第18話 炊き出しと領主夫人
ダイは、半分目を閉じている、興味が無いようだ。対して、エイミは、耳を立てている。
「さて、いつ来るかだが?こっちは、トードが詳しいだろう。」
「明日にでも来るんでしょ?」(エイミ)
「どうだろうか?俺は来ないと思う。」
「そうですね、来ないと思います。」(トード)
「そうですか?」(エイミ)
「トカゲが逃げて、今日で2日目になる。鉱山は、トカゲが本当に居ないか調べないと、安心できない。
昨日は、冒険者を使って全部の坑道を調べただろう。俺達が帰ったから、残っているのは18組、18本は終わったはずだ。今日、いつも鉱石を採っている北の2本を調べているだろう。」
「短い坑道もあるし、2本とか調べるパーティーもあるのでは?」(エイミ)
「あのトカゲが帰って来たとして、エイミとダイで調べられるか?もちろん、奴隷はいない。」
「・・いやです。」
「だったら、どんなに短くても1本は1本だし、いつも餌のいた北の2本は行きたくないから、行くなら全員で。2班に分けていく、集団心理だな。」
「それなら行けます。」
「明日は、鍾乳洞だ。今日トカゲが見つからない場合、ここにいる可能性が高い。鍾乳洞に出た場所は、左右見通しがきかなかった。ほぼ、左右半分くらいじゃないかと思う。ここは、全員で半分ずつ、2日という所か。
色々、面白い物も見つかるだろうから、調査に2日。全部で6日、あと4日。」
「面白い物?」(ダイ)
顔を上げたダイ、眠そうだ。
「そうよ、まずトカゲの寝床でしょ、それに怪しい壁の崩れた後。」(エイミ)
「それって、そこに居るって確定じゃん。」(ダイ)
「実際は、もういないけどね」(エイミ)
「トカゲの調査の次は、坑道の痛みを調べないといけない。爆弾を使ったら落盤しました、とは言えないからな。そうだった、鉱山技師の代わりは、見つかったのか?」
「それは、必要無いみたいです。前の技師の助手に、優秀な者がいるんです。
そいつは、技術だけなら技師より確かなですが、『魔素感知』のスキルが無いので助手をしていたのですが。今度は、鉱山技師代理になってやるようです。スキルが開眼したら技師になるって言っていました。」(トード)
「それでは、すぐにも調査が始まるな。
ここ(この日)から、帰宅希望の冒険者を送っていくが全員ではない。一部残して、調査の護衛とするだろう。
その調査だが、トード、坑道の調査に1本あたり何日かかる?」
「そうですね、今掘っている2本は、いつも見ているので点検だけですね、2本で1日でしょう。他は、しばらく人が入っていない坑道もあります。
3本目からは、調査と資材・作業のリスト作りで3日?かな。
終われば、リストに従って、坑道の掘り直し、坑道の補強、レールの敷き直し、試掘の爆破。と続きます。こちらは、4日?でしょうか。」(トード)
「トカゲ調査に4日、技師の安全確認、北の2本に1日、それから3日、次の日から鉱夫が3日おきに必要になる。今日から9日後だ。」
「鉱夫?奴隷ですよね?」(エイミ)
「二つの理由から、当分新たな奴隷は買わない。
1,新規の奴隷が冒険者と接して、不要な情報が洩れない様にする。スラム住人の鉱山奴隷化は、公然の秘密だが、余計な情報が独り歩きされると厄介だ。
2,奴隷の買取は現金だが、いま資金が無いので、今回は、働き始めたグループ毎に一月後払い(町の給金は、週払か二週払だが、鉱山は人数が多いので煩雑に出金になる。それで、まとめて1月払で雇っている。)として、鉱夫を使う。給金を受け取った後、鉱夫が町に戻れば再雇用はしない。順次、奴隷と置き換えていく。
とまあ、こんな予定だろう。奴隷が必要になるのは、9日+30日から拉致監禁①、移動①、鉱山教育②を引いた35日後、誤差を見て32日後だろう。」
「それで間違いないかと。」(トード)
「で、ここから肝心の作戦会議になる。エイミの案を取ったとして、悪者を懲らしめていたら町中の悪者がいなくなりそうだ。」
「それでも、頑張ります。」(エイミ)
「そうなる前に、役人に捕まるだろうがな。」
「どうしてですか?」(エイミ)
「大人しく仲間がやられるのを見ていないだろう、役人がでっち上げた証拠で牢に入れられるだろうな。」
「そんな、じゃどうすんですか?」(エイミ)
「領主様に直接お話するのは、どうですか?」(トード)
「それは、大博打だな。その賭けの勝算は?」(ジャック)
「夫人を味方にすると言うのは?」(トード)
「噂の夫人か、悪くはないが。」
「教会の炊き出しに、よくおいでになります。その時に話せますが。」(トード)
「腹を読むのに2~3回話せればいい。黒ければ、逃げるだけだが・・さすがに屋敷から逃げるのは至難の業だ。会うのは、町の中。そして昼。これが条件だ。お前が夫人を信用しているのだろう、あとは任せる。」
「わかりました。では、これから手紙を書いて夫人に会いに行ってきます。夕方、私の通う教会で炊き出しがあります。」(トード)
「エイミとダイ。お前達に装備一式を買ってやる。武具屋にいくぞ。」
「「ありがとうございます。」」
「その後、特訓だ。あと32日しかない。」




