第23話 子供達との鍛練
決行日まで、30日
朝の訓練の後、起きて来たジャックと早めの昼(遅めの朝食)を取った後、スラム街へとやってきた。
子供達は、奉仕活動をしている時間なので誰も居ない。
昨日の場所から離れた場所で、鍛錬が始まる。
今日はジャックの動きが変わっていて、前後左右に1歩分動きが加わる。それは大きな動きではないが、前後左右に動く事で回避もかわしも数段キレが良くなった。
それに合わせて、打撃・刺突と言った攻撃に斬撃が加わる。エイミ達は、軽装備の為 動きには支障がないが反面、受けた攻撃は痛み・ダメージとして累積する。
打撃と刺突という剣の主だった攻撃に対して、斬りつけるという斬撃は軽装備以外には有効ではない。エイミ達の服装は軽装備と言っても簡単には斬れる事は無い、それをあえて加える事はダメージの累積より心理的なものを狙うだろう。
ジャックの動きが読めなくなり途端にバタバタとなるダイ、しかも斬撃は木剣を滑り指や手の甲を襲う。木剣には刃の側に踝のような瘤が付いている、これで斬撃を弾けば良いのだろうが それには手をこねる必要がある。一見必要な動きに見えるが、それを見透かすように次の刺突が襲い掛かる。
エイミは、ジャックをダイに任せて一旦引く。ジャックと自分の間を計り、昨日の動きからもう1歩前後左右に動けるか、さらに足を伸ばし踏んばってみる。
大丈夫だ、ダイに打撃を繰り出しているジャックとの間を詰め、脇から刺突。かわすジャックにさらに刺突。
エイミが加わった事で、周りを見渡す余裕が出来たダイ。昨日の経験から、ジャックとエイミの足元を見る。二人には、足位置の定点がありどの状態でもそこから離れない様にしている。
それで自分は?と足元を見ると、・・無残な足跡が。エイミを見習、足元を決める。
すると、新たな足場に最初もたついていたダイだが、次第になれ動きがスムーズになってきた。
エイミの動きに加え、ダイも次第に動きにキレを増していく。姉弟の動きがスムーズになると、またジャックとの差が無くなり拮抗し始める。それに合わせてジャックの足場が広くなっていく、要領を覚えたのか、エイミとダイもチラッと次の足場を見るだけで ジャックに合わせて移動していく。
昨日より早い時間だが、子供達が帰って来た。ジャックには、朝食の時に迷子の話をしてある。
約束だからと、エイミが模擬戦から離れ子供達へ剣の基本を教えていく。
剣の振り方、間の取り方、素振り、重心の移動、一通り教え、素振りをしてもらうが。
素振りをしていた男の子達が飽きたのだろう、列を離れ昨日と同じに棒で打ち合いを始めた。
エイミは、その場を離れダイと交代する。
棒といっても、当たれば痛い。痛くないように相手の棒が狙う方向に、棒を繰り出して受ける。子供達は、打ち合う事で相手の一歩先を見て動くように変わっていく。
ダイは、無駄な動き、変則な動きを指摘して直していく。
ただ打ち合う事に飽きて来たのか、子供達のボス(ガキ大将?)が。
「なあ、俺達と相手してくれないか。」
その言葉で、男の達は一斉にダイの周りを取り囲む。6人に囲まれたダイ、木剣を構えながら城壁に移動。後方を壁にして 子供達を左右と前にする。
「ほう、面白そうな事を始めた。」
ジャックは、木剣を下ろしダイを見る事にした。
訓練された動きではないが、多勢に無勢 前左右から間を詰め打ち下ろし、突きを入れる。同時に6人は無理だが、常に2~3人が襲い掛かる。
幾度か棒をかわし向かって来る棒を打ちおろしていたが、追い詰められたダイは慌ててジャックの元に逃げ帰ってしまう。
「ちぇ、つまんないの。」
ダイを追っていかないが、遊び相手が逃げたので不満げな子供達。
「じゃ、俺が相手してやる。」
ジャックは、木剣をダイに預け子供達の真ん中にと移動する。
「おじちゃん。剣、持っていてもいいんだぜ。」
「かまわないよ。さあ、やってごらん。」
広場の中央に移動したジャック。素振りをしていた不思議な老人と子供達も加わり周りを二重に取り囲んだ。
最初は、ボスから始まる。上段に構えそのまま間を詰める。動かないジャックの肩を目掛けて振り下ろす。スッと体が前に揺らぎ棒は地面へと振り下ろされた。
その後、一斉に突っ込む子供達、タイミングが合わないで振らずに離れる子供もいるが、それでも常に2~3人は打ち込んで反対側へと移動する。
ジャックの動きは最小、ユラユラと動き子供達の棒をかわしていく。かわし切れない棒は、前を通り過ぎようとしている子供達の手を払い 棒同士で打ち合うように仕向ける。
その中でも老人の動きが目を引く。一見、子供達と同じ技量なのだが動きに子供にないキレがある。かわして誘導しようとした手は、ジャックの動きが分かるのか寸でのところでかわされてしまう。それを見ていた子供達も、真似て動き出した。
一向にあきらめない子供達。流石に根負けしたジャックは、
「転んだら終わりだからな。」
これで終了にするようだ。
「棒は、剣だぞ。握ったら反則だからな。」
「そうか、分かった。」
今までは、動く事なくその場で棒をかわしていたのだが。左右から迫る2本の棒をスッとかわし、そのまま移動していく子供の足をはらう。体が前に移動しているので、勢いを殺せずそのまま倒れてしまう。
一人、ジャックの前を倒れていくので、今の瞬間 前からの攻撃は出来ない。その場で後ろに振り向きざま、背中へ向かってくる棒をかわし体を子供の正面に向けると手首をつかみ、そのまま前に押し出してやる。急に勢いがつき足が追い付かない、そのまま目の前に倒れている子供に覆いかぶさる。
さすがに倒れれば終わりだと言われ、実際に子供達が積み重なっていくと無理に打ち込めない。1人か2人、順に打ち込む様になっていた。2人同時に打ち込めば、最小の動きでかわし後に向かって来た子供を引き倒していく。
10分もしない間に、全滅してしまう。
「姉ちゃん、あれおかしくない?」
「慣れれば、出来るかも。」
「嘘だろう・・。」
「エイミ、ダイ。今日は終わりだ。帰るぞ。」
もう周りは、薄暗くなっていた。ジャックが、走り出したがまだ準備の出来ていないエイミとダイは、急いで身支度を整える。
また迷子になるだとろうと、昨日送ってくれた子供達が残ってくれた。
「明日も来る?」
「明日は、たしか?」(ダイ)
「明日から下水のネズミ退治をしなければいけないから、終わったまた来るね。」(エイミ)
「じゃ、終わったらまた教えてくれる?」
「教えてあげるよ。また迷子になりそうだから外まで案内してくれる。」(エイミ)
「いいよ。」




