9020K列車 嘘でしょ
あさひサイド
輝「・・・嘘だろ・・・。」
帰ってきた旦那初めての台詞はこれだった。
あさひ「嘘言わないって。嘘つくメリットないし。」
輝「それはそうだよね。」
あさひ「まさか・・・こんなに早く当たるなんて。」
一番早かった抽選に応募してみた。その結果はまさかの当選だったのだ。私は当てるつもりでいたのだけど、テル君はそうは思っていなかったらしい。思っていなかった割にはかなり嬉しそうにしていたと耳に入っているのだが・・・。まぁ、そのことは触れないでおこう。だが・・・。
あさひ「・・・。」
輝「・・・圧倒的に時間が足りない・・・。」
あさひ「うん・・・。だよね・・・。」
そう、私達に残されている時間が圧倒的に足りない。当たる上にこれから120万ほどの出費をしなきゃいけなくなるとは・・・。
輝「・・・。」
あさひ「テル君、貯金ってどうなってる。」
輝「まだ。全然・・・。」
あさひ「だよね・・・。テル君の貰うお給料と私の貰ってるお給料から生活費を引いて、貯蓄に回すお金を引いてってやってたら、残りは・・・。」
輝「・・・思ったよりも残んないね・・・。」
あさひ「・・・貯蓄に回すお金を。」
輝「それはやっちゃダメだよ。」
旦那の言葉にちょっとビックリする。
輝「貯蓄は削っちゃダメだと思う。この先何にもないとは限んないし。」
あさひ「・・・ヨーロッパ旅行に結婚資金の全額をつぎ込んだ人の言い分とは思えないわね。」
輝「・・・いいじゃんか。僕、式自体に興味ないんだし。」
あさひ「私のメイド服は可愛いって保存したのに。それよりも可愛くなれるウェディングドレスに興味ないとはねぇ・・・。つくづくよく分かんない人。」
思ったことをそのまま言葉にしてみる。
輝「うっ・・・今思ったらもったいない事したかも・・・。」
そうは言ってるけど、そのもったいないことがなかったらテル君はまだヨーロッパには行けてなかっただろうし、あんなに目を輝かせた旦那を見ることもなかっただろうな。そして、またヨーロッパに行きたいなんて言う約束もしなかっただろう。
あさひ「・・・それはそれとして・・・。」
輝「どうしよう。」
あさひ「・・・だよねぇ・・・働いてるとは言えそうぽんと左から右に回せる金額じゃないし。」
輝「もったいないけど、キャンセルが一番現実的って言うのが一番辛い。」
あさひ「・・・。」
「四季島」に乗れないことが辛いわけじゃないんだろう。北海道旅行での儀式。青函トンネルの通過が出来ないのが一番辛いんだ。せっかく、見れるチャンスが巡ってきたというのにみすみす逃すようなことになってしまいそうなのだから。
輝「なぁんで、こういう時に当たっちゃうかなぁ・・・。向こうじゃレア運用に当たらずにアレなのばっかに当たったのに。あっ、でも「レゾ」は除くけど。」
あ・・・。私には違うの分からなかったTGVだ。
あさひ「・・・どうする。」
輝「キャンセルは一時保留。まだ、お金を振り込むまで時間はあるし、キャンセルしたくないって気持ちの方が大きいから。」
あさひ「うん。分かった。でも、出来るだけ早く答え出さないとね。」
輝「そうだな・・・。」
そう言ってから、
輝「ちょっと叫んでいいかな。」
あさひ「ダメです。ご近所迷惑です。」
淡々と返す。
輝「それでも叫びたい。」
あさひ「・・・外に行きましょう。そしたら、叫んでもいいから。ねっ、ちょっと外に出ましょう。」
そういい、旦那を外に連れ出すことにした。
あさひ「あっ・・・。」
亜美ちゃんにも今日は行けないと言っておかないとな。
七海サイド
七海「・・・。」
娘達が家を出た後、私は写真の近くに立った。
七海「・・・キャンセルねぇ・・・。」
今、考えていることは私の決意だ。
七海「・・・貴方がもっとゆっくりしていかなかったから・・・。っ。」
後ろから抱きしめられる感覚・・・。
七海「・・・許してあげないんだから・・・。だから、これは罰・・・。」