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ずっと昼日中でいいのに。

作者: 横瀬 旭

"Always Look On The Dark Side Of Life"


歌詞です。

 日曜日の十六時、防災行政無線のチャイムが街に鳴り響き、夜が近づいている事をひしひしと感じた。僕はそれを知りたくないので、カーテンを閉め、寝室の照明を点けて無理に昼を長くしようとなるべく明るさを保つようにしていた。しかし、僕の心は暗かった。孤独で、寂しかった。そのままの状態で夜が来るのが嫌だった。


その寂しさはカーテンや枕に伝染する。しかし、彼らは喋らない。音を出すのはテレビとか時計くらいなもので、テレビは嫌そうに漫才を映していたので消してやった。正直僕も不愉快だった。笑いたくもないのに笑わせようとしていて腹が立った。


 寝室がしんと静まっているのも寂しいので、私はレコードラックから一枚取り出してターンテーブルに乗せ、針を落とした。この曲が僕の憂いを解決してくれるわけではないし、孤独を和らげてくれるわけでもないけれど、音がしないよりは良かった。


 レコードは回りっぱなしだが、私は外に出ることにした。私が居なくても、カーテンや枕が聴くだろう。テレビもおとなしく聴き入るだろう。少しでも寂しさを紛らわせてくれればいい。そう思って僕は家を出た。


 暗く黒く変わる東京を、覚束ない足取りで歩く。駅前の道路では水道管工事の交通規制で赤い棒を振る作業員や、一人で酒を飲んでいる青年を見かけた。生き生きとする夜の街の姿が集まっていた。電車が終わってもタクシーが人を待っている。眠らない街の姿がそこにはあった。


 朝は必ず来る。どんな場所でもいつかは陽が昇る。


夜の空気に冷やされ、カーテンの隙間からもれた光で薄明るい寝室は、僕の帰りを待っている。僕の心室が同じように冷たくなっていると知らずに。


ターンテーブルはもう回らない。しかし地球と時計は回り続ける。レコード針と心臓はもう微動だにしない。しかし秒針は動き続ける。

ずっと真夜中でいいわけねえだろ。

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