言う通り、先生達に心配かけているし早く帰らないと。
そうして、孤児院に早く向かっている途中にライが申し訳なさそうにこっちを見ていたけれど、そっぽをむいてライの傍を走り抜けた。
孤児院に着くと先生がドアの目の前で私を待っていた。
「ネロナ!!」
そう言って私に先生は抱きついてきた。
「良かった、良かった!!あなたに何もなくて。」
「その……ごめんなさい。心配かけて。」
「いいのよ。あなたが無事だったのだから。それにネロナはいつも色々と我慢させてしまったでしょう?とてもいい子で、私達のことも手伝ってくれたりして。」
「うん。」
「いつもありがとう。そしておかえり、ネロナ。」
「うん、ただいま!!先生。」
さて今回でや〜〜〜〜っとネロナの方での1日が終わりました。え?ラノの所の時間帯?いえ、まだ1日終わっておりませんが( ゜Д゜)ナニカ?
それはそうと賢者さん、変態度が増して来ましたね………。
おまわりさーん、ここです!!ここに犯罪者がっ(殴
だ、誰だ( ºロº)!!
誰もいない……だと!?(犯人は賢者さんの思念体です(。 ・`ω・´) キラン☆)
ガクブルガクブル((((;゜Д゜))))
と、とりあえず今回はここまでということで。
次回までじゃあね〜((ヾ(*´꒳`* )フリフリ。