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私は何者?

 目が覚めた。

 私はベッドの上にいた。

 周りにはよくわからない器具がある。

 一通り見回してから起き上がろうとしたけど、起き上がれなかった。

 そこでようやく、自分が拘束されていることに気づいた。

 なに…これ…。

 ただ、お父さんがそばにいたからそこまで焦ることはなかった。

 「おはよう、レン。」

 「おはよ、お父さん。…ここは?それと、なんで私…。」

 「すまない。ただ、今は我慢してくれ。」

 「………わかった。」

 もう一度あたりを見回すと、奥の部屋に人が複数いるのが見えた。

 そいつらがこっちに来た。

 「君、どこまで覚えている。自分のことはどこまでわかる。」

 え?

 どこまでって……教会に行ってツグと話して、それでツグには魔法の天分があって、私は離れたくなかったから祈って………それでそのあと……。

 ズキッッ…

 そうだ。

 そのあと…そのあと私は………。

 「……ハァ……ハァ……全部、覚えて…ます。」

 そうか。

 だから今、私はこんな状態なんだ。

 「よし。今度は万全の準備でもって、もう一度貴様の天分を視る。ただ、今は少し休め。」

 もう一度見るんだ。

 大丈夫なのかな。

 「おい、こいつの拘束を解いてやれ。」

 「よろしいのですか?」

 「心配するな。大丈夫だ。」

 「しかし。」

 「拘束してストレスを与える方が危険かもしれん。」

 「……わかりました。」

 危険…?

 私に…何が……。

 

 拘束が解かれた。

 「ありがとうございます。」

 「ッ!?……あ…ああ。気にするな。」

 明らかに怯えてる。

 ……結局何だったんだろう。

 もう一度見ればわかるのかな。

 「あれ?」

 起き上がろうとしたけど、うまく力が入らなかった。

 「これは麦粥だ。食べておけ。王都に来るまでの道中、水とスープを摂っていたとはいえ、ほぼ寝たきりだったそうだからな。今は腹が減って体力も落ちているだろう。」

 「え?」

 ここ、王都?

 家があるスエト村から王都までって結構距離があるはず。

 でもその間の記憶は一つもない。

 ずっと気を失っていたの?

 お父さんの顔を見る。

 「移動中は眠りの魔法をかけて、必要があるときは催眠状態にしていたんだ。」

 「そうだったんだ…。」

 

 「気分はどうだ?」

 一通り休んだ後で声をかけられた。

 「大丈夫です。」

 「そうか。なら大教会に行くぞ。」

 「……はい。」

 大丈夫なのかな…。

 またおんなじことになったら、今度こそ私…。

 ……ツグ……私…大丈夫だよね…。


 


 ーーーこれで終わりだ。」

 「え?」

 あまりの普通さに、つい声が出てしまった。

 「異常…とかは……?」

 「ない。」

 あの時と同じように進んで、何も起こらずに終わった。

 ただ神官は三人になってたけど。

 「……はぁぁ……よかったぁ……。」

 気づかないうちに全身力んでいたのか、どっと力が抜けてそのまま座り込んでしまった。

 「あの…それで私の天分は…?」

 「特にない。」

 「…え…なにも…なし……。」

 なにそれ…。

 悲しいような……嬉しいような………苦しさ。

 よくわからないよ…これじゃあ…。

 「だがこれでは、あの時神官が絶叫した原因が謎のままだな…。」

 ビクッッ…

 「はッ…はッぁッ……」

 息が……できない…。

 耳の中であの瞬間の絶叫が反芻はんすうし、耐え難い恐怖に全身が包まれていく。

 誰か……。

 頭痛は酷くなっていき、痛み以外が消えてゆく。

 助けて…。

 怖いよ……誰か………。

 ………………。

 …………。

 …。

 

 

 ガバッ!

 毛布の上にいるネズミを捕まえるほどの勢いで少女は飛び起きた。

 「はぁッ…はッ…はッ…はぁ…はぁ……はぁ………。」

 汗でびっしょりと濡らしたままの服と布団を気持ち悪く感じ始めたころに、荒れた呼吸が落ち着いてきた。

 「…ふぅ…………あ……ごめんね…。」

 モゾモゾとしていた布団を広げると、包まれていたネズミが素早く去っていった。

 「………着替えたいな…。」

 「レン!起きて平気か?体調は?気分は悪くないか?」

 「うん…大丈夫。」

 「そうか………よかった。」

 お父さん……。

 「………心配かけてごめん。」

 「気にしなくていい。ありがとうな…レン。」

 「…うん。」

 お父さんの声が聞こえたのか、奥から私に少し優しくしてくれていた男が出てきた。

 「……起きたか。」

 「はい。」

 「体調に変化は?」

 「ないです。」

 「気分は?」

 「元通りです。」

 「他に何か変わったことは?」

 「……ありません。」

 「…そうか……。よし。一晩ここで休め。明日明朝、私が村まで送り届ける。それでいいな?」

 「……はい。」

 「分かりました。ありがとうございます。」

 それを聞いた男は、部屋から出ていった。

 「………レン?」

 「……うん?」

 「そんなにあの男を見つめて…大丈夫か?」

 「……うん。」

 ただ動く物をじっと見つめてただけなんだけど…。

 まぁいっか。

 それにしてもまだ頭が上手く働いてないのかな…。

 眠たい…。




 

 …………。

 鳥の声だ……。

 「よいしょ…。」

 ここ大教会か…。

 よく寝れた。

 このベッド……寝心地いいから……。

 ………欲しいな…。

 そういえばお父さんは…どこだろ…。

 寝た時は隣にいたはずだけど…。

 まあ部屋で待ってたら戻ってくるかな…。

 机の上にパンとスープあるし。

 ……一食ぶん…。

 …食べながら待っとこ。


 「レン。起きてたか。」

 「おかえり、お父さん。」

 「ただいま。準備はできてるか?」

 「うん。」

 といっても必要なものなんて私には何もないんだけど。

 「それじゃあ村に帰ろうか。」

 「うん。」

 ……やっと………ツグに会える…。

 …………会ってくれるかな……。

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