第20話 領主夫人
決行日まで、31日
朝、起きるとジャックは寝てた。言われた通り、縄抜けとその後の動きを練習している。
トードは、ギルドに顔を出すと言って出かけた。
昼前、起き出してきたジャックに朝飯を出し、軽く昼食を取って教会へと向かう。
教会の玄関でトードが待っていた。
「ギルドから、冒険者達が帰ってくるから、向こうに行って欲しいと言われた。鉱山からも荷物を持ってきて欲しいとの事で、町にいる職員が買い出しに行っている。明日の朝、鉱山に向かうのだけど?」
「夫人との面談しだいだが、問題はないだろう。当分、家を借りる事になるが?」
「それは問題ない、自由に使ってくれ。」
トードが炊事場に顔を出すと、声が聞こえる。奥の部屋に準備してあるから、先に行って欲しいとか。中では、下ごしらえだろうか、包丁や水で洗う音が騒がしい。
炊事場の奥に部屋はいくつかあったが、施錠されていないのは一部屋だった。飾りの無い質素な部屋は、教会の部屋という所か。飾っていは居ないが、落ち着く雰囲気の来客用の部屋でしばらく待っていると、夫人が入って来た。
前は、シスターだった言われている人。顔立ちは、その面影を残している、シスターの服をまとっていれば万人がシスターだと言うだろう。丸い顔の可愛い人だった。
「さあ、お座りください。トードさんのお友達だとお聞きしました。何でも、スラムの住民について提案があるから聞いて欲しいとの事でしたが?」
「お初にお目にかかります。私は、ジャック。それと、エイミとダイです。お会いいただきありがとうございます。」
挨拶の後、腰を掛け。下ごしらえの途中で抜けて来た夫人に、時間を取らせない様 本題にはいる。
「町の噂をお聞きになった事があるでしょうか?スラムの住民が、奴隷として鉱山に売られている噂なのですが。」
「聞いた事は、あります。教会の人も噂は、知っているようですが、それを証明する人も物証もないと聞いています。私の夫も、調べた様ですが何もなかったようでした。」
「私達もその実態は、掴んでいません。でも、そのままにしても良くならないようです。そこで提案があります。この二人の話を、聞いてもらえますか。」
ジャックが聞いていた、奴隷解放の一つとして姉弟が考え出した案だった。
二人は、挨拶の後 説明を始める。
それは、山を借り『葡萄畑』に開墾して、『葡萄酒』を作るという提案。
聞いていた夫人が、尋ねる。
「そうですね。開墾や作業小屋、世活の為に家や畑などいりますね。・・・かなり大規模な村になるでしょうか。その援助が欲しいと?」
「はい。」
「あなた達には、信用がありませんけど。どうやって証明するのです?」
「住人が奴隷に売られている証明では、いかがでしょうか?」
「・・・私の一存では、返答出来かねます。それは、主人に聞いてみた方がいいでしょうね。」
夫人は、考えをまとめていた。
「その提案のいくつかに、聞きたい事があります。
あなたに、葡萄栽培と葡萄酒製造の経験がありますか?」
「ありません。故郷の村から呼び寄せます。」
「近くの葡萄と言えば、隣の領主の所かしら?」
「はい、そこが私達の故郷です。」
「そこでも『葡萄酒』をつくっていますね。引き抜き出来るのですか?」
「大丈夫です。葡萄酒は、領主様から言われて作っているので、量も少なく、葡萄も酒用じゃないので甘く出来てしまいます。村では食用に作っているので、私達が作る、葡萄酒用の葡萄とは違うのです。私達の葡萄は、酸っぱいのであまり食用に適さないのです。」
「そうですか。・・・その苗ですか、その村から買うのですか?」
「はい。村では品種改良しているので、色々な苗木があります。その中から山地に適した苗を買ってきます。」
「競合しないなら、売ってくれるでしょうね。」
「では、村はどうやって作るつもりですか?全部、こちらに押し付けれても出来ませんよ。」
「スラムの住人には、教会での学校に通ってもらいます。読み書き計算が出来るようになったら、村移住に加わってもらいます。
剣の適性のある者には、剣と弓を教えます。村の自警団をやってもらうのと狩猟で獣を狩って、近隣の村の野菜と交換します。素材は、売って現金とします。
1年で、山の開墾から出る木材で作業小屋や住宅を建てます。それと並行して山のふもとの開墾をして畑を作ります。ここまでは、食料が無いので支援をお願いするつもりです。
2年目から、大体自給自足が出来るようにするつもりです。家を増やして、スラムから住人を受け入れ、山の畑開墾、平地の開墾と規模を大きくしていきます。
3年目頃から、葡萄酒の試作が出来ればいいと思います。」
「最初の家をどうするのです?」
「冒険者ギルドに、大規模遠征用のテントがあります。家が建つまで借りる予定です。」
「なるほど、大変結構な提案です。・・・あなた達は、なぜこれをやろうとしているのですか?」




