9022K列車 頼って良いの
亜美サイド
亜美「・・・ほう。」
これは、これは。本当に運がいいのか、悪いのか。光ちゃんからの連絡を受けて、私はそんなことを思っていた。「光ちゃんの思っているようなことは出来ない。友達待遇も度を超えると暴力になる。」とだけ返信した。
亜美「・・・。」
コンコン。
亜美「入っていいわ。」
特に確認もせず、私は人を部屋に入れた。まぁ、この部屋にノックをしては言ってくる人間なんて数が限られているからね。
あさひ「失礼します。」
亜美「込み入った話があるでしょ。鍵は閉めて。」
あさひ「何か、これから何話すのかも全部見透かされてる。」
亜美「かも・・・しれないわね。」
あさひ「と・・・紅茶いれるね。」
亜美「ありがとう。」
そう言うとお盆を置いて、手慣れた手つきで紅茶をいれる。流石ね。瑞西の教育がなっているおかげだろう。
あさひ「・・・あのところでさ、亜美ちゃん。」
亜美「・・・当たったのね。」
と言った。「亜美ちゃん、超能力か何か持ってる。」と言われてしまう。それに「光ちゃんから連絡があっただけ。」と返した。
あさひ「読心術でも身に付けてる。」
亜美「読心術なんて身に付けていたら、私ももうちょっとね・・・。」
と言ってから、
亜美「・・・話はお金かしら。」
あさひ「・・・まぁね。ヨーロッパ旅行とかしてたから、お金なくて。」
亜美「・・・お金の相談は受けないわ。」
あさひ「ハハハ・・・やっぱり。流石にそれは友達待遇が過ぎるよねぇ。」
亜美「まぁ、それもあるけど・・・それを許すと付け上がっちゃうでしょ。いくら貴方でも。」
あさひ「・・・そうですね、はい。」
今やろうとした事を思ってか、力ない返事が返ってくる。
亜美「それに瑞西にも示しが付かなくなるのよ。ごめんなさいね。」
あさひ「謝んなくていいから。元々無理聞いて貰おうって思ってたのは私の方だし。」
さて、そのお話が決着したなら今度は別のことを考えないとね。お金の話はどうしようもない部分ではある。だが、方法がないわけでもないと思うのだ。
亜美「親は頼れないの。」
と聞く。
あさひ「親は頼れないよ・・・。」
亜美「・・・もしかして、二人とも・・・もう・・・。」
あさひ「ううん。母親はいるわ。でも、お父さんはもう・・・私が小さい時に・・・。」
亜美「そう、嫌なことを思い出させちゃったかしら。」
あさひ「嫌な事って言うほどの思い出もないけどね、お父さんには。」
その後、あさひは父親のことを話した。と言ってもどこか他人の話をしているような気がしてならない。そうならざるを得ないのだろう。自分は顔と名前くらいしか知らない。ふれあっていた事実が記憶にないのだ。「・・・あえて嫌な思い出というのなら父親がいないことの寂しさくらいよ・・・。」と言っていた。
あさひ「・・・というか頼りづらいのよ。母親だって昔から見てきたから。朝早くから夜遅くまで働いてたのをね。ヨーロッパ旅行の費用も結構多く工面してくれたし、また頼るのも何か尻込みしちゃう。」
亜美「ふぅん。」
あさひ「・・・どうしてもそう言うのを見ちゃうとねぇ・・・。頼っちゃいけないのかなって思えてくるのよ。」
亜美「・・・貴方、「親に迷惑をかけたくない」。その一心すぎやしない。」
あさひ「えっ。」
驚くほどのものか。
亜美「私はさ、親の存在が迷惑って思ってたから、親を頼りたい時に頼らなかったけど・・・。貴方には親がいるじゃない。それに親からしてみたら、私達の歳でも娘のままよ。迷惑だとかそんなこと考えないで、頼ってみたら。」
あさひ「・・・それが出来たら苦労はしないんだよ。」
亜美「・・・。」
それぞれの家庭の事情って言うのに踏み込むつもりはない。それだけ複雑なんだ。




