表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神になれなかった双子  ジャック外伝  作者: 神取優
鉱山の鎧トカゲ
2/23

第2話 姉と弟の冒険者

 俺が最後に乗り込むと、一列のお尻がクイクイと動きわずかな隙間が出来た。ここに座れと言うのだろう。


 馬車は、通勤電車の様に左右に木で出来た長椅子が並び、真ん中には荷物がうず高く積まれていた。荷馬車に雨対策だろう幌がついているだけの簡単な造りだ。この荷物、前よりかない多いようだが・・実際、走り出すと以前より遅い気がした。


 馬車が動き出すと、女冒険者が乗り込み俺の向かいに座る。武器を携えているのだから、馬車の護衛だろう。前を見るとそれよりも若い男の冒険者が御者の脇に座っている。二人で護衛か?前に来た時は、もっといたようだったが。


 女冒険者の視線を感じる、俺の顔をチラチラと見ている?

 「やあ、護衛かな?ご苦労様です。」

 ジャックが声を掛けると、ビクッと俺を見る。

 「驚かせた?すまんね。」

 「いえ・・知っている人に似ていたので。」

 「そうかい、有名な人なら光栄だね。」

 「いえ、冒険者では有名ですが・・普通は知られていない人なので。」

 「そうか、俺が有名人にね。」

 「ごめんなさい、私も会った事はないので聞いた人と似ているなと。」

 ジャックは、内心ニヤニヤと会話を楽しんでいた。


 お昼休憩、街道脇の広場で各々(おのお)の食事をとっていた。いつもより遅い時間なので、他に休んでいる商隊や馬車もいない。広い広場で、ジャックは一人、買い置きしていた硬く黒いパンと硬く噛み切れない干し肉を食べていた。

 馬車の脇で女冒険者と男冒険者が、向かい合って食事をしている。その様子からパーティーというより姉が弟の面倒を見ている様に見える。


 「君とあちらの護衛さんは、姉弟かい?」

 「え?・・あ、そうです。」

 馬車が動き出すと、ジャックから話しかけた。それから姉弟の事、冒険者になぜなったのか、どうやったら強くなれるのか・・など、取り留めのない話をして暇をつぶしていた。

 話は、この護衛の話になった。この馬車の護衛をしていた冒険者達は、フォーレンに移動したという。鉱山での討伐依頼が高額で、近隣の冒険者達が集まっているそうだ。

 姉弟は、乗り合わせた町の生まれで、そこで町や村の害獣駆除をする冒険者をやっていたのだけれど、ギルドから護衛の依頼が来てこの馬車に乗り込んだと言う。本来、二日の護衛に二人は、少ない。依頼料を割り増しで払うと言われて、引き受けたと。


 次の町まで、あと1時間程だと御者から言われたが、かなり日は落ちていて、町に着く頃は暗くなると心配しだした頃。道の先の魔素が変だ・・街道の先、曲がり角あたりに魔素溜まりが5個ある。魔獣の物と違う。

 ジャックが街道の先を凝視していると、女冒険者も気付いたようだ。立ち上がって御者に行こうとする。ジャックは、女の手を引く。驚いた女は、ジャックの顔を・・ジャックが顔を横にふると・・一瞬の間の後、腑に落ちた顔になった。

 大人しく席に座ると、顔を前に突き出して小声で。

 「やはり、あなたはジャックさんでしたか。」

 目で頷くと安心したのか、極度に緊張していた顔がほぐれた。

 「いい顔だ。」

 ボソッといったジャックは、素早く手と指を動かす。

 手を前に突き出すと、街道の先を示す。左に2本、次に右に3本の指。

 女冒険者の顔を見ると、頷いた。

 さらに人差し指を女冒険者に向ける、そのまま左前方の茂みを指し、自分を指さして右前方の茂みに指を向ける、頷く女冒険者。

 ジャックの指はさらに動く、女冒険者と自分を指し後方へ・・今、外に出ると指指している。


 困った顔の女冒険者、指を弟に向ける。首をふるジャック。

 どうも、弟や御者には知らせないで、混乱が起きる前に片をつけるようだ。

 実際、女冒険者とジャックの指を見ていた乗客が騒ぐ様子もない。

 ジャックが飛び降り、茂みに消える。草ずれの音もしない、関心しながら女冒険者も飛び降り茂みに入っていく。流石に無音という事は出来ないので、音のしないような場所を選んで進む。


