9015K列車 メイドさん
七海サイド
あさひが帰ってきた日の夜。
七海「・・・。」
あさひサイド
亜美ちゃんと会ってからというもの、私は仕事を探し出した。貯める金額は100万を超える。それを考えたら、旅行から帰ってきたとしても継続して続けられる仕事が良いだろう。だが、自分に合った仕事って何だろうか。考えれば考えるほど分からなくなる。高校在学中としばらくは家計とかのことも考えてコンビニで働いていたけど、どれ嫌なこと我慢して続けていたようなものだったからなぁ・・・。店長には悪いと思ったけど、1ヶ月もシフトを明けるって事を考えると辞め時だったとしか言いようが無い。それに・・・今となっては「誰が戻るか、あんな所」という感情しかない。
やっぱり、考えられるのはアレしかない。
数日後・・・。
あさひ「これでいいのかな・・・。」
鏡を使って自分の姿を見る。メイド服って初めて着てみたけど・・・。これを着るだけで結構様になるものなんだなぁ。
亜美「似合っているわ。写真に撮って旦那に送りつけてやろうかしら。」
あさひ「テル君、コスプレの趣味はないと思うけどねぇ。それと恥ずかしいから辞めて欲しいな、亜美ちゃん。」
と言うと、亜美ちゃんの隣にいるメイドさんが咳払いした上で
瑞西「失礼ですよ、輝さん。普段はお嬢様と親友関係でありましょうが、今は主従関係なのですから、「亜美様」または「お嬢様」と・・・。」
亜美「そこまで。」
亜美ちゃんが制止した。
亜美「瑞西。貴方の言うことは尤もだけれど、そこまで堅苦しくなる必要はないわ。あさひはあくまでアルバイトとして雇っているだけ。本当にメイドさんを目指しているわけではないのよ。」
瑞西「しかし、そう特例を許しては他の者に示しが付かないのでは無いですか。」
それはその通りなのだろうが・・・。
亜美「はぁ。」
呆れた。そう言いたげのため息だ。
亜美「瑞西。ここには貴方しかいないじゃない・・・。本当にあさひさんがメイドを目指すなら、教育は貴方に任せる。これの意味が分かるわね。」
瑞西「お嬢様が自らっ。」
瑞西さんは驚きの声を上げる。
あさひ「教育、出来るの。」
亜美「・・・貴方たちねぇ・・・。」
見える。亜美ちゃんの頭に怒りのマークが・・・。
瑞西「申し訳ありません。」
あさひ「あっ、いや・・・。亜美ちゃんがそういうことするとは思わなかっただけで・・・。」
亜美「確かに、あんまり私のすることでは無いわね。」
と納得したようだ。それから私の方に向いて
亜美「私はそれなりの地位の人間と会う為に立ち居振る舞いというのは一通り教育されているわ。それを貴方に教えるだけ。それに教育と言っても貴方に教えるのは姿勢だけだと思うわ。私達をお世話するとか気を張らなくて良いわ。気楽で良いのよ。」
瑞西「お嬢様・・・。」
あさひ「分かったよ、亜美ちゃん。」
瑞西「・・・どうせ「私の方針に従えないの」とおっしゃるつもりでしょう。ズルいです。」
亜美「悪いわね、瑞西。私がどういう人かも嫌と言うほど分かってるでしょう。」
瑞西「ええ、それはもう。」
と言った時、ちょっと外が騒がしくなった気がした。何が起こっているのかをいち早く察知したのは瑞西さんだったらしく、
瑞西「私が行きます。」
亜美「いつも悪いわね。」
瑞西「これが仕事ですから。」
そう言って部屋を出て行った。
あさひ「・・・。」
亜美「子供の事ね・・・。」
あさひ「・・・希望君と隼人君のこと。」
亜美「ええ。」
あさひ「行かなくてよかったの。」
亜美「貴方の教育となれば少しの時間は割かないとね。もちろん、それが終われば私がするわ。それに・・・。」
???「ママ。おむつってどうやって変えるの。」
???「母さん。ミルクってどうすれば出来るんだっけ。」
別の子供達の声がする。ママって言うのは亜美ちゃんのことじゃなくて、恐らく瑞西さんのことだ。
瑞西「貴之。それはママがやります。法華を手伝って。おむつの替え方、前に教えたの覚えています。」
貴之「うん。」
亜美「せっかくお兄ちゃん、お姉ちゃん気分でお世話してくれるって言う子達の気持ちを無下にも出来なくて・・・。」
あさひ「あぁ・・・。これは断れないわ・・・。」
亜美「さて、気を取り直して。」
そう言うと亜美ちゃんの雰囲気が一気に変わったと感じた。普段動画で見ているような雰囲気。所作で人間ここまで変わるのか。
亜美「まずは挨拶から。基本は大事よ、まずは見様見真似でやってみなさい。」
あさひ「はっ・・・はい。」
それから・・・。
亜美「ちょっと背中が曲がってるわね。」
あさひ「えっ・・・。あっ。待って、イッ。」
亜美「そんなに痛くないでしょ。」
あさひ「うん、それは痛くないんだけど、き・・・筋肉がッ。」
亜美「普段から全く使ってない証拠ね。」
姿勢を正すって結構大変・・・。
後書きもあるよ。
後日談
亜美「やっぱり、写真撮ってあげるわ。色々と。」
あさひ「えぇ・・・。」
亜美「これは命令。」
あさひ「・・・わ・・・分かりました。」
亜美「旦那が喜びそうな写真も一緒に撮ってあげるわ。今日はどんなの履いてるの。」
あさひ「ふ・・・普通のだよ。そんなエロいのとか履いてないってば。」
亜美「普通か。普通がいいんじゃない、男性的には。」
あさひ「それはそうかもしれないけど。ていうか撮る必要ある。」
亜美「メイドでパンツ。エロの定番とは思うけど。」
と言った時、亜美の頭にげんこつが飛んだ。
亜美「痛っ・・・。」
瑞西「はしたないですよ。お嬢様。」
呆れた顔の瑞西さんがいた。
亜美「はしたないって・・・。貴方がそれを言うのかしら。」
瑞西「・・・私の性事情に関してはどうでもよいではないですか。」
亜美「いいえ。上司として部下の管理も仕事の内よ。」
そう言いながら、亜美ちゃんは扉に近づいた。あっ、これって・・・。と思った時にはもう遅かった。ガチャという音がした。私は確信する、鍵を閉められた・・・と。
亜美「どうする。これで誰もここには入ってこられなくなったわ。さぁ、大人しく撮られなさい。貴方のスマホで撮らせてくれれば、消さない以外は自由よ。」
あさひ「消したいんだけど、そういう写真。あの・・・瑞西さん。」
瑞西「あの旦那、後で殺す、後で殺す、後で殺す、後で殺す。後で殺す。」
あっ、これ助けてもくれないパターンだ・・・。
亜美「さぁ。」
あさひ「亜美ちゃん。」
亜美「何。」
あさひ「心底軽蔑するわ。」
亜美「フフフ。貴方が軽蔑しても変わらないわ。私、こういう人だから。ごめんなさいね。」
テル君に写真のことを聞いたら、「しっかり全部保存した」という答えが返ってきました。