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封印少女、持ち帰ります。  作者: ぱふぇ
一章-異世界への転送
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2話:それぞれの仕事

悟くんと先生の号令がかかった。集合しろ、との事だ。


さっきから何かを相談していた二人は、その何かに結論を出したらしい。


実は私、水谷優香は、つい先程、幼馴染という関係の気安さを使い、ワタルに、今の状況について何か分かることはないかと尋ねてきたところだ。だから、推測ではあるけど、現状については多少理解しているつもりでいる。


ここはおそらく、日本ではない。もっと言うと、地球ではない。異世界というヤツだ。

ここに飛ばされてきた経緯とか方法は分からないけど、これからこの場所で何をするべきかだけは話し合う必要がある、とのこと。


確かに、ここが異世界である、と言われても、普通ならば信じないのだろう。でも、周囲の倒れた木をよく見てみると、その近くには、知識に無い果物ばかりしか落ちていないので、今は信じることが出来る。


ワタルがそう言っているというのも、ここが地球ではないと信じる要因のひとつだ。ワタルがそう言ってるんだし、信じるしかない。


さて、集合がかかったので、クラスメイトが全員集まった。先生が点呼をとり、みんなは順番に返事をしていく。

やはり、先生とリーダーの姿は、クラスメイト達に安心を与えるらしい。みんな、混乱していた頭を整理し終えたようだ。



「さて、みんなをここに集めたのは、他でもない、今の状況について話し合うためだ」



悟くんがこの集合の目的を話す。

これからの事を一度全員で話し合った方がいいと考えていたのは、ワタルたちだけではなかったようだ。


クラスメイトから押し寄せる質問に、悟くんはさっきワタルから聞いた推測を話し始める。


Q.ここはどこか。

A.異世界の平原。


Q.何故ここにいるのか。

A.まだ分からない。


Q.どうやってここに一瞬で来たのか。

A.《召喚》では無いので、多分《転送》で来た。


Q.結婚してください。(複数人の女子より)

A.だが断る。


やはり、変わった景色の正体が異世界だと突然言われたら、みんな混乱するだろう。混乱するなという方が無理なお願いだ。


悟くんは混乱を鎮めると、次のステップへと移る。行動を起こさないと何も始まらないことを知っているワタルは、先程悟くんに、クラスをグループ分けすることを提案したらしい。


グループごとにどう行動するかを決めるためだそうだ。


整理班、近距離探索班、遠距離探索班に分け、複数人同時行動で、かつ三グループに分かれての行動なので、効率的かつ安全面にも問題無しの作戦だったということで採用された。


それぞれ十人、七人、五人に分けて行動することにしたそうだ。優先順位の高い方に人員を回すべきであったため、整理班は十人となっている。


私は遠距離探索班で、悟くん、佑介くん、暴龍天凱くんと一緒だ。ワタルもいる。

もう一度。ワタルもいる。よし、もう満足した。さて帰ろうかな。地球に。





「さて、私たちの班は遠くの探索だけど、どこから行く?」

「とりあえず、東に行ってみよう」

「じゃあ、俺は悟と同じく東で」



話し合いを終えたみんなは、それぞれの仕事に取り掛かる。

太陽の動きから方角を割り出したので、気分的に東に進むことにした。

どうやら今は朝らしい。地球の時間感覚とほとんど、いや、全く変わらない気がする。ここは本当に異世界なのだろうか?

