試練
「先生、その家ってそんなに不思議な家だったんですか?」
珍しいな、ラノが魔法以外に興味が湧くなんて。
「ああ、結構不思議な家だったんだ。世界中旅をしたが、師匠が住んでいたような家は全くなかったよ。」
「へぇ〜、じゃあ先生の師匠の出身ってどこだったんでしょうか?」
なるほど〜。ラノは家自身に興味を湧いたわけではなく、師匠の出身を聞き出すために聞いたのか。そして、もし機会があればそこに訪れ、知らない魔法を聞き出そうとしていたんだな。まぁ、無理だろうけど……。
「さぁ、どこだろうね。」
「む、先生なら知ってるんじゃないんですか?」
「まあまあ、それを話しちゃったら、後に話す師匠との馴れ合いのワクワク感が無くなるじゃないか。」
「先生がそうおっしゃられるなら……。」
ラノはムッとしながら顔を膨らませている。あー、可愛いー。
「でも、その代わりに後で空を飛べる魔法を特別に教えてあげよう。」
「え!?本当ですか?!」
ラノは、一瞬で満面の笑顔となり、キラキラした目で私を見てくる。なにこの可愛い生き物……。
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「え、えーーーーー!!」
いやいやいやいや、有り得ない。600年だよ!!600年!!なのになんで本人がいるの?!というかなんで生きてるの。なに、実は人間じゃありませんでいたってこと!?エルフかなんかだっていうの!?
いやそうだ、きっとそうなんだ。そうじゃないとこんなに長生きなわけが無い。
「あのぅ、オウカさんってエルフなんですか?」
「いや違うよ。僕はちょっと訳ありの人間だよ。ほら、耳尖ってないでしょ?」
あ、ほんとだ。じゃなくて!!、なんで600年も生きていけるの!?なに、実は人間は寿命が物凄く長かったとでもいうの!!んなわけないでしょう!!
はっ、そうだ。この人は嘘をついてるんだ。そうでないとおかしい。きっと私を笑わせる為に冗談を言っているんだ。そうに違いない。
「う、嘘ですよね……。」
「ん?本当だよ?ああ、それとも災厄の魔女であることのほうかな?」
そのどっちもです〜。(死んだ顔)
「まぁ、600年も経っているから信じられないよね。けれど、ネロナが"災厄の魔女"を探していた理由によっては出来ることがあるかもしれない。だから、理由を教えてくれないかな?」
確かに、オウカさんなら何とかしてくれるかもしれない。さっき、私に無詠唱の治癒魔法を使ってたってことは、それなりに凄い?魔法使いってことだし……。
「その……、弟子にして欲しくて探してたんです。」
「魔法を教えてくれる相手を探してたってこと?」
「はい。」
「なるほどね。」
そう言うとオウカさんは考えこんでしまった。
ど、どうしよう。オウカさんが本当に"災厄の魔女"かどうかなんて分からないのに……。私、一生魔法をまともに使えないのかな。
「よしっ、ねぇ、提案なんだけど……僕の弟子にならない?」
「へ?」
オウカさんの……弟子に?
