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神になれなかった双子  ジャック外伝  作者: 神取優
鉱山の鎧トカゲ
13/23

第13話 トカゲとの死闘

 マリスとジャック達は、トロッコに乗り坑道奥に入っていく。


 メンバーは、マリスとタワーシールドを持った筋肉マン、杖を持ったいかにも魔法使いな女。

 ジャックとエイミとダイ。トードは、危険なので事務所で留守番。

 鉱山の採掘として、爆破技師(今回は助手)、魔法使い(土性)、奴隷は、1組(10人)とトロッコ押(10人)が5台のトロッコを押している。


 トロッコは、ユックリと進む。途中、魔石灯が消えていると、魔法使いが魔石に魔素を通し発灯させる。(発行体と蓄電池である魔石は、魔素の線を通す事で発灯する、製造では魔素の糸を途中で切っているので、それを伸ばす事が出来る魔素使いが必要)トロッコの横を歩く奴隷が受け取り、壁に取り付けられた籠の中に入れる。

 マリスは、一番前のトロッコに乗っている、大事なバリスタと一緒に。



 坑道は、ほぼ直線である。


 先端で異変が起きているのは、かなり手前で分かった。


 空気が揺れていた。その下に人が倒れている。そして、揺れる空気の前に、その場に新たに生えただろう壁がある。

 「あれは?」(マリス)

 「土壁が出来ています、その前に居るのはトカゲでは?」(土性魔法使い)

 「トカゲ」(マリス)

 一瞬でスイッチが入ったマリスは、トロッコの中でバリスタを組み立て始める。

 「盾で俺を守ってくれ。ユックリとトロッコを押してくれ。バリスタが出来るまで、おれにトカゲを近づかせるな。」(マリス)


 マリスの左右にエイミとダイが付く。女魔法使いは、マリスの後ろ いつもの位置取りだろう。ダイの後ろにジャック。

 魔法使いと技師助手は、奴隷と一緒に最後尾を付いて来る。


 静かになった空間。坑道先端で倒れている奴隷のうめき声、トカゲが土壁を引っかいている『ガリッガリッ』とする音。


 息を殺して進むが、トロッコが出す金属音の擦り切れる音、トロッコの重さで土のきしむ音が壁に反射する。『キィー』トロッコから一瞬、空気を切り裂く音。


 空気のゆらみが消えた。


 トカゲが現れる。後ろ足で立ち、尻尾で支えている、それよりこっちを見ている。  

 

 視線は、ダイを睨んでいる・・いや、その奥のジャックを見ている。あきらかに危険人物と認識したようだ。


 「危険だ、帰れ。」

 後ろを向いて声を低くだすジャックの声にビクッとなり・・奴隷と技師助手、魔法使いは、一団から離れ後方へと下がっていく。

 さすがにマリスを押す奴隷は、引き返せるはずも無く。引きつった顔で押していく。


 マリスを乗せたトロッコを中心に、坑道を進む。


 所々きれた魔石光が暗闇を造っている。


 こちらに体を向けて、迫って来るトロッコを睨むトカゲ。目がキョロキョロとせわしなく動き、落ち着きなく手が動いている。


 最初の一撃は、マリスから始まった。

 「出来た、退けろ。」

 トカゲとの距離はまだある、しかし、タワーシールドが移動し視界が良くなったマリスは躊躇せずに撃つ。


 『シュ―』空気を斬る音、飛び出す槍、次の瞬間 トカゲの脇を通り過ぎ、坑道奥の壁に突き刺さる。

 「お前、俺が何をしているのか分かっているだろう。何故動かす、外れてしまったではないか。」

 真っ赤になった顔で、トロッコ押しに食いかかるマリス。


 その勢いに、蒼くなり引きつる奴隷。

 「それより、2射目を準備した方がいいのでは。」

 ジャックの声に前を見ると、トカゲが四つ足で走ってくる。


 慌てて弦を引き絞り、次の槍をセットしようとするマリス。


 「盾で防いでくれ。」

 トロッコの前にタワーシールドが立つ。


 エイミとダイは、盾を構え、剣を抜く。

 ジャックは、ダイの後ろでそんな様子を俯瞰している。


 「ダイ、下がれ。弓の準備をしろ。」

 ジャックの声に、一歩さがって、背から弓を取り出し小脇に抱え、矢筒の矢を1本取り出す。


 トカゲは、間の距離の半分を走りぬき、『シャー』威嚇音を、盾に向かい発する。

 この程度では、冒険者をやっていない。

 耐えられないトロッコ押しだけは、バタバタと逃げて行った。


 効果が無いと感じたトカゲは、顔を上げ、ノシノシと近付いて来る。


 セット出来たマリス、しかし、見えているのは背中と頭。

 「何とか、腹が出る様にしてくれ。」

 イライラと後ろの魔法使いに言うが、無茶ぶりだと皆 顔で言っている。


 「土壁は、出来るか?」(ジャック)

 「専門ではないのですが、出来ます。」(女魔法使い)

 「自分のタイミングでいい。土壁を作れ、壁を越そうと立ち上がったら消せ。

 マリス、一瞬の間だ。外すな。」(ジャック)

 「分かった。」(口が乾いたのか、かすれたマリスの声)