 女冒険者がどんなに急いでも、足場の悪い場所。馬車と並走する形になる。

 ジャックは、無音で走る。最初に目についたのはボウガンを構えている男。その奥に一人、さらにもっと奥に一人いる。


 まさに撃とうとする前、ナイフが弦を切りそのまま喉を斬る。ナイフには麻痺毒が塗ってあるので、生きていても明日の朝まで動けないだろう。

 男を放置してさらに先に進む、イライラしている男がいた。

 「なにやってんだ?もう馬車が来ただろうが。」

 さっきのボウガン男が、なぜ撃たないのか気になるのだろう。

 ジャックが後ろを取ると、街道の反対側から男が二人飛び出して来た。

 慌てて立ち上がろうとするが、その前にナイフが喉を切り裂いた。

 首を回し驚いた顔でジャックを睨みつけたが、首に痛みを感じ喉に手をやり・・前へと倒れた。


 馬車の前に飛び出した男が二人。少し短めの剣を抜き、馬車を止めようと剣を馬に向ける。

 驚いた御者は、馬を止め隣の男冒険者を見る。

 少し震えているようだが・・スクッと立ち上がり、後ろを振り向くが姉の姿が無い。もう降りたのだろう、そう思い、馬車から降りて剣と盾を構えて男達と対峙する。

 馬車の中では、小さな悲鳴が起きているが大きな混乱はないようだ。女冒険者と男が先に降りている、彼らがこれを知っていた、それで先に降りた。そう考えた乗客達は、混乱する事も無く事態を大人しく見ている事にした。


 「ほう、俺達とやるのか?」

 男達は、ジリジリと馬車に近づく。その後ろ、女冒険者が茂みから出て来た。しかし、男達は気付いていない。


 そんな様子を見ていたジャック。馬車に戻ろうとせず、そのまま茂みを進む。茂みを奥に進むと開けた場所に着いた、小高い丘のような場所。そこにいた。

 一回り大きな男は、木のかぶに腰を掛けて街道の様子をうかがっていた。その様子からこいつが今回の首領だろう。茂みに戻り大きく迂回するジャック、後方から忍びこむようだ。


 一方、護衛が一人だと思った二人は、下品(げひ)た顔で近づいてきた。御者も乗客も身じろぎもせず、成り行きを見守っている。

 一人が挑発するように、男冒険者に近づき剣を振る。盾に当たると、キィーン、金属同士がぶつかる音。そのまま、馬車近くで戦いが始まる。


 それを見ていた後方の男に、茂みから出て来た姉の剣が振り下ろされる。後ろの気配に半身を回し回避するが、肩でうけてしまう。肩当てが男の命を救ったようだ、痛そうにしているが十分に手は動かせるようだ。街道の真ん中で、女冒険者と男の剣が打ち合いを始める。


 街道で金属同士の甲高い音が聞こえる。首領らしき男は、立ち上がり前に歩こうと・・数歩進むと、足の感覚が無くなっているに気付いた。足が前に出ない、他人の足の様に立っていると言う感覚もない。後ろの気配に振り向こうとするが、感覚のない足では支える事も出来ずに前かがみに倒れてしまう。

 背中を足蹴にされ抑え込まれる、そして髪を掴まれる。グッと顔が引き上げられ正面を見ると状況が理解できた。オレを抑えている奴が、オレの足を麻痺させたのだと、それでオレは動くことが出来ない。

 「おい、こんな事をして後悔するなよ。お前は、誰を敵に回したか知っている・・」

 強盗と話をしても時間の無駄と、素早くナイフが動き・・喉を斬られる。


 髪を手から離し、街道の様子を見てみると馬車の様子が見えた。姉弟は、苦戦をしている様子だが、押し切られている様でもない。

 首領らしき男の持ち物を見渡すが、碌なものを持っている様子はない。

 『この指輪は』

 指から抜き取り、日にかざしてみる。

 『鑑定しないと分からないが、周囲の魔素が乱される・・魔物除けの指輪か?』

 あとに金目の物は無いようなので、街道に戻ってみる。


 姉弟は、返り血を浴びてはいたが怪我をしている様ではない。右側の様子を教えると、確認の為、茂みに入っていく。

 戻った二人は、関心したようにジャックをみていた。

 「めぼしい物は、これだ。これを貰うからあとの始末はしてくれ。」

 ”面倒はごめんだ。この指輪だけ貰うからあとは好きにしてくれ。”となる。


 街道の二人を茂みの中にいれる。返り血を浴びたままだと、匂いがスゴイので姉弟は、着替えをして馬車に乗り込む。


 次の町に到着したのは、真っ暗になってからだ。

 馬車が止まると、付近の安宿のおかみが迎えにきていた。明日も早いので、宿に泊まる事にした。宿は、いくつかあり最も安い宿だと、広間にごろ寝が普通だ。毛布類は自分のを使う。一番簡単で交渉もいらない、ジャックは銅貨を支払うと宿に入っていった。

 夜、ちょっと邪魔されたが・・特に何もないのでそまま寝てしまった。


 麻痺毒は、朝まで持たないと聞いていた姉弟は、深夜にもかかわらず自警団をつれて、男達の回収に向かった。手配されていれば報奨金がでる。後日わかった事だが、報奨金は出ていなかった。

 次の日、寝不足で船をこぐ二人は、ジャックを見ると尊敬のまなざしで見ている。話しをしたくてうずうずしているようだが・・眠いらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