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9023K列車 まさか・・・ね

あさひサイド

七海「あさひ、今時間あるかしら。」

私が仕事から戻るとお母さんからそう言われた。これから仕事に出るのかお母さんはスーツに身を包んでいた。

あさひ「なぁに。お母さん。」

七海「とりあえずそこに座りなさい。」

えっ、何この明らかな説教コース。私何にもしてないと思うんだけど・・・。今は自分で働いて家計にもちゃんと貢献していると思うし、怒られるようなことはしてないと思うのだが・・・。私は何で怒られるのだろうか。そんなことを想いながら、お母さんが指さした席に腰掛ける。

あさひ「えっと・・・。」

七海「単刀直入に言うわ。これ、使いなさい。」

そういい、私とお母さんの真ん中に預金通帳が置かれた。

あさひ「いや、待ってよ。このお金って何。」

一番気になるのはそれだ。ああ。前にもあったことが思い出される。ヨーロッパ旅行の行くという話をした時だ。お母さんはどこかに行ったと思ったら、通帳1つを持ってきて「これ、使いなさい。」と今と同じようにしてきた。それと一緒だ。

あさひ「お母さん。今はそう簡単に100万使えるほど余裕ないでしょ。それに私達がこれ使っちゃったら・・・。」

七海「そう言うことはいいから、使いなさい。預金は150万あるわ。「四季島」分払っても十分お釣りが来るわ。」

それは確かにそうなんだが・・・。

七海「と、に、か、く。お母さん、「四季島」に使ってくれないとそのお金は困るから。それに返品は受け付けないから。よろしくね。じゃ、仕事行ってくるから。」

あさひ「えっ、あっ、ちょっと。」

もうその時には準備を完了して、玄関のドアはバタンと音を立てていた。

あさひ「・・・「四季島」に使ってくれないと困るって・・・。何でそんなに「四季島」に拘るのかな・・・。」

喜んでいいのだろうか・・・。

あさひ「まただよ。また親に迷惑かけちゃったかなぁ・・・。」

ヨーロッパ旅行の時もそうだ。お金の問題は母親が解決してくれた。あんまりこういうことはしちゃいけないと思っているのだが・・・。

あさひ「ッ。」

 玄関の開く音がした。テル君、帰ってきたな・・・。多分、今小さい声でただいまって言ったところだろうな・・・。

輝「今、下でお母さんと会ったけど何かあった。」

私の顔を見るなりそう言った。私はテル君から鞄を受け取りながら、

あさひ「それで話があるんだけど、いい。」

輝「うん。分かったよ。ちょっと着替えてくる。」

それに「分かった」とだけ言った。

 それから5分としないうちにテル君は着替えて戻ってきた。寝る気は満々らしくもうパジャマになっている。

輝「それで話って。」

あさひ「うん・・・。これお母さんから渡されてね・・・。「四季島」に使ってくれないとこのお金が困るって言われちゃってね。」

輝「・・・困るねぇ・・・。」

と一言言ってから、

輝「お母さんが使っていいって言ってるんだから、使えばいいんじゃないかな。」

あさひ「でも・・・。」

と言いかけたところでテル君は私の口を指で押さえた。

輝「あさひが親に迷惑かけたくないって気持ちは分かってる。親の苦労を昔からいっぱい見てきたって事も。だけどさ、迷惑くらいかけたっていいと僕は思うけどね。それに親から使えって言ってきたって事は使って欲しいって事だと思うんだよ。迷惑だとは思ってないんじゃないかな。」

あさひ「・・・そうだとは思うんだけど・・・。」

輝「・・・何を戸惑ってるの。」

あさひ「何でこのお金有るのかなぁと思って。ヨーロッパ旅行の時だって、そう。家にとってはあんな金額ぽんと出せるわけじゃないのは、分かってるつもり。だから余計に分からない。何処にこんなお金が有るのかっていうのが。。」

輝「・・・。」

あさひ「・・・まさか、お母さんそういういかがわしいお店で働いてるとか。」

輝「ないだろ、それ。」

あさひ「だ・・・たよね。」

輝「・・・お母さんに聞いてみれば。なんでこのお金があるのか教えてくれると思うよ。」

あさひ「うん、そうしてみる。」

輝サイド

 あさひが「そうしてみる」と言って、席を立った。

七海「まさか私と同じ属性の人を見つけてくるとも思ってなかったわ。血は争えないのかしら。」

輝「・・・。」

血は争えないか・・・。僕とあさひが結婚する前に七海さんから言われたことだ。僕とあさひのお父さんは同じ鉄道ファンらしい。同じ趣味を持っている人を親子で選んだって言うことだと思っていたのだが・・・。

輝「・・・まさかね・・・。」


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