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神になれなかった双子  ジャック外伝  作者: 神取優
ジャックと盗賊団
22/23

第22話 不思議な老夫婦

 ギルドを出てスラム街に入る頃には、幾分気の滅入りも治ったようだが、聞いてはいけない事のようで黙って後を追う事にした。


 スラム街は、町の城壁周囲に作られた官地にできた。敵が火矢を使用した場合、人家に被害が起きない様に、一定の距離をおいて建物を建てさせた。普段は、住民の広場や家庭菜園などに使わていたのだが、人口の急激な増加により次第に生活困窮者や浮浪児がバラックを建て始めたのがスラム街になっていった。


 スラムの住人が道を考えて造るはずも無く、木材の大きさや長さが、その住むスペースを決める。バラックが立つたびに、迷路の道は増殖していった。


 ジャックは、勝手知った我が家の如く進む。スラム街の奥、城壁に焼け跡の残る広場と瓦礫の散乱している場所に到着。

 ここは、以前に火事があった場所で誰も片付けしていない場所、ただ唯一、燃えカスと瓦礫を四方に押し付けて出来た広場があり、今そこに立っている。


 「ここでやる。袋から武器を出してみろ。」

 言われるままに、ダイは背負っていた袋を地面に置き口を開ける。中には、樫の木で作らている3本の木剣が入っている。

 ジャックとエイミに渡し、木剣を持ってみる。1m程の真っすぐな枝を木刀(剣なので両刃)の様に削ってある。削った後が新しい、夜に作ったのだろうか。


 ジャックは、迷いもなく瓦礫の中に入っていく。付いて行くが足元が悪い、木の燃えカス・大きな石・少し濡れた炭、ちゃんと足元を見て歩かないと、すぐに足元をすくわれ転びそうになる。


 「それでは、模擬戦をやる。その木剣で俺を斬ってみろ。」

 そう言われても、足元を見ながら剣を振っても当たる話ではない。間合いも取れない、踏み込む足元が不安定だし、足が着地しないとそこで踏んばれるのか滑ってしまうのか分からない。

 意識の大半が足元に奪われる。そこを容赦なく襲うジャックの木剣、肩を叩き、腹を突き、伸びた腕を払う。

 「キャ」

 「いてえ」

 模擬戦どころではない二人は、何とか逃げようとするが追い足の方が速い。


 それからしばらくすると、少し様子が変わってきた。


 最初は、エイミ。顔がジャックを見ている。力を込めないで振り下ろされる木剣、それでも当たれば痛い。そんな木剣の剣筋を見る様に、一歩後ろにさがり、ジャックが剣を引き寄せる動作に合わせて、一歩前へ、そのまま、木剣を突き出す。

 ジャックも一歩後ろにさがり、エイミの木剣は空を斬る。

 再度振り下ろされる木剣、エイミは間合いを取るため二歩下がる。


 そんな動作が幾度か続くと・・ダイにもエイミの動きが見えて来た。


 エイミの足は、四歩しか動いていない。起点となる足、前に二歩、後ろに一歩、この間を往復している。場所が分かるので、いちいち地面をみる必要が無い、素早い対応が出来るようになっていた。

 ダイも真似をしてみる。先程まで逃げる様に周囲を踏んでいるので、周りには足の後がいくつもある。その中から、前に二歩、後ろに一歩の足跡の場所を覚え、下を見ない様にジャックに斬りかかる。


 そもそもエイミの剣の腕は、ジャックより上である。鍛練場や足場の良い場所なら、ジャックと互角に打ち合える。そこにダイが打ち込んできた。

 足場の悪い所ではあるが、姉弟で鍛練を積んできた経験が姉の動きに合わせて打ち込む事が出来る。次第に拮抗し始めてきた。


 日が下がり始める。夕方前に子供達が戻ってきた。炊き出しを貰った後だろう、一段となって歩いて来た子供達は、木剣の音に引き寄せされてエイミ達を見物している。

 面白いと思った男の子達が、枝を拾い打ち合いを始める。

 女の子達は、最初 男の子達の打ち合いに入る事は無かったが、幾人かがエイミが女だと気付いたようで、指を指し小声で話し合っている。それが呼び水になったようで、1人2人と枝を拾い男の子達に混ざり始めた。


 その子供達に混ざって老人が2人、風体は老人なのだが動きが若い。子供達に混ざって、枝を振り回しているのだが、遠くでみれば少々背の高い子供が、一緒に遊んでいると見えるだろう。周囲の子供達も自分達の仲間と認識しているのか、遠慮しないで遊んでいた。


 日が、城壁にかかる前。

 「今日はここまで。」

 ジャックは、木剣を入れた袋を背中に括り付けたダイを見ると。

 「これから帰る、俺の後をついて来い。迷子になるなよ。」

 そう言うと、小走りに走り出した。

 後を追うエイミとダイ。広場を通り過ぎると、複雑に建てれたバラック、日陰になり見えにくい通路、足元には石があったり物が散乱している。

 そこを、ジャックは速度を落とさずに小走りに走って行く。次第に離されるエイミとダイ、足元を見ながら走って行っては、追いつけるはずも無く迷子になってしまった。


 「姉ちゃん、置いて行かれたの?」

 子供達は、鍛練の終わったエイミとダイの後を追ってきた。面白い事が又あると思ったのだろう、しかし、今、目の前に居るのは迷子の二人。何もないと、大部分の子供達は帰って行った。

 残った子供達は、エイミに話しかけてきた。

 「そうみたい。お願いがあるの、ここから出る道を教えてくれない。」

 「いいよ、明日もくるでしょ?その時に、さっきの剣教えてくれる?」

 「いいけど、どうして?」

 「いつか人さらいが来るの、その時に逃げられるようにしたいの。」

 「あ、そうね。分ったわ、教えてあげる。」

 「こっちだよ。」

 不思議な年老いた子供も、そこにいた。

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