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9021K列車 爆弾

光サイド

光・同僚「・・・。」

ウチらの視線の先にいるのは輝なのだが・・・。

輝「・・・。」

ぼーっとしている。少し前までは仕事中でも分かりやすいくらいうれしさが滲み出ていたのだが、今は仕事中でも心ここにあらずの状態である。まぁ、仕事では切り替わるのか淡々とこなしてくれるので上司も注意しづらいという状態が続いている。

光「どう注意しろって言うんだよ・・・。」

同僚「だよねぇ・・・。」

輝「・・・。」

今、あいつは一体何を考えているのだろうか。読心術でも出来れば、相手の心を探り合うような状況では無いか。

同僚「話しかけて来いよ。」

光「ウチが何を話せばいいんだ・・・。ああ、あいつがあのままは雰囲気が悪くなるけど、淡々と仕事してくれるだけまだマシなんだろうなぁ。」

無意識のうちにやっているのなら、プロ意識も極まれリ・・・か・・・。・・・って。

同僚「輝。光が話があるって。」

輝「光君が。」

とっくに話しかけていた。あっ・・・話すしかないか。

輝「話って何。」

口調が淡々としている・・・。

光「お前、私生活で何かあったのか。」

輝「・・・私生活では何にもないよ・・・。順風満帆、そのものだよ。」

光「・・・じゃあ何でそんなに暗いのさ。」

輝「・・・僕ってそんなに暗く見える。」

光・同僚「見える。」

ウチと同僚の声が揃った。

同僚「ていうか、またあらぬ噂が立つぞ。今度は女のフラれたとか。というかもう立ってる。」

輝はしばらく目を開いたり、閉じたりを繰り返して何かを考えるようなそぶりをする。「ハァ。」最後に観念したのか

輝「分かったよ、話すから。」

と言った。

光「話す気になってくれて嬉しいかな。」

輝「はいはい。そういう儀礼は置いといて・・・。当たったんだよ、アレ。」

光「ッ。チョイチョイ。」

ウチは輝と話す前に同僚に話しかけた。

光「ちょっと席外してくれない。」

同僚「えっ、俺ここにいたら行けない話でもする。」

光「そう言うわけじゃないけど、いない方が良いかな・・・。」

多分、こいつがいることでややこしくなる。茶々を入れるだけって言うのが容易に想像出来てしまったのだ。今は茶々を入れて欲しいわけじゃない。

同僚「分かったよ。後でどうなったかは聞くけどな。」

光「はい、はい。それでいいから。」

同僚は背中を向けて、歩き出す。左手を挙げ「後で」というそぶりを見せて。

光「さて、詳しく話を聞かせて貰おうか。輝。」

輝「まるで刑事だね。一度言ってみたかったの。」

光「まぁね。まっ、それはいいさ。・・・もしかして、外れたのか。」

ウチはそこに切り込んだ。輝が茫然自失に成る程のもの。これ以外はあり得ないというのがウチの判断だ。それに輝からの回答はなかった。

光「・・・まぁ、「四季島」は当たりづ・・・。」

輝「・・・当たったんだ。」

ウチの言葉を遮るように輝が言う。当たった・・・。当たったって・・・マジ・・・。

光「あ・・・当たった。」

ちょっと声が大きくなる。ちょっと周りの視線が集まったことに気付いて、とっさに口を押さえる。

光「えっ、マジ。」

輝「ここで嘘ついたところで仕方ないだろ・・・。当たっちゃったんだよ。本当に。」

光「成る程な・・・。」

てことは・・・。茫然自失になる理由は何だ。「四季島」に乗ること自体、鉄道ファンとしても嬉しいことだと思う。ただ一つ、抽選に当たりづらくて高額な点を・・・除いて・・・。

光「・・・まさか代金払えない。」

と言った時、輝の表情が明らかに変わったのが分かる。考えれば簡単なことだった。こいつら、ちょっと前までヨーロッパに行っていたんだ。期間は1ヶ月で旅行者は2人。それだけの宿泊と食事と移動費。ほとんど1等だったな・・・。いくらかかったのか想像したくない・・・。

輝「そうなんだよ。あの金額さえ払えれば問題はないんだけど、それが出来ないから・・・。」

光「・・・。」

なんとも言えない。貯蓄に手を出せばなんて軽はずみなことは言えない。ウチの家もだんだんと家族が増える予定ではあるからな。輝の家だってその内・・・。

輝・光「どうしたものかなぁ・・・。」

お互いの声が揃う。

輝「キャンセルしたくないんだ。」

光「だろうな。ウチも本当に当たったらキャンセルなんてしたくない、絶対。」

輝「・・・。」

光「・・・悩みの種にしちゃ、爆弾クラスだな。」

輝「ああ・・・。爆弾だよ。」

これは・・・亜美ちゃんに報告する必要ありだな。もしかしたらって言うこともあるだろうし・・・。ただ、これは・・・後で怒られること確定だろうな。


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