「僕はネロナのいう"災厄の魔女"であることの証明は出来ない。というか、どう証明すればいいかなんて分からないからね。というか、そう呼ばれていたなんて、今知ったしね。」
「え、そうなんですか?」
「うん。けれど、僕はちゃんとした魔法を教えられる技術を持っている。どうかな?」
確かに私にとっては、とってもいい提案だけど……。もしオウカさんが治癒系の魔法が得意で、攻撃系の魔法を使えないかもしれなかったら……。
「信じられない?」
「あ、いえそういうわけではないのですが……その……私、攻撃系の魔法を学びたいんです。オウカさんが魔法を使えることは、さっき私を治したことから分かります。けれど、」
「僕が攻撃系の魔法を使えないかもしれないってこと?」
「んっ、はい。」
「じゃあ証明すればいいよね?」
そう言って、オウカさんは立ち上がる。
「え、いやでもどうやって……。」
「ちょうど、ご飯の調達の時間なんだ。着いてくる?」
「はい!!」
即答した。あんなに疑ったけれど、もしかしたら凄い魔法が見れるかもしれない。そんな期待を込めて、森の奥に向かっていくオウカさんに着いて行った。
「いてっ。」
しばらくオウカさんに着いていくと、急にオウカさんが立ち止まった。
「あ、あのどうしっ、」
「しっ、」
オウカさんは私の口に人差し指をあてて、私を黙らせる。そして、オウカさんが指の向けた方向を見るとそこには、見た事ないほど大きい猪の見た目をした、魔獣がいた。
え、あれを狩るの?いくらオウカさんでも出来ないんじゃあ。だって、村の狩人でもあんなに大きな魔獣狩った所を見た事ないのに……。それに大きな魔獣はとても危険だから無茶に攻撃しない方がいいのに。
そう思っていると、オウカさんは
「分かりやすい方がいいかな。」
そう呟いて魔獣に向かって手をかざし、細く鋭利な長い氷を空中にものすごい速さで作り出していた。
「綺麗……。」
そう思わず、口に出していた。
聞こえていてわざと何も言わなかったのか、それとも単に聞こえていなかったのかは知らないけれど、オウカさんは微笑んでその綺麗な魔法を猪の姿をした魔獣へ、放った。
ビュンっ
そんな凄い音がしたかと思えば、まばたきをし終わった頃にはもう既に魔獣は刺されており、血も出さずに倒れていた。
「どう?これで証明出来たかな?」
「は、はい……。」
圧倒的だった。私が使うような効果すら出ないファイヤーボールよりも、いや比べることさえおこがましいほどに。それに、魔法に対して素人の私でも分かる。無詠唱の魔法を使うことがどれほど難しいのかすら。
だって、村に魔法を使う冒険者が来たことがあったけれど、全員が詠唱をしていた。あの長ったらしい呪文を言って、やっと魔法が出るけれど、オウカさんみたいに大きくはなかったし、あんなに精密に打てやしなかった。
この人から教わりたい。
心から本気でそう思った。あの時ーーライに向かって宣言した時ーーのように、その場で思っていないことを口ずさんだ時とは違って。それほどまでにオウカさんを認めたのだ、魔法使いとしていや、魔女として。
「あ、あのオウカさん……、弟子になるっていう提案乗らせてください!!」
そう言って私はオウカさんに頭を下げた。
「もちろんいいよ。と言いたい所だけど、提案しといてなんだけど、条件をつけさせて欲しい。」
え?
「条件とは?」
何を言われるんだろう?もしかして魔女だから"実験のモルモットとして手伝って"ととか?
「なぁ〜に、そんなに身構えなくてもいいよ。ちゃんと命の保証や日常生活が送れる保証はするから。」
ほっ、良かった。まぁオウカさんだからそんなことしないと思うけどね。
「条件はたった1つ。僕がこれから出す試練を受け、合格すること。」
「試練?」
お久しぶりです、皆様。
結構期間が伸びてすいませんでした。
我の小説は基本不定期ですが、2週間に1回は投稿出来るように心がけているのです。
ですが、風邪やら色んな用事が重なりに重なりこんなに延びてしまったということです。
本当にすいませんでした。
さて、こんな湿っぽい謝罪はネロナちゃんのファイヤーボールで頑張って燃やしてもらって。
今回、オウカに対してネロナちゃんはちょっと疑心暗鬼でしたが、実はこうなる予定は無かったのです。ですが書いているうちに、『知らない人を容易く信じるな』という母からの"教え"を思い出しまして、急遽入れてみたということです。
あとネロナちゃんをびっくりさせるのは楽しかったです。『いや〜、実は違うんだな〜。』なんて思いながら書いてました。
それでは、次回までばいなら〜( * ॑꒳ ॑*)ノ⸝⋆