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9025K列車 全集中

あさひサイド

 時刻は午前2時・・・。

輝「あっ、起こしちゃった。」

眠い目をこする私を見て、テル君は聞いた。

あさひ「ううん。起きたの。・・・ところで本当に行く気。」

 欠伸が出る。小さい窓のカーテンを上げる。辺りは暗く、小さく明かりが見えるだけ。その明かりが左から右に流れていくことで列車が進んでいることは分かる。しかし、電車でよくあるガタンゴトンという音はほとんど聞こえてこないくらい防音効果は高い。さすがは100万取る列車だ。そこら辺走ってる電車とは大違いだ。

輝「そりゃね。これでしか見れないんだし。一番良い席はこの時間から取っておきたいしね。」

あさひ「相変わらず体力お化けね・・・。」

輝「・・・どうする。眠いなら寝てていいよ。」

あさひ「・・・行く。着替えるからちょっと待ってて。あっ、出といてよ。」

輝「出とく、出とく。見たら別の方向に行きそうだから。」

あさひ「・・・。」

そう言いながら、テル君は部屋の外に出て行った。多分、あのまま先頭の展望車に一端だろうな・・・。

 着替えが終わって通路に出てみると、思った通りテル君はいなかった。

あさひ「ちょっとくらい待っててもいいんじゃない・・・。」

そう言って悪態付いてやろうか・・・。

 先頭に向けて歩き出す。乗り降りに使う5号車を通り抜け、4号車、3号車と歩く。どの号車も片手で数えられる程度のドアがあるだけ。この列車の定員が少ないことを考えれば当然と言えば当然か・・・。

 1号車に来ると通路が延びる。ガラスがはまっているところにはエンジンが見える。今は震えていないからこのエンジンは動いていないんだろう。それを見てから、更に歩みを進めると開けた部屋に出た。

輝「本当に、もう少し寝てればよかったのに。」

一番前に座っているテル君が私に言った。

あさひ「いいの。私だって見たいんだから。」

 辺りはまだくらい。「四季島」の照らすライトだけが頼りらしい。テル君はそれを黙ってみている。私も黙って前を見た。時折、ここが何処なのかと言うことを聞いたが、それに淡々を答えてくれるって事を繰り返すだけだった。

老夫婦「おはようございます。」

車掌「皆様、おはようございます。」

 4時が近づいてくるとこの展望室にもチラホラ乗客が現れた。皆、これから通る日本一長いトンネルに思いをはせているのか。

輝「いい所って言うのは早めに取っておかないとね。」

あさひ「早めが早すぎるのよ・・・。」

 「四季島」は一端止まる。車掌さんが「ここで安全装置を新幹線と同じものに切り替えます。それから北海道新幹線に入っていくことになります。」と案内した。

あさひ「よいよね。」

輝「まだだよ。新幹線は一駅有るし、その駅を通り過ぎてからでも8つくらいトンネル抜けるから。」

まだまだ青函トンネルは遠いらしい。かすかに「ピンポーン。」と電子音が届く。テル君の顔がニヤッとした。出発のようだ。

 出発からまもなく上に建築物が覆ってきた。これが北海道新幹線ですとの案内があり「四季島」は坂を駆け上がって新幹線の線路に合流した。3本のレールがまっすぐ延びる。こちらのスピードは60キロと遅い。トンネルも出しているスピードよりも遅く走っているように感じる。

輝「本来こんな光景で見れないからねぇ・・・。」

凄い楽しそうだ。

あさひ「テル君・・・。」

輝「・・・しばらく集中させて。」

ああ。完全に火が付いている。

 トンネルを2本くらい抜けて、新幹線から一端別れて奥津軽いまべつ駅の隣を通過。また新幹線と合流して、青函トンネルへと走って行く。

車掌「次が青函トンネルです。」

車掌さんの案内に呼応するかのように「四季島」は警笛を鳴らした。

輝「・・・。」

あさひ「・・・。」


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