まあ、時間がわかりやすくて助かる。私たちの仕事は遠距離の探索なので、半壊状態の森の中を進む。


進んでいくこと、三十分程。



「しっかし、ほんとになんもねぇな」

「ああ、最初の場所からだいぶ歩いてきているが、少し倒木が弱まってることくらいしか発見がない。最初にいた所で何かがあったのか?」

「ほんとに何もないわね……」



佑介くんと悟くんの言う通りの状況だった。

倒木している木は無数にあり、最初の場所から遠くに行くにつれて、その本数はだんだん少なくなっている。それしか発見がない。


と、その時。


ぴょこっ。



「あ、キツネたん!」



ついに動物を見つけた。キツネだ。かわいい。私をじっと見つめてくる。なんてかわいい。もふもふしたい。よし、もふもふしよう。



「今のところ関わる必要も無いし、とりあえず進もうか」

「あ、もふもふタイムがぁ〜」



悟くんが声を出すと、キツネは逃げてしまった。憩いのキツネたん……また会おう!

キツネたんと再会の誓いを立てて、私たちはまた前に進み出した。



ぐんぐん進んでいくこと、さらに30分程。

ワタルと暴龍天凱くんは、1つ気づいたことがあるらしい。



「ワタルくん、これさ……」

「……!だよね、僕もそう思う」

「悟くん達に言ってきてくれないかな」

「え、僕?いいけどさ……」

「頼んだよ!」


なんか気になる会話をしている。私も混ざろうかしら。

あと、気づいたことって、なんだろ?



「あの〜、みんなに提案があるんだけど、いいかな?」

「どうした、桜井?」

「えっとね、さっき気づいたんだけど……」



悟くんがワタルの方を見る。歩くペースは変わらない。



「……これ、さらに2グループに別れた方が効率良くないかな?」



私含め、3人の足がピタッと止まる。

そして、1拍。



「「「天才か」」」



ワタルに賞賛の言葉。ワタルは照れた。

暴龍天凱くんはドヤった。

というわけで、さらにグループを分けて効率化を図る。

ワタルと暴龍天凱くんペアと、悟くん、佑介くん、私のグループに分かれた。


私もワタルのグループの方が良かったが、強い男子二人がいるということで、私の安全も考慮して悟くん達のグループにしたそうだ。


なんという気遣い。私、感動。



「じゃあ、一時間くらいでここに戻ってくること。この一際大きな木が集合場所だ」

「わかった、そっちも気をつけてね」

「おう、お前の方もな!よっしゃ悟、行こうぜ」

「怪我しないでね、ワタル、暴龍天凱くん」

「わかってるって」



それぞれ北と南の方向に分かれると、どちらのグループもどんどん進んでいって、お互いに見えなくなった。


この後、体感では一時間半程探索したけど、特に何も見つからなかったので、待ち合わせの大きな木に戻ってくる。


思ったよりも長い時間探索していたらしいので、日が傾き始めている。ワタルたちが待っていることを想定していたのだが、ワタルたちは待ち合わせ場所にいなかった。


置いていかれてしまったのかと思ったが、どうやら違うらしい。後に聞いたのだが、あちら側も時間を確認できないこともあってか、思いの外長く探索していたそうだ。


その証拠に、十五分ほど経つと、ワタル達のグループが戻ってきた。服に少し土がついているのをはらいながら、倒木を越えて歩いてくる。


少し急ぎ足で。少しの焦りを見せながら。



「あ、帰ってきたみたいね」

「丁度だな。置いていかれたと思ったが、安心したよ。」



私と悟が、ワタル達に手を振ろうとする。

直前、目のいい佑介が私たちを止める。



「……待て。二手に分かれる時は、ワタルとリュウの二人だったよな?」

「ああ、そうだったな。それがどうかしたのか?」

「三人いねぇか……?ちっちゃいのが一人増えてる」



指摘されて、私もふと違和感を感じた。

確かに一人増えている。



「なら……あの小さい人は誰なの?」



ワタル達と共に行動している時点で危険は無い事は分かっている。それでも、警戒しないで待つのは無防備がすぎるというものだろう。


警戒態勢を解かずに、近づいてくるワタル達を観察する。


私でも目視できる程度の距離になった。

ワタル達が、茂みを掻い潜って姿を現す。


服の所々に汚れをつけた状態で。



傍らに、一人の少女と一匹のキツネを連れて。

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