第9話 鎧トカゲ
エイミとダイは、トードと取り留めのない世間話をしていた。親密になるための時間だろう、次第に山が大きくなって来る。
3時、気分転換の小休止の時、ジャックは、地図を広げる。目の前に広がる山、その外観は地図とは全く違っている。地図上では、小ぶりでおわん型の山が書いてある、実際、地図の片隅に写っている山のはずだが・・見えているのは、最近出来た火山を思わせる。
地図を見たトードが、指を指しながら説明を始めた。
「鉱山が発見された時の地図ですね。その写真の山が、この先の変わり果てた姿です。」
御者トードの指示す、前方の山が鉱山から排出された土石の積まれた後。
「最初の山全体が、鉱石を含んでいた。そこで、山を削り平らにしたのです。鉱石は、さらに下に広がっていました。その手前に、施設が出来て行きました。宿舎、食堂、最初魔法で作られていた水もあちらの山から引いてきました、風呂、下水施設、やがて家族が住むようになり社宅ができ、さらに人が多くなって子供の保育施設、教会とそれに学校、商店が出来て一つの町がありました。
鉱山は、下へ下へと掘り進めれていきました。やがて岩盤に当たると、今度は水平に掘り出しています。現在は、20本の坑道があります。
最初は、鉱石をフォーレンに運んでいましたが、今では、鉄鉱石から粗鋼を作る高炉が鉱山の下、岩盤の上に出来ています。
大きくなった町の外側に、鉱石から出た土石が積み上げられて行きました。それがこの王冠に似た山のなです。
この平らで広い道は、王冠の山を貫くトンネルを抜け、今は人の居ない町へと入っていきます。」
トードの真っ直ぐ伸ばした指の先に、トンネルが見えて来た。
ジャックは、2枚目の地図を出す、トードはそれを見てさらに説明を続ける。大きな丸から20本の道が描かれている。坑道は、等間隔に放射状に書いてあるが、下には描いていない。それに、最下端の左右の坑道は、下に伸びないで折れている。
「最新の坑道が書いてある地図ですね。上が北になる、南に隣の領主が支配する土地がある。この道の先、新しい山が、ここの領主の支配する土地になっている。その隣に、王冠状になっている古い山がある、それは隣の領主の土地になる。
ちなみに、古い山の王冠の中心がトカゲ村になる。」
トードは、折れた坑道から離れた下に、一本の線を書き入れる。
「大体この辺りが境界となると思われます。人の領地に入らない様に、距離をおいて掘っているらしいです。」
「トードさん、新たに掘って鍾乳洞に当たった道は分かるか?」
ジャックの問いに、さらに線を書き足す。それは、大きな丸の下からさらに下に伸びる線、まるで隣の土地に侵入するように。境界を超え、書き進んだ二本の線は、地図からはみ出て止まる。止まった先に、楕円形の丸が書かれる。
「仲間になったんですから、トードでいいです。
聞いた話で、見たわけではないので正確かと聞かれると、分からないとしか言いようがないのですが。この大きな円が鍾乳洞ですが、」
馬車の前方の山を指さして説明を続ける。
「こちらの山と古い山が重ねっている場所がありますね。鍾乳洞は、古い山の中にあったみたいです。つながった時に、調査しただけと聞いています。それ以後、誰も入っていないはずです。」
ジャックは、南に伸びる坑道を指さしながら
「この坑道、まるで狙った様に他人の土地に侵入して鍾乳洞を掘り当てている。」
「この坑道ですが、鉄鉱石は、北の方が良く取れます、それで南には人がいないのです。この地図には、書かれていませんが、南にも試掘の坑道がいくつもあります。この南に伸びた行動は、そのうちの一本を伸ばしたのだと思います。」
「トードさん、実際見たように聞こえるけど。」(エイミ)
「ええ、俺は、鉱山技師の手伝いで、坑道を掘っていましたので覚えています。」
「それで詳しいのですか。でも、この南に伸びた坑道は、知らないのですね。」(エイミ)
「その坑道を掘った事が分かったのは、トカゲが出た後でしたから。」
「誰かが、鉱山に知られない様に鍾乳洞まで掘った、という事か。」(ジャック)
これには、エイミ達もトードも返事をしなかった。
ジャックは、次の話に変わっている。
「この地図の赤いX印は、冒険者と鉱山奴隷が襲われた場所につけてある。ギルドの説明だと、北に集中しているようだ。最も、トードの説明で、奴隷が北に居たのなら、トカゲも北に行くしか無い訳だが。それで、冒険者達も、最初20本の坑道に分かれていたが、今は、北に集まっていると聞いてきた。」
「ここに降りる方法だが、俺が聞いて来た事を言うよりトードの方が詳しいだろう。」
言われたトードは、簡単に説明を始める。
「この大きい丸い円は、かつての山あったあと、岩盤にぶつかるまで山を掘り進んだ結果、巨大な大広間になりました。
ここから20本の坑道が掘り進められていて、それぞれにトロッコが走っています。
トロッコは、大広間の中央に建てられた高炉で、粗鋼と土石に分かられ、土石は周りの山に捨てる為に放射状に壁に向かい、引き上げられていくのです。
人と粗鋼は、この場所です。ここから上下に動く昇降機があるので、昇り降りする事が出来ます。
この昇降機を使わないと、人も粗鋼も行き来出来ません。この昇降機のそばでトカゲを見た人はいませんし、トカゲがこの昇降機を使って、昇り降りした形跡もないのです。」
「形跡?」
「昇降機には、重量制限があります。土石や粗鋼、人も同じです。たしか200kから250kだったと思います。それ以上だと、昇降機を歯車で引き上げるのですが、魔石の力では上がらないのです。」
「下に行くときは?」
「上に上がるトロッコと空のトロッコが対になっています。下に行くトロッコにも250k迄の重量制限はあります。・・そうですね、下にいくトロッコに入っていったなら鉱山に入れますね。トカゲは250k無いでしょうからね、下がるトロッコに変な事が無かったか向こうに着いたら聞いてみます。」
「トカゲが、何処から入ったかは、それ程重要に見えないかもしれない。でも、誰が何のためにと考えると重要になってくる。」
エイミとダン、トードは、ジャックの顔を食い入るように見つめる。今まで、誰もが何処からなど気にもしていなっかった事に気付いた。
「では、馬車を走らせて鉱山に向かおうか。どうやって倒せるかその間に話し合ってみようか。」




