第1話 闇ギルドからの依頼
エルフ歴 994年10月
ジャックは、一仕事を終え酒場で一杯やっていた。
そこに一人の行商人風の男。
「ここ空いているかい?」
特に混んでいる様子の無い酒場、空き席ならもっといい場所があるだろうに。
「ああ。」
どう見ても俺に用事があるのだろう。
男は、腕まくりをする、特に暑い気温でもないのに・・俺の視線を誘うようにテーブルの上に腕を置く。
腕のキズを見せたいのか・・俺は、手を広げテーブルに置く、甲を人差し指で押すと、男は小さくため息をする。
「初めてのお使いかい?」
「ああ、助かるよ。」
やはり新人さんか。
「で?」
「ここから北に100k程行くと『フォーレンの町』がある。最近、そこで人手が足りなくて募集しているそうだ。」
「ほう、何かあったのか?」
フォーレンの町は、鉄鉱山と鍛冶で栄えている大きな町で、もはや都市だと言える。
「何でも、落盤があって鍾乳洞と繋がったようだ。まあそれだけなら、問題はないのだが。」
「魔物でも入って来たのか?」
「そう、よくわかるな。」
「どんなやつだ?」
「皮の硬いオオトカゲとしか聞いていない。」
「フーン、あいつか。」
俺は、甲に中指を押し付ける。
「3日で金貨5枚。」
100kの路銀にしては、良すぎる報酬だ。この仕事を受けるか?
俺は、甲に親指を押しあてる。
「助かるよ。」
そいうと無造作にポケットから小さな布袋を取り出し、俺に差し出す。
袋を受け取ると、男は行商人達が座っているテーブルに入っていった。
朝早く宿屋を出ると、馬車溜まり(ターミナル)に向かう。
そこからフォーレンに向かう路線馬車に乗るのだ。
運がいい時はいいもので、声掛けをしている御者に話をすると、行き先はフォーレンだと言う。
馬車には人が満載されている、俺が最後の客のようだ。
「これに乗っとくれ、あんたで出発だ。」
御者に金を払うと、すぐに動き出した。
『3日以内に、フォーレンの冒険者ギルドに行き、そこでトカゲ退治の依頼を受ける。』
これが今回の闇ギルドからの依頼だ。
【後書き】
闇ギルド・・・冒険者ギルドや商業ギルドを表ギルドとするなら裏になるのが、闇ギルド。冒険者ギルドや商業ギルドで受けない依頼をする。ギルドの構成や誰がやっているかなど、一切闇の中。
依頼する時は、行商人が集まっている場所に行き、出来るだけ年寄りの商人を捜しひと言。
「依頼したい事がある。」
依頼の善悪は問わない、ただ、達成可能か?で受ける。達成可能であれば、国王暗殺でも引き受けると言う。その報酬は、高額で全額前金支払い。期日まで達成できない場合は、二割増しで返金される。
実際に依頼をこなすのは、冒険者ギルドに所属していない専属の冒険者、あるいは、ジャックの様に口の堅く実力のある者に限る。
依頼は、酒場、宿屋、冒険者ギルドなど、人ごみの有無にかかわらず行われる。
代理依頼人(通常、ギルド所属の行商人)が、冒険者と接触する。
身分を示す時、体の一部(ほくろ、キズ、シミ、無い場合は刺青で作る、など)を冒険者に見せる。
それを見た冒険者は、指で返事をする。
親指・・・・承諾
人差指・・・わかった、話を進めろ
中指・・・・条件は?(期日、依頼料)
薬指・・・・条件変更(期日、依頼料、場所、日時など)
小指・・・・拒否
この段階で、双方が闇ギルドの関係者と分かる。
人混みがある場合は、雑談の中に依頼をいれ、指で返事をする。
なお、報酬は、全額前払い。
代理依頼人は、自己負担後ボスに報告時に報酬を上乗せされて支払らわれる。
達成できない場合は、死亡以外は倍返しとなる。
依頼を無視して逃亡すれば、死を覚悟しなければいけない。




