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封印少女、持ち帰ります。  作者: ぱふぇ
二章-そうだ王都、行こう。
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11話:異世界☆NAKAYOSHI大作戦!?

だいぶ空いてしまった!

――この世界に飛ばされてから、一か月と少しが経った。


最初は森でサバイバルしながらなんとか生きてきたが、王都に入って街を見た瞬間、俺――焔遼真は改めて、ここが地球とは別の世界だってことを実感した。いや、俺だけじゃないだろう。きっとみんなそうだったはずだ。


西洋のようなレンガ建築が所狭しと敷き詰められて、建物と建物の間には細くて狭い道が形成されており、雰囲気たっぷりだったのを思い出す。


ゲームの世界に入り込んだような感じで不思議だったけど、すごいワクワクしたな。


王城に行ってパーティーに参加するって急遽決まった時はびっくりしたが、初めてのパーティーだったし楽しかったので、結果オーライ!


だが、料理を堪能してるときに突然、桜井に王様のとこに連れて行かれた時は何事かと思ったな。


あと、周囲に耳を澄ませば俺たちの悪口が聞こえてたし。


だから俺はすぐに、桜井が何故俺を連れて行ったのかを察し、今回の作戦を頭の中で再度イメージした。


そう。この作戦の案は、結構前から出されていたものだ。








俺たちがまだ森でサツキさんのスパルタ講義を受けていた、とある日。


サツキさんは突然俺たちに、変なことを言い出した。



「転移者っていうすごく貴重な人材が王都に行って、歓迎されないわけない!たぶん、全員参加の宴か何かが開かれるはず!」



倒木を加工してできた台の上に乗って、右手を強く握りしめながら、サツキさんは俺たちに熱く語りかけた。


桜井が「朝っぱらから何を力説してるんだ」みたいな顔でサツキさんの方を見てた。面白かったな、あれ。



「なので、いつも魔法の練習に励んでいるキミたちには、今日はダンスの練習をしてもらいます!今日から少しの間は魔法はお休みです!!」



今度はみんなが「何言ってるんだ」みたいな顔になってサツキさんを見ている。


でもまあ、みんな言われた通りにはやる。怒らせたら怖いっていうのはみんなわかってるから。


魔法の授業よりは厳しくはなかったものの、三日程でほぼ完璧に踊れるようになるくらいには厳しかった。


とは言え、ダンスが踊れるようになれば俺たちも貴族っぽくなったような気がして楽しかったから、教えて貰えて良かったと思う。



「サツキたんって、いつ社交ダンスなんて覚えたの?」

「いやまあ、結構長く生きてればそういう場所にも行くことはあるしね。あと、ワタルくん、サツキ"たん"って呼ぶのはちょっと……」

「サツキたん、まじで何年生きてるのか気になるなぁ」

「…………ワタルくん?」



桜井、度胸あるなぁ。自らサツキさんを煽りに行くだなんて。


俺たちは怖いのでやらないが。


この後、ワタルがサツキさんを呼ぶ時は普通に"サツキ"で安定した。


俺らは呼び捨てなんかできないよな……







社交ダンスの練習期間が終わった。


やっと魔法の練習に戻るのか、とみんなが思っていた。



「はい、次はちょっとだけ作法をお勉強!」



だが、次の授業は作法の勉強のようだ。


曰く、「きちっとしてないと、向こうもあんまりいい印象もってくれないからさ」とのこと。


この授業はだいたい二時間くらいの座学で終わったが、一部のクラスメイトは別の何かを受けた。


俺もそのうちの一人で、炎術士だからということで、何故かコーヒーの淹れ方を教えてもらった。


……なぜコーヒー?


最初はそう思っていたものだ。だって、そりゃそうだろう?やっと魔法の練習に戻れると思ったら、いつ使うのか分からない"カンペキなコーヒーの淹れ方"を教わったのだから、誰だってこんな反応になる。


でも、まさかこんな技術がパーティーで役立つとは思ってなかった。


いや、パーティーだけじゃない。この先の生活に大いに役立つことになるということを、この時の俺はまだ知らなかった。








時を今に戻そう。


ここはパーティーの会場。たくさんの貴族たちやクラスメイト、ダンスの音楽などで賑わっている。


森林サバイバル時代にサツキさんから教わって覚えた作法や踊り方を巧みに使って、俺たちはパーティーを楽しんでいた。


そんな楽しいこの場所にも、雰囲気を壊す人がたまにいるんだよな。


そいつらは俺たち"転移者"の悪口を言い合っていた。


聞くところによれば、どうやら妬みや(ひが)みからくるもの――つまりは、立場によって優遇されていることへの嫉妬らしい。


まあ、どこから来たのかもわからない異世界の青年たちが貴族である自分よりも立場が上と言われれば、そりゃあ妬む人もでてくるか。


ついさっき知ったのだが、サツキさんは俺たちに嫉妬の目を向けられることが事前にわかっていたようで、そのうえで俺みたいな一部の人に個別で謎の技術を教えたのだという。


ではなぜサツキさんはそんな技術を俺たちに教えたのか?


答えは、この後実行する作戦に使うから、だそう。


その作戦は、転移者という俺たちの立場に相応しい立ち振る舞いや技術を知ってもらい、貴族たちと仲良くなる、というものだ。


命名──"異世界☆NAKAYOSHI大作戦"!!


大作戦、という程大きな作戦ではないが、規模は大きく見せた方が盛り上がるだろう?


誰が盛り上がるんだという意見はさておき、俺は桜井たちと一緒に王のところへ行き、王に他の貴族たちへ"OMOTENASHI(おもてなし)"することを伝えた。


あとは、この作戦の要である"OMOTENASHI(おもてなし)"を貴族たちに施すのみだ。


俺たちは王の座る場所から離れ、貴族たちの集まりの方へと進んでいった。


──さあ、未だ俺たちをただの餓鬼だと思っている一部の貴族たちに、一泡吹かせてやろうではないか。

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