第7話 ほうそうかい
「おはようございます。」
朝、日の出と共に乗合馬車は、ジャックが乗り込むと出発した。あちらこちらキズの付いた20人は乗れるだろう大きな馬車。乗っているは、3人だけ。簡単な幌だけなのは、フォーレンに来た乗合馬車と同じだ。ただこの馬車は、向かい合わせではなく、教会の椅子の様に前方を向いていた。
先に乗っていたエイミがジャックに挨拶をする、遅れてダイ。
「おはようございます。今日は良い天気のようです。」
「おはよう、長旅だ、晴れてよかったよ。」
「ジャックさん、カエルの時『俺への嫌がらせか』と、言っていましたが、どういう意味ですか?」
「そうだな・・・・では、ほうそうかいをやろうか、どっぷりと引き込んでしまったからね。」
「ほうそうかい?ですか。」
「何も知らないで死んでいくのと、知っていて死ぬのは、どっちが良い?」
「どっちも嫌です。」
エイミは、少し怒った顔で答える。
「質問が悪かったね、謝るよ。では、戦う理由を知っていて戦うのと、知らないで戦うのは?」
「それは・・知っていた方がいいです・・ね。」
「その為にも『ほうそうかい』をやろうか、時間はたっぷりあるんだ。」
10時、お昼、3時と、3回馬車から降りて休憩がある。それを区切りにして、10時までに今までで、分からない事、知りたい事をまとめておき。お昼まで、話し合う事にした。お昼からは、トカゲの話をすると言う。聞こえたのか耳ざとい御者から。
「あんたら冒険者だよね、昨日乗った冒険者の仲間かい?」
「仲間ではないが。」
「そうかい、ところでトカゲ退治の相談をするなら、俺も入れてくれないか?この仕事は、歩合で鉱山から貰うのだが、ご覧の通りでね、もう干上がっているんだよ。俺の知っている事は何でも教える、鉱山の事なら俺が詳しいだろう。」
「まあ、聞かれて困る話でもないからいいか。但し、他言無用だ。」
「そうするよ。」
エイミとダン、色々思い出していた。そして、10時の小休止の後、御者の後ろの席に集まる。これで、馬を引きながら話が聞けるだろう。
「では、順番に『嫌がらせ』の話をしようか。俺が乗合馬車に乗る前の日の夕方、飲んでいると知り合いが向かいに座って、この鉱山の話を始めた。『報奨金がとんでもない額になっているらしいぜ、行ってみたらどうだ。』そこで、聞いてみる事にして馬車に乗ったのだが、いつもと違っていた。エイミ、どうしてそうなった?」
「いつもは、・・そうね、こうなる前は、フォーレンとは大きな取引がいつもあるの。それで、乗合と荷物運搬を兼ねた馬車は、いつも2台。で、護衛も、馬に乗った2人と御者の横に乗る2人の4人だっただけど。あの日は、馬に乗っていた2人が急に都合が悪くなったと言って、私達だけになったの。あの御者さんが慌てて護衛を手配したけど、あんなに朝早いでしょ、誰もいなかったし、もう1台も体の具合が悪いから休むと連絡が入って、結局、このままで行く事になった所へ、ジャックさんが来たのよ。1台減ったのでもう荷物も積めないし、人もいっぱいだったから、すぐに出発したの。」
「それで、護衛がいなかったのか。ではダン、最初に襲ってきた連中について分かった事は?」
「あの人達は、トカゲ退治に来た傭兵達で、来ては見たものの、怪我人や行方不明、死人(奴隷)の話で、臆病風が吹いたのか、フォーレンで冒険者をやり始めたそうです。ただ、フォーレンには、冒険者がたくさん集まっていたので、依頼が無くて困っていて・・それで、隣町に移動していった。隣町の自警団の話だと、真面目に依頼を受けてやっていたようなんだけど。なぜ、馬車強盗をやったのか言わないと言っていた。それで、捕まえた報奨金は無し。」
「それは大変だったね。それから俺は夜、忠告をうけた。さらに、広場でのカエル騒ぎと続くわけだ。」
「それが、嫌がらせになるんですか?」
「それで、一つ想像してみた。
鉱山を困らせようとする奴がいる。最初、鉱山側に仲間を入り込ませる。そいつが信用され始めたら開始だ。トカゲを準備して落盤を起こす。後は、邪魔されない様に鉱山の対応を待っていればいい。」
「困った鉱山側は、助っ人を頼む事にした。隣町に俺が居る事を知り、勧誘しフォーレンに来るように仕向ける。」
「いま倒されては困るので、邪魔をする。御者の一人に、下剤?を飲ませてしまう。護衛の二人には、割りのいい依頼、例えば、馬で1日の町に、箱入りの大きな人形を急いで運んでもらう。前金、金貨1枚、届け先で金貨1枚。まあ、届け先は存在しないが、その人形、金貨1枚以上の価値があるから、依頼に嘘はない事になる。
1台になった馬車は、すぐ満員になり出発する。」
「俺が乗り遅れたら。
俺が、翌日の馬車に乗るのなら、そこから嫌がらせを再開する。馬に乗るなら、人気のない場所で馬を射る。
俺が間に合い乗り込んだら、
乗合馬車は、強盗に襲われる。では、どうなるかエイミ、ダイ。」
「えーと、ボウガンがいたので、ジャックさんを狙う。」
「それだと、後ろに座っているのだから通り過ぎてからになるからダメ。御者を狙い馬車を止める。」
「それよりも、馬を狙う。射られた馬は、暴れて街道に倒れてしまう。運が悪ければ馬車も横転する、混乱の馬車を4人で襲う。俺の事は言わないで、周りに誰もいない、しかも、護衛が二人、女と子供だと言えば、乗り気になる。」
「えへー、・・ジャックさん、ヒドイです。」
「たとえ、うまく盗賊を倒せても、馬車は壊れ馬もいない。」
「嫌がらせね。」
「ただ、今回は先に強盗をやってしまった。そこで、警告を残し男は、去っていく。次の日、カエルが出てくるからだ。ではダイ、対策をしていなければどうなっていた。」
「ジャックさんは、『触るな』と言ってくれるけど、俺達は護衛、乗客を守るためカエルを斬っています。」
「だろうな、お前達二人は、ネバネバと体液がついている。俺は、二人を斬り殺したいのだが、周りに止められて動けないだろう。その後は、お前達は苦しみながらフォーレンに着く前に死ぬ。」
「はぁー。・・・それで、知っていて死ぬかの選択ですか。」
「鉱山に着いたら、エイミ分かるか?」
「次の日ですよね・・あ!トカゲが偶然居たのか?それとも・・ですか?」




