9017K列車 気にするだけ無駄
あさひサイド
亜美「ああ・・・。そういうことね・・・。」
動画撮影から帰ってきた亜美ちゃんに私はさっき光君が言った言葉の意味を問うていた。
あさひ「はい、紅茶です。」
亜美「ありがとう。」
亜美ちゃんは一口私のいれた紅茶を含むと、
亜美「あっ、美味しい。瑞西に入れ方を教えて貰ったわね。」
すぐに言い当てた。
亜美「と・・・輝君が「TRAINSUITE四季島」に乗りたいのでは無くて、青函トンネルを通りたいからと言うことの真意ね。」
あさひ「そう。何でか気になって。だって、テル君って青函トンネルは何度も通って北海道に行っているでしょう。なのに青函トンネルを通りたいって言う理由でその高い「四季島」って言う電車に乗りたいってなるのかなと思って。」
亜美「確かに・・・鉄道ファンでなければその理由は分からないでしょうね・・・。」
何か引っかかるような言い方をされた気が・・・とも思ったが、確かに人の趣味のことが分からないというのは自分が一番分かっているはずだが・・・。
亜美「輝君にとって青函トンネルって言うのは北海道に渡るのは儀式みたいなものよ。」
儀式・・・。
亜美「1988年に貫通して以来、快速・特急・寝台特急・新幹線と多数の北海道行きの列車が運行されてきた歴史がある。ただ、青函トンネルを眺めながら青函トンネルを通ると言うことが出来なくなってしまったの。重要な事よ。」
あさひ「出来なくなったって・・・。それって重要なの。」
つい聞いてしまう。
それから亜美ちゃんは指を鳴らす。すると部屋の中が暗くなった。本当にこの家どうなってるんだ。
亜美「ええ。元々、あの区間を通る列車は特急「はつかり」に使われていた485系って言うのが使われている列車以外は前を見れなかったりしていたわ。」
と言いながら、いかにも古そうな電車の画像が出てくる。確かに、見るからに前が見れるようなものじゃない。
亜美「ただ、新幹線ではそれの一切が出来ない。」
あさひ「ああ、確かに。」
亜美「だけど、「四季島」に使われているE001系っていうのはそれが唯一出来るものなの。」
あさひ「成る程・・・。なんとなく分かった気がする。」
つまり、青函トンネルを見たいから「四季島」に乗りたいのか・・・。
亜美「・・・人の趣味なんてそう言うものなのよ。」
あさひ「・・・。」
でも、今度は次の心配がある。
あさひ「もしかしてだけど、青函トンネルを見ながら通れれば「四季島」じゃなくても大丈夫だったりする。」
亜美「・・・それはまたお金がかかる話よ。それにそんなことはないわ。乗り鉄としてはグレード最上級の乗り物。乗れる機会があれば、それを逃すなんて事はあり得ないわ、きっとね。」
あさひ「・・・。」
亜美「貴方の頑張りが無為になる事はないから、安心なさい。」
あさひ「ありがとう、亜美ちゃん。」
亜美「フフ。どういたしまして・・・。」
あれ。今語尾が上がったような。
あさひ「なんで疑問系。」
亜美「・・・多分、輝君はあさひさんの思っているようなこと全く気にしてないと思うから。」
あさひ「・・・つまり、心配するだけ損だと・・・。」
亜美「ええ。恐らく。」
私もまだまだ旦那を理解出来てないんだなと思った。
翌日。
あさひ「お・・・押すよ。」
輝「うん。早く、早く。」
子供みたいにテル君は私を急かす。
カチッと言う音が妙に大きい。
あさひ「ああ。申し込んじゃったよぉ。」
輝「大丈夫。お金はこれから稼げば良いさ。僕の貯金とあさひが貯めてるお金があればなんとかなるって。それに3ヶ月は絶対に行けないんだからね。」
あさひ「こう言うのって人気なんだね。日本人も暇人が多いのねぇ・・・。」
輝「ハハハ。さぁ、俄然やる気が出てきたぞぉ。」
その日、テル君は寝られませんでした。