 低い声の長い詠唱と額のしわ、終わったようだ。

 「土の妖精に願う、我の前へ障壁を。」

 次の瞬間、タワーシールドは横に飛ぶ。


 マリスの5m前に、低いがほぼ坑道の幅いっぱいの土壁が出現。


 『ザァザァザァ』

 トカゲが走ってくる。


 土壁の前で音が止まる。


 『カサッ』

 爪が土壁に食い込み、頭が壁から出てくる。


 その間に、長い詠唱を終え。 

 「消えよ。」


 土が、一瞬で消える。かなり無理をしているようだ、顔が真っ青になり脂汗が額に浮きでている。

 マリスは、その瞬間を外さなかった。

 「シュッ」

 槍が飛び出る。


 「・・・」

 見た者は、自分の目が信じられかった。


 槍は、腹をめがけて飛んでいた。確実に食い込むと思われた時、腹の湾曲に従うように、腹に食付きながら後ろに飛んで行った。

 「まさか」

 マリスの声が、一瞬の緊張を解く。


 トカゲが倒れながら、後ろ足により前方に体が撃ちされていく。


 「ダイ、弓を。」

 まだ動転してるが、目の前にせまるトカゲ。動かない訳にはいかない。

 ポケットに手を入れ瓶をだす。

 小脇に、弓と矢を挟み動きにくそうに蓋を外す。


 横にいたタワーシールドがマリスの元に走る。

 トカゲの目が、その動きを捕らえていた。


 着地したトカゲの前に出て来たタワーシールド。

 飛び込む動きに、反する方向から前足がシールドを叩く。


 一瞬・・・空中で泊まる盾と前足。

 トカゲの自力は大きい、そのまま振り切ると盾と一緒に人間も壁際に飛んでいく。

 さすがに痛かったのか、斜めに傾いて飛んできた体は、一旦四つ足になるが、その前足は地面を捕らえる事は出来ないようだ。


 目の直前を人が飛ぶ、頭で理解しても本能はごまかせない。

 ダイが蓋を開ける。

 本能が叫ぶ、手が震えた。


 『カタカタ』

 そのたび、白い粉が飛ぶ。

 『フワフワ』

 震える指で蓋を戻す。


 静かにジャックを見る。

 ジャックも見ていた。

 「動くな」

 固まるダイ。


 「エイミいるか?」

 「はい?」

 「ユックリと来い。」

 「ダイ、そのまま手を左右に広げろ。」

 『コトッ』

 弓と矢が落ちる。


 ダイの手を見て理解したエイミ。

 「何をすれば?」

 そのまま固まった。


 「ダイ、手を下げながらユックリ下がれ。」

 目の前を漂う白い粉。

 壊れた人形の様に、ギリギリと動き、後ろにさがっていく。


 「そのまま後ろの壁に背をつけろ。エイミ、ナイフを出せ。」


 「ダイ、手を出せ。」

 「いいか、こうやるんだ。」

 エイミからナイフを取ると、刃を斜めにして皮膚を削る様に、ユックリと動かす。ムダ毛を切り落とす動作に似ている。

 ナイフをエイミに返すと。

 「粉が見えるな。黄色いのは色粉だ、それをそり落とす様に削り取れ。一回削ったら、この布でふけ。同じ場所でふくな。俺は、お前達を守る。さあ、やれ。」


 奥に下がったジャックを危険では無いと判断したようだ。

 真っすぐ、マリスに向かう。

 引きつるマリス、手が剣の柄を握るが動けない。


 トカゲが危険と認識したのが『バリスタ』だった。

 砲丸投げのスウングのように、体をフワッと回転させる。その後方から腕の何倍もある尻尾がバリスタを襲う。坑道にぶつかる音は、誰にでも粉々になったと理解できた。


 尻尾の動きを見ていたマリスは、慌ててトロッコから降りる。

 目の前を飛ぶバリスタをみながら、剣を抜き構える。


 通常の剣では、無理だと知っているが、それ以上に腹に当たったミスリルの槍が刺さらない事に、驚いていた。

 「化け物だな。」

 マリスの一言は、ここにいる全員の気持ちを代弁していた。


 マリスの構えている剣は、魔法付与の武器としては、決して安いものではない。しかし、トカゲには、キズ一つつけられない物など、さほどの脅威とは思っていない。

 それより、気になっていたのがジャックの動き、警戒しろと言う本能に従い逃げるか、さほど危険な武器を持っていそうもないので、一当たりしてみるか。


 マリスが剣を突き刺そうと向かって来る、軽く尻尾を流すと、無理な体勢で逃げて行く。

 魔法使いだろう、火球を撃ってくる。皮膚についてしばらく燃えているが、蚊ほどにも気にならない。


 ジャックの前までやってきた。お互いにらみ合う。


 ジャックの手には、半分蓋の開いたビンが見える。


 やはり、やめておこう。

 トカゲは、悠然と入って来た方向に歩き出す。


 バリスタが壊れた以上、今のトカゲに勝てる武器は無い。

 とりあえずケガの無かった者は、怪我人をトロッコに入れ帰宅する事にする。

 

 上半身の服の上着を脱ぎ捨てたダイは、魔法使いに頼み 服に付いた黄色の粉を焼却してもらう。耐火性能のある服だが、さすがに燃えているのを見るはつらい。

 所々、穴の開いた上着を、ため息で見る。


 朝早くからの戦いもおわり、一旦 宿舎に戻る事にした。

 昼食後は、各自で行動する事になる。

 

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